私の世直しアカデミア   作:M.T.

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最近お気に入りが増えててうれしい。
高評価をくださった方、ありがとうございます!!
面白いと思っていただけましたら高評価(9・10あたり)、お気に入り、感想等よろしくお願いします。
作者は単純ですので、ものすごく喜びます。





第10話 あれ?これってもしかしてハーレム…?

「上に行く者には更なる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞPlus Ultra!予選通過一位の緑谷出久くん!!持ちポイント1000万!!」

 

 ミッドナイト先生が言うと、緑谷君は絶望の表情を浮かべる。

 雄英もえげつない事するね。

 

「制限時間は15分。振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が表示されたハチマキを装着!終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競うのよ。取ったハチマキは首から上に巻く事。取りまくれば取りまくるほど管理が大変になるわよ!そして重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れても、アウトにはならないってところ!“個性”発動アリの残虐ファイト!でも……あくまで騎馬戦!!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!一発退場とします!それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!!」

 

 ミッドナイト先生が言うと、皆がそれぞれ交渉を始めた。

 2位の轟君と3位の爆豪君は大人気だ。

 私は遠くからそれを見つつ、近くにいた心操君と療子に話しかける。

 

「……2人とも」

 

 私が話しかけると、心操君は私の表情を見て察したのか、ため息をついてから口を開く。

 

「ああ、わかってるよ。俺達で固まってチームは組まない、だろ?」

 

「理解が早くて助かる」

 

「えっ、どうして……」

 

 私と心操君がアイコンタクトで意思疎通をすると、療子はきょとんとする。

 だが療子も、しばらく考えて私達の考えに気がついた。

 

「……あ、そっか。私達でチームを組んじゃうと、私達が刹那ちゃんのおこぼれを貰ったみたいになっちゃうから…」

 

「そういう事だ」

 

 療子が言うと、私は腕を組みながら頷く。

 自惚れるわけじゃないが、ハッキリ言って、私達三人が組めばこの種目はほぼ確実に勝ち上がれる。

 

 だが、それでは意味がないのだ。

 もしそれで勝ち上がれたとしても、心操君と療子が私のおこぼれを貰ったみたいになってしまう。

 二人にそのつもりがなくても、教師陣にそう捉えられてしまえば、ヒーロー科への編入を検討してもらえなくなる可能性が高い。

 

 そもそも、この体育祭の主役はヒーロー科だ。

 私がヒーロー科を蹴落としてまでクラスメイトを贔屓して勝ち上がらせてしまっては、教師陣からの心象は良くないだろう。

 友情と馴れ合いは、全くの別物だ。

 本気でヒーロー科に編入したいなら、私の力を借りずとも戦える事を証明してもらわねばな。

 

「この種目は、誰が勝っても負けても恨みっこなし…だよな?」

 

「ああ。私に挑戦したいというのなら、いつでも大歓迎だ。じゃ、頑張れ」

 

 そう言って私は、二人を突き放すと、はじめから目をつけていた生徒に向かって歩き出した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

緑谷side

 

「ん?」

 

 麗日さんとチームを組む事にした僕は、逃げ切りの為に必要な人を仲間にするべく声をかけていた。

 僕達が声をかけたのは、飯田君だ。

 僕は飯田君に、考えた作戦を話した。

 

「飯田くんを先頭に、僕・麗日さんで馬を作る!そんで麗日さんの“個性”で僕と飯田くんを軽くすれば、機動性は抜群!騎手はなるべくフィジカルが強い人が良いけど…まだ決めかねてる。とにかく逃げ切りを可能にする策はこんくらいしか…!」

 

 僕が作戦を話すと、考え込んでいた飯田君は顔を上げて口を開いた。

 

「………流石だ、緑谷くん…だが、すまない。断る」

 

 えっ……?

 

「入試の時から…君には負けてばかり。素晴らしい友人だが、だからこそ…君についていくだけでは、未熟者のままだ。君をライバルとして見るのは、爆豪くんや轟くんだけじゃない」

 

 飯田君は、踵を返して去っていった。

 

「俺は君に、挑戦する!」

 

 そう言って飯田君が合流したのは、轟君のチームだった。

 

 もう…始まってる!!

 全員…敵!

 そうだ…僕は今、トップ…

 

 友達ごっこじゃ、いられ「話は聞かせてもらったぞ緑谷少年!!」

 

「「うわあ!!?」」

 

 僕の思考にヌルッと誰かが割り込んできたものだから、振り向くと、超至近距離に六徳さんが立っていた。

 音もなく距離を詰めていきなり話しかけられたから、僕と麗日さんは思わずその場で飛び上がってしまった。

 なんか日差しが絶妙な角度で当たって、後光が差してるみたいになってる…!?

 

「機動性が要ると言っていたな。ならば私と組め」

 

 六徳さんは、腕を組んで仁王立ちしながら言ってきた。

 この人、第一種目で普通科とサポート科を煽動してたよな…

 その六徳さんが僕に声をかけてくるなんて、一体何が目的なんだ…!?

 

「ああ、もしかして、私が第一種目で打倒A組を掲げて普通科とサポート科を煽動していたから警戒しているのか?それに関しては申し訳なかった。競技を盛り上げるには、君達を利用して皆を煽動するのが一番手っ取り早かったからね。別に君達A組に心の底から敵意を抱いているわけではないという事は、理解しておいてくれると有り難い」

 

 あけすけだ…!!

 というか、サラッと考えてる事読まれた!?

 

「さて、言い訳はこの辺にしておいて、ここからが本題だ。私をチームに入れろ」

 

「「!!」」

 

「私の“個性”は、触れたものを速く動かす事ができるのだ。応用次第では攻撃や防御にも使えるぞ。私なら、このチームに必要な機動力と攻防を補ってやれる。どうだ?悪くない提案だとは思わんか?」

 

 六徳さんは、ずいっと詰め寄って僕に提案をしてきた。

 ち、近い…!

