ソラトバン、鬼械人   作:min(みならい)

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ジョッキーというオーガ

◆ 57、オーガの避難先 ◆

 

「おい! そこのオマエ!!!」

 

 空飛ぶ塔が、のんびり夜空を飛んでおった時のことであった。

 オーガの怒鳴り声が、廊下に鳴り響いたのは。

 

「オマエのごとき軟弱者(なんじゃくもの)が、トンボの乗り手だと?!!」

 もんのすごい怒鳴り声である。

 チーニャに支えられて廊下を歩いとったソラトバン、びっくりして、心臓が飛び上がった。

「な、なんじゃ。いきなり」

「なんじゃ!! その腑抜けた(ふぬけた)態度は。ふざけるんじゃないわ!!!」

 

 のしかかるように、上から睨み付けてくるのは。

 オーガ。

 赤い鬼である。

 身の丈、優に、10尺!

 (ソラトバンは、6尺あるかないか。なお、人間としては、小さいわけではない。)

 ほぼ2倍の高さから、睨み下ろし、怒鳴りつけてきよる。

 さらに・・・

 四角いツラ。

 ねじれた2本のツノ。

 ギラギラした黄色い眼は小さく、喰い縛ったキバはデカい。

 拳はソラトバンの顔面ほどもあって、岩のように握り締められておる。

 

 そんな怪物に。

 ソラトバンは、突然、絡まれたんである。

 

「誰じゃ。おまe──」

「オマエなど、乗り手と認めぬ!!! トンボからは、降りるがよい!!!」

「なんじゃと」

「トンボから、降りろと、言うておる!!!」

「・・・本気か?」

「腑抜けめが!!! 冗談で、こんなことを抜かすヤツがおるか!」

「なんちゅう無礼な・・・」

「アア!!?」

 と、ここで。

「お客人」

 チーニャが、氷のような声を浴びせた。

「約束を破るのなら、飛び降りて頂くことになるが?」

「・・・ア?」

 

 ──なお、空飛ぶ塔は、飛行中である。それも爆鬼を警戒して、かなりの高空を。

 

「脅しか! 私を騙そうっちゅうんなら、か弱い女であっても、容s──」

「私は弐ノ塔のチーサーニャ。この飛行塔の主任・チーササラーニの、補佐だ」

「ぬ・・・!」

「塔の秩序を守るため、公式に警告をする。約束を守られよ」

「秩序だと。約束だと・・・!」

 オーガは、顔色を黒くして、チーニャを睨んだ。

「ハツラノッツの虐殺を傍観した(ぼうかんした)貴様らが・・・!!」

 

 このオーガ。

 ハツラノッツからの脱出組か・・・と、ソラトバンは理解した。

 戦闘の直前に、チラーニたちが回収しとった人々であろう。

 

 ──こんな無礼者が混ざっとるとは、聞いとらんがな!

 

「女に守ってもらうとはな!! 見下げ果てたヤツよ!!!」

「・・・なにィ?」

「そうであろうが!!!」

 ブオン!

 もんのすごい風音させて、ぶっとい指が、突き付けられた。

 ソラトバン、本能的にビクッとなる。

「女に支えられ、交渉事も女を頼る!! あきれた女衒(ぜげん)よ!!!」

「女衒じゃと!? 言うに事欠いて!」

 

 一触即発(いっしょくそくはつ)の、この時であった。

 

 ガッチョンガッチョン。

 四脚鳴らして、整備ロボのドリナラーニが3鬼、やって来たのは。

 

<チーサーニャ、補佐、閣下。何事、デスカナ?>

 先頭の1鬼が、たどたどしく、話しかけてきた。

「ああ。お客人に、塔の決まりをご案内していたところだ」

<塔デハ、アルジ、ニ、従ウベシ・・・。逆ラウ、者ハ、強制退去。──デスカナ?>

「そう。その約束だ」

「・・・フン」

 オーガは、ソラトバンから離れた。

「船頭には従ってやろう。だがな、チビ」

 ニンマリと笑みを浮かべ、

「オマエに乗り手の資格はない。とっとと降りろ」

 威張りくさって、立ち去った。

 

「ぬ、ぐ、ぐ・・・!」ソラトバン。悔しがる。

 チーニャはそんな彼を支えつつ、ドリノン3鬼に礼を言った「いいタイミングだった」

<オウ!>

 さっきしゃべったのが応答。

 4本ある腕の1本を伸ばして・・・

 ソラトバンの背中を・・・

 ポン、ポン、とした。

<ソラ>

「・・・ドリナラーニどん」

 その整備ロボは、ドリナラーニどんであった。

「慰めてくれるんか。──いや、じゃが、甘やかしてくれるな! わしは、」

 

<勝テンノハ、ショウガナイ>

 

「うぐううう!」

「泣くなよ・・・」

 

 愛する女の前で、一敗地に塗れる(いっぱいちにまみれる)ソラトバンであった。

 

