いよいよ大内義興と将軍足利義稙の関係は決裂し、大内義興は8月に管領代……幕府3番目の地位を捨てる決意をし、管領代を辞職。
そのまま直ぐに瀬戸内海を船で通り、山口の町に帰国したのであった。
屋敷に到着した大内義興は早速滞っていた政務に取り掛かるが、幕府から許された勘合貿易の派遣商品で毛利の品が増えていることに気がついた。
「特産品の無かった毛利が輸出出来る品が増えているな」
大内義興の問に貿易の責任者を任されていた冷泉興豊はその件について毛利の急速な成長を伝える。
「椎茸と蜂蜜の生産方法を確立したとみられ、それを大内に流すことで大きな利益を得ていると考えられます……いかが致しますか? 生産方法を提出させます?」
「いや、毛利の大事な商品だ。家と取引をし続ければ毛利は大内を裏切らない。前よりも家への依存度が高まったと考えても良い。毛利の新当主の偏諱を与えるのもそうだし、関係を更に深めていこう」
「は! かしこまりました」
大内義興は毛利家の面々を山口に招集し、元服の烏帽子親になることを承認するのだった。
「問題は」
尼子が毛利が素早く尼子の影響力を排除したことにより安芸国への入り口たる毛利や安芸国の国衆の調略には時間がかかると判断し、石見方面へ軍を送っていた。
石見を防衛するために大内義興は石見守護職を将軍から貰い、各国人衆に命令して防衛線を構築。
石見では現在進行系で一進一退の攻防が繰り広げられていた。
「ふむ……資金と兵糧の援助、及び北九州の兵を石見に向ける。京での長陣で主力は疲弊しつておる。疲れをしっかり取ってから石見と安芸武田を攻め滅ぼそうぞ」
と大内義興は家臣に号令するのだった。
大内義興帰国から程なくして、毛利元就、賢太郎、小次郎他家臣達と兵200名が山口の町に踏み入った。
「未来の町を知っているからか古都という感じが伝わってきます」
「兄上も私もたまに未来に連れて行ってもらえるからね。それでも山口の町はこの時代だと凄い栄えているよね」
「全く、お主ら大内様の前でその様な態度をするでないぞ」
「「はーい」」
それでも元就は山口の町が未来を知っていても、十分に活気づいており、更に雅な雰囲気が醸し出されている事に着目し、大内家と毛利家の力の差をまじまじと見せつけられているような気分だった。
「よく来たな元就殿、それに賢太郎殿に小次郎殿」
出迎えたのは親戚でもある杉興長だった。
「兄上の結婚の時以来なのじゃ! 興長殿!」
「ええ、元就殿もお元気そうで何よりですが……元就殿に似て大きいですね。まだ賢太郎殿も9歳(数え年なので実際は8歳)なのでしょう?」
賢太郎も小次郎も産まれた時から大きかったのはあるが、すくすく成長し、既に145センチ、142センチと8歳、7歳にしては大きかった。
「それに既に武功も挙げたと聞いていますよ。あの渡辺勝を討ち取ったとも」
「いやはやお恥ずかしい限りなのじゃ」
身内の恥なので誇れることでは無いと元就は思っていたが、それでも渡辺勝の武勇は毛利の外にも響き渡っており、大内は渡辺勝の船岡山合戦の活躍を覚えていたのである。
それ故に彼を討ち取ったのが元服前の幼子であるのは信じ難い事であったが、それが事実であるなら将来有望であると判断し、大内義興が重臣達に偏諱を求めた際に多くの家が繋がりを求めて名乗り出たのである。
そのまま3人は杉の案内で大内の本拠地、大内館に案内され、広い客間で饗された。
大内義興からも
「ほう、なかなか良き顔立ちをしている。元就殿、兄興元殿には大内も助けられた。彼が亡くなり、苦難の連続であったと聞くが、私が山口に戻った以上周辺諸国の重しとなろう。蔵田房信から話を聞いておる。敵対した阿曽沼と野間は蔵田と協力して攻め滅ぼして良いぞ。土地の配分も元就殿と蔵田に任せる。これからも安芸国の纏め役を頼む」
