歴女JK謀神の子供を産む   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1512年 対武田連合

 所領が広がり、2000石と言う広大な領土を手に入れた元就は直ぐに農業指導員を派遣し、春から始まる田植えの準備と減ってしまった軍の人員の補充と軍略の見直しに迫られていた。

 

 毎回勝てても大損害では困るためだ。

 

「やはり機動戦術に切り替えたいのぉ……」

 

 まだ馬が沢山用意できてないが、機動力により敵の後方に出現し、場所的な奇襲をしたり、主力となる毛利興元率いる毛利本軍と挟撃したり、クロスボウを使って一撃離脱を行うのでも良い……鉄砲が普及したとしても機動力が無ければならない戦は多くなるだろうと判断していた。

 

「ただ山が多い故に運用できる場所が限定されるのは痛いな。裏道を整備したりする必要があるのじゃ」

 

 他にも忍び衆の強化は必須であり、商人、歩き巫女、琵琶法師からなる情報収集能力に長けた忍びは揃えられたが、戦働きができる忍びが不足しているためそれに長ける人材を揃えるか育てる必要がある。

 

「やることが山のようにあるのぉ」

 

 嘆いても仕方がないのでやることをやる元就であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちち! はは!」

 

「賢太郎は賢いのぉ! よしよし」

 

「キャッキャ」

 

 賢太郎も小次郎も大きくなり、3人目もお腹の中で順調に育ってきていた。

 

「怜も子供達の世話助かる」

 

「いえ! 元就様! 私の子供が出来た時に役立つと思っているので大丈夫です! ……それに彩乃姉様の神通力で素晴らしい道具が使えますので!」

 

「いつの間に彩乃と怜は仲良くなったんじゃ?」

 

「えへへ……秘密です!」

 

「秘密だよ」

 

「秘密なのか……」

 

 猿掛城で彩乃は元就と共に戦後処理を行い、広がった領土の開発計画を練っていた。

 

 椎茸栽培は菌床の繁殖管理が難しく、完全自給化がまだできていないので未来の菌床をまだ頼りにしなければならず、これ以上の椎茸の栽培規模拡大は難しくなっていた。

 

 養蜂も蜜源地域を広げている最中であり、広がった領地にクローバーやレモンバームの移植とミカンの種から苗を作っているのがある程度数になっているのでそれを移植する作業が行われていた。

 

 セイヨウミツバチの個体数も順調に増えているので、リスク分散の意味も込めてレンゲ(これも蜜源になる)が多く生えている場所や人為的に蜜源地帯を作った場所に巣箱とセイヨウミツバチの群を移住させて増やす作業をしていた。

 

 上手くいけば来年には50群、再来年には100群のミツバチのコロニーができ、それ相応の蜂蜜を採取することが出来るようになるだろう。

 

 ミカンも少量ながら収穫できる木がちらほらでてきたので、3年後にはある程度量が穫れるようになるだろう。

 

 そうなれば新たな特産品として商人に売り込むこともできる。

 

 特産品と言えば米油、米蝋の生産も順調で、売れる量になったので昨年商人達に売ったところ、ごまや菜種とは違う香りの油は上座(堺や京など)で人気になり、協力関係を結んだ天野家、小早川家を通って瀬戸内海から堺まで運ばれていた。

 

 陸路でも大内領内に毛利の油として売られ、京から逃げ出した公家や貴族達や多くある寺社の照明用油や米蝋や蜜蝋(養蜂の副産物)で作ったろうそくが飛ぶように売れていた。

 

 油は陸路で量を運ぶのは難しいが、ろうそくであれば陸路でも大量に運べると商人達から人気で、売れ筋の商品となっており、流民を片っ端から登用して各産業の生産工場にて働かせるのだった。

 

 他にも芋焼酎だったりコンニャク(白色で灰色ではない)の生産量も順調に拡大し、今年はコンニャク粉と稲藁を使った和紙の生産もしようと元就は企んでいた。

 

 この時代でも作れるが、真似ができない物ばかりであり、現状毛利家が独占している技術なので、これらが飛ぶように売れる。

 

 それが毛利家を潤し、大内領内も潤す為、毛利家を切りたくても切れない状態……商売的に潰せない金策地扱いまで価値を引き上げる事で大内の加護を増やそうと元就は企んでいた。

 

 これに金にはならないが、養鶏事業で領民の栄養状態の改善と鶏糞を集め、肥料にすることで更に作物の実りを豊かにする事も続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元就達毛利家が力を着けていた頃、安芸国では大事件が発生。

 