 神々しいオーラが出てて直視できない…!!

 あとなんかすごい良い匂いするんですけど!?

 

「そ、そっ…それは、わかっ…わかったんですけど、ど、どどどうして僕に声を!?多分ぼ、僕、超狙われると思うんですけど!?」

 

「狙われるという事は、注目を浴びるという事だ。そうだろう?私はね、目立ちたいのだよ!!」

 

「露骨や!!」

 

 六徳さんがジ◯ジョ立ちしながらキッパリ言い切ると、麗日さんがツッコミを入れた。

 

「これは、六徳の名を世に知らしめるビッグチャンスなのだよ。私は、売名の為なら何だって利用する。充分すぎる動機だろう?」

 

 六徳さんは、不敵な笑みを浮かべながら自分を売り出してきた。

 僕が麗日さんの方を見ると、麗日さんは首を縦に振った。

 

 僕と麗日さんは、六徳さんをチームに入れる事にした。

 『機動力と攻防を補える』、その言葉が本当なら、これ程心強い助っ人はいない。

 というか、僕は今選り好みできる立場じゃないし…声をかけてくれた人を仲間にしない手はない。

 

「……わかり、ました…僕達と組んでくださ「私と組みましょ1位の人!!!」わぁぁ近、誰!!?」

 

 僕が六徳さんに返事をしようとすると、いきなり知らない人が割り込んできた。

 B組でもないし…本当に誰この人!?

 

「私はサポート科の発目明!あなたの事は知りませんが立場、利用させて下さい!!」

 

「あっ、あけすけ!!」

 

 六徳さんといい、全然包み隠さないな!?

 

「あなたと組むと必然的に注目度がNo.1になるじゃないですか!?そうすると必然的に私のドッ可愛いベイビー達がですね、大企業の目に留まるわけですよ。それってつまり大企業の目に私のベイビーが入るって事なんですよ!!」

 

 発目さんは、自分の目的をこれっぽっちも包み隠さずにペラペラ話した。

 すると麗日さんが、戸惑いながら発目さんに話しかける。

 

「ちょちょ、待って…ベイビーが大企業…?何を……」

 

「それでですね、あなた方にもメリットはあると思うのですよー」

 

 発目さんは、戸惑う麗日さんをフル無視して僕にサポートアイテムを見せてきた。

 

「サポート科はヒーロー科の“個性”をより扱いやすくする装備を開発します!私、ベイビーがたくさんいますので、きっとあなたに見合うものがあると思うんですよ!これなんかお気に入りでして、とあるヒーローのバックパックを参考に独自解釈を加え…」

 

「それひょっとしてバスターヒーロー“エアジェット”!?僕も好きだよ事務所が近所で昔ね…」

 

「本当ですか!」

 

「これ、ひょっとしてA7075*1のパーツを使っているのか?」

 

「おや、六徳さんお目が高いですね!」

 

「腐食対策に、表面にアルマイト加工を施しているのか。形状もよく出来ている。空気抵抗を最小限に抑え、圧力に強い構造をしているな。難加工材をこれほど美しいフォルムに仕上げるとは…是非ともウチのサポート会社に来てほしいものだ」

 

 サポートアイテムの数々を紹介する発目さんに、僕と六徳さんはすっかり意気投合して三人で盛り上がった。

 僕は主にサポートアイテムを使っているヒーローの話題で、六徳さんは機械工学や人間工学の話題で発目さんと話が合った。

 うひょおお、僕の推してるヒーローの装備がこんなに…!!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

癒治side

 

 チーム決めの時間になってすぐ、他の人達は同じクラス同士で騎馬を組み始めた。

 そりゃあ、“個性”や性格を把握してる同じクラスの人と組むよね…

 

 …どうしよう!!?

 私、第一種目でほとんど目立てなかったし、心操君も刹那ちゃんも行っちゃったから絶対あぶれるの確定じゃん!?

 ぶっちゃけ同じC組のよしみで組んでくれるものだと思い込んでたから、まさか断られるなんて思ってなかったよ…

 三人で一緒に戦えると思ってたから、軽くショック。

 軽くだよ……?

 軽く……

 

 どうしよう、どうしよう…

 どんどんチームが決まってく…!

 交渉時間は…あと5分しかない…

 早く声かけないと、このままだとあぶれちゃう…

 

 

 

「あ、いたいた!そこのお前!」

 

「ちょっ…鉄哲待ってってば」

 

 私が途方に暮れていると、入試の時の男の子が、クラスメイトと思しき女の子2人と一緒にこっちに向かってくる。

 どうしたんだろう…?

 

「俺らと組もうぜ!!」

 

「………えっ?」

 

 わ、わたし…?

 今、私に声をかけたの…?

 

「鉄哲さん、この方とはお知り合いなのですか?」

 

「おう!入試の時、こいつのおかげですげー助かったんだ!あんときゃありがとな!」

 

 嘘…覚えててくれたんだ…

 私の事なんて、覚えてないと思ってたのに…

 

「いえ…こ、こちらこそ…あ、ありがとうございます…」

 

「そういや名前聞いてなかったな!俺は鉄哲徹鐡だ!お前は!?」

 

「し、C組の…ゆ、癒治…療子、でひゅっ…」

 

 か、噛んじゃった…

 すごい恥ずかしいんだけど…

 

「私、拳藤一佳。よろしく!」

 

「塩崎茨と申します。よろしくお願いします」

 

 私が自己紹介をすると、拳藤さんが気さくに、塩崎さんが礼儀正しく名乗った。

 あれ…?

 なんかこれ、私と組む前提で話が進んでない…?

