バイトがキツすぎてスランプになってたんや…
今回は作者の書きたかったものを書けるだけ詰め込みました。
面白いと思っていただけましたら高評価、お気に入り、感想等よろしくお願いします。
作者は単純ですので、ものすごく喜びます。
昨日までの快晴が嘘のような土砂降りの朝。
私は、山根の運転するリムジンに乗って紅茶を飲みながら登校し、スマホでニュースをチェックしていた。
ネット上では私のせいで爆豪君が『パフ豪パフ己』などという不名誉極まりない渾名で呼ばれ、ヘドロ事件も併せてネットのおもちゃになりかけていたが、私の部下が対応してくれたおかげでだいぶ落ち着いた。
あの時は脳機能が低下していたせいで距離感がうまく掴めず、爆豪君が私の胸にダイブするという放送事故を起こしてしまった。
………すまん、爆豪君。
山根が運転してくれた車から降りた私は、傘を差して正門から校舎の玄関までの道のりを歩いて校舎に入った。
濡れた傘の水気を切ってから傘地を丸めネームバンドで留めて、傘を傘立てに立て、靴を上履きに履き替えて教室に向かう。
二日間の休日を『休日?何それ美味しいの?』状態で過ごした私だったが、今日から通常の授業が始まる。
だが、私の心は未だにざわついたままだ。
ターボヒーロー“インゲニウム”を再起不能にしたヒーロー殺しは、未だ逃走を続けている。
体育祭の途中で早退した飯田君も心配だ。
私は別に、復讐が悪い事だとは思わない。
きっちりと借りを返してから新たなスタートを切るという生き方もあるし、復讐を果たす事で第二、第三の被害者を出さずに済む事だってある。
復讐は何も生まないなどといった綺麗事は、大切なものを失った事がないから言える事だ。
だが憎しみに駆られて殺しに手を染めるのであれば、話は別だ。
一時の感情にまかせて取るに足らない輩を殺したところで、何一ついい事などない。
復讐をするのであれば、復讐する相手以外を巻き込まない方法でやるべきなのだ。
かつて両親を殺した奴等への復讐に燃えていた私だからこそ、まだ明るい未来が残されている飯田君には判断を誤ってほしくないと思う。
飯田君が、ヒーロー殺しを殺そうなどと考えていなければいいのだがな…
その可能性が無いとは言い切れないのが、なんとも言えないところだ。
「皆さん、おはようございます!」
教室でクラスメイトが雑談していると、13号先生が教室に入ってくる。
「先日はお疲れ様でした。今日は皆さんに重要なお知らせがあります」
13号先生の言葉に、クラスメイトは緊張した表情を浮かべる。
すると先生は、パァッと両手を広げながら言った。
「再来週に社会科見学があります!」
はい、知ってました。
5月のスケジュールは確認済みだから、そろそろ社会科見学の話がある頃じゃないかとは思っていた。
普通科には、ヒーロー科で言うところの職場体験の代わりに、社会科見学がある。
希望の進路の職場に足を運び、一日を通して仕事を見学するというイベントだ。
ヒーロー科の職場体験とは違って日帰りだし、実際に仕事を体験するというよりは見学してレポートを作成するのがメインだが、見学先を自分で選べるので、そこは他の高校に比べて自由度が高いと思う。
「ここにいるほとんどの人は2年生の後半から、本格的に受験勉強が始まるかと思います。受験勉強で忙しくなる前に、是非関心のある業界への理解を深めて下さいな。ではこれから、見学可能な職場をリストアップした冊子を配ります。この中から希望の見学先を選んで、進路志望の用紙に書いて下さい。行き先の提出期限は土曜日までです」
という事は、あと二日しかないのか…
まあ私達進学組は既に進路を決めている者がほとんどだし、ヒーロー科予備軍組は今決めた業界に必ずしも進学するわけではないだろうから、決める時間は二日あれば充分…なのか?
なんて考えていると、13号先生が進路志望の用紙と見学先をリストアップした冊子を配った。
……結構行ける場所多いな。
やはり雄英の学生は、世間からの信頼が厚いという事か。
私は、見学先のリストにざっと目を通し、霞ヶ関の見学コースが載っているページに折り目をつけた。
「そして心操くん、癒治さん。君達には、個別にお話があります。ホームルームの後、職員室に来て下さい」
「「!」」
13号先生が言うと、二人は僅かに目を見開く。
社会科見学のタイミングでの呼び出し…という事は、二人の進路に関する話か。
もしかして、ヒーロー科関連の話だろうか?
