同人ゲーム(R18)の悪徳貴族に転生したので改心してオークと宿屋の主人と奴隷商人になりました【SIDE:ヒロイン】   作:笠本

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⑤ TRUE END

「よい香りです。そろそろ頃合いですね」

 

 メイド服に身を包んだ私はテーブルの上で茶器を動かします。

 

 奉仕奴隷として多くのお客様へ歌と踊りで奉仕をするようになって一年。

 生贄になった女性がさらに続き、後輩が大勢加入してきたことで、私はそのタイミングで一線を退くことを決めました。

 ゼッツリー様のご厚意で、最後のご奉仕を故郷の皆の前での凱旋お披露目という形で締めさせていただきました。

 

 トムくんやハンスさんなど、村の皆から熱い眼差しと声援をもらったのは恥ずかしくも誇らしい思い出です。

 

 それからの私はメイドとしてゼッツリー様にお仕えしています。

 

「どうぞ。熱いのでお気をつけて」

「……ありがとう」

 

 今はお客人のお世話をしているところです。

 心を落ち着かかせる効果のある特性のお茶を差し出せば、相手はおずおずとカップに手を伸ばし口につけます。

 

 美しい金髪にまるで彫刻みたいな均整の取れた顔の少女。その耳は横に長くとがっています。

 伝承でしか知らなかったエルフ種族の少女です。外見は十代ですが、長命種と聞きますのでひょっとしたら実年齢は私よりもずっと上なのかもです。

 

 そんな少女ですが、沸かしたての甘いお茶を口にしながらも今は身を縮こませてその表情は暗く沈んでいます。

 私にも覚えがある、自分の行く末に絶望して不安に身がこわばった状態なのです。

 

 実は彼女も私と同じ生贄の身になってしまったのです。

 好奇心からかくれ里を出てきたところでスライムに服を溶かされ、クリスティン様に保護されたところまで同じ。

 

「さあ、行きましょう」

 

 私はかつての自分がそうしてもらったように、少女の身を清めて真新しい服をあてがい、ゼッツリー様の前まで案内します。

 

 

「ゼッツリー陛下、この哀れなエルフをどうかお助けください」

 謁見室にてエルフの少女が跪き、ゼッツリー陛下に助けを請いました。

 

 そう、ゼッツリー様は今や侯爵ではなくエロール王国の国王にして第三王子であらせられるのです。

 

 私の後に生贄になった少女たちの末路に、第三王子からの乱暴を知ったゼッツリー様は王位簒奪を決意。豊富な資金力と一国の軍隊に匹敵する自身の魔法力を武器に立ち上がると、瞬く間に国民と心ある貴族たちの支持を勝ち取り、元より圧政で悪評の高かった王族を追い落としたのです。

 

「こちらに来たまえ」

 

 ゼッツリー様は最初からこうであったとばかりの、国の最高権力者にふさわしき堂々たる態度でエルフの少女を招きよせると、彼女の頭に触れました。

 

「これは……」

 ギャラリーをオープンさせて彼女に待ち受ける運命を視ると、ゼッツリー様が難しい顔をされました。

 

「どうしましたか、ゼッツリー陛下」

 

 エロール王国騎士団長となったクリスティン様が尋ねます。

 

「帝国兵だな。オルガス帝国軍が彼女の里を焼きにくるというのだ」

 

 なんということでしょう。

 

 謁見室に立つ全員が息をのみました。

 

 オルガス帝国。

 このエロール王国と領地を接する、国力で言えばこの国の十倍以上もあろうという強大な帝国。

 

 現在のオルガス帝国の皇帝は残忍で強欲な性格で知られています。武力を振りかざして周辺諸国を呑み込み、重税を課すことで本国だけが富み栄え、その力でもってさらに外へと手を伸ばす恐るべき覇権国家。

 

 ゼッツリー様が建て直さねば、この王国だって狙われていたことでしょう。

 

 このエルフの少女はそんな帝国の兵に慰み物にされる末路だというのです。しかも今回は一族ごと。

 

「そんな……私たちはもう終わってしまうというの……」

 

 エルフの少女が顔を青ざめさせています。

 俗世とは離れた地でも帝国の強大さは知られているのでしょう。

 

 ですがこの部屋に立つ者でそんな彼女に慰めの声をかける者はいません。

 

 なぜなら私たちは知っているのですから。

 

 レイテという田舎の村娘が

 高潔なる騎士クリスティン様が

 民草を愛したエロール王国の末王女様が

 異国から武者修行に来た侍という剣士が

 無実の婚約破棄で実家ごと没落した令嬢が

 教団の不正を告発して異端認定されていた聖女様が

 人間に興味を持ち魔界からやってきた吸血鬼の幼女が

 

 この方は決して哀れな少女を見捨てることはないと。必ずやその手で救ってくれるのだと。理解して(わかって)いるのです。

 

「いいや、そのようなことはさせない」

 

 はたしてゼッツリー様が放たれた力強いお言葉。

 

 その言葉に、私たち彼を愛する女性たちが玉座の周りに集まります。

 重厚な椅子を囲み、背もたれを、ゼッツリー様の肩を、腕を、足を。そっと触れてしなだれかかります。

 これこそがゼッツリー様の偉大さをより輝かせる姿勢なのです。

 

「はっ」

 とエルフの少女が放たれたオーラに目をみはります。

 

 そして私たちのゼッツリー様は不敵な笑みを浮かべ、拳を掲げて宣言しました。

 

「ならば獲るぞ、帝国を。オルガス皇帝の首を! そして俺が――――帝国兵になる!」

 

 ゼッツリー様が宣言しました。帝国を自身の手で落とすと。エルフの少女に手を差し出すのは自分なのだと。

 