 私、違うクラスだし、“個性”も性格も知らないのに…

 

「ねえ、チーム組むのはいいんだけどさ。“個性”教えてくれない?ほら、流石に他のクラスの“個性”までは把握してないからさ」

 

 私が戸惑っていると、拳藤さんが話しかけてきた。

 どうしよ…これ、返答次第では「やっぱり要らない」って言われたりするのかな…

 でも、“個性”を話さないのも、それはそれで信用なくなっちゃうし…嘘はつかない方がいいよね?

 

「えっと…私の“個性”は…血をあげた人を回復させられる“個性”…です…」

 

 私は、自分の“個性”を正直に伝えた。

 三人の視線が、私に向けられる。

 その視線が痛くて、つい下を向いてしまった。

 やっぱり、直接攻撃できない“個性”なんて必要ないよね…

 

「いいじゃん」

 

「な、そう思うだろ!?」

 

 ふぇ……?

 

「い、いいんですか…?違うクラスなのに…それに私、弱いですよ…?」

 

「本戦に上がってこれたんだから、弱いって事はないでしょ。それに直接戦うのは私や鉄哲の役目だし、あんたはサポートに徹してくれればいいから」

 

「傷ついた人々を癒して差し上げられる…なんと素晴らしい“個性”なのでしょう。癒治さん、よろしければ私達にお力をお貸し下さい」

 

 拳藤さんと塩崎さんの言葉に、私は思わず涙を流した。

 たった今会ったばかりの私に優しくしてくれたばかりか必要としてくれるなんて、なんて出来た人達なんだろう。

 

「おわ!?急にどうした!?大丈夫か!?」

 

「いえ、すみません…ありがとうございます…」

 

 私が涙を拭っていると、鉄哲君があたふたした様子で私を心配した。

 真っ直ぐで優しい鉄哲君の態度に、思わず顔が赤くなるのを感じた。

 私は、私に声をかけてくれた鉄哲君と、快くチームに引き入れてくれた拳藤さんと塩崎さんに、何度も感謝した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

 私はA組の緑谷君と麗日君、そしてサポート科の発目君とチームを組んだ。

 療子はどうやら、B組の三人とチームを組んだらしい。

 心操君は…A組とB組の混合チームか。

 ……もしかして、『洗脳』でチームを組んだのか?

 主審のミッドナイト先生が何も言わない以上、ルール的には問題ない…という事なのだろう。

 であれば、私がとやかく言う事ではない。

 

 普通に交渉したところで、声をかけた人間がそう簡単に他のクラスを信用できる人間とは限らないし、断られればむしろ“個性”をバラされるリスクを増やすだけだ。

 だったら洗脳してしまった方が早いし、後の事は勝ち上がってから考えればいい。

 他者を蹴落とし利用してまで勝ち上がりたいのは誰だって同じなのだから、それを責める資格は誰にも無い。

 

 ちなみに私は、二人の“個性”をチームメイトに話していない。

 それくらいのマナーは守って然るべきだ。

 療子のチームは兎も角、目立たずに勝ち上がりたいであろう心操君は私達を狙ってこないだろうから、別に何も問題はなかろう。

 

 そして今、私は他の三人と作戦会議をしている。

 作戦としては、緑谷君が飯田君を仲間にする前提で考えていた策を、私の“個性”でカバーするというものだ。

 ここまでスムーズに作戦会議が進んだのは、飯田君をスカウトする前提故の幸運と言えよう。

 なんて考えていると、緑谷君が私に話しかけてくる。

 

「あの…騎手は六徳さんに任せても良いでしょうか…?」

 

「私はやらないよ?緑谷君、キミに決めた!」

 

「えっ!?」

 

 私が騎手を降り、代わりに緑谷君を推薦すると、緑谷君が驚く。

 まいったな…そっちは私を騎手にするつもりでいたのか。

 

「い、いやいやいや!!僕が六徳さんの上に乗るだなんて、畏れ多いです!!」

 

「そう言うな。私が騎手では意味がないのだ」

 

「えっ、どうして……」

 

「私はヒーローに興味がないからね。ヒーローになる気がない者が主役の座を奪うのは、この体育祭の趣旨に反する。これは勝ち敗け以前に()()()の問題だ。ああ、君が嫌なら、別に麗日君でも構わないが」

 

 私が言うと、緑谷君は麗日君を見た。

 すると麗日君は、朗らかに笑顔を浮かべる。

 

「私はデクくんが良いと思う!」

 

「あ…じゃあ、よろしくお願いします…はい…」

 

 麗日君が緑谷君を騎手に推薦すると、緑谷君は顔を真っ赤にしてペコペコと頭を下げた。

 さて…と。

 これで全員の役割が決まったな。

 

「では、緑谷君が騎手で…先頭は私がやろう。機動力を活かした回避と牽制を行う。発目君は右翼で、死角の補強とサポートアイテムでの援護を担当」

 

「わかりました!」

 

「麗日君は左翼で、状況に応じて私達を軽くしてくれ」

 

「っはい!」

 

 私が指示を出すと、発目君と麗日君が頷く。

 この4人で、トップを死守してみせる。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

癒治side

 

「あの…先生、これ…お願いします…」

 

 鉄哲君、拳藤さん、塩崎さんの三人とチームを組んだ私は、ミッドナイト先生に声をかけてから、先生に使用済みの採血キットを渡した。

 

「あら、癒治さん。もう済んだの?」

 

「はい……」

 

「わかったわ。これは大事に保管しておくわね」

 

「ありがとうございます」

 

 ミッドナイト先生が尋ねたので小さく頷くと、先生は採血キットを預かってくれた。

 私は、チーム戦になった時にチームメイトを回復させてあげられるように、会場に採血キットを持ち込んでいた。

 ヒーロー科はコスチュームの使用が禁止されているから、私の採血キットもダメなんじゃないかと思ったけど、一応事前に先生に確認したら、自分の血を抜くだけならOKとの事で、公平を期す為に競技中は先生に預ける事を条件に持ち込みを許可してもらえた。

