更新疎かになってしまっていて、すみません。
「――――きゃあああ!?」
誰から見ても突然現れたように見える黒子に、リコはぎょっと目を見開いて叫んだ。その声に振り返った他の部員たちも、そこでようやく黒子に気付き驚愕する。
「うわぁ何? ……うおっ!?ダレ?」
「いつからいたの!?」
「最初からいました」
「ウソォ!?」
それらの反応にも慣れたように言葉を返す黒子を見て、リコはダラダラと冷や汗をかいた。
(目の前にいて気付かなかった……!? ……え?今黒子って言った!?ええ!?)
ということは、彼が「キセキの世代」と同じバスケ部にいた選手。の、筈なのだが。
(――――てゆーか……カゲ薄っすっっ!!)
「……ん?っつーか真白、コイツに気付いてたんなら言えよ!ビックリしただろーが!!」
「えぇ?いや、てっきりカントクも日向も冗談言ってるのかと思ってさ。入部早々新人いびりでもかまされてるのかと思って、黒子君に同情しちゃったよ」
「んな訳あるかっ!」
リコに容赦ない突っ込みを食らっている真白を、黒子が無表情ながらも何か言いたげな様子で見つめる。その一方では、他の部員たちの間にも動揺が広がっていた。
「……え?じゃあつまりコイツが!?「キセキの世代」の!?」
「まさかレギュラーじゃ……」
「それはねーだろ。ねえ黒子君」
日向がおかしそうに笑いながら、黒子の方を振り返る。が、聞かれた本人の返答は全員の予想を裏切るものだった。
「……?試合には出てましたけど……」
「だよなー……うん?」
「え? ……え!?」
「ええええ――――――!?」
それを聞いた部員全員が、(信じらんねぇ~!!!)と目を剝く。リコも慌てた様子で、彼に再びシャツを脱ぐよう指示した。
そんな黒子の様子を見ていた新入生、火神大我も、例外なく彼の意外性に度肝を抜かれた1人である。何なんだアイツは、と思わず顔を引き攣らせた。そしてその後、先程の会話に耳慣れないワードがあったことを思い出す。取り敢えずはそちらの疑問を解決しようと思い立った火神は、隣でボールを抱えていた1年生に話しかけた。
「オイ、ちょっと聞きたいんだけど……帝光中とか、キセキのなんたらとか」
「――――お疲れ様でしたー!」
新入生にとっては高校生活初日の部活が終了し、バスケ部部員たちが体育館の外に出た頃には、外も真っ暗になっていた。春先とはいえまだ夜になれば肌寒さの残る時期であり、普段から遅くまで練習を続けるバスケ部部員にすれば、ごく当たり前の光景である。
他の部員たちと別れの挨拶を交わし、外の靴箱に並べていた靴を取り出して履いている真白に、黒子がおずおずと近寄ってきた。
「あの、真白先輩……でしたよね?お疲れ様でした」
「あれ、黒子君だ。お疲れ様ー」
「ぶっ!?」
あれ、という割には大して驚いた様子もなく、平静な態度であいさつを返す真白。しかし他の人間はそうはいかず、突然現れた(ように見える)黒子に、近くにいた日向などは驚愕のあまり噴き出してしまった。それを見た真白は、うわーと小さく声を上げる。
「順ちゃんばっちい」
「順ちゃん言うな!つーかまたかよ!?」
「黒子は頼むから気配出して!マジで!」
「……不可抗力です」
ぎょっとしながらそう声を掛ける先輩たちに、黒子は慣れているのか淡々と言葉を返す。それにブーイングを上げる部員たちを尻目に、真白は彼に話しかけた。
「あ、ひょっとして俺に何か用だった?」
「……はい。帰りながらでもいいですか?」
「勿論。あ、黒子君帰りはどっち方向?」
「ええと、向こうです」
そう言って彼が指差したのは、偶然にも真白の家のある場所と同じ方向だった。これなら帰り道で話を聞くこともできるだろう。そういえば、この近くにはマジバーガーの店舗もある。良かったらついでにそこも案内しようか?と尋ねると、表情は変わらないものの、水色の両目をきらきらさせて「是非お願いします」と頷かれた。そんなにファーストフードが好きだったのだろうか、と意外に思いながらも、真白は彼と共に歩き出した。
「――実は、真白先輩に聞きたいことがあったんです」
「ん?えーっと、俺お世辞にもバスケ上手いとは言えないから、アドバイスとかなら日向や伊月に聞いた方がいいと思うけど……そういう感じじゃなさそうだね」
「……はい。初めて会ったときにも思ったんですけど、」
――――――真白先輩は、どうして僕が見えるんですか?
