私の世直しアカデミア   作:M.T.

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アヤクロ様、キャラのご応募及び高評価を入れていただきありがとうございます!
面白いと思っていただけましたら感想・お気に入り・評価等よろしくお願いします。

※今回は完全に作者がふざけました。ちょっとエッッな描写もあります。
シリアスの後はくっそしょうもないギャグを書きたくなるのが人の性。
次回から、原作のストーリーから大きく逸れます。


【第一部】第四章 合宿編
第19話 合宿は自由行動が一番楽しいですよね


 私がオールマイトと『ワン・フォー・オール』の話をした数日後、中間考査が行われた。

 私が週末に皆を屋敷に呼んで対策をしたおかげで、全員ある程度は解けたようだ。

 雄英では、普通科目のテストが2日間かけて行われ、ヒーロー科ではヒーロー基礎学、サポート科では工業基礎や機械製図等の工業科目、経営科ではビジネス基礎や簿記等の商業科目のテストが行われる(期末ではさらに副教科のテストがプラス1日分行われる)。

 雄英の授業の進度は他の高校に比べて速く、1年生のうちに高校3年分の勉強がほとんど終わる。

 授業がそれだけハイペースで進むと、当然ふるい落とされる生徒も大勢出てくる。

 そういう生徒達の為に、私は教える側に回っている。

 

「あーやっと全部終わった」

 

「ねえウチリスニング笑いそうになったんだけど」

 

「俺も」

 

 教室では、最後の英語のリスニングの問題が話題に上がっていた。

 実はリスニングで野菜や果物のキャラクターのイラストを選ぶ問題があったのだが、イラストのインパクトが強烈で、そのせいで笑いそうになった生徒が続出したのだ。

 マイク先生、時々生徒を笑わせにくるようなふざけた問題作るからな…

 

 それはさておき、今回のテストの振り返りを誰かとしておきたい。

 私は前の席の療子に声をかけた。

 

「療子は全部解けたか?」

 

「はい!今回割と自信あります」

 

「それは良かった」

 

 私が話しかけると、療子は笑顔で答える。

 療子は医者志望というだけあって、頭がいい。

 この前の勉強会でも、私が教えてやらなくても理解していたので、教える側に回ってもらった。

 勉強会で実施した確認テストで9割取れていたし、療子に関しては心配は要らないだろう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「皆さん、中間テストお疲れ様でした。結果に一喜一憂している方もいるかと思いますが、大事なお知らせがあります」

 

 全てのテスト返却が終わった後、13号先生によるホームルームが行われる。

 13号先生が何やら神妙な感じで言うので、皆は先生の次の発言を身構えながら待つ。

 

 

 

「来週に合宿があります!」

 

 はい、知ってました。

 1年生の1学期には、学科全体での2泊3日の合宿がある。

 ヒーロー科は夏休み中に1週間みっちり強化合宿をやるらしいが、他の科は部活合宿があるので、その兼ね合いで1学期の中間テスト直後にしているそうだ。

 普通科の合宿はヒーロー科のように訓練や補習があるわけではなく、どちらかと言うと娯楽目的だ。

 まあ一応授業の一環なので、レポートの提出等はあるわけだが。

 

「2日目と3日目に班別の自由行動の時間があります。今日中に班を決めて提出して下さい。それでは、合宿のしおりを配ります」

 

 そう言って先生が最前列の生徒にしおりを渡し、しおりが回ってきたので、前の席の療子からしおりを受け取り、ざっと目を通す。

 USJ襲撃事件や保須でのヒーロー殺しの事件を受けてか、雄英が(ヴィラン)に対して警戒モードになっていて、私達普通科の合宿先も変更になった。

 しかも自由行動中は雄英が招集をかけたプロヒーローが護衛につくらしい。

 行き先は富士山の近くか…随分と近場になったものだ。

 私達が泊まる宿は観光客に人気の三ツ星旅館、しかも温泉つきだ。

 さすがは名門校、といったところか。

 

「ねぇ、合宿だよ合宿!」

 

「どこ行く?」

 

「とりあえず買うもの決めないとなー」

 

