私の世直しアカデミア   作:M.T.

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※ATTENTION!!
・情報過多です
・恋愛描写ちょこっとあります
・飯テロ注意
・毎度お馴染み原作崩壊

10が4件、だとぉ…(歓喜)!?
紅葉紫苑様、とこしえ様、K.S様、高評価を入れていただきありがとうございます!
面白いと思っていただけましたら感想・お気に入り・評価等よろしくお願いします。


第24話 トロは中トロ、コハダアジ(ヘイラッシャイ)

 (ヴィラン)連合絡みの(ヴィラン)に攫われた壊理は、ヒーロー達の手によって無事保護され、壊理を攫った(ヴィラン)どもは全滅。

 その場にいた(ヴィラン)は全員、エンデヴァー達の手によって逮捕された。

 ……というのが、現場の警察から聞いた報告。

 

 

 

「気持ちいいか?」

 

「……うん」

 

 検査の結果、身体に異常がないと診断された壊理は、私と一緒に大浴場の温泉に入っている。

 壊理が前に好きだと言っていた青リンゴのシャンプーとトリートメントで髪のコンディションを整えて、高めの位置で緩めのシニヨンにした。

 壊理は、身体がほんのりと赤みを帯びていて、温泉を堪能しているようだ。

 壊理が攫われたと聞いた時は気が気じゃなかったが、外から見てわかる大きな傷がないのが唯一の救いだ。

 

 風呂から上がった私は、壊理の髪を肉球で触れ、“個性”を使って乾かす。

 じわじわと、慎重に水分子の運動速度を上げて水分を飛ばす。

 横着すると、最悪髪が焼け焦げてボンバーヘッドになりかねないからな。

 

 壊理の髪を乾かした私は、亜楼が前に壊理の為に拵えたフリルのワンピースを着せた。

 うむ、やはり壊理にはAラインのワンピースが似合うな。

 色も桜色で、壊理に合っている。

 亜楼に頼んで、可愛い系のワンピースのバリエーションを増やしてもらおう。

 このワンピースは元々オーバーサイズのデザインだから今の壊理でも着る事ができたが、来年のこのシーズンにはもう着られなくなっているだろうから、採寸もし直さないとな。

 

「壊理は可愛い服が似合うね」

 

 私が壊理の髪をツインテールにしながら言うと、壊理は恥ずかしそうに頬を染めた。

 私には、こういうフリルのついた可愛い系の服が似合わないからな…

 壊理も療子も被身子も、私の好きなデザイン服が似合う体型で羨ましい。

 

 壊理に服を着せた私は、Vネックの青いワンピースに袖を通し、お気に入りの髪留めで髪をポニーテールにする。

 ウエストのあたりがスッキリしていて、着太りしにくいので気に入っている。

 

 着替え終わった私がスマホを見ると、ちょうどネットニュースが更新された。

 スマホの通知を開き、その中の一番新しいニュースをチェックする。

 

「これって……」

 

 目に飛び込んできたのは、護送中の(ヴィラン)が何者かに襲撃され死亡したというニュースだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

???side

 

 護送中のヘリが墜落して炎を上げる中、俺はヘリの中からあるものを引き摺り出した。

 ガチガチに拘束されていて、もはや原型を留めない程に真っ黒に焦げ死にかけているナインだ。

 

「やっぱり生きてたか。ヒーローに人殺しは御法度だもんなぁ」

 

 ナインは、全身が消し炭のように黒焦げになっていたが、肺から変な音を鳴らしながらも息をしていた。

 表皮こそ炭化していて酷い有様だが、命に関わる組織までは火傷を負っていない。

 ヒーローってのは、難儀なご身分だよなぁ。

 死刑確実の凶悪犯でも、そう易々とは殺せねえんだから。

 

「ま……だ、だ……私…の……夢…は……まだ……」

 

 息も絶え絶えなナインの身体は、細胞の死滅が進行しているのか、肉が腐ったような不快な臭いを放っていた。

 表皮の炭化だけなら、まだ何とかなったかもしれねえが…

 ここまで細胞の死滅が進行していたら、もう手遅れだ。

 

 俺はナインの顔面を掴み、五指で触れる。

 すると触れた箇所から崩壊し、塵と化して消えていった。

 

「安心しろ。あんたの夢は俺が継ぐ。おやすみ、ナイン」

 

 仕事を終えた俺は、炎上するヘリに背を向け、何もない空間に現れた黒い渦の中へと歩いていった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

宝生side

 

 全てが終わった後、俺は美輝の見舞いに病院を訪れた。

 壊理を攫った野郎に殴られて“個性”を奪われた、俺の婚約者だ。

 

「美輝、すまない…お前の“個性”、取り戻せなかった」

 

「ウチん事は気にせんでよか。それよりエリちゃん助かってよかったばい」

 

 俺が謝ると、美輝は首を横に振った。

 美輝の“個性”は、あらゆる物質を結晶に変える事ができる。

 元々視力が弱かった美輝は、“個性”を常時発動して眼球を補強する事で視力を強化していた。

 だが“個性”を奪われたせいで、結晶で補強していた眼球も元に戻り、視力を失っちまった。

 医与さんや壊理の“個性”でも、元々なかった視力を生む事はできない。

 美輝の“個性”を奪った奴を捕まえれば、“個性”を奪い返せるかもしれないと思っていたが、そいつは護送中に殺され、“個性”を取り戻せなくなっちまった。

 

「窃野くんと多部くんにもお礼言わんと…ウチん為にはらかいてくれとったんやろ?」

 

