頑張ります。
「よーし、全員揃ったなー。1年はそっちな」
誠凛高校の清潔な体育館内に、2年生の声が響き渡る。バスケ部全員が、新入生も含めて招集をかけられていた。
1年の1人が、隣で立っていた生徒にこそこそと声を掛ける。
「なあ、あのマネージャー可愛くねー?」
「2年だろ?」
けど確かに、と話しかけられた青年もうなずいた。
「もうちょい色気があれば……」
「だアホー、違うよ!」
後ろから両腕を突き出すように、1年2人の頭にバキキッとパンチを入れた日向は、呆れたように溜息をついた。すると、丁度その時話題の中心になっていたリコが、堂々とした態度で新入部員たちの正面へと進み出る。
「男子バスケ部
『……ええー!!?』
その意外過ぎる自己紹介に、新入生たちは揃って目を剝いた。何人かが「あっちじゃねーの!?」と後ろに立っていた老人を指さすも、「ありゃ顧問の武田センセだ。見てるダケ」とあっさり言葉を追加される。更に驚いた彼らの様子を見て、リコは愉快そうに笑う。
ちなみに動揺する1年生の後ろでは、真白がその様子を観察しながらぽつりと呟きを漏らしていた。
「なあ日向、何で無風の体育館でカントクの制服とホイッスルがはためいてるのかな?」
「俺に聞くな」
「ハッ、はためいてる旗甚だはた迷惑……!キタコレ!」
「ブフォォッ」
「何で笑ってんだお前も!!」
そんな会話をこそこそと行っていると、どうやらリコが新入り達のフィジカルを見極めることに決めたらしい。何の躊躇いもなく「シャツを脱げ!!」と男らしく言い切って見せた。
「…………何だコレ……」
先輩、それも監督の命令に逆らえるはずもなく、1年生たちは仕方なく恥ずかしさを堪えて上着を脱いでいく。彼らが戸惑いやら羞恥やらで顔を引きつらせている間にも、半裸になるよう指示した本人は実に冷静に彼らの体を観察していた。
「……カントクはああいう無神経なこと平気でするからモテないんだよなあ。美人なのに勿体無い」
「シーッ!真白、お前それ聞こえたら殺されるぞ馬鹿!」
「瀕死状態には慣れてるよ」
「何その悲しい台詞!?」
「……聞こえてるんだけど?」
ぼそぼそと声を抑えて喋っていたにも関わらず、新入生のフィジカルに指摘をし続けていたはずのリコがこちらを般若のような形相で睨んでいた。
「今日の練習、伊月君は基礎練メニュー3倍、真白君は外周5を追加ね。勿論全力で走ること」
「え、俺も?!!」
完全にとばっちりを受けた伊月が、ショックを受けたように目を見開く。ちなみにその隣では、真白がこの世の終わりを宣告されたような表情をしていた。青いのを通り越して、名前の通り真っ白な顔色になっている。
「……ん?基礎練3倍はともかく、外周5って大したペナルティじゃなくないか?」
「だよなあ。何であんな絶望的な顔してるんだろ」
真白の虚弱体質を知らない新入生たちは、そろって首を傾げる。が、2年生たちの方はそうはいかなかった。
「そんな、カントク!真白に5周も外なんか走らせたら死んじまうよ!!」
「考え直してやってくれ!こいつもちょっと悪ふざけが過ぎただけなんだ!」
「真白に外周5だなんて、いくら何でも荷が重すぎるよ!なあ!」
「こいつは俺たちに必要な存在なんだよ!俺らからも叱っておくから、どうか今回のところは見逃してやっちゃくれねえか?!!」
「え、何あのドラマ」
「いや、俺に聞かれても……」
唐突に冷や汗を流してリコに懇願し始めた先輩たちの様子を見て、1年生は先程とはまた違った意味で顔をひきつらせた。とばっちりを食らったはずの伊月までもが説得に参加している。結局、真白が後日「僕は女の人を見る目がない馬鹿です」と千回書き取りをさせられるということで決着がついた。
その一連のやり取りを目の前で繰り広げられた1年達のドン引き具合に気付き、リコは慌てて彼らの方に向き直る。そこで、残っていた最後の1人――火神大我の体を観察し始めた。
そこで、驚愕に思わず目を瞠る。
(――――――なっ、何コレ!?すべての数値がズバ抜けてる……。こんなの高1男子の数値じゃない!!)
パワーにスピード、柔軟性。あらゆる面において最高値に近く、更に伸びしろすら見えない。リコが初めて生で目撃する、まさに天賦の才能と呼ぶにふさわしい身体能力だった。その後ろでは、「うわあムキムキだーいいなーいいなー」「真白はそもそもあんまり鍛えること自体無理できないもんな」「でもマッチョの真白とか見たくないよ俺」「ええー」と何だか小学生の休み時間のような空気が流れていたが、幸か不幸かリコの耳にそのやり取りは届いていなかった。火神の体に見とれたまま、涎を垂らしていたのである。
「……カントク!いつまでボーッとしてんだよ!」
「……はっ!ごめんっ、で、えっと……」
日向の声で漸く我に帰ったリコは、次にやることを確認しようとする。が、「全員視たっしょ。
「…………黒子君てこの中いる?」
「あ!そうだ帝光中の……」
「え!?帝光ってあの帝光!?」
日向がすぐさま1年に声を掛けるが、それらしき人物が名乗り出る様子はない。少し考え込んでから、リコは号令をかけた。
「……今日は休みみたいね。いーよ、じゃあ練習始めよう!」
「え、カントク何さっそく新人いびりしてるの。黒子可哀想」
「は?真白君何言って――――」
「あの……スミマセン」
遠慮がちなテノールが、リコの耳に届く。彼女の
「黒子はボクです」
早く海常戦書きたいけど、主人公をどうやって試合に組み込もうかな……。難しそうだけど、楽しみでもあります。