◆◆◆
心操side
俺と癒治さんは、先生に呼び出されて職員室に向かった。
「話って何だろうな」
「緊張しますね…」
俺は、癒治さんと二人で話をしながら廊下を歩いた。
あのタイミングで話をしたって事は、俺達の進路に関する事だろうけど…
……まさかとは思うけど、何かやらかしたからこれから怒られるとかじゃないよな?
俺と同じ事を考えているのか、癒治さんはさっきからずっとソワソワしている。
「失礼します」
不安を抱えつつ、俺は職員室の扉を開けた。
13号先生の席を見つけた俺達は、先生の横に立って話しかけた。
「あの…お話って何でしょうか先生?」
「君達をここに呼んだのは、先日の職員会議での決定を報告する為です」
俺が尋ねると、13号先生はいつになく真剣な声で話し始めた。
「心操くん、癒治さん。君達2人には、2年次からのヒーロー科への移籍を検討する事が決まりました」
「「!?」」
……えっ?
今、なんて言った?
俺がヒーロー科に、移籍…!?
「移籍?俺達がですか?」
「厳密には、まだ検討の段階です。移籍が確定するのは、2学期に予定しているヒーロー科との合同訓練の結果次第との事です」
あ、そっか…
そりゃあそうだ。
俺とした事が、早とちりしちまった。
でも、スタートラインが見えてるのと見えてないのとじゃ全然違う。
このチャンスをものにできるように、気を引き締めていかないと…
「心操くんに関しては、予選を好成績で突破し最終種目に進んでいるので言わずもがな。そして癒治さんに関しては、B組の生徒から、編入を検討してほしいとの申し出があったそうです」
「え……?」
先生が言うと、癒治さんは僅かに目を見開く。
B組の三人が、癒治さんを…?
◆◆◆
ブラドキングside
俺がC組の癒治療子の事で教え子から相談を受けたのは、3日前の事だった。
体育祭の後のホームルームが終わると、拳藤、塩崎、鉄哲の三人が俺を呼び止めた。
「先生。相談があります」
「拳藤、それに鉄哲と塩崎まで…どうした?」
「C組に、癒治療子って子いますよね。私らと一緒に騎馬戦でチーム組んだ…あの子をヒーロー科に移籍させる事って、できないんですか?」
三人が俺に頼み込んできたのは、癒治のヒーロー科への編入だった。
この時の俺は、驚きを隠せなかった。
一度チームを組んだ生徒の事で教え子が相談に来るなど、完全に想定外だったからだ。
「私らがトーナメントに進めたのは、癒治のおかげなんです。だからせめて、ヒーロー科への移籍を検討してもらえませんか?」
「あいつ、入試の時も俺を助けてくれたんです!あれでヒーロー科じゃねえって、絶対おかしいぜ!」
「ブラドキング先生、私からもお願いします。傷ついた人々を救済する為には、癒治さんのお力が必要です」
拳藤達の話によれば、癒治は騎馬戦の時に“個性”を使って三人の…特に鉄哲のサポートをしたそうだ。
世界総人口の8割が“個性”を持つ超人社会においても、治癒系の“個性”は非常に希少だ。
特に癒治の“個性”は、ハードルが高い代わりに、リカバリーガールの『癒し』以上のポテンシャルを持つ。
回復系“個性”が不足しているヒーロー業界に求められる人材だ。
基礎的な身体能力に関しても、予選を好成績で突破している時点で、ヒーロー科に求められる最低限のレベルには達していると見ていいだろう。
戦闘能力の低さは、サポートアイテムやチームアップで補えばいい話だ。
そして何より俺は、チームメイトを想う拳藤達の優しさに胸打たれた。
ここで教え子達の想いに応えねば、何の為の1年B組の担任か。
「なるほどな、お前達の言い分はよくわかった。よし、俺が校長に掛け合っておこう!」
「っまじすか、あざぁっす!!」
俺が校長に掛け合う事を約束すると、三人は大喜びした。
俺は約束通り、その日のうちに校長に掛け合った。
すると校長からあっさり前向きな返事が得られ、もう一人の予選通過者の心操についても翌日に職員会議で話し合う事になった。
「予選通過したのは、六徳、心操、癒治の3人か…」
「心操くんと癒治くんの2人は、どちらもヒーロー科への編入を検討する…という事でいいかい皆?」
「「「意義なし!」」」
会議は、予選通過した三名のうち推薦入学者の六徳を除く二名を2年次にヒーロー科に編入させる、という結論にまとまった。