 放課後、教室では合宿の話題で持ちきりだった。

 私も早い事班を決めてしまわないとな。

 なんて考えていると、療子が話しかけてくる。

 

「刹那ちゃん!班、一緒になりませんか?」

 

「構わないよ」

 

 私が承諾すると、療子はパアッと笑顔を浮かべる。

 態度がすぐ顔に出るな…

 

「あと4人どうしましょう?」

 

「そうだね…」

 

 ウチのクラスは33人いて、男子が18人、女子が15人だ。

 班を5つ作るように言われているから、7人班が3つ、6人班が2つできる。

 そうなると、男女3人ずつの班と男子4人女子3人の班ができるので、最低でも男子を3人、女子をあと1人誘えばいいわけだが…

 

 何だかものすごく男子の視線を感じる。

 別に自惚れるわけじゃないが、十中八九私と班を組みたいのだろう。

 まあ私の中で、一人は決めてあるわけだが…

 

「心操君。一緒に班を組まないか?」

 

「えっ、俺?」

 

「気心の知れたクラスメイトがいてくれた方が良い」

 

 そう言って私は、心操君に手を差し出した。

 心操君とは何気に気が合うし、一緒に特訓をしたよしみだ。

 …これで断られたらちょっとショックだぞ。

 

「……ありがとう」

 

 私が手を差し出すと、心操君は微かに頬を染めて私の手を取った。

 断られるかもしれない、という心配は杞憂に終わった。

 

「心操め…羨ましい…!」

 

「でも心操ならしょうがない」

 

「ああ…心操だもんな」

 

 他の男子は、私の班に入った心操君を羨ましがりつつも納得していた。

 心操君は(辞退した療子を除けば)普通科で唯一ヒーロー科への編入を検討してもらえた模範生だから、皆心操君が私の班に入るのは文句ないようだ。

 

「あのさ、俺もいいかな?」

 

「?」

 

 そう言って心操君が連れてきたのは、ネオンブルーの髪と特殊なサングラスが特徴的な芸民具君と、大柄で四角い顔が特徴的な角野君、そしてロングヘアーと吊り目が特徴的な細谷君だ。

 

「え、ちょい人使っち、刹那チャンとこ入んの!?マジで!?」

 

「さっき誘われたとこなんだ。二人が良かったらなんだけど…」

 

 心操君が私の班に入ると聞いて、後ろの三人は驚いていた。

 三人とも、普段から心操君と仲が良く、一緒にいるのをよく見かける。

 そっちが先約だったのなら、私が断る理由はない。

 

「良いと思うよ」

 

「わ、私も…」

 

 私と療子は、4人を快くチームに引き入れた。

 すると細谷君と角野君は、気まずそうな表情を浮かべる。

 

「なんか、ウチらまで良いのかな…」

 

「断る理由がない。心操君が来てくれるなら、君達も一緒だ」

 

 そう言って私がチームの輪の中に二人を入れると、二人は若干照れ臭そうに班に入った。

 これで一応は班が完成したわけだが…

 

「あの、実は私も、誘おうと思ってた人がいるんですけど…」

 

 そう言って療子は、一人の男子生徒を連れてきた。

 鋭い鉄色の三白眼と刀型のピアスが特徴的な男子の鑑刀君だ。

 

「うっす」

 

「実はこの前雑貨屋でばったり会って、意気投合したんです」

 

 療子は、雑貨屋で仲良くなった鑑刀君を紹介した。

 鑑刀君は、包丁やナイフなどの刃物に目がない大の刀マニアだ。

 前に屋敷に来た時も、狭間の愛刀を見て興奮していた。

 やはり刃物に関心を持つ鑑刀君と、血に関心を持つ療子とでは、波長が合うんだろうか。

 

 班が決まった後は班長を決める事になったわけだが、自然な流れで私が班長になった。

 班長は自由行動の日の日程表を作って提出しないといけないので、早速皆でどこに行きたいかを話し合った。

 

「それじゃあ、皆行きたい場所を言ってくれ。私が日程をまとめる」

 

 そう言って私がしおりを開いて書く準備をすると、班の皆が間髪入れずに話し始める。

 