◆ 58、無礼な客 ◆

 

「おう!!! おサカナよ! 歌がうまいのう? こっちへ来て、歌ってくれい!!!」

 

 今度は、食堂で。

 またしても、怒鳴り声がとどろく。

「ひっ!?」

 セイレーンのレモンちゃん。

 コボルドに囲まれ、セレナーデ(小夜曲)を口ずさんでおったのに・・・

 ビビって、逃げてきた。

 どってんどってん! 大急ぎで、ソラトバンの後ろに逃げ込む。

「ひぃぃ・・・」

「レモンちゃん。よしよし」

「まーたオマエか!! チビ!!!」

 オーガが怒鳴ってきた。

 彼の周囲には、ゴブリンとダークエルフが居る。全部で30人ばかりの一団に、オーガは彼1人であった。

 ゴブリンが6人、オーガの左右からこちらを睨んでくる。

 残りはダークエルフ。困った様子でうつむいておる。

「女ばかり味方にしおって!! 男には認めもらえんのじゃろう!!!」

「・・・声がデカいわ。遠慮をせんか」

 ちょっとグサッと来たソラトバン。

 若干、弱い声で言い返した。

 相手はそれを、敏感に察知した。攻め立ててくる。

「見よ!!! アレが、トンボの乗り手じゃという、デタラメ男よ!!!」

 と言うて、笑い出す。

「ウワッハッッハ! お笑いじゃ。弐ィーノ塔は、デタラメ塔!!!」

 取り巻きのゴブリンも一緒に笑い出した。「ウワッハッハ! デタラメ塔! インチキ塔!」

「なんじゃと・・・!」

「ソラ」

 一緒に食事しとったチーニャに、袖を掴まれる。

「幽雲洞(ユーンどう)までのことだ。ガマンしろ」

「そうは行かん」

 ソラトバン、立ち上がる。

「わし1人なら、泣いてガマンもしよう。じゃが、いまのは聞き捨てならん」

「アア?!! 声が小さくて、聞こえんのう!!!」

「弐ノ塔を、侮辱するなと、言うておーーーる!!」

 ソラトバン、大声で怒鳴り返した。

「アア・・・?」

「乗せてもろうといて、その態度は、なんじゃ!! ご両親から、礼儀を、習っとらんのかァ!!」

 すると。

 オーガも、立ち上がった。

「私の親を・・・バカにしたな?」

「家の恥を!! 広めたくなかったら!! そのへんにして、おとなしk──」

 

 ドガシャアアン!!!

 オーガは、椅子を、踏みつぶした!

 

「オマエは!!! 殺す!!!」

 突進してきた。

 

 ドガッシャア!! ガチャガチャガチャァァァン・・・!

 料理の乗ったテーブルを、右に左に、吹っ飛ばして!

 

「ひい!?」

 ソラトバン、迫力に負けて、後じさる。

 だが。

 ぴったり後ろに張りついとるレモンちゃんに、動く気はなかった。

 レモンちゃんの、ぶっとい下半身に・・・

 ソラトバンの、かかとが・・・

 引っ掛かる。

 どてっ!

 尻モチついて、コケた。

 ソラトバンがこうして後ろに下がったため・・・

 チーニャが、オーガの前に、取り残されてしもうた!

 彼女は、スープ呑みかけの姿勢のまま、止まっておる。立ち上がってすらおらぬ。

 いかん!

 立ち上がらにゃ・・・!

 と、思うのだが。

 立てん。

 足腰から、力が抜けてしもうて。

 

 そんなソラトバンに、オーガは猛然と突進して──

 

「おいコラ!! ドラ鬼ィ!!」

 

 ──テーブルひとつを挟んだところで、止まった。

 

「ウチの友人に、何か用かァ!」

 オーガの突進を止めたのは。

 黄色い衣をまとったオーガの娘──

「鬼術師か」

「六間洞の鬼術師、清雅」

 ──であった。

 

 静まり返った食堂を歩いてくる清雅。

 ハツラノッツ組30人に目を据えて、歩いて来ながら・・・

 

「言うとくけどなァ? このソラ──オイコラそこの取り巻きィ!! よそ見せんと聞いとけ!!」

「ハイ!」キョロキョロしとったゴブリン6人、直立する。

「──このソラトバンは、トンボ様が認めた、弐ノ塔の乗り手や。ウチら兄妹の友人でもある」

 清雅はゆっくり歩いてきて、オーガの前に立った。

 牙チラつかせて相手を睨む。

「・・・なんだ」

「人が話しとんのに、アタマ高いのう? ワレぇ」

「・・・。」

 オーガは、その場に片膝ついた。

 これでもまだ、清雅よりちょっと高い位置に目がある。あきれたデカさである。

「・・・話を続けられよ。六間洞の鬼術師よ」

「おう。コイツにケンカ売るんなら、ウチらにもケンカ売る覚悟でやれ。それを言うておく」

「承知した」

「以上や。──ほんならな」

 クルッと背中向けて、清雅は立ち去った。

 入り口に彼女の兄鬼3人が居ったが、これも一緒に去る。

 オーガは静かに立ち上がった。

 へたり込んどるソラトバンを見下ろす。

「・・・仲間には、恵まれとるようじゃのう? 腑抜けのチビ殿」

 そして、静かに食堂を出て行った。

 