二人とも無血開城や回復ができるヒーロー向きの“個性”を持っている事、体育祭で結果を出し実力は既に証明済みである事から、反対意見は出なかった。
「2学期の合同訓練までは、2人の指導を相澤くんと管くんにお願いしてもいいかい?」
「そういう事でしたら、癒治療子の指導は俺に任せてもらえないでしょうか?血を使う“個性”との事なので、俺が何かアドバイスできればと」
「オッケー。相澤くんもそれでいいかい?」
「…分かりました。じゃあ俺は、心操ですね」
話し合いの末、俺は癒治を、イレイザーは心操を指導する事になった。
もし二人の編入が正式に認められれば、心操はA組に、癒治はB組に配属される事になる。
B組に新たな教え子が増えるのは、喜ばしい事だ。
まあ、編入が認められればの話だがな…
◆◆◆
癒治side
「このタイミングでこの話をしたのは、君達には社会科見学の代わりにA組とB組の担任による特別講習を用意してあるからです。特別講習中は、ヒーロー基礎学の授業を体験してもらいます」
13号先生は、私達がヒーロー科への移籍を検討してもらえた事、そしてヒーロー科に移籍する為の授業を用意してある事を話してくれた。
「念の為もう一度確認しますが、お2人はヒーロー科の編入を希望しますか?」
「もちろんです。特別講習、是非受けさせて下さい!」
13号先生が尋ねると、心操君は即答した。
私がすぐに答えを出せずにいると、先生が尋ねる。
「癒治さんはどうしますか?」
「私は……」
私はずっと、ヒーローに憧れていた。
ヒーローになって、困ってる人を助けたかった。
好きに“個性”を使ってみたかった。
だけど、ふと思った。
好きに“個性”を使って困ってる人を助けるのには、本当にヒーローになる必要があるの?
そもそも私は、本当にヒーローになりたいの?
ヒーロー科に行きたい理由なら、ないわけじゃない。
入試で私を助けてくれた鉄哲君や、ヒーロー科に編入する為に死ぬ気で努力している心操君と、肩を並べて友達だって言いたい。
だけどヒーローになる為に真面目に頑張っている鉄哲君や心操君を見る度に、わからなくなった。
私には、彼等と同じようにヒーローを目指す資格があるのだろうか?
どうしたらいいのかわからなくて、藁にも縋る思いでヒーロー科への編入に賭けてきたけど、ヒーローになりたいかどうかもわからないのにヒーロー科を目指す事に罪悪感が膨らむ一方だった。
そんな私にどうしたらいいのかを教えてくれたのが、被身子ちゃんだった。
被身子ちゃんは、“好き”に生きる為に医療の道に進む事に決めたと言っていた。
私と同じように苦しんでいた彼女を見て、やっと自分の生き方を見つけられたような気がした。
最後まで悩みに悩んだけど、体育祭に参加して、ようやく決心がついた。
ヒーロー科には、私の“個性”を認めてくれる人達がいる。
だから、私は……
「ヒーロー科への編入を、希望しません」
私は13号先生に、ハッキリとそう伝えた。
すると心操君が、驚いたような表情を浮かべる。
「えっ…?どうして…癒治さん、あんなに特訓頑張ってたのに…」
「私、こんな“個性”だから、昔から『気持ち悪い』って言われてきて…でもヒーローになれば周りの評価も変わるかもしれないと思って、藁にも縋る思いでヒーロー科への編入に賭けたんです。『見返したい』、ただそれだけの理由でヒーローになるのが本当に自分のやりたい事なのか、ずっとわからないままでした。でも刹那ちゃんや被身子ちゃんが背中を押してくれて、鉄哲くん達が私の“個性”を必要としてくれたから…だからやっと、私の望む生き方を見つけられたんです」
私はずっと、ヒーローにならなきゃ認めてもらえないと思い込んでいた。
認めさせる為に必死でヒーローを目指してきたけど、刹那ちゃんが、被身子ちゃんが、鉄哲君が、私の“個性”を認めてくれた。
だからやっと、ヒーローへの未練が断ち切れた。
周りを見返す必要なんかなかった。
賞賛なんか、初めからいらなかった。
私が本当に望んでいたのは、好きに生きて、“好き”に生きる事だったんだ。
それを気付かせてくれたのは、“個性”を認めてくれた皆だから…
だから私は、ヒーローにはならない。