「ねえ俺雑貨見たいんだけど」

 

「私、スイーツ食べたいです」

 

「いいじゃん」

 

「なあフジキューいこーよ!フジキュー!」

 

 1分もしないうちに、話し合いは白熱した。

 皆ガイドブックを広げて、それぞれの行きたい場所ややりたい事を言っていった。

 私はそれをメモしながら、現実的に無理のないスケジュールを考えていたわけだが…

 

「「………!!」」

 

 自由だ…

 皆、こうも自分の好きなものをハッキリと言えるものなのか…

 私が話し合いのスピードについていけずに戸惑っていると、隣にいた心操君がポツリと呟く。

 

「自由だな…」

 

「…そうだね」

 

 心操君の言葉に、小さく頷く。

 どうやら話し合いについていけていないのは、私だけではなかったようだ。

 そういえば、まだ心操君の希望は聞いていなかったな。

 

「心操君は、どこか行きたいところはないのか?」

 

「いや、別に…俺は皆の行きたいとこでいいよ」

 

「そう言うな。君にとっては、これが私達と行ける最後の合宿かもしれんのだぞ。君の希望が最優先だ」

 

 もし二学期の編入試験に合格すれば、心操君は二年次からヒーロー科に編入する。

 私達と一緒に行く合宿は、今回が最後かもしれないのだ。

 ならば彼の希望を最優先するのが筋というものだ。

 

「強いて言うなら…サイクリングがしたい」

 

 私が言うと、心操君は恥ずかしそうに言った。

 サイクリングか……

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

心操side

 

 やっちまった、と思った。

 俺が希望を言うと、六徳さんはぽかんとした表情を浮かべた。

 サイクリングなんて一人で週末にでもできるのに、わざわざ合宿の自由行動中にやる事ないよな。

 もっと空気読んで無難なの言っておけばよかった…

 

「良いな。私もしてみたい。ロードバイクをレンタルできる場所を知っているから、そこに行こう」

 

 ……えっ?

 今、なんて言った?

 

「私のオススメのコースが、小高い場所にあるんだが…君はヒルクライムはやった事あるか?」

 

「少しだけやってたけど…」

 

「ならば話が早い。初心者でも楽しめるコースではあるが、全員が初心者だと教えながら走るのが一苦労だからな。ちょうどコースの中間地点から見える山と湖が絶景でな…」

 

「すごいな…結構行きたくなってきたかも」

 

 六徳さんがスマホで写真を見せながら話してくれて、気がつけば彼女の話に食いついていた。

 六徳さんとは意外と趣味や価値観が似ているし、知識が豊富な分話が面白いし、頭が良いから俺の求めている事を察して先回りしてくれる。

 六徳さんは人の感情が理屈でしかわからないって言うけど、人の気持ちをわかった気になって簡単に同情してくる奴より、わからないなりに理解する努力をしている彼女の方が、俺は温かく感じる。

 何気に一番話しやすい人だ。

 

「……やはり君とは気が合う」

 

 俺の考えていた事を見透かしてか、六徳さんはフッと笑いながら言った。

 普段はクールな彼女が見せる笑顔に、思わず顔が赤くなるのを感じた。

 その顔はずるいよ…

 

「皆もそれでいいか?できるだけ、皆の希望も叶えるようにはするが…」

 

 六徳さんが言うと、他の皆はハッとして俺の方を見る。

 

「そっか、心操くんにとってはこれが最後のクラス合宿ですもんね…」

 

「んじゃ人使っちのやりたい事やらねーとな!」

 

「だね。なんか二人で話してるの楽しそうだったし」

 

「俺も、委員長が言うならそれでいいよ」

 

「異議な〜し」

 

 皆は、俺の希望を快く受け入れてくれた。

 何の躊躇いもなく俺のやりたい事を優先してくれた皆に、目頭が熱くなる。

 

「……ありがとう」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

 あの後私は、心操君の希望を最優先にしつつも、極力全員の希望を叶える形でスケジュールを組み、無事先生に日程表を提出できた。

 そして合宿当日。

 私達は全員無事に学校に集合し、クラスごとに分かれてバスに乗り込んだ。

 私がバスの列に並ぶと、療子が話しかけてくる。

 

