ソラトバン、鬼械人   作:min(みならい)

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レモン、休日を豪華にする

◆ 32、ソラとチーニャ、イチャイチャする ◆

 

 休日の前夜である!

 

≪着陸完了~。動いていいよ。夜番の者は屋上へ≫

 

 チラーニどんの声が響いて、夜空の旅が、終わりになる。

 宿泊地は、海のそば。険しい崖の上。

 人間はそうそう近付けんような場所である。

 鳥どもは大騒ぎして抗議してきたが・・・すまんのう。巨人に踏まれたと思うて、あきらめてくれ。

 飛行塔は、足元のコマ(独楽)みたいな先っちょを森に突き刺す形で、安定した。

 半分着陸、半分浮上っちゅう状態である。強い風が吹くと、ちょっと揺れるけどもが。ま、大した問題じゃない。

「おやすみー」

「おやすみでござる!」

 コボルドどもとあいさつして、わしの部屋へ戻る。

 チーニャも一緒じゃ。

「あれ? チーサーネ。どこへ?」コボルドのルディーニャちゃんが、ついて来かけたが・・・

「ルディモ。私は、コイツと話があるから。先に寝てて」

「あ、はい」追い払われた。

 

 ・・・・・・・・・よし。誰も居らんようになったな。

 よし。

 よーし。

 ・・・チーニャの顔見ながら手を伸ばしたら、苦笑された。「なにビビってんだよw」

「い、いや。なんじゃ。その」

「はいはい」

 手をからめて、部屋に入った。

 扉閉める。

 

 ふたりきりじゃ!

 

「お・・・おまえさんの、好物。頼んどいたんじゃ。食堂のおかみさんに」

「好物?」チーニャ、首をかしげて、にやーっと笑って、耳元に唇近付けてくる。「・・・オマエのこと?」

「うへwww」

 デレデレする。

 ふたりで身体くっつけて、腰の側面で押し合って、イチャイチャする。

 軽い・・・。

 チーニャは、背が高いんで。腰がぶつかったら、もっと手応えがありそうなモンじゃが・・・

 軽いんじゃ・・・

 小さくて・・・

 おお・・・!

「えーとな、アレじゃ。チーズケーキじゃ。焼いとらんやつ」

「あ! うん、好き好き!」

「良かったわい。それと、チラーニどんから。『持ってけ!』て、蜂蜜酒(はちみつしゅ)」

「はーん? 世話焼きだなぁ、アイツ」

「いつ食べる?」

 チーニャは黒い瞳キラキラさせながらこっち見てきた。「あとにしようぜ」

 

 思う存分、イチャイチャした。

 今夜は、ええ夢見れそうじゃ・・・。

 

◆ 33、マオウ様 ◆

 

 休日の朝である!

 

 飛行塔の玄関を開けたらば、森の木々の向こうに、朝焼けの空がチラホラと見えた。

 鳥の声が、あっちこっちでする。チュッチュッ、ジージー、ケッケッケッケッ・・・と、色んな鳴き声がしよる。

 ええ朝じゃ。

 清々しい。

<おはようでござる>

<オウ! ソラ!>

 小型鬼械人が2人、玄関に出て来た。

「おう、ウミドラーニどん。ドリナラーニどん。おはようさんじゃ」

 ドリナラーニどんは、今日は整備ロボであるドリノンの姿である。彼(?)の他にも、ドリノンが1鬼、出て来よる。

 コボルドが、ゾロゾロついて来た。釣り道具、手に持っておる。

 ワラワラワラ・・・と、2鬼のドリノンに群がって・・・

 しがみついて・・・

 ふわ~ん・・・玄関から、飛び下りた。

「危なっかしいエレベーターじゃな」

<ま、コボルドは軽いでござるから>

 ウミドラーニどん、ヨタヨタと、突き出した扉床の端っこまで行って・・・

<では、拙者ら、魚採ってくるでござる>

「行ってらっしゃい」

<しからばごめん!>

 ばさっ! 翼広げて。

 ふわ~ん・・・と、落ちてった。

「飛ぶんじゃないんかい」

 