 エルフの少女が安堵と、信じられないという思いとで混乱した表情で問いました。

 

「なぜ……なぜ、あなたは私たちにそこまでしてくれるのですか?」

 

「当然だろう。なぜなら――――可哀想なのは抜けないからだ!」

 

 

 

『可哀想なのは抜けない』

 それは後に全ての民のフレンドと称されることになるゼッツリー様の慈愛を表すお言葉です。

 

 これは哀れな弱者を抜くことはない。つまり決して排除したりはしない、見捨てはしないという徳治の思想。

 ゼッツリー様はこの思想の元にオルガス帝国を下し、多くの圧政にあえぐ国を解放し、エルフや獣人や妖精族など幾多の民族種族を守護することになります。

 やがて大陸を統一し、魔界との和平協定を結び、世界平和を成し遂げ歴史にその名を刻むことになるでしょう。

 

 私が語ったのは、そんなゼッツリー様と幾多の女たちとで織りなしたギャラリー、その1ページでございます。

 

 

   【TRUE END】ハーレムは永遠に

 

  解放条件

 ※全ヒロインCG回収率100%

 ※全ヒロイン♡10獲得

 ※全ヒロイン生存




(作者へのお願い)

 本作を最後まで読み、応援してくださった読者の皆さま。ありがとうございます。

 web小説サイトで人気を博す悪徳貴族に転生してしまう作品の数々を読んで、自分も書いてみたくなって誕生した本作。
 生憎と手持ちのタイトルで悪徳貴族が出てくるタイプって、大抵ヒロインがその前にスライムとかオークに捕まっていたためにこんな作品になってしまいました。

 少しでもお楽しみいただけたらよいのですが。

 また、本作の元ネタとなったR18のゲームや漫画やCG集やアニメを作られた作者の方々にも惜しみない感謝を。
 本作を構成するための様々なインスピレーションを与えてくださっただけではなく、そもそもがそれら作品が無ければ、私自身がつらい社畜生活を生き抜くことはできなかったでしょう。

 果たせぬノルマ、天引きされる様々な税金、衰える肉体。見通せぬ未来に暗鬱とする心を、それでもベッドの中でスマホに映し出されるヒロインたちの笑顔と躍動する肉体によって癒やされていたのです。
 作者の皆さまの生み出した世界によって私の魂は救われてきたのです。


 と、ここまで言っておいてなんですが、実は私はヒロインがオークや悪徳貴族に捕まるような作品は苦手です。イラストレーターさんの絵に惹かれて口では嫌だといいながらも手が出てしまうだけで。せめてもの抵抗として、ゲームなんかはストーリーをちゃんと追うと可哀想でつらいので有志の配布セーブデータで回収率100%にしたギャラリーを直接拝見しています。

 そういう人間だからこそ悪徳貴族に転生してヒロインを守るんだとういうコンセプトに待ってましたと飛びついたわけで。

 本作をお読みくださった読者の方もそういう志向なのではないかと思います。
 つまりweb小説で人気の数々の悪徳貴族転生ものの読者数に加え、本作の僅かながらの読者数、それだけの人数がきっと可哀想なのは可哀想だと、ヒロインは救われて欲しいと願っているのでしょう。

 しかし近年、特に同人業界ではヒロインが可哀想な凌辱、NTR作品が蔓延しております。いえ、ちゃんとタグ付けして棲み分けはされてるわけですから文句は付けられませんが。それでもあのおねショタ展開に定評のある人気サークルさんの新作はNTRもの!? みたいな悲しみが続出しているのです。

 でも、もうそれは仕方ない。貧弱な資金力の僕では凌辱・NTR作品のファンたちの豪快でごん太な資金力、それでいてサークルさんに熱いコメントや応援を欠かさないという細やかさには勝てないのです。R18作品の作者たちがそちらのジャンルに力を入れるのも分からされてしまいます。
 
 それでも可哀想なのは苦手派も決してマイナー派閥ではないはずです。可哀想、可愛そうじゃないの二択だから少し優勢な可哀想ファンに向けるR18作品数が増えてしまうだけで。

 そこで提唱したいのが『実は可哀想じゃなかった差分』による両派閥の両取り作戦です。
 ストーリーとか絵は今までどおり可哀想なままでいいので、最後にそういう(主人公の)妄想でした、そういう同人誌でした、そういう幻影魔法でした、そういう恋人同士のプレイでした、というオチを付けてほしいのです。

 よく同人作品で新作が作られると、旧作を合本版にしたり廉価版をリリースすることがあります。その際におまけとして数枚のイベントCGやイラストやアフターストーリーの漫画が追加されるのは定番となっています。
 そのていで上記差分を加えていただきたいのです。1ページの僕くんとヒロインが談笑するイラストを、あるいは『この同人誌で一儲けやで』と皮算用してヒロインに叩かれる大阪弁の細目銭ゲバお姉さん(誰?)を添えていただきたい。
 いえ、もう手間をかけたくなければそういうオチでしたという一文を加えていただくだけでも。
 神がそう定めたのなら、私はそうなのだと心の安寧を手に入れることができるのです。心置きなく可哀想な作品を享受することができるのです。

 理想は最初からそういう態勢になっていることですが、多分それだと凌辱・NTRジャンルのファンが反発するでしょうから、旧作セールの販促活動の一環くらいの、そういう扱いが両者の落とし所、Win-Win関係じゃないかなと。

 R18作品の作者様におかれましては、どうかご一考の程をよろしくお願いいたします。私と、きっとweb小説サイトの悪徳貴族ものを愛する多くの読者がそれを待ち望んでいるのです。
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