「私は“好き”に生きて、この“個性”で一人でも多くの人を救いたい。でもそれって、ヒーローじゃなくてもできる事だと思うんです。それにやっぱり、ヒーローって危険な仕事だし…先生方やB組の皆の気持ちを踏み躙るような事をしたのは…ごめんなさい。でも私は、私の身の丈に合った道に進みます」
私は、先生に頭を下げて、ヒーロー科への編入を辞退する事を謝った。
そして、自分のこれからの事を、勇気を出して先生に話した。
「私、医者になります。“個性”の使用許可を取って、この“個性”を、一人でも多くの人を救う為に使いたいです」
私は、私の望む生き方を、先生に伝えた。
せっかく講習まで用意してもらったのに、今になって編入を辞退するなんて、自分でも身勝手にも程があると思う。
それでも、今言い出さないで後悔するくらいなら、自分の本心を打ち明けようと思った。
すると13号先生は、優しげな声で言った。
「踏み躙る?とんでもない!この一ヶ月間、よく悩み、そしてよく決断しましたね。君に合った、素晴らしい生き方だと思います」
13号先生の言葉に、思わず目頭が熱くなる。
ここまで親身になって私の話を聞いてくれるなんて、本当にいい先生に恵まれた。
先生に胸の内を打ち明けた私は、ふと心操君に目を向ける。
せっかく今まで共通の目標に向かって一緒に特訓してきたのに、私だけヒーロー科に行かないってなったら、もしかしたらショックを受けているかもしれない。
そう思っていると、心操君はそっと微笑んできた。
「……良かったな」
心操君は、珍しく優しげな表情でそう言った。
先生も、心操君も、ヒーローにならない決断をした私を責めるどころか、私の未来を快く祝福してくれた。
二人とも、私にはもったいないくらい、出来た人達だ。
微笑みながら私を応援してくれる心操君に、私は精一杯の笑顔で応えた。
「はい!」
私が笑顔で答えると、心操君は首の後ろを左手で押さえながら笑った。
「ちなみに、特訓には参加すんの?」
「はい。受験勉強で忙しくなるまでは、できるだけ特訓に参加したいなって思ってます」
「まあそうだよな。六徳さんが考えてくれた特訓、キツいけどなんだかんだで楽しいしな」
「はい!刹那ちゃん大好きです」
改めて心操君に宣戦布告した私は、ニンマリと笑ってみせた。
その後、心操君だけ相澤先生から講習の内容を聞いて、私は先に帰る事になった。
私が荷物を取りに教室に戻ると、刹那ちゃんがいた。
…もしかして、私が戻るまでずっと待っててくれてたのかな?
「刹那ちゃん、もしかして待っててくれたんですか?」
「委員の仕事をしていただけだ」
私が尋ねると、刹那ちゃんは思い出したように机の上の筆記用具を片付け始めた。
それを見て、やっぱり待っててくれてたんだなぁ、と思うと、心がほんわかと温かくなる。
刹那ちゃんは、唇をモニョモニョさせて喜ぶ私を見て怪訝そうな表情を浮かべたかと思うと、少し間をおいて尋ねる。
「…何の話だった?」
「えっと…ヒーロー科への編入の為の特別講習のお誘いでした。心操くんは、相澤先生に指導してもらうそうです」
「やっぱりな。それで、君は承諾したのか?」
刹那ちゃんの質問に、私は首を横に振った。
すると刹那ちゃんは片眉を上げて私の方を振り向く。
私は、満面の笑みを浮かべながら刹那ちゃんに伝えた。
「私、刹那ちゃんと同じ大学に行く事に決めました。医者になって、“個性”使用の資格取って、この“個性”を人の為に使います」
私は、自分の将来の事を刹那ちゃんに伝えた。
刹那ちゃんが行こうとしているのは、日本で一番難易度の高い大学だ。
刹那ちゃんが行くのは法学部だけど、私はそこの医学部に行きたいと思っている。
医者になって“個性”使用の資格を取るのはヒーローになる以上に難しいと聞いているけど、それでも私は私の“好き”に生きるって決めた。
すると刹那ちゃんは一瞬目を見開いたかと思うと、微笑みながら口を開いた。
「…そうか。法学部と医学部はキャンパスが同じだから、大学に進学した後も一緒に学食が食えるな」
「はい!」
刹那ちゃんが微笑みながら言うので、私は笑顔で頷いた。
帰り支度をする刹那ちゃんに対し、私はこれから訓練場に持っていくつもりだったスポーツバッグを見せながら尋ねる。
「…ところで、これからも放課後の特訓に参加してもいいですか?」