 

 採血キットの持ち込みを許可してもらえたのは、すごくありがたい。

 自分を回復させる分には噛むなり引っ掻くなりして血を出せばいいけど、他の人は私を噛んで直接血を啜るのは抵抗あるだろうし。

 思いの外あっさり許可が降りたからなんでだろうって思ったけど、多分衛生面の観点で許可してくれたんだと思う。

 

「お、戻ってきた!」

 

「お待たせしました…」

 

 ミッドナイト先生に採血キットを預けた私は、鉄哲君達のもとへ戻った。

 私が戻ってきた時点で、交渉タイムは残り1分だった。

 そろそろ騎馬を組まないと…

 

 

 

「うぅ、緊張してきたぁ…」

 

 騎馬を組んだ私は、緊張のあまりガクガク震えてしまう。

 すると騎手の拳藤さんが、私に声をかけてきた。

 

「しっかり構えな!」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

 拳藤さんが喝を入れてきたものだから、私は思わずビクッと肩を跳ね上がらせた。

 私達のチームは、拳藤さんが騎手で、鉄哲君が先頭、塩崎さんが右翼、そして私が左翼だ。

 基本的には拳藤さんの『大拳』で攻撃と牽制を、鉄哲君が頑丈な鉄の身体を生かした近接と防御、塩崎さんが蔓を使った索敵と中〜遠距離防御、私はチームメイトの回復を担当する事になった。

 私の背が低いから馬を作れるか不安だったけど、そこは塩崎さんが蔓でうまい事固定してくれたおかげで崩れにくい馬が作れた。

 リーダーの拳藤さんは、ポイントが割り振られたハチマキをしっかり巻いて馬の私達に声をかける。

 

「鉄哲!」

 

「おう!」

 

「茨!」

 

「はい!」

 

「癒治!」

 

「は、はい!」

 

 拳藤さんの声に、一瞬遅れたけど精一杯の声で返事をした。

 正直、自信はない。

 第二種目に残った人の中では、間違いなく私が一番弱い。

 ヒーロー科どころか、心操君や発目さん、そして刹那ちゃんですら、私にとっては高い壁だ。

 

 それでも、心操君と刹那ちゃんが私を強くしてくれたから…

 鉄哲君達が、私の“個性”()を必要としてくれたから…

 今度は、私が期待に応える番だ。

 

「獲るよ、1000万!!」

 

 絶対、ここで一番を獲るんだ…!!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

『さあ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!!』

 

『………なかなか、おもしれえ組が揃ったな』

 

 チーム決めの交渉タイムが終わると、マイク先生が相澤先生を起こした。

 相澤先生の言う通り、フィールド上に並ぶ他11組の騎馬は、一筋縄ではいかなさそうな騎馬ばかりだ。

 私達は、女子三人で作った馬の上に、1000万のハチマキを巻いた緑谷君が構えている。

 

『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!』

 

 ……うん、皆私達のハチマキを奪う気満々だねぇ。

 いいね、そうこなくっちゃというやつさ。

 

「麗日さん!!」

 

「っはい!!」

 

「発目さん!!」

 

「フフフ!!」

 

「六徳さん!!」

 

「応!!」

 

「よろしく!!!」

 

 緑谷君は、私達三人で作った馬の上にどっしりと構えて、気合を入れた。

 

『よォーし組み終わったな!!?準備はいいかなんて聞かねぇぞ!!いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!3!!!2!!1…!』

 

 それぞれの騎馬が、標的に狙いを定める。

 緑谷君は、まっすぐ前を見据えて覚悟を決める。

 

 

 

『START!』

 

 プレゼント・マイク先生の声が響くと同時に、騎馬が3騎私達に向かってきた。

 B組の騎馬が2騎*2、A組の騎馬が1騎*3か…

 

「実質それ(1000万)の争奪戦ってね!!」

 

「ハチマキは貰うよ、緑谷!」

 

「……っ、刹那ちゃんごめんなさい!」

 

 3チームは、開始とほぼ同時に私達に奇襲を仕掛けてきた。

 療子まで仕掛けてくるとは…なかなかいい度胸してるじゃないか。

 初手から私達に挑んできた度胸を讃えて、プレゼントをやろう。

 

「三人とも、しっかり掴まっていろ」

 

「えっ、あ、はい!」

 

 私が指示を出すと、三人はしっかり私の肩を掴んだ。

 私は、自分を含めた4人に“個性”を発動し、地面の土を思いっきり蹴り上げた。

 すると、その瞬間──

 

 

 

 ――ドンッ!!!

 

 

 

「何これ…!?」

 

「ぐ…耳が…!!」

 

 凄まじい音と衝撃波が発生し、奇襲を仕掛けてきた騎馬の攻撃が吹き飛ばされた。

 それと同時に大量の砂塵が舞い上がり、周囲に煙幕を作った。

 

「今だ麗日さん発目さん!!顔避けて!!」

 

 緑谷君が手元のスイッチを押すと、緑谷君のバックパックが火を吹き、私達の騎馬が空高く舞い上がる。

 他のチームが砂煙で私達を見失っている間に、発目君のサポートアイテムと麗日君の“個性”で逃げ仰せた。

 

「飛んだ!?サポート科のか!追ええ!!」

 

 空に逃げた私達を、塩崎君が蔓で、取蔭君が切り離した両手で、常闇君が影のモンスターで、耳郎君が耳朶のプラグで追ってくる。

 私は、自分達の騎馬のスピードを“個性”で戦闘機並みの速度にまで上げる事でそれら全てを振り切り、死角からの攻撃は指を弾いて空気を撃ち、ノールックで撃墜した。

 

