いい加減海常戦書きたい……でもバスケ全く詳しくないのでその辺の描写とかできる気がしない。どうしよう。
取り敢えず、Wiki先生に最低限のルールぐらいは御教授いただこうかと思います。
「ただいまー」
マジバを出て暫くしてから新入生2人と別れた真白は、ほどなくして自宅へと到着した。本当はストバスコートに寄ってから帰るらしい火神と黒子に最後まで付き合いたかったのだが、彼の場合あまり遅くなりすぎると、寝不足が洒落にならない体調不良につながることもある。医者やカントクであるリコにもその辺りの体調管理は徹底するように言いつけられているため、仕方なく付き添いは諦めて帰宅するに至った。
玄関の鍵を開けてくれた母親に礼を言い、手を洗った後は二階にある自分の部屋へと直行する。通学鞄やスポーツバッグを床に置き、部活などの連絡が来ていないかと携帯の画面を見ると、そこにはつい数分前にあったらしいリコからの着信が残っていた。
「んん?夜にカントクからの電話って珍しいなあ。いつもなら『そんなことしてる暇あるなら睡眠とりなさい!』とかって言われそうだけど」
首を傾げながらも、その履歴を呼び出して発信ボタンを押す。何コールか聞こえた後、『もしもし、真白君?』と聞きなれた声が聞こえてきた。
「こんばんは、カントク。さっきぶりだねー」
『こんばんは。さっきはこんな時間に電話しちゃってごめんなさいね』
「こんな時間、って言ってもまだ8時だよ。まだ夜御飯も食べてなかったし、全然平気」
『そう?ならいいんだけど……』
すまなそうに言葉を切ったカントクだが、いくら何でも過保護ではなかろうか。今時、小学生でももっと夜更かしするのが当たり前の時代である。しかし彼女の心配もあながち完全な的外れという訳ではないので、真白は苦笑しながら「それで、何か用があったんじゃないの?」と用件の方を促した。
『あ、そうそう。今日入ってきた1年生のことなんだけど』
「あー、黒子君のこと?それとも火神君?」
『いや、黒子君で合ってるわよ。よく分かったわね』
「そりゃまあ、今日1日であれだけ騒がれてればね。どう?カントクから見て」
『そのことなのよ。――彼は、能力値が低すぎる。パワーにスピード、柔軟性、いずれにおいても平均以下。しかもそれらが既にほぼ限界値』
彼には悪いけど、とても強豪校でレギュラーをとれる資質じゃないわ。そう呟くリコの声には、苦々しさや困惑が滲んでいた。今までに見たこともないようなプレイヤーを目にして、理解不能という状態になっているのだろう。
体の弱い真白は選手以外に半分マネージャーのような役割も兼ねており、必然的にリコと部活のことに関して相談する機会も多い。引っ張るタイプのリコと、適度に協調性のある真白は不思議とうまく歯車が噛みあうようで、こうして何かに行き詰ったり困ったことがあったりすると、相手に話を聞くこともしばしばあるのだ。
『真白君は、どう思う?』
「そうだねえ……何て言うか、ただの弱っちい子には見えなかったけど」
『……実力を隠してるってこと?』
「いや、カントクが『視た』んならその数値に間違いはないだろうさ。ただ、もっとこう、別の何かを持ってるような気がするんだよねー。パワーでもスピードでも柔軟性でもない、何か別の武器をさ」
『成程ね、帝光中でレギュラー張れてたのには理由があるってことか。確かにそうかも』
ブツブツと何やら電話の向こうで独り言を呟きだしたリコに、思わず苦笑が漏れる。彼女もまた、選手たちに負けず劣らずのバスケ馬鹿なのだ。
「――まあ、いずれにしろこれからの練習で分かると思うよ。何なら、今度ミニゲームでもやってみるとかさ。新入生対俺らで」
『ああ、ルーキーたちの実力も見たいし丁度いいかも。考えてみるわ、ありがとね』
「どういたしまして。もう大丈夫?」
『ええ、お陰様でちょっとは考えがまとまりそうよ。助かったわ』
「それなら良かった。じゃあ、お休み」
『ん、お休みなさい』
和やかに会話を終え、携帯の電源ボタンを押す。さて、我らが監督はどんなことを企んでくれるのやら。
――――翌日。
その日は学校の授業が終了し、放課後の練習時間になっても雨が降り続いていた。室内競技であってもトレーニングにはロードワークも含まれている為、天候の影響を受けたのはバスケ部も例外ではない。カントクであるリコは仕方なく、通常のアップや基礎練などだけを進めるよう部員に指示する。トレーニングに取りかかるチームメイト達を見ながら、主将の日向はリコに相談を持ち掛けた。
「ロード削った分練習時間余るな……。どうする?カントク」
彼女もそのことについて悩んでいたのか、ふーむ、と手を顎に当てて考え込んだ。そこで、昨夜真白とした会話を思い出す。彼の方を見やれば『心得た』とばかりに笑って頷き、倉庫の方へ走って行った。つくづく察しのいい友人である。
――1年生の実力も見たかったし……。
「ちょーどいいかもね」
「?」
「――――5対5のミニゲームやろう! 1年対2年で」
それを聞いた1年生たちの間に、動揺が走った。2年生たちは落ち着いたもので軽いストレッチなどを開始しているが、初心者すらいる新入生チームはそうはいかない。
「センパイと試合って……!」
「覚えてるか?入部説明の時言ってた去年の成績……」
――――去年、1年だけで決勝リーグまで行ってるって……!!