「別に構わないが…ヒーロー科には行かない事にしたのだろう?なのにまだ特訓するのか?」
「…私、いつか医者になった時、ヒーローになるのを諦めたって言いたくないんです。ヒーロー科の人達に負けないくらい強くなって、医者になったのは自分の意志で決めた事だって胸を張って言える自分になりたいです」
『人の命を救う為に医者になった』って胸を張って言う為にも、私は、弱いままでいたくない。
もし私に一人でも戦える力が無ければ、きっとこの先、弱さを言い訳にしてしまうだろうから。
相澤先生も言ってたけど、
ヒーロー科に落ちた事実は消えないけど、それでも医者の道は自分の意志で決めたって事にしたい。
…護身術を覚えておけば、何かの役に立つかもしれないし。
「それに何より、楽しいんです!刹那ちゃんと一緒にトレーニングするのが」
「……そうか」
私が笑顔で言うと、刹那ちゃんは僅かに目を見開いて、優しく笑顔を浮かべた。
刹那ちゃんに嬉しそうな笑顔を向けられて、自分でも顔が赤くなるのがわかる。
その日は、後で相澤先生から講習の説明を受けた心操君も一緒に刹那ちゃんとトレーニングをして、私だけ刹那ちゃんの家にお泊まりする事になった。
社会科見学もそうだけど、何気に中間テストまであと3週間しかないから、刹那ちゃんと一緒にテスト勉強をする事にした。
医者になるって決めたんだから、しっかり勉強頑張らないと。
◇◇◇
「雨、なかなか止みませんね…」
「…そうだな」
刹那ちゃんの屋敷に向かう途中、私は刹那ちゃん家のリムジンの中で、雨が降り頻る窓の外をぼんやりと眺めながら呟いた。
昨日までの快晴が嘘のように、ずっと雨が降っている。
何気なく窓の外を眺めていると、刹那ちゃんが声をかけてくる。
「テレビでも見るか?」
「あ、はい」
刹那ちゃんの声にハッとして、私は咄嗟に頷いた。
刹那ちゃんがつけてくれたテレビには、ニュースが映った。
インゲニウムがヒーロー殺しの襲撃に遭い、再起不能の重傷を負ったというニュースだ。
そのニュースを見るなり、刹那ちゃんは不愉快そうな表情を浮かべる。
「…山根」
「畏まりました」
刹那ちゃんが頬杖をついたまま口を開くと、山根さんがテレビのチャンネルを変えた。
するとちょうどドラマが始まったので、屋敷に到着するまではドラマを見て過ごす事にした。
ふと隣に座っていた刹那ちゃんを見ると、刹那ちゃんは珍しく苛立ちを露わにしながら言った。
「まったくもって不愉快だ」
そうこぼす刹那ちゃんは、眉間に皺を寄せていた。
多分、刹那ちゃんが不機嫌になった理由は、さっきのニュースだと思う。
私は、ヒーロー殺しのニュースで刹那ちゃんがここまで不機嫌になる理由を、聞いてみる事にした。
「あの…別に答えなくてもいいんですけど…刹那ちゃんってどうしてそんなにヒーロー殺しを嫌っているんですか?あっ、そりゃあ、殺人犯だから憎む気持ちはわかるんですけど…なんて言うのかな、刹那ちゃんの個人的な事情が関係しているような気がして…」
私が尋ねると、刹那ちゃんはポツポツと話し始めた。
「療子、私はね。復讐は人にするものじゃなくて、原因にこそするべきだと思うんだ」
「それって……」
「奴が、私の両親の仇を殺したんだ」
刹那ちゃんが話し始めたのは、15歳の女の子が背負うにはあまりにも重くて悲しい過去だった。
◆◆◆
刹那side
あれは私が4歳だった頃。
人見知りで引っ込み思案だった私に百以外の友達ができて、家で一緒に遊ぶ約束を交わした日の事だった。
お友達が来るから一緒にお菓子作ろうね、なんて話をしながら、家族三人で一緒にケーキを作っていた。
自慢の父、優しい母、来月に生まれるはずだった弟、そして私を実の孫のように可愛がってくれた山根。
大好きな家族に囲まれて、あの頃の私は幸せだった。
だがその日、幸せは突如として崩れ去った。
いきなり
母は私を連れて、決死の思いで逃げた。
だが結局逃げ切れなくて、母も腹の中の弟ごと私の目の前で焼き殺された。
私も死を覚悟したその時、山根が氷の“個性”を使って、私を守る為に
山根のおかげで唯一生還した私は、父と母を、そして弟を焼き殺した犯人に復讐をすると誓った。
私は、ヒーローや警察に協力を呼びかけて、私の家族を殺した犯人を探した。
私は、ただ目の前の敵を殺す為に追う馬鹿な獣とは違う。