 ソラトバンは、あぐらをかいた。

「・・・気にすんな」

 チーニャは慰めてくれたが・・・

 そんな彼女は、お匙(さじ)ですくっとったスープを、平然と呑み始めるのである。

「おまえさんは、落ち着いとるのう」

「オーガとは、何回もやり合ったからな」

「そ、そうか・・・」

「・・・。」

 レモンちゃんも、冷た~い目で、こっちを見ておる。

 ソラトバン、打ちのめされた。

「わしは、ダメじゃ。アイツの言う通りじゃ」

「なにがだよ」

「わしは・・・腑抜けじゃった・・・!」

 

◆ 59、ジョッキーというオーガ ◆

 

「オマエのせいで晩飯喰い損ねたやろォ~」

 

 ソラトバン。文句を言われる。

 再鬼どんの部屋にお礼を言いに行ったら、清雅と3兄弟が集まっておって。

 招かれて入ったとたん、文句言われたんである。

 

「飯、まだじゃったんか」

「ウム」ゴブリン3兄弟、一斉にうなずく。

「済んどったら食堂行くかァ・・・」

 清雅、ぐにゃーっとしておる。ちょっと珍しい態度である。

「おかみさんの料理、楽しみにしとったのにや~・・・」

「すまんことじゃ。いま、もろうてくるで」

「ええから、座れや」

「え? はい」座らされた。

「人の部屋訪ねて来といて、床に座るヤツがあるかァ!」

「なんなんじゃ」立たされた。

「客やったら客らしゅうせえや」

「客っちゅうのは、怒鳴られる立場じゃないと思うんじゃが」

「うっさいァ!」

「ココ座れや」ゴブリン兄貴がクッション出してくれた。

「どうもじゃ、正鬼どん」

「数鬼や」

「すまんことじゃ」

「あやまっとるヒマあったら覚えんかーい」「何回言わすねーん」「ワザとやっとんかー?」「おもろいおもとんかー?」

 兄妹4人の連続攻撃である。

「ははは・・・」

 ソラトバン、力なく笑って、ガックリする。

「・・・すまん。わしが解決すべきことを。それこそ、お客さんである、あんたがたに」

「まあな」

 清雅は沈黙した。

 

 隣に、チーニャが座ってきた。彼女の頭が、肩に乗る。

 その重みで、ソラトバンは、シャキッとした。涙は引っ込んだ。

 しばらくして。

 チーニャは廊下に出て、コボルドを捕まえた。「晩ご飯もらってきてくれ。5人前な」と、頼んだ。

 

 で。

 

「アイツ、何なんじゃ? 清雅は知っとるか?」

「名前はな。けど、チー姉のが詳しいわ」

「──撃竜界の、ボンボンさ」

 チーニャが説明する。

「代々鬼械人乗りの家系だ。父も祖父も、六腕ロボ乗りのゴブリンだった」

「ゴブリン?」

「アイツの両親は、ゴブリンなのさ」とチーニャ。

「ゴブリンから、オーガが生まれることもあるんか?」

「あるにはある」「珍しいパターンやが」「ウム」と3兄弟。

「──アイツ自身も、乗り手になるハズだった」

「ジョッキーやもんな」と清雅。

「?」

「乗る、駆る(かる)、鬼、で乗駆鬼や」

「なるほど」

「──ところが、本人はオーガに育ったもんで、六腕ロボには乗れずじまい」

「デカいもんな」

「そう。しかも、撃竜界が劣勢になって、若手のオーガは疎開させられた」

「子供じゃったんか?」

「撃竜界攻略は20年かかってる」

「そんなに・・・」

「ウチにも来たけどな。飯の問題でギスギスしたんやろ?」と清雅。

「ウム」と再鬼。「大飯喰らい(おおめしぐらい)やからな、オーガは」

「──で、故郷は滅亡。ゴブリンの両親も行方不明さ」

「疎開した先もコレやしな」清雅、手をパーにする。

「そうじゃったんか・・・」

 

 ソラトバン。ちょっとだけ、乗駆鬼というオーガを知った。

 

