歴女JK謀神の子供を産む   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1521年 尼子侵攻戦4 武田家滅亡

 数日後、旧阿曽沼、野間の領土を攻めていた武田軍が援軍に来た陶興房の部隊1万に敗れ、本拠地である銀山城への攻撃が開始された。

 

 大内義興本軍も厳島とその対岸の桜尾城を占拠していた武田軍を破り、厳島に本陣を置く。

 

 一方で元就は元気な兵1000名を率いて武田家家臣の熊谷家の守る高松山城へと攻め寄せた。

 

 城を守る熊谷信直はまだ14歳(数え年でも15歳)の若者であり、今回の防衛戦が初陣でもあった。

 

 元就から熊谷領土の安堵を条件に開城を願う降伏の使者を送ったが、父親の敵と言って使者は追い出されてしまった。

 

 一緒に攻めていた相合元綱からも

 

「これはやはり城攻めになりそうですかね?」

 

 と元就に聞くが、交渉人を斬らなかった時点で揺れているのは確実と判断し、所領を更に増やした条件で交渉を再開する。

 

 更に斬らないと判断したために元就自ら城に向かい、交渉を行うという器の広さを見せつけた。

 

「大将自ら開城の交渉など聞いたことも無いぞ!」

 

「ええ、普通は無いのじゃが、ワシは熊谷信直殿を買っておる。武田は此度の戦で大内が滅ぼすのは既定路線じゃ……聞くに熊谷信直殿の妹を武田光和殿は無理矢理娶ったという話も聞くが、実際どうなのだ?」

 

「それは……確かにそうでござるが……」

 

「なるほどのぉ、妹が人質になっているゆえに開城できぬと言うことか、相わかったのじゃ。信直殿の妹は毛利が責任を持って救出する故に安心せい」

 

「いや、それとこれとは話が別では? 拙者の父は元就殿に討たれているのでござるが……」

 

「そうなると城攻めをせねばなりませんのじゃ。双方争うは得策じゃなかろうて」

 

「うむむ……」

 

「まぁ妹殿が救助されるまで待たれよ」

 

 その後高松山城近くの山で陣を張り、待つこと数日。

 

 銀山城から離れた寺に匿われていた熊谷信直の妹を毛利忍軍が救出し、高松山城に送り届けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 高松山城では重臣会議が行われていた。

 

「元就殿は父の敵である。しかし拙者達に格段の扱いをしてくれている。戦上手の元就殿だ。その気になればこの高松山城を落とすべき策があるのにも関わらずだ」

 

「殿恐らく元就殿が指揮している今だから待ってくださっています。これが大内の軍が援軍に入ればこうも言ってられないかと」

 

「そろそろ決断するべきです。我々家臣達も毛利に対して思うことはありますが、今の武田家と心中する気はありませんぞ」

 

 そう家臣達は言うが熊谷信直は必死になぜ熊谷家をこれほどに優遇するのかを考える。

 

「あの尼子をも打ち破った毛利元就がなぜこれほどに拙者……いや、熊谷家を評価するのだ? 熊谷の家は父が死んだ事で武田家の中でも影響力が強い家とは言えんが……」

 

「妹様を嫁がせていたので他所からはまだ影響力があると思われているのでは」

 

「あの元就の事です。何か策があるのでしょうが、宍戸家の様に敵対していた家でも友好的になれば凄い甘い判断をすることもあるので……何か琴線に触れたのかもしれません」

 

「銀山城は包囲が始まったと聞きます。決断はなるべく早く……」

 

「明日には降伏の使者を出そう。拙者達の戦はここまででござる」

 

「「「は!」」」

 

 武田の右腕とも言われた熊谷家が毛利に降伏したことは直ぐに大内軍により武田の籠る銀山城に流布され、銀山城の士気はどんどん落ちていった。

 

 そのまま毛利軍は銀山城を攻撃している大内軍に合流する。

 

「陶殿、遅くなりましたな」

 

「いやいや、被害無く城を落としたのは上策の類かと」

 

「熊谷家は毛利がもらいますぞ」

 

「えぇ構いません。というより武田領土の統治には武田家の家臣達も使うのでしょ?」

 

「そうですなぁ。働いてくれるのであれば雇いたいと思っておりますが。領地は与えず銭払いですがな」

 

「それはなかなか厳しい処分で……」

 

 この時代土地が貰えないのは相当な処分であった。

 

 元就はそれ以上の銭をばらまく気であったが……。

 

「銀山城はこのまま兵糧攻めに?」

 

「いや、逃亡兵も増えている為に力攻めに切り替える。(大内)義興様からもさっさと落とせと下知(命令)が入ったのでね」

 

「毛利も微力ながら手伝いしますのじゃ!」

 

「では左翼を担当をお願いします」

 

 そのまま兵糧攻めを数日続けた後に総攻撃が始まった。

 

 銀山城も堅城の部類ではあるが、城内にはもう1000名も居らず、3万の大軍の前に次々に曲輪が陥落していき、当主武田光和は自刃。

 

 他一族の多くも後を追った為に安芸守護にも任じられていた安芸武田家は滅亡となってしまう。

 

「こんな感じかのぉ」

 

「本当にやるんですか? 元就様」

 

「これ以上の戦はできなくは無いが軍功は十分じゃて……休ませてもらうとするぞ」

 

 元就は家臣達に見てもらいながらメイクをしていき、包帯で更に怪我の振りを大きくする。

 

 

 

 

 

 

「何、元就殿が流れ矢を受けた!」

 

「はい、意識はありますが……今陣にて治療を受けているとのこと」

 

「元就殿に何かあれば大内の戦略も大きく狂う。直ぐに城に下げさせよ」

 

「は!」

 

 陶興房は元就負傷の報を聞いて直ぐに指示を出した。

 

「毛利は尼子との戦いで限界以上に戦った。流石に武田攻めに連れ出すのは不味かったか……悔やんでも仕方がない。武田攻めでも城1つを落とし、身を挺して働いてくれた……無理をさせた分を含めて所領を与えなければ」

 

 陶興房は大内義興に報告をし、毛利のお陰で尼子侵攻からの一連の戦いは優位に進んだ事を評価するべきと忠言され、大内義興は考えた上でこう決定した。

 

「毛利は大活躍だったことを称し、まず吉川の家督を元就の息子に継がせる。所領も高田郡だけでなく、山県郡、沼田郡と佐伯郡の東部を与える事にしようぞ」

 

 安芸は8つの郡があるのでそのうちの3郡半を毛利領土と大内義興は認めた事になる。

 

 そして蔵田房信を安芸守護代にし、毛利房元を安芸小守護代(守護代の1つ下の階級)にすることを認めた。

 

 ちなみに与えられた領土は大体未来の広島市と考えれば良いだろうか。

 

 表石高も5万石だったのが約10万石加増され毛利家の悲願であった海に出ることも叶った。

 

 元就は相合元綱に仮病をしている理由を伝え、名代(代理)として大内義興より褒美を受け取り、毛利軍はこの後に行われる遠征に参加しなくて良いというお墨付きを頂いた。

 

 広がった領国統治を行えと命令し、大内義興は弱った尼子を討伐するためにまずは石見への救援に軍を向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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