復讐とは、人にではなく原因にするものだ。
私の家族を殺した奴等が誰かに操られていた事くらい、幼い私も理解していた。
黒幕を捕らえて刑場に立たせて初めて、私の家族が浮かばれる。
だから奴等を捕らえて情報を吐かせ、私の家族を殺させた黒幕を炙り出すつもりでいたのだ。
だが私の両親と弟の仇は、私達が捜索をしている間に、呆気なく殺された。
ヒーローと警察が発見した時には既に遅く、あの日屋敷に侵入した
警察は、私の家族の仇を殺した犯人を、当時『スタンダール』と名乗りヴィジランテとして
家族の仇を殺されてスッキリする者も、いるにはいるのだろう。
しかし私の心にあったのは、爽快感や解放感ではなく、耐え難い虚無感だった。
実行犯を殺されて、私は黒幕に繋がる最後の手掛かりを失ってしまった。
黒幕を探し出して刑場に送り、私の家族を理不尽に奪った復讐を遂げるという目的があったからこそ、私は生きる気力を取り戻す事ができたのだ。
家族の仇を殺され、生きる目的を奪われた私にはもはや、何も残っていなかった。
私の復讐相手を殺した男は『ステイン』と名を変え、今度はヒーローをターゲットにし始めた。
奴は、汚職を繰り返しヒーローと呼ぶ事すら嫌気が差す連中ばかりではなく、インゲニウムのような、動機はどうであれ真面目に活動をしているヒーローをもターゲットにした。
呆れてものも言えなかった。
奴が殺したヒーローの中には、誰かにとっての最高のヒーローだっていたはずだ。
私刑で私の復讐を邪魔したばかりか、真面目に活動していたヒーローを殺し、社会に混乱を齎した。
何より、ただ純粋にヒーローに憧れる子供の夢を壊した。
何が『正しき社会の為』だ。
私にとっては、奴も私の家族の仇と同じ。
社会に仇を為す、ただの害だ。
「いつまでも復讐に囚われないで、ただ今日を生きる事に全力を注げばいい。そんなの私だってわかってはいる。だがこの怒りは、どこに向ければいい?ヒーロー殺しのせいで、私は黒幕を炙り出す為の手掛かりを失ったのだ。私の家族を奪った黒幕は、今もなお誰かの幸せを壊しているのかもしれない。それじゃあ、父上と母上が…弟が報われないじゃないか…!!」
私は、いつになく感情を剥き出しにして、抱えていたものを吐き出した。
全てを打ち明けた後で、我に返った。
私とした事が、感情的になって聞かれてもいない事をベラベラと喋ってしまった。
「……すまない、こんな話を聞いても面白くないだろう?」
私が話し終わると、療子は涙ぐんで唇を震わせていた。
そんな泣くような話だったか…?
なんて考えていると、療子は私の手を取って言った。
「ずっと…一人で苦しんできたんだね…これからは私が、刹那ちゃんを一人にはさせないから…!復讐だけが生きる目的だなんて、そんな悲しい事言わないで」
「……うん、ありがとう」
泣きながら優しい言葉をかけてくれた療子に対し、私は思わず頬を緩ませながら礼を言った。
鼻をずびずび鳴らしながら袖で涙を拭う療子の背中を、優しく摩ってやった。
本当に、私には出来すぎた友達だ。
尚の事、ヒーロー殺しも、私の家族を殺した黒幕も、早急に捕まえてやらなければならないと心に誓った。
だけどそれは、私の私怨を晴らす為じゃない。
私の大切な友達が、笑っていられる未来の為だ。
癒治ちゃんはヒーローにならずにオリ主ちゃんと同じ大学に行って医者を目指す事にしました。
これで一緒に恋バナできるね。
ちなみに作者のヒロアカの推しは相澤先生、心操くん、トゥワイス、トガちゃん、コンプレスです。
あとB組の女子も皆好き。
皆が幸せになれる話が書きたかった。
ただそれだけ。
A組の期末前の修行パートいります?
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書け
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いらん、本編進めろ
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んなもんより他の番外編書け
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好きにしな