「──あとひとつ。アイツは、弐ノ塔とも遠い関わりがある」

「とおいかかわり」

「トンボ様が弐ノ塔に飛んできたことがある──って話、したよな?」

「わしが子供ン時に見たヤツじゃな? 死んだまま、飛行ユニットだけ使われたっちゅう」

「そうそう。そのとき乗ってた鬼術師に、アイツの母親が仕えてたのさ」

「へぇ」

「鬼械人担当の鬼術師やったんやろな」と清雅。

「清雅みたいなモンか?」

「六間洞には、そんな細かい区分はない。鬼械人蘇生したんも、ウチが久しぶりや」

「清雅がトンボ様蘇生したやろ? アレで大騒ぎになってな」と再鬼。

「ああ、それで六間洞に戻っとったんか」

「そや」清雅は肩をすくめた。「おかげで見損なった」

「なにをじゃ?」

「・・・。」清雅、無言で、ソラトバンとチーニャを指差す。

「ははは。そういや、報告はしとらんかったのう」

 

 ここで、晩飯が届いた。

 清雅たちと、一緒に食事をする。

 付き合い始めたと、報告もしたソラトバンであった。

 

 翌朝。

 ソラトバンが早起きして、お茶をもらいに行ったところ・・・

 乗駆鬼が、また絡んできた。

 

「おう、チビ!!!」

「おう、乗駆鬼どん!!」

 

 言い返したった。

 

「・・・なんだ」

「ひとつ、言わせてもらうがのう、」

 ソラトバン。お茶こぼさんように、注意しつつ・・・

「弐ノ塔と六間洞を侮辱するのは、やめよ。それだけは、見逃せんから」

「腑抜けのクセに、代表気取りか」

「ちがうわい。恩人だからじゃ」

 

 すると。

 オーガは、ジーッとソラトバンを見つめて、

 

「・・・オマエには、わからぬ」

 と、つぶやいた。

「滅ぼされる無念。死に損なう恥辱。『力』に恵まれたオマエに、わかるハズがない」

 

 乗駆鬼というオーガ。

 これ以降は、暴れることも怒鳴ることもなく、静かに過ごすようになった。

 

◆ 60、まとめをする ◆

 

 さて。

 その朝。チラーニ飛行塔・玄関ホール(=格納庫)に、関係者が集まった。

 

 壁に繋留された鬼械人。チラーニ、トンボ、浮鬼。

 足元には小型の鬼械人。四脚整備ロボのドリナラーニと、弐ノ塔のおふくろさん。

 そして人間。

 六間洞の鬼術師(きじゅつし)清雅と、再鬼・正鬼・数鬼の3兄鬼(あにき)。

 幽雲洞の密偵ディルーネ。・・・と、彼女に抱き締められとる海鳥型鬼械人・ウミドラーニ。

 弐ノ塔の美女チーニャ。

 そして、我らが主人公ソラトバンである。

 

<現状の、まとめをする>

 と、おふくろさん。

<結論は──バッツワーノ隊が方針を転換したこと。その転換が、我らには非常な危機となること。この2点じゃ>

「どういうことじゃ?」

 ソラトバンには、全然わからぬ。

 方針の転換と言われても・・・昔のことが、わからんし。

「ソラにわからないのも、無理はない」≪バッツワーノ隊の方針しか見てないもんね~≫

 と、チーニャ&チラーニ。

「んむ?」

「帝国はな、ソラ。鬼械人に自由を与えないのさ」

「それは聞いたことあるが」

 ソラトバン、ドリナラーニどんを見る。

「ナンガラックは、目隠し・耳栓・口封じ状態なんじゃろ?」

<ソウジャ!>

 整備ロボ姿のドリナラーニどんが、ピョーンとハネた。

<見エヌ。聞コエヌ。シャベレヌ。鐙(あぶみ)踏マレテ、歩クダケ>

「牛馬よりひどいのう・・・」

<オウ!>

「帝国はねぇ、鬼械人を恐れとるんよ」

 と、ディルーネ。ウミドラーニを撫でくり回しながら。

「恐れる?」

「鬼械人の反乱をね」

「は?」

「ソラ君は考えたコトない? 鬼械人が『人間殺そう』思うたら、人間に勝ち目ないよな・・・って」

「はぁ?」

 ソラトバン、ムッとした。

「ないわ、そんなもん」

「そう? 危ないって思うたこと、ない?」

「危ないかどうかは、そいつの根性次第じゃ。ごっつい男は、みな人殺しか? ちがうじゃろ」

「ふふふw そっかぁ」

 ディルーネはニコニコした。

「──でもねぇ、帝国はちゃうんよ。鬼械人の力を、メッッッ・・・チャ! 恐れとんねん」

「だったら使うなっちゅうんじゃ」

「そこはホラ、デカい国のアカンとこよ。妥協ってヤツ」

「うん?」

「鬼械人は恐い。でもオーガに勝つために鬼械人の力が欲しい。──ほな、あいだ取って、目隠しで!」

「だきょうか・・・」

「ところがだ、」と、チーニャ。「バッツワーノは、鬼械人を1人歩きさせてるだろ?」

 

 鬼械人の1人歩き。

 弐ノ塔では当たり前だが、帝国の蒸気械人で1人歩きしとるのは・・・

 