「おはよー、ソラ君」

 人がやってきた。

 茶色の肌したハーフダークエルフ・オーガの姉ちゃんじゃ。

「ディルーネさん。おはよう」

「他人行儀やなー」

「同盟になる相手じゃけ、敬意を表しとんじゃ」

「ふわ~・・・」ディルーネ、あくび。「チー姉さん、『同盟は嫌や』みたいに言うてたのにな」

「──状況が変わったからな」

 また人がやってきた。

 髪の毛ざっくりと下ろしたチーニャである。白い肌がツヤツヤして、美しい。

 美しい・・・

「おはよう、ソラ」

「おはよう、チーニャ」

 手ェつないで、突き出し扉床の先っちょに座る。

 ちょっと冷たくて、気持ちがよい。

「今日なにする?」

「な~んも考えとらんかったわい。・・・おまえさんと過ごしたいっちゅう以外は」

「ふふw」

「あー、用事思い出したぁ~」ディルーネ、逃げた。「・・・うひひひw」笑いながら。

 

「ソラ~♪」

 今度は人魚がやってきた。

 どってんどってんどってん! 格納庫の床を──のたうちながら!

 セイレーンの、レモンちゃん。

 上半身は、女の子。下半身は、小っちゃなクジラじゃ。

 昨日はハダカじゃったが、今日はチーニャのシャツを着とる。ブカブカじゃが。

 下半身は、スカイブルーじゃ。ハダカなんじゃが、いやらしい感じはない。宝石のお人形さんみたいじゃ。

 そんな人魚ちゃんが。

 打ち上げられた魚みたいに、どってんどってん跳ねて、こっちに迫って来よる。

 意外と・・・速いのう。

 ドテッドテッドテッ・・・

 

 どーん!

 ぶつかってきた。

 

「ぬおおお! 落ちる!」

「ソラ!」

 体当たりされて、一緒に落っこちそうになる。

 ベルトをチーニャに掴んでもらって、突き出し扉床にへばりつき、レモンちゃんを引き戻そうとするが・・・

 重い!!!

 この子、メッチャ重いんじゃが!?

「えっ? えっ?」

 レモンちゃん。周囲を見回し、バタバタする。

「う・・・動くんじゃない。手が・・・すべる」

「そこのドリノン! 来てくれ!」

「どないしたん!?」

<ナンジャ!>

 

 大騒ぎである。

 

 格納庫で駐機しとったドリノン。ディルーネ。さらに、騒ぎを聞きつけたドリナラーニどんまで・・・

 上から下から、わしとレモンちゃんを、持ち上げてくれて・・・

 

「た、助かった・・・」

 なんとか、無事に、這い上がった。

<恐怖>

「まったくじゃ。みんな、ケガはないか?」

「ウチらは大丈夫よ。レモンちゃんは?」

「・・・!」

 レモンちゃん、真っ青。

 ガクガク震えておる。

「もしかして、高いトコ、苦手なんか?」

「・・・!」

 ガクガクガク。首、縦に振る。

 ギューッとしがみついてきた。

「ああ、そうか」とチーニャ。「海で暮らしてたら、『落ちる』ってコト、ないもんな」

「魔王様の城・・・高いトコ、なかった」

「マオウ様」

「古~い、お城」

「どんな御方じゃ? マオウ様っちゅうのは」

「死んじゃった・・・」

「ありゃ、そうか」

「・・・なあ、レモン」とチーニャ。「そのマオウ様って・・・ナダラカンで殺された、女魔王様のこと?」

「うん」

「そ、そうか」

 今度はチーニャが震えだした。

「ソ、ソラ。ソラちょっとこっち来い。こっち」

 

 トンボ様の中に入る。チーニャ、ハッチ閉める。

 

「トンボ様。チラーニと通信開いてください」

<開いたぞ>

<いまの話、オレも聞いてたけど>と、チラーニの声。<魔王様って、ホントかな?>

「わからんが」

<ママに訊いてみるね>

 

 魔王様対策会議、開始である。

 

◆ 34、魔王やら勇者やら ◆

 