 私の“個性”は、対象に流れる時間を遅くする事で対象物の移動速度を引き上げるというものだが、速度を上げるとそれに伴って運動エネルギーも増加するという性質がある。

 撃ち出す空気の弾速を上げれば、その分威力も高くなる。

 余談だが、最初の攻撃は、音速で地面を蹴り上げた事によって発生した衝撃波だ。

 私は、時間を操れるだけでなく、時間と密接な関係にある物理法則も自在に操れる。

 私が機動力だけでなく攻撃力や防御力をも補えると言ったのは、こういう事だ。

 

「目眩しを兼ねた威嚇…!!防御も完璧だ…すごいよ六徳さん!!」

 

「幼少の頃から暗殺者に狙われていたからね…死角からの攻撃の撃墜は任せろ」

 

 緑谷君の賞賛に、私は得意げに答えてみせた。

 

「着地するよ!」

 

 麗日君が合図をしたので、私は“個性”を解除し、時間の流れを元に戻した。

 その直後、麗日君が『無重力(ゼログラビティ)』を解除し、シューズ型のサポートアイテムを使って緩やかに着地した。

 

「どうですかベイビー達は!!可愛いでしょう!?可愛いは作れるんですよ!!」

 

 発目君は、興奮気味に自分の発明品を自慢した。

 麗日君の“個性”で彼女以外を浮かせ、発目君のサポートアイテムで空中移動。

 そして私の“個性”でスピードを上げて逃げる…悪くない作戦だ。

 

「機動性バッチリ!すごいよベイビー!発目さん!!」

 

「でしょー!?」

 

「浮かしとるからやん…」

 

 緑谷君が私や発目君を褒めちぎると、麗日君が拗ねた。

 私達が逃げている間にも、B組がハチマキを集めているようだ。

 

『さ〜〜〜〜まだ2分も経ってねぇが早くも混戦混戦!!各所でハチマキ奪い合い!!1000万を狙わず2位〜4位狙いってのも悪くねぇ!!』

 

 おうおう、マイク先生も煽るねぇ。

 それじゃあ、私達を狙えと言っているようなものじゃないか。

 

「アハハハ!奪い合い…?違うぜこれは…一方的な略奪よお!!」

 

 後ろから高い声が聴こえてきたので振り向くと、六本腕の巨躯の男子…障子君が一人で突っ走ってきた。

 

「障子くん!?アレ!?一人!?騎馬戦だよ!?」

 

 障子君が一人で突っ込んできたものだから、緑谷君が驚いている。

 皮膜が不自然に膨らんでいる…中に誰かいるな。

 それよりも今は、この場を離れる事を考えなければ。

 何しろ、療子達の騎馬もすぐそこまで来ているからな。

 

「退避するぞ!!しっかり掴まっておけよ!」

 

「うん!ん!?何!?取れへん!」

 

 振り向くと、麗日君の左足が地面から離れなくなっていた。

 麗日君の靴と地面の間には、ブニブニとした紫色の球がくっついている。

 

「峰田くんの!!一体どこから…」

 

「ここからだよ緑谷ぁ…」

 

 障子君の触手の隙間から、小柄な男子…峰田君が顔を覗かせていた。

 軽くホラーだな…

 

「なァァ!?それアリィ!!?」

 

「アリよ!」

 

 緑谷君が驚くと、ミッドナイト先生が返した。

 …うん、主審が言うならアリなんだろう。そういう事にしておこう。

 そう思っていると、今度は障子君の触手の隙間から、ピンク色の鞭のようなものが飛び出てきた。

 

「わっ!!!?」

 

 飛び出てきた鞭を、緑谷君が咄嗟に避けた。

 見ると、障子君の触手の中にはもう一人…蛙女子の蛙吹君がいた。

 

「流石ね、緑谷ちゃん…!」

 

「蛙吹さんもか!! 凄いな障子くん!!」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

『峰田チーム、圧倒的体格差を利用しまるで戦車だぜ!』

 

 峰田君と、蛙吹君…梅雨ちゃんを乗せた障子君が、巨躯を活かして突撃してくる。

 だが間一髪のところで、麗日君の左脚のサポートアイテムを犠牲に、その場からの脱出に成功した。

 

「ああベイビーが引き千切れたあ!!!」

 

「ごめん!!でも離れられたよ!」

 

 自分の発明品を壊された発目君がショックを受けると、麗日君が謝りながらも発目君に感謝した。

 お礼とお詫びに、これが終わったら、発目君には何か奢ろう。

 …いや、研究費を振り込んだ方が良いのか?

 なんて考えていると、見慣れたイガグリ頭がこちらに急接近してくる。

 

「調子乗ってんじゃねえぞクソが!」

 

 爆豪君が、私達の頭上を取って爆破を放ちながら急降下してくる。

 まいったな、両手が塞がってて反撃できない。

 

「防げ緑谷君!」

 

「っ…でやぁっ!!」

 

 私が指示を出すと、緑谷君は一瞬躊躇しながらも、爆豪君に向かって右手を押し出す。

 すると、トラックで撥ねられるような音を立てながら爆豪君の身体が吹き飛ぶ。

 

「が…!!」

 

 緑谷君が爆豪君をぶっ飛ばしたのを見届けた私は、すかさず自分の騎馬に“個性”を発動して逃げた。

 

『おおっとぉ!?緑谷、えげつねえ張り手を繰り出してきたァーーー!!おめーそんな超パワー持ってんなら最初から出しとけよ!!』

 

「へっ!?いや、違…!今のは僕じゃなくて…」

 

 緑谷君が爆豪君を弾き飛ばすと、緑谷君の“個性”だと勘違いしたマイク先生が大袈裟な実況をしたものだから、緑谷君がぎょっとした。

 何の事はない、緑谷君に“個性”を付与して物理法則を無理矢理ねじ曲げ、空気の塊を遷音速で撃ち出しただけだ。

 聞いた話によれば、緑谷君はオールマイトに似た超パワーの“個性”を持っているそうだが、まだ“個性”のコントロールが未熟で身体をボロボロに壊してしまうので、そう簡単には使えないそうだ。