「・・・爆鬼か」

「そうだ。あれだけが、1人で歩いてる」

「帝国の方針からしたら、あり得へんでしょ?」とディルーネ。「あんな危険な鬼械人を、1人で歩かすなんて」

「なるほど」

 ようやく話が呑み込めた。

「帝国軍人のバッツワーノが、帝国の方針に従っとらん、っちゅう話か」

<そうじゃ>

 

 ふわ~ん・・・。

 おふくろさん、浮かび上がった。

 二叉フォークの腕を広げる。

 彼女の背後には、鬼械人──トンボ、チラーニ、浮鬼が、そびえ立っておる。

 

<そしてこのことは、我ら鬼械人にも、そなたら人間にも、非常な危機となる>

「・・・予言か?」

<ちがうわい>

 おふくろさん、腕下ろした。だらーんとなる。

<そなたには、わからんのか?>

「なにがじゃ」

<バッツワーノが次に手を出すものが>

 

 みんなの視線を浴びて、ソラトバンは、考えた。

 バッツワーノが次に手を出すもの。

 ショラン・ギサンチで手に入る『力』とは?

 

「『力の筒』・・・・・・・・・爆鬼か!」

 毛が逆立つのを感じながら、みんなを見た。

「幽雲洞に『力の筒』を造らせて・・・・・・爆鬼を、量産するつもりか!」

<そうじゃ>

 おふくろさん、うなずく。

<じゃによって──>

 

<我らは、幽雲洞を守らねばならぬ。これが、共通の利益じゃ>

 

◆ 61、編成会議 ◆

 

<つづいて、我が塔の編成会議をする>

 

 弐ノ塔と六間洞のメンバーに、おふくろさんが宣言した。

 合同会議は解散。ここからは身内の相談である。

 

<特に、トンボの運用を中心として>

 ジロリ・・・。

 おふくろさん、ソラトバンを見てきた。

<食い違いは、ここで解消しておこうじゃないか>

「うん?」

<言いたいコト、あるんじゃろ>

「ないが」

<なんでじゃ>

「なんでて」

<文句言うとったじゃろ! 戦闘中!>

「ああ・・・」

 ソラトバン、頭をかく。

「いや、あれはな。目の前で人が死んどるのに、何もするなと言われて、つらくてのう」

<それだけか>

「それだけっちゅうか・・・ううむ」

 

 ソラトバン。

 不満は、あった。

 だがそれを、うまく説明できんかった。

 

 ・・・ま、ふつうの人間はこんなもんである。文句は言えても、献策(けんさく)はできんのだ。

 

≪ワレに意見ありや≫

 浮鬼が声を上げた。

≪トンボ様を戦場に出して、なんもさせんと、退却させた。アレぁ、あきませんわ≫

<なにがアカンのじゃ>

≪おいおい、おふくろさん! 下で戦っとる六腕ロボの身にもなってくださいや!≫

<は?>

「・・・。」正鬼が手を上げた。「士気ですわ、浮鬼が言うとんのは」

<士気じゃと>

「トンボ様はオーガの英雄や。それが逃げたら『もうアカン! 負けや!』となるんですわ」

「士気ガタガタになる」と数鬼。

≪そや。オレが言いたいんは、まさにそのこと≫

<ふむ・・・>

「わし、どうしたら良かったんじゃろうな?」

≪ソラは、アレや。見られとることを意識してくれ≫

「見られとる」

≪トンボ様はな、旗なんや≫

「はた」

≪勝利の軍旗(ぐんき)。『この人についてけば、勝てる!』っちゅう存在なんや≫

「なるほど・・・」

 

 ソラトバン。

 トンボどんを見上げた。

 修理中のトンボどん。小さく、首をかしげた。

 ・・・なんも言うてくれん。

 

 もしかして──試されとるのか?

 

 ソラトバン。

 初めに戻って考えた。

 トンボどんに蘇生の話をした時。自分が蘇生された時に。

 自然と、清雅の顔を見ることになる。・・・清雅は『なんでこっち見んねん』っちゅうカオをしたが。

 

 なぜ「もう一度生きてみよう」と思ったのであったか?

 

「・・・浮鬼どん」

≪ん? なんや≫

「わしら、やりたいことをやるために、生き返ったんじゃ」

≪・・・ア?≫

「士気の話は、ありがたい指摘じゃった。肝に銘じるわい」

 ソラトバン。

 浮鬼どんを見上げて・・・

 

「じゃがな。

 トンボどんを祀り上げる(まつりあげる)のは、ナシじゃ。

 オーガの英雄じゃと? 勝利の軍旗じゃと?