「刹那ちゃん、荷物それだけですか?」

 

「2泊3日だからね。必要最低限のものしか持ってきていない」

 

「私ももうちょっと荷物コンパクトにしてくれば良かった…」

 

 私が言うと、療子は眉を八の字にしながら言った。

 バッグの中には着替えと化粧品、あとは最低限のアメニティグッズくらいしか入れていない。

 宿から歩いて行ける距離にコンビニがあるのを確認しているので、足りないものがあれば、夜の自由時間中にそこで買い足せば問題はない。

 ……尤も私の場合は、もし何か困れば狭間が届けに来てくれるだろうが。

 

「わぁぁ景色きれー」

 

「晴れてよかったねー」

 

「ねえおかしちょーだい」

 

 発車してからしばらくして、バスの中では、皆が楽しそうに話していた。

 静かに一人で旅をするのが性に合っていると思っていたが、たまにはこういうのも悪くないな。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「いただきます!」

 

 無事合宿先に到着し、一通り観光を楽しんだ私達は、宿の宴会場で夕食を摂った。

 食卓には、刺身やチキン南蛮、ハンバーグや豚しゃぶなどが並んだ。

 旬の肉や魚、野菜などをふんだんに使った夕食は、どれも絶品だった。

 

「んんっ!お米がうまい!」

 

「ランチラッシュの学食に負けてないよね」

 

「誰かポン酢取ってー」

 

「これなんの魚だろうね」

 

 周りの皆は、旅行でテンションが上がっているからか、すごい勢いで夕食を平らげていく。

 普段ランチラッシュ先生の食堂でアルバイトをしている完膳君も、新鮮な食材を使った豪華な食事にご満悦の様子だ。

 思えば、クラス皆で食事をするのは、これが初めてかもしれない。

 

「うまい……」

 

 私は、炊き立ての米に舌鼓を打った。

 この粒立ちとほのかな甘み…

 ランチラッシュ先生の学食の米にも負けていない。

 

「ほんと米好きね委員長」

 

「刹那ちゃんご飯おかわり要ります?」

 

「もらう」

 

 私が米を堪能していると、療子が微笑みながらお櫃に入った白飯をよそってくれた。

 たまには、騒がしい夕食も悪くないな…

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

癒治side

 

 ご飯を食べ終わった後、お風呂の時間になった。

 初日は私達C組が最初で、続いてD組、E組…って感じで入る事になっている。

 

「…わぁ」

 

 服を脱いで、タオルで軽く身体を隠しつつ大浴場に入ると、広いお風呂がいくつか並んでいた。

 刹那ちゃんの家のお風呂も広かったけど、ここのお風呂も全然負けてない(流石に実家のお風呂と温泉宿のお風呂を比べちゃいけないような気もするけど…)。

 …っと、お風呂に入る前にちゃんと身体を洗わないとっ。

 

「あぁ〜気持ちいい〜」

 

「温泉あるなんて最高…」

 

 既に入浴している女子達の声を聞きながら、私はボディスポンジで入念に身体を洗う。

 すると隣にいた細谷さんが話しかけてくる。

 

「あれ?なんか癒治ゴツくなった?」

 

「そうですか…?」

 

 確かに言われてみれば、入学当初に比べれば筋肉量が増えた…気がする?

 

「普段から鍛錬を怠っていない証拠だ。君の努力は、必ず何かしらの形で実を結んでいる」

 

「うーん…そうなんですかね」

 

 横から、刹那ちゃんが話しかけてくる。

 正直、あまり強くなったという実感がない。

 この前も(ヴィラン)に攫われた時何もできなかったしなぁ…

 

 なんて考えながら振り向くと、目に飛び込んできた光景に思わず釘付けになる。

 刹那ちゃんの白くて豊満な二つの果実が、ぷるんっと私の目の前で揺れた。

 90cmは越えているであろうバストの上には、ぷっくりとしたピンク色のサクランボが乗っていて、キュッとくびれたウエストや大きくて形のいいヒップが、日本人離れしたメリハリのあるシルエットを作り出している。