<・・・こちら、おふくろ>弐ノ塔のおふくろさんの声。<私にもわからん。清雅に回した>

 タライ回しであった。

<・・・清雅や。なんや朝から魔王て>

 久しぶりに聞く、不敵な(ふてきな)清雅ボイス。ちょっとホッとする。

「なんやと言われてものう」

「セイレーンの、マテレーニャ・レモノーノって子がな。『魔王様の城で暮らしてた』って言うんだ」

<まあ、あるかも知れんな>

「知っとるんか清雅」

<ウワサだけな。スカルドの歌でな>

 清雅いわく、

<女魔王は、海のド真ん中に珊瑚礁(さんごしょう)造って、セイレーンを侍らせ(はべらせ)とった──らしいわ>

「さんごしょうを造る?」

<地形、あやつれんねん。魔王は>

「地形をあやつる」

<大地を盛り上げたり、海を凹ませたり>

「ウソじゃろ」

「デタラメだろ」

<いや実際できた>と、トンボどん。<ワシ、それでやられたんじゃ>

「なんじゃと」

<魔王戦でのコトじゃ。大砲ブッ放しとったら、魔王に目ェ付けられてな、>

 トンボどんの昔話、スタートである。

<魔王が、なんか唱えた。したらば、ワシらの足元の地面が、槍になったんじゃ>

「やり」

<ナンガラックぐらい、ごっつい槍じゃ>

「小山じゃないか」

<そうよ。それを下からブチ噛まされたんじゃ>

「うへえ」

<六腕ロボは木っ端微塵じゃ! ワシも、関節は外れるわ、呪文版にヒビ入るわで・・・たった一発で、壊滅よ>

「それで死んだんか。トンボどんは」

<撃竜界までは飛べたんじゃがな。着地で失敗して、ヒビが広がってしもうて、霊(タマ)が尽きたわい>

 トンボどんの昔話、エンドである。

 ちなみに、いつの話かっちゅうと・・・

<百年前じゃな>

<『陽鬼戦役(ようきせんえき)』じゃな>

 と、おふくろさん。

<ハイエルフとオーガが同盟組んで戦った、数少ない戦じゃ>

<ワシらは単に『魔王戦』と呼んどったがのう>

「百年か・・・」

「ひいひい爺ちゃんが子供だった頃・・・かな」

<帝国じゃと、初代キバ帝の頃じゃな>

「いま何代目じゃったっけ?」

「第四代、ウシャーニ帝さ」

「うへぇ・・・」

 

 スケールのデカい話が始まってしもうた。休日じゃというのに。

 

<で、レモンちゃんは、魔王の配下なのかね~?>

<トンボよ、どうじゃ?>

<知らん。ワシ生きとった頃ァ、魔王の配下は亡者(もうじゃ)だけじゃったけぇ>

「亡者じゃと」

<魔王はな、死人も、あやつれるんじゃ>

「ひええ」

<清雅よ。伝説ではどうなっとる?>

<ハイエルフを滅ぼした魔王は、海に出て、波かぶる城を建て、セイレーンと暮らした・・・っちゅう感じですわ>

<2人の印象はどうじゃ?>

「レモンのことは疑ってなかったね」

「うむ。わしも全然」

<いいんじゃない?>とチラーニ。<魔王は死んだんでしょ>

<そういう話やな>と清雅。

<でしょ? なら、今はもう魔王陣営じゃないワケじゃん>

「そう割り切れるもんじゃないぜ?」

「魔王は・・・蘇生したりは、大丈夫かのう?」

<そらァ、できるやろーけど、>

<やるならとっくにやってるよね~>

<ンむ>

「それもそうじゃな」

<弐ノ塔ママさん。ついでに、2人に質問があるんですけど>

<なにかな、清雅よ>

<クェルデンチャーネ様。ナダラカンの勇者の仲間の。──ハツラノッツに来とったらしいな?>

「あ、わし、港で見た。それっぽい子」

<見たんか>

「たぶんな。ダークエルフの、背の低い、女の子じゃった」

「そう言えば・・・なあ、ソラ」

 チーニャが肩を叩いてきた。

「レモン、言ってたよな? ダークエルフを逃がす、って」

「ああ。最初に助けたときな・・・」

 実験島の爆発から助け出したときじゃな。

 別れ際に、そんなこと言うとったわい。

 その後、あの恐ろしい領主暗殺の爆発があって、すっかり忘れとったが・・・

「・・・あれ? もしかして、クェルデンチャーネ様と関係あるんか? レモンちゃん」

 

「?」

 レモンちゃんに訊いてみたが、『誰それ?』っちゅう顔された。

「じゃあ、えーと・・・」とチーニャ。「クェーネ。ルデーネ。チャーネ」

「チャーネ、知ってる」

「どんな御方じゃ?」

「小っちゃなダークエルフ」

「偉そうな人かのう?」

「優しい子。ちょっとだけ、≪声≫が使える」

「声ってなんじゃ」

「魔王様の≪声≫」

 

 どんどん新しい話が出てくるんじゃが・・・

 わし、休日なんじゃが・・・

 