 ちがうぞ。

 わしらは、自分のやりたいこと、やり残したことをやるために、生きとるんじゃ」

 

 ・・・と、言い放った。

≪アア!?≫

 浮鬼は、キレた。

≪遊びやないんやぞ、坊主! 戦の──殺し合いの話をしとんねや!≫

「わかっとるわ!」

≪なんやと・・・≫

「殺し合いするためにトンボどん連れて来たんじゃないっちゅうとんじゃ」

≪・・・?≫

 浮鬼、首を動かした。トンボを見る。

 トンボも、首を動かした。浮鬼を見る。

 そして。

 浮鬼は、肩を落とした。≪・・・そうですか≫

 

「──ともあれ、」チーニャがフォローした。「浮鬼殿の指摘は、的確だ」

≪そうだね~。トンボ様には、もっと目立ってもらおうと思います≫

「どうするつもりじゃ?」

≪まず、偵察はオレが担当します≫

「飛行塔はどうするんじゃ?」

≪ママが来たから、もういいのさ~≫

 

 チラーニは、今回の遠征で、飛行塔の操作を担当しておった。

 この状態でチラーニ本体を動かすと、注意散漫(ちゅういさんまん)となる。

 下手すれば、事故る。

 ソラトバンが訊いたのは、そういう意味であった。

 

「ほじゃ、チラーニどんが出ると。・・・おまえさんもか」

「心配すんな」

 チーニャ、肩をすくめる。長い黒髪を波打たせた。

「前には出ない。戦うの嫌いだから。私。オマエとちがって」

「わしだって好きじゃないが」

「はいはい」

 チーニャ、手をヒラヒラする。

「──で。トンボ様には、弓騎兵になってもらおうかと思ってます」

≪ほう?≫トンボが反応した。≪ハポノの弓騎兵か≫

「そうです」

 チーニャは、馬にまたがって弓を撃つマネをした。

「突撃して撃つ。引いて撃つ。大麦を刈るように、敵を殺してもらいましょう!」

<・・・。>

 おふくろさんが、非常~~~に渋い顔をした(表情はないが。角度とか)。

 トンボも困り顔である(表情はないが)。

≪・・・ソラトバン。このおなご、暴れ馬じゃぞ≫

「ひどいw ──やって頂きたいのは、爆鬼の破壊ですね」

≪ふむ≫

「引けって言っても引かないし、コイツ」≪列電魔旋弾持たせとけば、距離空けれるからね~≫

「いや・・・うむ。まあな」

 

 ハツラノッツで見た、虐殺。

 絶対に、許さん──秘かに決意しとるソラトバンではある。

 

≪ひとつ、問題がある≫

「なんです?」

≪列電魔旋弾撃つと、ソラの耳がやられるじゃろ? それをどうするか・・・≫

「えっ!?」

 チーニャ、飛び上がる。

「聞いてないぞ! いつだよ!?」

「あー・・・おまえさんが通信切られとった時かのう?」

「・・・。」≪・・・。≫

 チーニャ、睨む。チラーニ、たじろぐ。

 ここは、おふくろさんが手を上げた。

<音の問題については、私に考えがある>

「なんかあるんか」

<うむ。現在、仕上げの作業中じゃ。できたら紹介する。今日の午後にでも>

「そうか」

 ソラトバン、安心する。で、ふと訊いてみた。

「・・・そう言や、おふくろは飛びながら作業できるんじゃな」

<いまさらか。ま、私は分霊型じゃからな>

 

◆ 62、わけみたまがた ◆

 

「なんじゃ。その、わけみたまがたとは」

<縄があるわな>

「はぁ」

<縄っちゅうのは、糸をより合わせたモンじゃわな>

「そうじゃな」

<その糸が、私じゃ>

「・・・うん」

<縄も、私じゃ>

「うん?」

<糸の1本1本が私であり、より合わせた縄も私である。かかる構造を、分霊型と自称しておる>

「全然わからんのじゃが」

「ソラが字を書くときは、『ソラが』字を書くワケだが、」

 とチーニャ。

「ママは、『手が』字を書くのさ」

「?」

「壱ノ手が字を書いて、弐ノ手が鍛冶をして、参ノ手が料理する──そんな手を、何十本も持ってんのさ。ママは」

「そんなバカな」

<バカとはなんじゃ>

「ありえん。自然に反する」

<まあな。妙雅から私が分裂したのも、そのせいかも知れん>

「妙雅様も、わけみたまがたなんか」

<そうじゃ>

「・・・っちゅうことは、おふくろさんは、妙雅なんか?」

<元はな。いまはちがう>

「はぁ」

≪性格は、丸っきり別人じゃな≫とトンボ。

「そうなんか」

≪妙雅様は、ちと気取っとるところがあった。弐ノ塔様は、親しみやすいわい≫

<うるさいわい>

「元が同じなのに、性格は別人じゃと・・・」

 ソラトバン、首をひねる。

「やっぱり、訳がわからん」

 

◆ 63、乗り手甲 ◆

 

 午後。

 幽雲洞にだいぶ近付いて、山中に降下。今夜はここで停泊である。

 塔が落ち着いたあと、おふくろさんが乗り手を呼び出した。

 