 背中やお腹に火傷痕があるけど、それでも大抵の人は魅了できる美貌がそこにあった。

 ……気のせいかもしれないけど、入学当初より色気が増してる気がする。

 

「委員長また胸大きくなった?」

 

「そうかな…」

 

「ちなみに今サイズいくつ?」

 

「今はF70だが…」

 

「え、F!?」

 

 刹那ちゃんがバストサイズを答えると、斥口さんが驚く。

 するとだ。

 

「フォオオオオオオオッ!!?」

 

 温泉に入っていた矢田さんが、奇声を上げながら刹那ちゃんに駆け寄ってきて、後ろから刹那ちゃんの胸を鷲掴みにした。

 

「ひぁっ!?」

 

「何だこのけしからん乳は!?くそぉっ、こんだけあんならちょっとくらいわけろ!!」

 

 矢田さんが私怨を込めて刹那ちゃんの胸を揉みしだくと、刹那ちゃんは色っぽい声を出す。

 刹那ちゃんの胸が、矢田さんの手の中でむにゅっとマシュマロみたいに形を変えた。

 本当は助けてあげるべきなんだろうけど、胸を揉まれて恥ずかしがっている刹那ちゃんがあまりにもカァイくて、つい見惚れてしまった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

心操side

 

「ふぅ…」

 

「心まで洗われるとは、まさにこの事だねぇ…」

 

 夕食の後、俺達は宿の温泉に入った。

 クラス全員が入っても余りある広々とした温泉を堪能していたわけだが…

 

 

 

「ひぁっ!?」

 

 仕切りの向こうから、六徳さんの声が聴こえてきた。

 

「何だこのけしからん乳は!?くそぉっ、こんだけあんならちょっとくらいわけろ!!」

 

「ちょっ…どこ触ってるんだ!?やめろっ…離せ!」

 

「ぐへへへへ叫んだって誰も助けちゃくれねぇべ」

 

 小悪党のようなゲスい台詞を言う矢田の声と、六徳さんの色っぽい声が聴こえてくる。

 クラス中の…いや、全世界の憧れの存在である六徳さんが、普段の態度からは想像できない女の声を出している。

 興奮するなという方が無理な話だ。

 大半は頬を染めてごくっと生唾を飲みながら仕切りの方に視線を向け、中には前屈みになっている奴もいた。

 ……流石に覗きを画策する奴はいなかったけど。

 

 俺達は湯船に浸かったまま、仕切りの向こうから聴こえてくる声に聞き耳を立てた。

 だけどその次の瞬間だった。

 

「いい加減にしろ矢田ァアアアア!!!」

 

「ア゙ッーーーーーーー!!!!」

 

 仕切りの向こうから、『ズポッ』と何かが嵌まる音と、女子のものとは思えない野太い叫び声が聴こえてくる。

 多分、矢田がセクハラしすぎて斥口あたりにお仕置きされたんだろうな。

 女子風呂から聴こえていい音じゃねえんだけど…

 

「…何も聞かなかった事にするか」

 

「そうだねぇ……」

 

 俺が隣にいた暗土に話しかけると、暗土はスーッと湯船の中を泳いで先に上がった。

 他の男子も、矢田の叫び声で萎えたのか、さっきまで女子風呂に興味津々だったのが嘘のようにそそくさと風呂場から出ていく。

 …あいつ、見た目は女子だけど中身絶対オッサンだろ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

「ヒューーーー!!」

 

 翌日、私達は当初の予定通り、心操君がやりたがっていたサイクリングをした。

 涼しい風に吹かれ、美しい山や湖を眺めながらのサイクリングは、思った以上に楽しかった。

 

「景色すごい…!」

 

「晴れてよかったな」

 

「風きもちいいい!!」

 

 私の隣を走る療子は、景色に見惚れていた。

 最初こそキツそうにしていたが、すぐにコツを掴んで私のペースについてきた。

 芸民具君と鑑刀君も楽しんでいるようだ。

 私は、サイクリングを提案した心操君に話しかける。

 

「どうだ?心操君、楽しいか?」

 