 だからこそこうして私が“個性”を付与する事でサポートしているわけだが、パンチで衝撃波が撃てるという点ではできる事が似ているので、緑谷君の“個性”だと間違われても仕方がないと思う。

 

 なんて考えていると、爆豪君の身体にテープが巻きつけられ、勢いよく引っ張られる。

 見ると、瀬呂君が、テープで素早く爆豪君を回収していた。

 …器用な事するね。

 

『おおおおおお!!?騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ!!?』

 

「テクニカルなのでオッケー!!地面に足ついてたらダメだったけど」

 

 マイク先生が驚くと、ミッドナイト先生がサムズアップをする。

 もう何でもアリだな、この騎馬戦。

 

「俺をぶっ飛ばすとは、いい度胸じゃねえかクソデク!!」

 

「うわあああ!!?」

 

 爆豪君が(ヴィラン)顔負けの表情で殺気を撒き散らしながら両掌から爆破をバチバチと放つものだから、緑谷君が悲鳴を上げた。

 作戦タイム中に聞いた話によれば、二人は腐れ縁…もとい幼馴染みだという。

 緑谷君には、観衆のハードルを上げてしまったのと粗暴なイガグリを怒らせてしまったお詫びに、ウチの玩具メーカーがこの夏数量限定で発売を予定している『すいすいオールマイト人形』をタダで譲ってやろう。

 

 その後も私達は、他の騎馬の死角を縫ったり相討ちを誘ったりする事で“個性”の使用を最小限に抑えながら逃げつつ、追いかけてくる騎馬を衝撃波や発目君のサポートアイテムで退けた。

 …さて、そろそろ始まってから7分が経つ頃だが…

 他のチームの状況はどうなっているのかな?

 

『やはり狙われまくる1位と、猛追を仕掛けるA組の面々共に実力者揃い!現在の保持Pはどうなってるのか…7分経過した現在のランクを見てみよう!』

 

 ふとモニターに目を向けると、現時点での全チームの得点が表示されていた。

 ほう、私達が逃げている間に、何やら面白い展開になっているね。

 

『………あら!!?ちょっと待てよコレ…!A組、緑谷以外パッとしてねぇ…ってか爆豪あれ!?』

 

 A組は、私達のチームと轟君のチーム以外0点だった。

 2位は…物間チームか。

 物間君が爆豪君のハチマキを奪ったのか…?

 だとしたら、こちらとしては正直グッジョブだ。

 あの核兵器みたいな男に残り8分弱追われ続けるのは、さすがにキツいからね。

 私達から離れた場所で、好きなだけ蹴落とし合いをしていてくれ。

 

「皆、逃げ切りがやりやす──」

 

 緑谷君がそう言った瞬間、轟君の騎馬が目の前に立ちはだかった。

 

『さァ残り時間半分を切ったぞ!!』

 

「そう上手くは…いかないか」

 

「そろそろ、奪るぞ」

 

『B組隆盛の中果たして、1000万Pは誰に首を垂れるのか!!!!』

 

 マイク先生が煽る中、私達と轟君チームが対峙した。

 もう少し終盤で仕掛けてくると思ったが…

 轟君のチームと、私達2騎を狙う他のチームが一斉に私達を狙ってきた。

 

「飯田、前進!」

 

「ああ!」

 

「八百万、ガードと伝導を準備」

 

「ええ!」

 

「上鳴は…」

 

「いいよわかってる!!しっかり防げよ…」

 

 轟君のチームが、何かをしようとしている。

 …拙い。

 

「回避!!!」

 

 私が咄嗟に叫ぶと、緑谷君がバックパックのスイッチを押した。

 するとバックパックが火を吹き、私達の身体が宙に浮き上がる。

 その直後、地上にいた周りの騎馬を、上鳴君の電撃が襲った。

 唯一轟君のチームだけは、百が作ったであろう絶縁シートを被って感電を免れていた。

 

 轟君は、百が作った伝導に右手で触れ、周りの生徒ごと地面を凍らせた。

 電撃で痺れていた他のチームは、氷結を回避できずに氷漬けになってしまう。

 

『何だ何した!?群がる騎馬を轟一蹴!』

 

『上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた…流石というか…障害物競走で全員に避けられたのを省みてるな』

 

『ナイス解説!!』

 

 ったく、危ないな…

 反応が遅れてたら、私達もああなってたところだったよ。

 発目君のサポートアイテムが電撃で壊れていたら、空中に回避できずに氷漬けになるところだった。

 

「ありがとう、六徳さん!!」

 

「悪い勘はよく当たるんでね…!」

 

 緑谷君が礼を言ってくるので、私は轟君達を警戒しつつ応えた。

 

「っ避けられた!?」

 

「落ち着け、想定内だ」

 

 私達が空中に逃げた事に上鳴君が驚くと、轟君は落ち着いた様子で他の騎馬のハチマキを奪い、私達に狙いを定める。

 轟君は、空中に回避した私達を、()()()()で攻撃した。

 私は自分の騎馬の時間を遅くし、動きがゆっくりになった炎を回避した。

 

 うむ、流石はNo.2ヒーロー“エンデヴァー”の息子だ。

 私でなきゃ見逃しちゃうね。

 時を縮めていなければ、4人まとめて()()()()()()()()()()()()ところだった。

 まあ、流石にアレを直接当てるようなマネはしないだろうけどね。

 ハチマキ燃えちゃうし。

 

「八百万!」

 

「はい!」

 

 私達が炎を軽々と避けると、今度は百がランチャーを創造して何かを撃ち出してきた。

 この角度だと…私じゃ撃ち落とせないな。

 

「緑谷君、振り払え!」

 

「でぇいっ!!」

 

 私が指示を出すと、緑谷君は空中に向かってアッパーカットを繰り出した。

 すると緑谷君の拳から衝撃波が放たれ、百が撃ち出した弾を弾き飛ばした。

 風圧で巻き上げられた弾が割れ、中から何かが飛び出す。

 あれは…トリモチか…?