<乗り手甲の、試着をする>

「のりてこう」

<乗り手を守る装甲。縮めて、乗り手甲じゃ>

「なるほど」

<ソラ・チーニャ・再鬼殿たち3兄弟。以上、5人分を用意した>

「清雅は・・・」

<前には出さんと言うたじゃろ>

「今回は特にな」清雅、うなずく。「六間洞の蘇生術師として参加しとる以上、危ないマネはできん」

「そうか」

 話はわかる。だが、ちょっと寂しいソラトバンであった。

 

 がちゃがちゃがちゃ。

 作業ユニットがやってきた。4本足。2本腕。ギョロリ一つ目の、虫みたいな平たいヤツである。

 

 頭(平たい)に『乗り手甲』が載っておる。

 おのおの、自分用のを選んで、広げてみて・・・

 

「ダンゴムシみたいじゃな」

 

 乗り手甲。

 兜(かぶと)と腕鎧・背中鎧が一体となったプレートアーマー・・・なのだが。

 その見た目が・・・

 ツヤのない、黒っぽい灰色といい・・・

 幅の広い金属板を何枚も重ねた構造といい・・・

 ダンゴムシに、そっくりなんである。

 

「その言い種(いいぐさ)はなんや」「造ってもろといて」「ご両親に礼儀習うてへんのか」

「ぐぬっ」

 ソラトバン、3兄弟に痛いトコ突かれた。

<名称は、乗り手甲じゃ>

「はい。すまんことじゃ」

<ダンゴムシなど、断乎阻止>

「は?w」

<初めに、兜をかぶるんじゃ>

 

 5人。頭からすっぽりと甲をかぶる。

 完全に頭部が覆われる甲で、圧迫感がある。

 ただ、口元はクチバシみたいに伸びておって、息苦しくはない。

 目のところは横に幅広い窓になっておる。このガラス(?)は、チラーニたちの覗き窓と同じ材質のようだ。

 

<次に、袖を通し・・・>

 

 腕は、すんなり通った。

 チーニャがおっぱい揺らしてモゾモゾしとったので、3兄弟の視線をさえぎって、手伝ってやった。

 

<肩当てと腰当ての位置を合わせたら・・・>

 

 これも問題なし。内側には高級な布が張ってあって、着心地は悪くない。

 

<アゴ、脇の下、肘、手首、そして腰のベルトを留めて、完了じゃ>

 

 ベルトが多い!

 ひとつひとつ留めて、やっと着終わった。

 少し動いてみる。手が伸ばしにくい。背中も。

 

「のけ反れんのじゃが」

<わざとじゃ。強い衝撃を喰らったとき、首と背の骨を守るためじゃ>

「なるほど」

「ツノが・・・」

 正鬼どんがモゴモゴ言う。

 こっちも耳がふさがっとるため、若干聞き取りづらい。

<収まりが悪いか? ほじゃ、もう少し削ろう>

「・・・。」

 チーニャは自分の胸を見つめておる。

 ものすごく・・・その・・・

 脇の下と腹をベルトで締めとるせいで・・・

 見事に、高々と、峰になってしまって・・・

 兜の中の目が、ジロッとこっち向いた。ソラトバン、目ェ逸らす。

<強い光を浴びた場合、覗き窓が白濁して目を守る。ほじゃけ、直射日光は避けるように>

「濁ったら、困るんじゃないか?」

<その時は、ココを叩く>

 カコーン。

「いてっ」

 ソラトバンの額が叩かれたかと思うと。

 ポロッ、と。

<覗き窓が取れるようになっておる>

「なんで、わしを叩く」

<他意はない>

「ホンマかい」

<名称は乗り手甲じゃ>

「はい」

<最後に。大きな音から耳を守る仕掛けもしてある>

「おお!」ソラトバン、喜ぶ。「誰か、ちょっと怒鳴ってみてくれ。耳元で」

「アホぉーーー!!!」

 即座に清雅がやってくれた。

「・・・普通にうるさいんじゃが?」

<日常的な音は通す。大きな音は、やわらげる。そういう設計じゃ>

「なるほど。人の声は聞こe──」

「ボケぇーーー!!!」

「もうええわ! うるさいんじゃ!」

「ウキキw」

 

◆ 64、第一の爆鬼攻撃 ◆

 

 それから、数日が過ぎて。

 

 乗駆鬼たちハツラノッツ脱出組が、塔を降りた。

 徒歩で、幽雲洞に向かう。

 

 大変言いにくいが・・・これは、囮(おとり)を兼ねた、危険な移動であった。

 幽雲洞によれば、宣戦布告は来とらんが、偵察同士の小競り合いは起きておる。

 その真っ只中に歩いて近付くのだから。

 ダークエルフたちは嫌がったが・・・

 