「そのチャーネさんも、海を動かしたりできるんか」

「できない。魔王様じゃないから」

「そうか」

「けど、遠~~~くから、私たちを呼べる。セイレーン、≪声≫聞くの、得意」

「鬼械人の通信みたいなモンかのう?」

 

 少し話してみたんじゃが。

 レモンちゃん、あんまり、事情を知らん様子。

 ダークエルフの洞窟が爆破されたのも、知らんかったぐらいじゃ。

 世界情勢には興味もないようで、フイッと、どっか行ってしもうた・・・

 

 ・・・で、お昼に食堂でコンサートやっとった。

 

 ♪世界でいちばん でっかくて

  体重おもくて ヒゲ長い

  タリラリラン タリラリラ

  われらが父よ おお、トトリル!

 

 ドッテンドッテン、跳ねながら。

 高ぁ~い声で、甘ぁ~いメロディ、歌っておる。

 伴奏は、チャンチキチャンチキ、皿を叩く音。

「うおーーーん!」「わんわんわん!」「キャン! キャン!」

 コボルドどもである。熱狂してお皿叩いとる。割れるぞ。

「キャーン! レモンちゃん!」

 食堂のおかみさんまで熱狂しとる。

 お皿出しても、食いモン入れてくれん・・・。

 しょうがないんで、チーニャとふたり、自分でよそった。セルフサービスじゃ!

 

◆ 35、列電魔旋砲台 ◆

 

「困ったヤツらだろ?」

「ほほえましいんじゃが、なぁw」

 エレベーターで、屋上に出た。

 青空見ながら、ふたりでお昼ご飯じゃ。

 

 まあ・・・

 思う存分イチャイチャできるので・・・

 これはこれで、ええけどな。ぐふふ。

 

 屋上は広々としており、じつに気分がよい。

 でっかい砲台みたいなもんがあって、列電魔旋砲が据え付けてあるので、物騒(ぶっそう)ではあるが。

 いやー、でかい。

 砲の高さ(長さじゃないぞ)が、人間の胴体ぐらいある。長さに至っては・・・これ何尋あるんじゃ?

「でっかいのう」

「乗ってるときはそうでもないが、生身で見るとデカいよな」

「砲台みたいのは、なんじゃ?」

「そのまんま、砲台だよ。ドリナラーニが座るのさ」

「イスかいな」

「あいつ回転遅いだろ? だから、砲台に座って、自分でグルグル回すんだと」

「あー」

 ナンガラックは、歩くン遅いからのう・・・。

「鎖で自分を縛りつけてな」

 かわいそう。

「砲といえば、気になっとったんじゃが」

「おいおい、休日だぜ?」

「すまんことじゃ」

「いいけどさ。なーに?」

「ドリナラーニどんは、どうやって撃っとるんじゃ? 指、ないのに」

 ナンガラック、指がないんじゃよな。鉤手じゃけぇ。

「魔術」

「魔術で発砲するんか」

「『力の筒』を動かすのも、魔術だぜ?」

「あ、そうか」

「ちなみに、列電魔旋砲にも『力の筒』が入ってんだよな」

「筒で、弾を押し出しとるわけか」

「いやちがう。筒に貯めてある力を、マナの代わりにするのさ」

「マナのかわり・・・」

 と言われて、なにかを思い出す。

 清雅がそんなコト言うとったような・・・

 そうじゃ。

 たしか、ふつうに唱えるとキツい呪文でも、この杖があれば余裕──みたいなコト、言うとったぞ。

「・・・『魔泉の杖』みたいなもんか?」

「そうそう! 呪文を唱えるのはドリナラーニだが、マナ──の代わりの『力』──は、筒から出るってワケさ」

「ははぁ・・・」

「全力で撃ったら、一発で筒がカラになるらしいぜ」

「一発で終わりかいな」

「うん。筒も入れ替えないといけなくなる」

「大砲と一緒か? 火薬込めて、弾込めて、どーん! ・・・んでまた火薬込めて、弾込めて、どーん!」

「その通り!」

「力抜いて撃つこともできるんか?」

「できる、けど、威力も落ちるし、照準も狂うぞ?」

「え」

「練習が必要だね」

「なるほど」

 

 トンボどんにこの話をしたら、

<チラーニに訊いとくわい>と、興味を示しておったわい。

 

◆ 36、レモン、休日を豪華にする ◆

 