「……うん。ありがとう」

 

 私が尋ねると、心操君が照れ笑いしながら答える。

 この自由行動は心操君が主役だから、彼が楽しそうで何よりだ。

 

「ちょっ…待って皆速すぎ…」

 

「ウチらの事も考えて〜!」

 

 後ろから、角野君と細谷君が、ゼエゼエと息を切らしながらついてきた。

 心操君と療子は普段から鍛えているし、芸民具君と鑑刀君は一応サイクリング経験があるらしいが、他二人にとっては慣れない丘の走行が少々キツいようだ。

 朝食をキャンセルして早めに出発したおかげで時間はたっぷりあったので、少しペースを落として走った。

 

 

 

 その後は、他の皆が行きたい場所を順番に回った。

 鑑刀君が商店街の包丁専門店に惹かれてふらっと立ち寄り、そのまま出てこなさそうだったので、角野君と細谷君に引き摺られて店を後にした。

 

「ねえ委員長次どこだっけ」

 

「えっと…」

 

 細谷君が尋ねるので、私は次の行き先をスマホで調べた。

 その時だった。

 やや遠い場所から、私を狙う視線を感じたのは。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

???side

 

 スコープの中に、雄英の制服を着た男女7人が映る。

 俺はターゲットに気づかれないよう、静かにスナイパーライフルの照準を合わせた。

 

「くくく…どんな人間でも、(こいつ)で撃ちゃあ死ぬ。油断し切ってるところを、頭撃ち抜いて終わりだ」

 

 俺はターゲットの頭に照準を合わせて、ライフルの引き金に指をかけた。

 名門の割にはダサいと揶揄される事の多い雄英の制服を着ていても、他の奴等とは比較にならないカリスマのオーラには一切の翳りもなく、どんなに人混みに紛れようが間違えようがない。

 今回のターゲットは、六徳家の当主様だ。

 

 この女に恨みはねえが、無防備な嬢ちゃんを殺すだけで100億貰えるって話なら、引き受けねえ理由はねえ。

 スナイパーライフルで当主の頭を狙いつつ、奴の脚や腰つきを見て舌舐めずりをする。

 やっぱり、普段から良いもの食ってる女ってのは良い身体してんな。

 殺しの依頼でさえなけりゃ、色々楽しめたんだがなぁ。

 

 それにしても、この女も、雄英も、揃いも揃って甘ちゃんばっかりだぜ。

 命を狙われているとも知らずに、呑気に合宿なんかしやがって。

 全く、平和ボケも甚だし──

 

「全く…平和ボケも甚だしいわ。()()()がこの距離まで接近しているのに気づかないなんて」

 

「っ!?」

 

 ゾワっと背筋が凍る感覚がしたかと思うと、後ろから影が差す。

 振り向くと、黒いモーニングコートを着た女が立っていて、女の頭から無数に伸びた矢印のような形状の髪が蠢いていた。

 

「お嬢様に旅を楽しんでいただけるよう、不純物を排除するのが私達の任務」

 

 そう言って女は、髪で作った無数の矢印を俺に向けた。

 身の危険を感じてすぐに逃げようとしたが、俺の身体は瞬く間に矢印で絡め取られ、逆さ吊りにされた。

 一切の身動きを封じられた俺に、鋭い矢印が襲いかかってくる。

 

 意識が途絶える直前、俺は六徳家当主の暗殺依頼を請け負った事を猛烈に後悔した。

 喧嘩売る相手、間違えた…!!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

 私達が観光を楽しんでいると、遠くから叫び声が聴こえてくる。

 十中八九、私の命を狙っていた刺客が、ウチの使用人に襲撃されたんだろう。

 おそらく、亜楼あたりか…

 私が命を狙われる身であるにもかかわらず、皆と普通に合宿を楽しめているのは、世界一誇り高い私兵団のおかげだ。

 

「……ん?今なんか叫び声が聴こえなかった?」

 

「気のせいだろう。それより、そろそろ店に着くぞ」

 