どこからか聞こえてきた会話に、1年達は思わずゴクリと喉を鳴らす。「マジで……!?」「フツーじゃねえぞソレ……」と顔を引き攣らせたまま冷や汗をかく彼らを見て、リコはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「えー、ビブスー。ビブスはいらんかねー」
台無しである。
その瞬間、ざわざわと緊張を漂わせていた空気が一秒で霧散した。声の発生源を見れば、倉庫からビブスをとってきたらしい真白が籠を抱えてニコニコしながら、部員たちの方へ駆け寄っていくところだった。
「はい、どうぞー」
「あ、ありがとうございます……?」
「えっと、先輩はマネージャー……なんですか?」
「うーん、マネージャー兼選手って感じかな。ちょっと体が弱くてね。あっちょっと待って、そのビブスこないだコガちゃんがコーンスープ溢した奴……」
「ちょ、それ内緒にしててって言ったじゃん真白の馬鹿!」
1年生が戸惑うばかりか、小金井までもが会話に参加し始めた。くすくすとした笑いすら起こり始めたが、「何をしとるかアンタは――ッ!!」と何処からか取り出したハリセンでリコが真白を引っぱたくと、すぐさま再び緊張が広がった。先程とは若干別の意味も込められているが。
「え、何?!これからミニゲームじゃなかったの?」
「そうだけど!アンタが空気読まずに緊張感削ぐようなことしてるからでしょうが!!」
「えええええええ」
勢いよくシバかれた真白は、理不尽だと言わんばかりに声を上げる。ぶっちゃけリコも半分くらいノリで突っ込んだようなものなので彼の不満もあながち間違いではないのだが、それを許さないだけの迫力がリコにはあった。安定の力関係である。
「っていうか小金井君も!何備品にコーンスープとか溢してんの?!」
「こ、この間寒かったからつい練習中に自販機で買って、そのまま飲んでたら手が滑っちゃって……ゴメンナサイ」
「落ち着いてよカントク。ちょっと染みが残っちゃったけどそんなに目立たないし、予備もあるからいいジャマイカ。どうどう」
「やかましいわ!!」
とうとう本日2回目のハリセンを食らった真白は、そのまま体育館の床に突っ伏した。それを慌てて面倒見のいい伊月が助け起こす。「ううう、俺には俊さんだけだよ……」「真白……」と怪しげな小芝居を繰り広げていると、リコがハリセンを構えだしたため、慌てて2人とも立ち上がった。
後輩が2年を相手にすることに緊張している、ということには気付いていたらしく、真白は1年生の方を向いてにへらと笑う。
「――まあまあ。相手に呑まれたまま戦ってもいいことなんかないし」
その言葉に、彼らはハッとして顔を見合わせた。確かに、過度に緊張したまま試合に臨んだところで実力が十全に発揮されるわけがない。無理に背伸びなどしなくとも、今自分達にできることをすればいいのだ。
「はい、リラックスリラーックス」
「お前は緩すぎんだよ!」
今度は日向に頭をはたかれている真白を見ながら、1年生たちは小さく笑いを溢した。
KY(空気読めない)というよりはAKY(敢えて空気読まない)。
意外と計算高かったりする、かもしれない。