ずん子や敵周りの掘り下げ回です。唐突に現れる新情報の数々。
「ずん子さん!?というか何故貴方があの怪人のことを知ってるんですか!?」
ゆかりはひどく驚いてこう言った。
「...彼は本来、私が追っていた人物です。しかし、、、私が彼を見つけるよりも早く貴女が倒してしまったわけですが...」
「ずん子さんが...?一体何故...?」
「話せば長くなりますが...。
彼を倒した貴女になら、打ち明けてもいいのかもしれません...
と、その前に。怪我の手当てをしませんと…」
そう言うと、ずん子はゆかりの手を取る。すると、ずん子の体から緑色の光が溢れ出し、ゆかりへと伝わっていった。
「これは...優しい光ですね...まるで春の穏やかな日差しのような...」
ゆかりがふと自身の腕を見ると、先程の戦いでついた傷が跡形もなく消え去っていた。
「これでもう大丈夫ですね!それでは、野次馬が集まってくる前に、場所を移しましょうか」
2人は再び東北家へと向かった。つい数時間前、ゆかりとマキがずん子特製ずんだ餅をしこたま振舞われた場所である。
「ここなら誰かに会話を聞かれることもないでしょう。さて、どこから話したものか..」
「色々と聞きたいことはあるのですが...さっき私の傷を治したアレは...?
ずん子さんの異能力ということでいいのですかね...?」
「そうなりますね。自分で言うのもアレですけど、攻撃にも回復にも使えるのでかなり強い能力だと思っています。
それともう1つ...」
ずん子は右手を大きく掲げる。次の瞬間、彼女の手には大きな枝豆を模した形の弓が握られていた。
「出て来てずんだもん!」
ずん子がそう声をかけると同時に弓が輝き出し、光の玉となってずん子の手を離れる。玉の形は徐々に人のように変わっていき、その数秒後、弾けた。。玉の中からは小学校中学年くらいの背で、中性的な見た目の子供が現れた。
「ふぁーあ...こんな時間にどうしたのだずん子...?
この女誰なのだ!?まさか敵!?」
「違うよずんだもん、彼女は私のクラスメート」
「え、、、いきなり弓が、人間になって....?え、、、?」
ゆかりは突然の超常現象に理解が追いつかなかった。
「驚かせてしまったみたいですね、この子はずんだもん、東北家に代々伝わる弓、“ずんだアロー”に宿る付喪神的な存在です。いつもはもっと小さい姿で、私の服の中に隠れているのだけれど、こうして人間の姿になることもできるのです。」
「よろしくなのだ!」
「そして、この子もまた異能力を使えるの。ずんだもん!」
「のだ!」
ずんだもんは再び弓へ戻り、ずん子の手に。
「ずんだ...アロー!!」
ずん子は腰に下げた矢筒から矢を取り出すと、それをずんだもんの変化した弓へ番え、壁に設置された的を射った!
その時、不思議なことが起こった。
今の今までただの的であったはずの板が、ずん子によって放たれた矢に射られた瞬間、緑色に輝きだし、その姿が変化し出したのだ。
光が収まると、的があった壁の下に、見覚えのある緑色の物体が落ちていた。
「これは...ずんだ餅..?」
「その通りです。ずんだもんの能力は“ずんだアロー”、自身が変化した弓から射った矢に当たった物を、ずんだ餅にしてしまう能力です。」
「何ですかそのチート能力!?」
弓から人間の姿に戻ったずんだもんが言う。
「ただ、そのためのエネルギーはボクだけでは用意しきれないから、ずん子からエネルギーをもらう必要があるのだ。」
「私の能力、仮にずんだパワーと呼びましょうか。この能力は、さっきゆかりさんにしたように、私の持つずんだパワーを用いて触れた相手の傷を再生したり、植物を活性化させたり、ずんだアローのエネルギーを賄うことができたりするんです。」
「へぇ...ずん子さんの能力は便利ですね...