 

 …なるほどね。

 炎を避けられたから、動きを封じようとしてきたか。

 危ない危ない、反応が遅れていたらガチガチに固められていたところだった。

 

 そんなこんなで、私は“個性”で緑谷君の援護をしつつ、騎馬の機動性を維持する事で轟君達の攻撃を掻い潜った。

 戦闘機の航空戦術を参考にした空中機動で轟君チームを翻弄しつつ、空中を飛び回りながら5分間逃げ続けた*4

 空中にいれば(電線で絡め取られたりしない限り)上鳴君の電撃を喰らう事はないし、轟君の氷結もだいぶ避けやすくなる。

 それに私達には、空中での遠距離攻撃の手段がある。

 空中戦に持ち込みさえすれば、有利なのは私達だ。

 

 

 

『残り時間約1分!!緑谷チームは依然ハチマキを死守したまま、戦闘機みてーな動きでガン逃げ!!そしてガン逃げ野郎緑谷を追い続ける轟チーム!!STGかよ!!』

 

 マイク先生の声が響く中、残り時間1分弱となった今、私達は相変わらず轟君から逃げていた。

 そろそろ麗日君の“個性”と発目君のサポートアイテムのバッテリーが心配になってきたので、一旦降りる事にした。

 

「降りるよ!」

 

 麗日君が“個性”を解除したから、私も着地に備える。

 着地した瞬間に上鳴君に感電させられるのが嫌なので、降りる前に上鳴君目掛けて衝撃波を放った。

 すると轟君が、咄嗟に氷壁を出して衝撃波を防いだ。

 私が撃った衝撃波が、氷壁を粉々に砕く。

 

「おわっ、危ねえ!?」

 

 危うく爆豪君の二の舞になるところだった上鳴君が、怯んだように驚く。

 騎馬を崩すのが禁止されているが故の威嚇射撃とはいえ、防がれるとはね…

 だが己より速い相手に対し視界を封じたのが命取りだ。

 私は、轟君が氷壁で衝撃波を防いだ一瞬の隙に、氷壁の内側に発目君お手製のスタングレネードを投げ込んだ。

 次の瞬間、閃光と爆音が炸裂した。

 

「くっ…!!」

 

「今だ!!降りるぞ!!」

 

 私達は、周りの全ての騎馬が機能を停止した一瞬の隙を突いて、上鳴君の電撃の射程範囲外に着地した。

 スタングレネードの威力はやや大袈裟なドラゴン花火くらいのものだが、一瞬だけ注意を逸らすには充分すぎる威力だ。

 

「なんとか離脱できた…!このまま逃げ切るよ!」

 

「うん!」

 

 轟君チームの射程から離脱した私達は、そのまま逃げ切ろうとした。

 だが…

 

「皆。残り1分弱…この後俺は使えなくなる。頼んだぞ」

 

「飯田?」

 

「しっかり掴まっていろ。奪れよ轟くん!」

 

 飯田君が、轟君と何かを話している。

 そして話が終わったかと思うと、姿勢を低くして構えた。

 何をする気だ…?

 

「トルクオーバー!レシプロバースト!」

 

 

 

 ――DRRRRRRR!!! 

 

 

 

 けたたましいエンジン音とともに、轟君チームが突っ込んできた。

 ほう、素晴らしい加速だな。

 私でなければ、何が起こったのかすらわかるまい。

 こんなの、私が事前に調べた“個性”のデータにはなかったぞ。

 私の知らない間に、“個性”を成長させていたという事か…面白い。

 だが私には、()()()()()

 

 飯田君の超加速で一気に距離を詰めてきた轟君は、緑谷君のハチマキに手を伸ばした。

 そして通り過ぎざまに、ハチマキを掴んだ。

 

『なーーーーー!!?何が起きた!!?速っ速ーーー!!飯田、そんな超加速があるんなら予選で見せろよーーー!!!』

 

 予想外の飯田君の加速に、観客が驚く。

 だが…

 

「っ逃げるよ皆!!」

 

「ああ!」

 

「なっ!?」

 

 緑谷君が頭に巻いていたハチマキを奪われた瞬間、私は騎馬に“個性”を発動して逃げた。

 ハチマキを奪われたはずの私達がすぐに逃げたので、轟君チームが驚いていた。

 そりゃあ、1000万を奪われたら普通は取り返そうとするはずだからね。

 

『…って、ありゃ!?緑谷チーム、1000万を持ったまま逃げたぞ!?どーなってんだこりゃあ!?』

 

『おそらく、先頭の六徳があの一瞬で罠を仕掛けたんだ』

 

『ウッソだろまじか!!』

 

 私達が逃げると、モニターでポイントを把握していたマイク先生が驚きを見せる。

 唯一相澤先生だけは、何が起こったのかを理解していた。

 そう。轟君達が奪ったのは、1000万のハチマキではなかったのだ。

 

「くっ、やられた…!!」

 

「どうなってやがる…?俺は確かに1000万を掴んだはず…!」

 

 私達が1000万を持ったまま逃げ仰せると、轟君が珍しく動揺を見せた。

 実は私達のチームは、前半に他の騎馬から逃げている途中、心操君のチームからハチマキを貰っていたのだ。

 どうやら彼は、終盤に失うものが何もない状態で他の騎馬からハチマキを奪う腹積もりだったらしく、元々持っていたハチマキをあっさり譲ってくれた。

 轟君に1000万を取られそうになった時は、私の“個性”で時を縮めている間に緑谷君が1000万のハチマキと心操君から貰ったハチマキを入れ替えた、ただそれだけの事だ。

 