 私は、刺客の叫び声に反応した心操君をスルーし、近くの雑貨屋に入った。

 地元の者しか知らないようなニッチなものも扱っている、地元の住民に勧めてもらった隠れ家的な雑貨屋だ。

 雑貨屋でお土産を選んでいると、療子が話しかけてくる。

 

「刹那ちゃんっ!見てください!このキーホルダー、すごいカァイイです!」

 

 療子が見せたのは、魚のキーホルダーだった。

 療子が腹の部分を押すと、口からブリュッと内臓が飛び出る。

 

「お腹のとこ押すと、口から内臓が出てくるんです。カァイイでしょ」

 

「…………」

 

 療子が満面の笑みでキーホルダーを勧めてくるので、気がつけば私は財布からカードを取り出して決済しようとしていた。

 

「委員長この店クレジット使えないよ」

 

「早くブラックカードしまいな。他の客見てるから」

 

 私が財布からカードを取り出すと、角野君と細谷君がやんわりと注意した。

 結局私は、療子が勧めてきたキーホルダーを買い、鞄につけて療子とお揃いにした。

 被身子もこういうのが好きそうだから、彼女の分も買った。

 

 その後も、集合時間ギリギリまで、一通り観光を楽しんだ。

 全員の希望を叶えようとしたらかなり詰め詰めのスケジュールになったが、特に大きなトラブルもなく、無事に合宿の2日目を終える事ができた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

心操side

 

 夕食と風呂を終えた後、俺達は大部屋でまったりしていた。

 今日の風呂は俺達が最後だったから、俺達が風呂を出て部屋に戻ると、D組とE組の男子はスナック菓子を囲んでカードゲームをしていた。

 全員が集まった後、男子全員で雑談をしているうちに気になる女子の話になって、匿名の投票で気になる女子ランキングを作った。

 結果は六徳さんの圧勝だったけど、他の女子にも結構票が入っていて、他科だとヒーロー科の波動先輩や小大さん、あとは教師陣だとミッドナイト先生もランクインしていた。

 あと、何故か可愛い系の男子や、A組の爆豪にも票が入っていた。

 ……女子だっつってんだろが。

 

「かーっ、やっぱり刹那チャン圧勝だな」

 

「そりゃあまあ、委員長の事嫌いな男子なんていないでしょ」

 

「女神…崇拝…」

 

 何人かの男子は、彼女を神格視していた。

 美人で、金持ちのお嬢様で、文武両道で、気品に満ち溢れていて、非の打ち所がない理想の委員長。

 正直、六徳さんを嫌いな奴は、嫉妬か、六徳家に個人的な恨みがあるかのどっちかだと思う。

 

「デュフフ…男に生まれたからには、一度はあの美乳にパフパフされたいでござるなぁ」

 

 誰かが呟いたその一言に、何人かの男子はうんうんと頷く。

 だけど違和感を覚えて振り向くと、そこにはあぐらをかいて布団の上に堂々と座っている矢田がいた。

 こいつ、いつの間に男子部屋に…!?

 中身がオッサンだから、全然違和感がなかった…!

 

「矢田アアアアア!!!てめぇ何しれっと男子部屋に入っとんだ!!」

 

「やべっバレた」

 

 男子に責め立てられた矢田は、尻尾を巻いて逃げた。

 プライバシーを侵害された男子達は、血眼で矢田を追った。

 

「もう野郎だらけのおちんちんランドに用は無え!サラダバー!」

 

「追えええ!!ゼッテー逃がすな!!」

 

「囲め囲め!!」

 

「うわっ、きたねっ!こいつ唾飛ばしてきたぞ!」

 

「目を正確に狙ってきやがる!?」

 

「アホのくせに多才だ…!!」

 

 矢田を追った男子は、矢田のフットワークの軽さと多才な嫌がらせに見事に翻弄された。

 あいつ、アホのくせに身体能力と戦闘IQはヒーロー科並みに高いからな…

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

 風呂から上がった後、私達は持ち寄ったお菓子やお土産を広げて、女子皆で恋バナに花を咲かせた。

 男子部屋が何やら騒がしいが、旅行で浮かれているんだろうか。

 

「ねえねえ、委員長は気になる人とかいないの?」

 

「どうだろうね…今のところいないかな」

 