「………………えええー……」
「……何ですか、そのリアクション」
「いや……だってさ、『そんなこと聞かれても』としか言い様がないっていうか。黒子君はお化けかなんかなの?」
「いえ、違います」
冗談めかして言った質問を真顔で否定され、「そ、そっか」と思わずどもる真白。そんな彼の様子に気付かず、黒子は何やら俯いて考え込んだ後、ふと再び真白の方を見て口を開いた。
「今日の部活で気付かれたと思いますけど、僕は昔から影が薄いんです。人の目の前に立っていても気付かれないこともしばしばあります」
「お、おお……」
切ない事実を突然吐露した黒子に、真白はちょっぴり反応に困りながら目線を泳がす。キャラの濃い誠凛バスケ部の中でも「変人」と称される彼が振り回される様子は中々貴重な光景であり、この場に2年生がいれば間違いなく黒子に向かって親指を立てていたことであろう。困惑した真白の心境を知ってか知らずか、黒子は僅かに首を傾げながら言葉を続けた。
「なのに、真白先輩は最初から僕の存在に気が付いていました。まるで僕のように存在感の薄い人間じゃなく、普通の人がそこに立ってるみたいに。それが気になったんです」
「うーん……でもさ、『影が薄い』って、ちょいちょい他の人から忘れられたりすることだろ? 流石に近くに立ってて気が付かないっていうのはないんじゃない?」
色々と世界観ぶち壊しな正論を吐く真白だったが、よく考えればチームメイト達は現に黒子の存在そのものに気が付いていなかったことを思い出した。黒子も納得が行かなかったのか、僅かに眉を寄せている。真白は試しに、隣を歩く彼をじっと見つめてみた。
「そういえば、じっと見てたら見失いそうになる…………かも?」
「………………逆じゃないんですか?」
「……だよねえ」
本格的に何やら考え込んでいる様子の黒子につられてんー、と思い悩んでいるうちに、真白は1つの仮説を思いついた。
「あーっと……もしかしたら、俺のバスケのプレイスタイルが原因かもしれない」
「先輩のプレイスタイル……ですか?」
突然バスケの話題が出てきたことで、疑問符を飛ばしながら首を傾げる黒子。聞き返された真白は、うん、と微笑みながら頷いた。そして自分の片耳を、軽く指でトントンとつついてみせる。
「俺、人より耳がいいらしいんだ。俺ってあんまり反射神経とか良くないからさ、咄嗟のときは相手の動きを一々目で追って確認するより、耳に飛び込んできた音で判断する方が速いのね。いくら目で認識されにくくても、動作音は消せないだろ?」
「……成程、そういうことだったんですね」
「さっきみたいに完全に視界に頼ってじっと見つめると、逆に気付きにくくなるみたいだな」
漸く腑に落ちたように、黒子も頷いた。しかし引っかかることを思い出したのか「あ」と声を上げ、再び疑問を口にする。
「でも、僕が黙って立っている時にも、先輩は気が付かれてましたよね?」
「俺、夜は同じ部屋に誰かが寝てると、呼吸音とか衣擦れとかが気になって眠れなくなるぐらいだから。不眠症でもないのに、寝るときは耳栓ないと駄目なんだよねえ」
「……それは凄いですね……」
目を見開いて、目の前の真白の顔を凝視する黒子。「いやん、そんなに見つめられると穴が空いちゃうぞ」「空けばいいと思います」「あれっ黒子君が思ってたのと違う……」どこかシリアスだった空気が一気に霧散し下らない会話を始めていると、件のマジバーガーが見えてきた。
「取り敢えず、あそこに入って何かお腹に入れていこうか」
主人公のバスケのスタイルの全貌は、VS海常の辺りぐらいで明らかにしようかと思ってます。