「いつまでも世話にはなれぬ。さらばじゃ!」

 乗駆鬼が、そう言って、歩き出したので。

 ゴブリンが、ついていき。

 ダークエルフも、従うしかなかったんである。

 

 これに、バッツワーノが反応した。

 南東の丘陵地帯に、対鬼ナンガラック3鬼が頭を見せたのである。

 幽雲洞も速やかに対応した。

 ヤドカリチャリオットと六腕ロボをずらっと出して、『近付くなら攻撃する』との、無言の警告をする。

 睨み合いのうちに、乗駆鬼たちは幽雲洞の方面へと消えた。

 文字通り・・・

 幽雲洞の方へと、丘を登ったり下ったりしておるうちに・・・

 忽然と(こつぜんと)・・・

 全員が、消えたんである。

 

<幽雲様がトンネル掘ったんちゃう?>

 ディルーネが、通信で種明かしをしてくれた。

「あー・・・やりそうじゃな」

<幽雲様か。世話になったのう。壊れたりしたとき>

「そのうち、あいさつに行かんとな」

<そうじゃな>

 

 乗駆鬼たちは、無事に合流したとのこと。

 戦闘も発生せず、ソラトバンたちは塔に引き返して、休んだ。

 

 戦端が開かれたのは、そのさらに数日後。

 朝食の時間のことであった。

 

 ドォォォーーーン・・・!

 と、遠雷のような音が轟いたあと、小さな地震があって・・・

 

<守りの森が爆破された>

 

 幽雲洞から、緊急の連絡が入ったのだ。

 

「あの地震は、爆鬼じゃったか!」

 朝食の時間であった弐ノ塔は、3組に分かれて動いた。

 トンボと浮鬼は、現場へ急行。

 チラーニは、幽雲洞と連絡しつつトンボを追う。

 そして、本塔は清雅たちを守るため高空へ避難──である。

 

 トンボと浮鬼は、攻撃塔の屋上に移動。伏せて、しがみついた。

 攻撃塔、発進。本塔から分離して、猛烈な速度でカッ飛ばした。

 

「・・・なるほど。これは、しんどい移動じゃな」

 猛烈な風が、ハッチの外で唸りを上げておる。

 浮鬼が降下に失敗したのも無理はない。

<そっちは・・・まだ・・・ましやっ・・・!>

 正鬼の応答。

 めっちゃ苦しそうである。

<こっちはっ・・・宙吊りやっ・・・うつ伏せっ・・・!>

「ああ」

 六腕ロボの座席は、直立状態しか想定しとらん。

 うつ伏せになると、乗り手は宙吊りになってしまうんである。

「がんばれ」

<後でっ・・・覚えとれっ・・・!>

 

 ゆく先に、キノコ雲が見えた。

 爆鬼に巻き上げられた、大地の残骸。虐殺の雲であった。

 空が陰って・・・

 パラパラと、雨が当たり・・・

 土砂降りになった。

 だが、攻撃塔は速度をゆるめぬ。おふくろさん、容赦ナシである。

 森が見えてきた。

 幽雲洞への入り口を守る、天然の迷路。ソラトバンたちがお手伝いした守りの森である。

 この森がある限り、ナンガラックや蒸気械弩砲では、幽雲洞に近付くことができん。

 できんかった。

 

「森が、ズタボロになっておる」

 木が薙ぎ倒され、雨の中で火を噴いて、灰色の煙を上げておる。

 ハツラノッツで見た光景と、よく似ておった。

<こちらチラーニ・チーニャ。幽雲洞の情報。敵密偵の自爆攻撃だそうだ>

「自爆じゃと? 人間の?」

<そうだ。幽雲洞に近付こうとした人間を、ゴブリン森番が阻止した。直後に、爆発だ>

「・・・ゴブリン森番は」

<応答ナシ。全滅と判断>

「くそっ」

<幽雲洞も激怒している。宣戦布告ナシに爆鬼だからな・・・。もう軍人とは認めない、と言っている>

 

 攻撃塔は幽雲洞上空に到達する。

 地上には近付かない。高度を保ったまま、速度をゆるめ、上空を巡回する。

 何も言われんでも、ソラトバンは『鷹の目』で地上を見た。

 

 燃える森に、黒い雨が降り注ぐ。

 勇敢にも、その森を走るゴブリンたちの姿が見えた。現場の確認のため、危険を承知で接近するのであろう。

 

 平野を、黒い雨が濡らしてゆく。

 ヤドカリチャリオットと六腕ロボが、水たまりを踏んで展開する。

 30台、30鬼ほどであろうか? かなりの迫力である。

 ヤドカリには、もちろんオーガの重装戦士。

 そのオーガの中に・・・

 

「む? いま、こっち向いたオーガ・・・」

<あいつか。どうした?>

「乗駆鬼じゃ。アイツ、出撃するんじゃな」

 

 ・・・乗駆鬼というオーガも、加わっておった。

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