 これに関しては、正味轟君に落ち度はない。

 人間の反応速度の限界よりさらに短い時間で行われたハチマキの入れ替えに気付けという方が無理な話なのだ。

 飯田君のレシプロバーストの勢いに乗って一瞬で掠め取ったのなら尚更だ。

 基準となる時を自在に操れる私が1位のチームに入ったのが運の尽き…と言う他ない。

 

 さっきの加速で飯田君のエンジンがエンストしたので、残りの数十秒は、彼等の射程範囲外をキープしながら逃げ続けていればいいだけの話だ。

 おっと、そうしている間にどうやら爆豪君が物間君からハチマキを奪い返したようだ。

 爆豪君が、(ヴィラン)顔負けの表情で爆破を放ちながら一直線に向かってくる。

 

「それ寄越せやデク!!!」

 

「か、かっちゃん!?」

 

 爆豪君が容赦なく爆破を放ってくると、緑谷君がギョッとした。

 だが警戒しなきゃいけないのは、爆豪君だけではないのだな、これが。

 

「緑谷君、伏せろ!!」

 

 嫌な予感がした私は、咄嗟に緑谷君に向かって叫んだ。

 するとその直後。

 

「どわっ!!」

 

 捕縛用のネットが、私達の方へ飛んできた。

 緑谷君が咄嗟にネットを避けると、私達を捕える為に撃たれた爆破とネットが互いに邪魔し合い、私達はその隙を突いて脱出を図った。

 今のは…百の攻撃か。

 

「お待ちなさい、緑谷さん!」

 

「今度こそ逃がさねぇ…!」

 

 振り向くと、轟君のチームが超スピードで私達を追いかけていた。

 飯田君のエンジンがエンストしたはずなのに、何故動ける…?

 ふと飯田君を見ると、彼の脹脛に氷の膜ができていた。

 

 ……ああ、そういう事か。

 轟君の“個性”で飯田君の脹脛を冷やしてエンストを緩和していたのか。

 そうまでしてまだ追いかけてくるとは…諦めの悪さは賞賛に値するね。

 なんて思いつつ、私達は轟君チームと爆豪君チームから逃げ続けた。

 

『そろそろ時間だ!カウント行くぜ!エヴィバディセイヘイ!10!9!8!7!6!5!』

 

 マイク先生のカウントダウンが響く中、2機の攻撃が飛び交う。

 私達は無数の弾幕を掻い潜り、フィールドを駆け回った。

 だが轟君が氷壁を作って私達の行く手を阻んできたので、方向転換を図る。

 

『4!3!2!1!』

 

 私達が方向転換して逃げようとしたその時、轟君と爆豪君が急接近して緑谷君のハチマキに手を伸ばした。

 緑谷君は、咄嗟に右腕に“個性”を発動し、手を勢いよく振って衝撃波を放った。

 

 ……ムッ?

 腕を壊さずに発動できた…?

 火事場の馬鹿力というやつか?

 私がそんな事を考えた、その瞬間。

 

 

 

『TIME UP!』

 

 マイク先生が時間切れを知らせ、爆豪君が顔からベシャッと地面へ落ちる。

 緑谷君は、ハチマキを持ったままだ。

 さて…順位はどうなったかな。

 

『早速上位4チーム見てみよか!!1位緑谷チーム!!2位爆豪チーム!!3位轟チーム!!』

 

 うむ、ここまでは予想通りだ。

 残り1チームは、誰が勝ち上がるのかな?

 

『4位取か…アレェ!?オイ!!!心操チーム!!?いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!』

 

 ムッ…?

 心操君、いつの間にハチマキを取っていたのか。

 やるじゃないか。

 

『以上4組が最終種目へ…進出だああーーーーーーーーーーーー!!』

 

 

 

 

 

*1
アルミニウム合金の一種。超々ジュラルミンとも呼ばれる。軽量かつ強度が高く、航空機や人工衛星等に使われる。

*2
拳藤チーム、取蔭チーム

*3
耳郎チーム

*4
第一種目でやった空中移動法で麗日君の“個性”やサポートアイテムのバッテリーを極力セーブしたらいけた




オリ主の介入によりハーレム騎馬となったデクチームと拳藤チーム。
余談ですが、この世界線の鉄哲は、癒治ちゃんの介入により爆豪との僅差の2位で入試に合格してます。
ちなみに騎馬のチーム分けはこうなっています。


緑谷チーム 10000160P

緑谷出久  10000000P
麗日お茶子 130P
六徳刹那  20P
発目明   10P


爆豪チーム 660P

爆豪勝己  200P
瀬呂範太  175P
切島鋭児郎 170P
芦戸三奈  115P


轟チーム  600P

轟焦凍   205P
飯田天哉  185P
八百万百  125P
上鳴電気  85P


耳郎チーム 535P

耳郎響香  105P
常闇踏陰  180P
砂藤力道  140P
口田甲司  110P


拳藤チーム 530P

拳藤一佳  70P
鉄哲徹鐵  165P
塩崎茨   195P
癒治療子  100P


取蔭チーム 435P

取蔭切奈  15P
骨抜柔造  190P
泡瀬洋雪  155P
柳レイ子  75P


峰田チーム 415P

峰田実   120P
蛙吹梅雨  150P
障子目蔵  145P


心操チーム 345P

心操人使  135P
尾白猿夫  160P
庄田二連撃 45P
吹出漫我  5P


物間チーム 275P

物間寧人  30P
黒色支配  60P 
回原旋   95P
円場硬成  90P


小大チーム 175P

小大唯   55P
凡戸固次郎 80P
小森希乃子 40P


鱗チーム  115P

鱗飛竜   50P
宍田獣郎太 65P


角取チーム 60P

角取ポニー 25P
鎌切尖   35P

A組の期末前の修行パートいります?

  • 書け
  • いらん、本編進めろ
  • んなもんより他の番外編書け
  • 好きにしな
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