 厳島の神主をしている厳島神主家の当主も大内義興と一緒に京に居たのだが、長陣による疲労により病気になり、そのまま病没してしまい、世継ぎが居なかった為に厳島神主家宗家が断絶してしまい、分家達が家督争いを始め混乱が発生してしまう。

 

 厳島は平清盛が造営した武士の権威を示す神社であり、安芸国や瀬戸内海を面している各勢力から崇められている戦略的重要拠点であった。

 

 現在は大内配下に収まっていたが、家中騒乱が続けば大内の安芸国支配の影響力が大幅に低下してしまう一大事なので、大内義興は安芸武田家に至急事態の収拾を依頼し、その時に大内義興は期待の意味を込めて公家かつ大内義興の養女とした妻を安芸武田家当主武田元繁に嫁がせたのだが、武田元繁は尼子経久と既に繋がっており、帰国後に嫁と直ぐ離縁。

 

 厳島神主家の争いに介入し、新当主を勝手に擁立するだけでなく、安芸国の国人に攻撃を開始し始め、大内からの手切れを盛大に宣言したのだった。

 

 多少流れが違ったが、吉川家も武田元繁に攻撃され、元就に忠告されていた事が起こったと判断し、武田元繁の出鼻を挫く為の軍事行動をするべきと毛利興元に訴えた。

 

 毛利興元の所にも大内義興から吉川や安芸国人衆と協力して安芸武田家を攻撃しろと言う命令が届いており、安芸国人衆の多くが毛利家居城吉田郡山城に集まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大内義興様の命もある。武田の拠点を1つでも落とし、これ以上の武田の膨張を食い止めるべきだ!」

 

「然り然り」

 

 国人衆的には安芸武田家は元々安芸守護の家柄故に従っても良い筈であるが、大内が強大な戦力を有しているため、武田に付いても大内に攻め滅ぼされるのが目に見えていた。

 

 この場に参加していた国衆は毛利、吉川、宍戸、竹原小早川、平賀、天野、阿曽沼、野間の8家であり、今回の会合で宍戸家も国人一揆に加入することが決まっていた。

 

 他に有力国人として沼田小早川家は竹原小早川家との敵対関係もあり参加していなかったが、安芸国の約半分以上の勢力が今回の武田家の行動に対して良い感情を抱いて居なかったのである。

 

「となると吉川の大内への従順を示す為に毛利が余力として武田家の拠点である有田城を攻略し、そこを対武田の防衛拠点とする。武田家は安芸では頭1つ抜けた戦力を保有しているため本格的な武田家攻めは大内本軍が駆けつけてからにする……それまでは双方に援軍を送り、防衛に徹するでいかがか」

 

「「「意義無し」」」

 

「では宍戸殿、安芸国人一揆の連署に印を」

 

「うむ!」

 

 こうして武田に対して協力する事が国人一揆の間で共通認識となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、若輩である私が国人一揆の司会とは緊張しました」

 

「お疲れ様なのじゃ兄上」

 

 毛利興元が今回の議事の議長を務め、毛利の影響力が増加していることがよく分かる。

 

 高橋家を飲み込んだ事で安芸国でも有数の国人にまで格が上がり、今回の纏め役を務める事も出来た。

 

「しかし元就、有田城を吉川に渡してよかったのか? 毛利主力で攻め落とし、更に武威を示すのでも良かった気がするが」

 

「毛利の武威は十分に高まっているため、ここは各方面に恩を得るのも大切かと。忍び衆により尼子経久が出雲に帰国したとの情報もあり、尼子が伯耆国を切り取りに動いて居ると聞きます。伯耆が終われば混乱している備後、大内留守の石見、そして武田と挟撃して安芸国に雪崩込む可能性もありますので、国人一揆の面々を大内方に留めておく為の布石です。宍戸、吉川の2家と大内拠点である鏡山城との連携があれば大内主力が帰国するまでの時間は稼げると思うので」

 

「なるほど……」

 

「それに毛利は大内に近すぎるくらい一蓮托生になっており、危険を冒さなければならない立場になるのじゃ」

 

「うむ……見えてきたぞ。有田城を吉川に与えることで恩を売りつつ武田の前線を隣接させて毛利領への侵攻を遅れさせ、高橋領を吸収し、力を蓄えた毛利軍で武田家と戦う流れだな」

 

「はい、高橋領を活用できるようになれば毛利単独で4000の兵を動かせるようになり、武田に対しても優位を取ることが出来ると思うのじゃ」

 

「うむうむ! それで行こう! 良き策だ元就!」

 

「感謝の極みなのじゃ」

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