 午後。

 レモンちゃんが「海行きたい」っちゅうので、それに付き合った。

 森ン中ちょっと歩いて、崖に出た。降りる道はない。下の方で、コボルドがワイワイやっとる。

 ドリナラーニどんが、ふわ~ん・・・と上がって来て、

<ハゲ!>

「なんじゃ。いきなり」

<坊主>

「ああ、全然釣れんのか」

 ドリノンのボディにしがみついて、降り──ようかと思うたが。

 やっぱり、危ないし。

 レモンちゃんも、恐がるので。

<しょうがないな~>

 チラーニどんの出番となった。

 レモンちゃん、恐くはなかったようじゃが・・・

 チラーニどんの腹ン中を見回して「???」っちゅう顔しとったわい。

<ソラみたいな顔してたねw>

「わし?」

<初めてオレに乗ったとき。あんなカオしてたぜ>

「あー! こりゃまた、懐かしい(なつかしい)話じゃ」

<いまや、チーニャの男だもんねぇ~?>

「うるさいよ」

 

 ・・・で。

 下に着くや否や、レモンちゃん。シャツ脱ぎ捨てて、飛び込んだ。

 

 どぷーん・・・。

 静かに綺麗に飛び込んで、スイスイスイーッと、泳ぎ去る。

 

「本物のイルカみたいだな」

「見たことあるんか?」

「うん。チラーニで、海の上を飛んだことがあってさ。その時に」

「・・・危ないことをしよる」

「ママにも怒られたよ」

「勝手に飛んだんか?!」

「子供だったのさw」

 

 ばしゃー。

 レモンちゃん、波間に顔出した。して、ポイ! ポイ! と何か投げてくる。

 

 わしらの座っとる岩の上に、硬いモンがぶつかった。

 硬い、白い・・・

「なんじゃこれ? カタツムリみたいな」

「巻き貝だな」

「何するんじゃ?」

「食うんじゃないか?」

「えっ!? こんな・・・カタツムリみたいなモンを、口に入れるんか?」

「海の貝はカタツムリとはちがうぞ」

「ひええ。わしは嫌じゃ!」

「あははw」

 あと、ウネウネした黒いモン、びしゃっと。

 ヌメヌメ、ウネウネとした・・・黒かったり緑だったりする、葉っぱみたいな・・・

「ワカメと昆布かな」

 

 ばしゃー。

 レモンちゃんふたたび。なんかキョロキョロしとる。

 

「どうしたんじゃ?」

「銛(もり)か、ヤス、ない?」

<はい>

 ウミドラーニどんが、口で咥えて持ってった。

 ヤス。魚採る用の小さな槍である。三叉になっとって、穂先に返しがついとる。

「ありがと」

 レモンちゃん、それを手にして、また潜った。

「なんでござるか?」「素潜りでござるか?」「おっぱい丸出しでござる」

 コボルドどもが寄ってきた。

「なんじゃ。釣りはええんか?」

「ええんでござる」「釣果(ちょうか)、ゼロにつき」「堪能した(たんのうした)でござるから」

「そうか」

「この貝、食えるんでござるか?」

「わしゃ食わんぞ」

 

 ばしゃー。

 レモンちゃん浮上。ヤス突き上げる。──なんと! でっかい魚が刺さっておる!

 

「レモンちゃん、すごいでござる!」「名漁師!」「お魚女王!」

 コボルド、大喜び。

「大活躍じゃな」

「水を得た魚ってヤツだな」

<フサフサ>

「なんじゃ。ふさふさとは」

<丸坊主回避でござる>

「ああw」

 

 気を良くしたレモンちゃん。何度も海に潜っては、でっかい魚を仕留めてくる。

 夜の食堂は、お魚のフルコース(セイレーンの歌つき)になった。

 ええ休日じゃったわい・・・

 

 ♪サンゴの海を しろしめし

  響かす≪声≫にて あやつれり

  タリラリラン タリラリラ

  無敵の王も いまはなし

 

  人間どもを ぶっとばし

  大陸丸ごと のみこんで

  タリラリラン タリラリラ

  うみゆくわれら セイレーン!

 

  ルンタ ルンタ ルンタ ルンタ

  ルンタ ルンタ ルンタッタ

 

 ・・・ぶっそうな歌じゃなオイ。




※このページの修正記録
2025/05/29
「34、魔王やら勇者やら」
 帝王の代を間違ってました。第 四 代ウシャーニ帝です・・・。
  > 「いま何代目じゃったっけ?」
  > 「第五代、ウシャーニ帝さ」
  > 「うへぇ・・・」
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