「は、はいなのじゃ!」
大内義興から引き続き安芸国の纏め役を行えというのは大きく、安芸国における領事裁判権を握れることを意味する。
争いに介入し放題である。
「お初にお目にかかります毛利家当主毛利賢太郎でございます」
「弟の毛利小次郎でございます」
「ほほぉまだ幼いのにしっかりと武士としての覇気が見える……元就殿、鷹を産みましたな」
「恐らく妻の血が強かったのでしょう。妻は神通力を使い毛利領内の発展に寄与しておりますので」
「いやいや謙遜するでないぞ。元就殿の知略は京に居た私にも響いていた……元服の儀をする前に元就殿が良ければ次男の小次郎殿を私の息子……亀童丸(後の大内義隆)の学友とならんか?」
「……願うならば賢太郎も預けることはできませぬか。毛利ではこの子達を育て上げられる環境が整っていないのです。大局を見れる武将として大内家の環境で育ててくだされば幸いです」
「ほぉ、当主を送り込んで毛利は大丈夫なのか?」
「私もまだ21、この子達の叔父の相合元綱も居ますので毛利家の運営には問題ないかと」
「ふむ……父親の元就殿がそう言っているが賢太郎殿と小次郎殿はどうだ?」
「願うならば末席でも良いので大内の教養と武士としての心遣いを学ばせてもらいたく」
「私は次男故に兄と同じ教育を受けさせくれるのであれば本望でございます」
「うむうむ! 良き考えぞ。私のことは父と思うようにせよ。賢太郎と小次郎には嫡男亀童丸と同じ教育を受けさせることを約束しよう」
「「ありがたき幸せ」」
そのまま元服の儀となり、賢太郎と小次郎は元服して、賢太郎は毛利房元(毛利家の家督継承者には緊急時を除き基本元が名の後ろに、偏諱を受けた為に、偏諱の名を前に持ってきて房元)に、小次郎は毛利盛就(偏諱は盛、就は元就の就から父を盛る……父を超えるという意味が込められていた)に名を改めた。
髪を結い、冠を付けた後に、毛利家は大内家に忠節を誓うことを示し、元服の儀は終わるのだった。
その様子をこっそり見ていた男子が1人……亀童丸その人である。
「あれが毛利の至宝と呼ばれる賢太郎と小次郎兄弟か……本当に私より年下なのか……立ち振舞が田舎の国人とは一線を画している。挙動全てが美しい……」
「若様ここに居られましたか……頬を染められてどうしましたか?」
亀童丸の家臣が亀童丸を見つけて声をかけた。
「毛利兄弟を見ていたのだ……実に綺麗な男児であろう……」
「元服されましたのでこれからは房元殿と盛就殿ですな」
「おぉ! 動きも品があったが、顔立ちも私の好みだ。ほどよく肉付き、清潔で服の上からでも見える筋肉が素晴らしい」
「これから若様と共に学ぶ事になるのです。お二人に勉学を教える立場に若様はなられるのですぞ」
「そうか! そうか! 一緒に学べるのか! 父上の提言だな! 父上良くやった! これであの2人に近づくことが出来る」
その言葉を言うと、1人の子供が亀童丸に近づいてきた。
「五郎を飽きたのですか亀童丸様」
この五郎は後の冷泉隆豊である。
うるうると涙目になる五郎に対して冷泉隆豊はそんな事は無いと熱く抱擁し
「五郎と寝室で熱く語り合うのも良いが、せっかくあれほどの美男子達が私の学友となるのだ。次男は五郎と同じ年。五郎もどうだ? 2人を見て」
「……綺麗な方たちですね。あのお二人に尻を掘られたいものです」
「おお、それは良い。同じ年の五郎と盛就だったか……2人が熱くなっているのを見ながら私は兄の房元とねんごろに……実に滾ってきたぞ! 五郎今日は寝かせぬ! この滾りをぶつけようぞ」
「ああ、まだ日がでておりますぞ亀童丸様!」
亀童丸こと後の大内義隆は歴史に残る男色家で有名な人である。
毛利兄弟の尻はどうなるのか……それは後ほどのお楽しみに。