でも、なんでずんだパワーなんですか?」
「それは、この能力を使うために、ずんだの摂取が必要だからなんです。ずんだがなければ、私は能力を使うことが出来なくなってしまいます。」
「それはなんとも難儀な...毎日ずんだを食べなければいけないのは流石に厳しくn....」
「全く苦に感じたことはないですね。飽きてきても枝豆の産地を変えれば全然違う味と食感になるので」
「ええ...私には全く理解ができない....」
ゆかりはずん子の味覚に若干の恐怖を覚えつつも、本題を切り出すことにした。
「それはそうと、ずん子さんはなぜあの怪人を追っていたんですか?」
そうゆかりが問うと、ずん子は暗い表情でこう答えた。
「妹を...探しているんです。」
「妹...?」
「私の妹、東北きりたんは、1ヶ月ほど前、友人と共にこの遠句市で、行方不明になったんです。」
「1ヶ月ほど前というと、ちょうど大人気ジュニア・アイドルの音街ウナの失踪の時期と同じですね。同時に彼女の友人も行方が分からなくなったとニュースで耳にはしていましたが...まさか...?」
「そうです。きりたんとウナちゃんは、とても仲の良い親友でした。行方不明になった日も、二人でこの街に遊びにきていたそうです。そして...」
「二人とも帰ってはこなかった、と」
「はい...私と私の姉は、ウナちゃんの関係者の方々と協力し、2人の行方を追いました。私の姉も異能力者で、物に宿る付喪神を呼び出し、会話をすることができるのです。ずんだもんはこの能力によって生まれました。
この能力も活かして調査しました。
結果、この街で”獅子の爪と鬣、鷲のような大きな翼を持ち、蛇を従えた異形の者“に2人らしき人が連れ去られていくのを見た、という情報を得ることが出来たんです。」
「異形の者...」
「はい。人のようであって、人ならざるもの...。
初めは妖怪や妖精を疑っていましたが、調査を進めると、
・改造人間が実在するということ、
・彼らはこの街の大学病院で手術を受けて生まれ、その数は101人
・彼らの中には世界征服を目論み、悪事に手を染めている者もおり、それらは組織を作って連帯して暗躍しているものが一定数いる。&
・初めに改造人間となったのは当時5歳の少女で、兎のDNAを得ていること
・101番目に改造を受けた人間は、「キマイラ」の力を再現するべく、3種類の動物のDNAを埋め込ませた。彼はどの改造人間よりも強く、世界征服を目論む改造人間組織のトップとなった
これらのことがわかったんです。
この情報から、私は妹たちをさらったのはこの改造人間であると確信し、彼とその組織を追うべく、この街に来たというわけです。」
「そういえばあの蛇怪人も世界征服云々言っていたような...」
「彼も組織の改造人間の一人でした。もっとも、組織内での地位はあまり高くなかったようですが」
「つまり、組織の中枢の改造人間は、アイツよりさらに強いということですか?」
「はい。私だけの力ではきりたんたちを救うことはできないでしょう。
そこで、あの蛇怪人を倒したゆかりさんに、お願いしたいことがあるんです。
私と共に、組織を追い、きりたんたちを助けるのを手伝っていただけませんか?
最も、無理なお願いであることは承知の上です。断っていただいても構いません。」
「やります。組織の追跡ときりたんちゃんたちの救出、手伝います。」
ゆかりは悩むことなく即答した。
「私はあの蛇怪人曰く、先程の話で出た兎の改造人間であるようです。
この兎の力のせいで色々な苦労もしましたし、いじめられもしました。力がなければ穏やかに過ごせたのだろうと思ったことも何度もありました。
しかし、先ほどの戦いで気付いたのです。この力は、大切なものを守るための力だということに。ずん子さんを一人で危険な目に合わせるわけにはいきません。私にも、きりたんちゃんたちの救出、手伝わせてください。」
(まぁ本当は音街ウナを救出することで得られるであろうお礼が目当てなんですけどね)
そういうとゆかりはずん子へ手を差し伸べる。
「ゆかりさん...!
ありがとうございます!」
ずん子がその手を掴む。
こうして、2人は東北きりたん・音街ウナの救出のため、協力することになったのである。