「えー、それじゃあ彼氏がいる人、手ぇ挙げ!」

 

 完膳君が女子全員に尋ねた、次の瞬間だった。

 矢田君が、ナ◯シカのユ◯のポーズでダイナミックに襖を吹っ飛ばしながら女子部屋に戻ってきた。

 そして彼女が戻ってきた次の瞬間、目を血走らせた男子が一斉に女子部屋に雪崩れ込んできた。

 

「「いやあああああああ!!!」」

 

 いきなり男子が女子部屋に入ってきたので、女子達は叫び声を上げた。

 どうやら矢田君を追っているらしい男子達が無遠慮で女の園を荒らしてきたため、普段は比較的温厚な女子達も、我慢の限界を迎えたらしい。

 

「ちょっと男子!!何女子部屋に入ってきてんのよ!!」

 

「サイッテー!!」

 

「男死殺す!!」

 

 女子達は、枕や鈍器を手に取り、殺意剥き出しで男子達を追いかけた。

 ああもう、滅茶苦茶だよ…

 というか矢田君、ちゃんと襖は弁償しろよ?

 

 私がどう収拾をつけようかと考えていると、窓際に一人でいる心操君を見つけた。

 私は、(主に矢田君のせいで)戦争状態になっている女子部屋を抜け、彼に声をかけに行った。

 

「どうした?」

 

「ああ、いや…合宿も明日で最後かって思って」

 

 私が声をかけると、心操君は夜景を見ながら答える。

 楽しかった合宿も、明日が最終日だ。

 そしてその日が、心操君と行ける最後のクラス合宿になるかもしれない。

 今回の旅は、心操君にとって良い思い出になっただろうか。

 

「…入学したての頃は、皆自分に自信がなくて、活気がなくてさ…ヒーロー科を妬んで批判する風潮もあったりしてさ」

 

「まあ…私みたいなのを除けば、普通科のほとんどがヒーロー科に落ちた生徒で埋まるからね」

 

 心操君の言葉に、私は同意した。

 確かに、入学当初はC組に活気がなかった。

 体育祭の前までは、USJ事件あたりから始まった世間からのA組贔屓に辟易し、自分を卑下する者がほとんどだった。

 USJ事件を受けて今回の合宿の行き先が変更になった事に関しても、その遠因となったA組に対し嫌悪感を抱く者もいるのではないかと、正直心配していた。

 

「でも、六徳さんのおかげで、すげぇ居心地のいいクラスに変わってさ…D組やE組も……今回の合宿も、一生の思い出になった。ありがとな。あんた、マジで普通科(おれら)のヒーローだよ」

 

 純粋にそう告げる心操君に、私は出かかった言葉を飲み込んだ。

 

 違う…違うんだ。

 ヒーローに()()()()()()私では、普通科(みんな)のヒーローになれやしない。

 体育祭で爪痕を残し、皆に希望を与えたのは君だ。

 だから、皆のヒーローは君なんだよ。

 

 

 

 

 




ちなみに同じ班になった角野くんと細谷さんは、原作で心操と一緒に出てきた大柄な男子とロングヘアーの女子です。
原作で名前が明かされなかったので、勝手に命名しました。
そしてお馴染み新キャラ紹介

角野(かくの)大智(たいち)
大柄な体格と角張った顔が特徴的な男子。
心操と仲が良い。
“個性”は不明。

細谷(ほそや)小稀(さき)
ロングヘアーと三白眼が特徴的なダウナー系の女子。
心操と仲が良い。
“個性”は不明。

鑑刀(かんとう)鋭真(えいしん)
ひょんな事から癒治と意気投合した男子。
趣味は刃物のコレクション。
“個性”は『鑑定』。
鑑定した物体の価値の分だけ性能を上乗せさせる事ができる。
例えば刀そのものに歴史的価値があれば、錆びてボロボロの刀でも切れ味抜群の名刀に変わる。
ただし性能を上げた分、その物は壊れやすくなる。

A組の期末前の修行パートいります?

  • 書け
  • いらん、本編進めろ
  • んなもんより他の番外編書け
  • 好きにしな
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