 美輝は、何もできなかった俺を責めたりはしなかった。

 “個性”と視力を失って泣いていた美輝の為に、何とかしてやりたかったのに、このザマだ。

 己の無力さに打ちひしがれていた、その時だった。

 不意に扉の向こうからノック音が聴こえてくる。

 ドアを開けると、会長と、病衣を着た若頭が外に立っていた。

 

「宝生。大事な話がある。今、いいか」

 

「会長…それに若頭…ついさっきまで手術中だったはずじゃ…」

 

「もう治った。つくづく、最新の医療技術には驚かされたよ。心肺停止の重傷者が、たった半日で退院できるんだから」

 

 そう言って若頭は、塞がったばかりの額の傷を掻いた。

 俺が慌ててベッドの傍にパイプ椅子を置くと、会長と若頭がパイプ椅子に座った。

 

「会長、大事な話というのは…」

 

「ああ、その事なんだが…治崎」

 

 会長が若頭を一瞥すると、若頭は頷いてから話し始める。

 

「栗栖美輝さん、あなたにご相談があって来ました。俺に、美輝さんの治療をさせていただけませんか?」

 

 若頭は、真剣な面持ちで美輝に提案した。

 唐突な提案に、俺と美輝は理解が追いつかなかった。

 

「あなたの“個性”を奪った(ヴィラン)は死亡し、“個性”を取り戻す術は残念ながらもうありません。ですが俺の“個性”なら、視力の回復ができるかもしれません。痛みを伴う治療なので、強制はしませんが…」

 

 若頭の提案を聞いた美輝は、俺の方に顔を向ける。

 美輝はしばらく俯いて考え込んだ後、若頭に頭を下げた。

 

「……お願いします」

 

 美輝が頭を下げると、若頭は席から立ち上がり、手袋を外して美輝の顔を掴み、“個性”を発動した。

 すると美輝は、若頭の腕を掴んで悲鳴を上げながら暴れ出した。

 

「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

 

「美輝!!」

 

 美輝が悲鳴を上げると、若頭はすぐに美輝の顔から手を離した。

 若頭が離れた瞬間、美輝は両目を押さえながら蹲った。

 

「あああああ…あ…ああっ……あ………」

 

 しばらく蹲ったまま悲鳴を上げていた美輝は、ピタリと悲鳴を上げるのをやめて、恐る恐る顔を上げた。

 美輝は、顔から手を離して俺の顔を覗き込むなり、ポロポロと涙を流した。

 

「見える…結が見える…!」

 

「美輝……」

 

 ベッドから起き上がった美輝は、泣きながら俺に抱きついてきた。

 

「ふわぁぁぁぁん…!!」

 

 喜びのあまり泣き叫ぶ美輝を抱きしめながら背中を摩っているうちに、俺まで目頭が熱くなってきた。

 よかった、本当に……

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

治崎side

 

 事件の1週間ほど前、宝生の婚約者の美輝が意識不明の重体で総合病院に救急搬送された。

 最近、ウチの拠点付近でアホが騒いでいたから、今回もそいつが犯人だと俺は確信していた。

 ウチに喧嘩を売った上に俺の部下の女を傷つけた屑に倍返ししてやろうと躍起になっていると、オヤジが俺の頭に拳骨を落として病院に連れて行った。

 オヤジが俺に見せたのは、宝生、窃野、多部に介抱されている美輝の姿だった。

 

「治崎。極道ってのは、侠客であるべきだ。他所者とのゴタゴタに、カタギを巻き込んじゃいけねぇ。万が一にもカタギを巻き込んじまったら、その落とし前は俺達がつけなきゃならねぇ。わかるな?」

 

「…………」

 

「俺の為に怒ってくれてんのは、わかってる。だがな…お前には、敵をぶっ飛ばすより先にやるべき事があるだろうが」

 

 オヤジは、犯人の所業に憤るあまり視野が狭くなっていた俺を諭した。

 オヤジに諭されてから、俺は自分にできる事を考えた。

 俺は、今までに得た医療知識を総動員させて、美輝を治す為に人体の分解と再構築の精度を高めた。

 他のどんな治癒“個性”をもってしても、元々盲目の人間に視力を持たせる事はできない。

 だが俺の“個性”なら、身体の構造そのものを造り変えれば、視力だけでも取り戻せるかもしれない。

 八斎會の事件に巻き込んじまった彼女に、元の生活を取り戻させてやるのが、俺達なりのケジメだ。

 俺は、美輝を“個性”で治療させてもらえるよう、彼女の担当医の医与さんに頼み込んだ。

 

「俺に彼女の治療をさせてくれ」

 

「ダメ。帰んな」

 

「俺にしか治せないんだ。頼む」

 

 俺は、医与さんに許可を貰えるまで、何度も頭を下げた。

 そしてとうとう、医与さんが折れた。

 

「………あーもう、わかったわよ。プロヒーロー“アムリタ”の名において、治崎廻の“個性”使用を許可します」

 

 医与さんは、俺が“個性”で美輝を治す事を許してくれた。

 医与さんが俺に治療を許してくれたのは、俺が医師免許を持っていたからだ。

 俺に医者の道を勧めてくれたのは、六徳家の先代当主だった。

 オヤジと八斎會を救ってくれた、俺にとっての恩人も同然の人だ。

 

 

 

「廻、お前医大行け」

 

「何だよいきなり」

 

「学費なら俺がいくらでも出してやる。医大行って、資格を取れ。そんで、お前のその手を、人を救う為に使え」

 

「アニキまでヒーローみたいな事言うのかよ」

 

「え〜?お前が医師免許取ったら、オヤジさんも喜ぶと思うぜ?お前が正規の活躍をすりゃあ、八斎會も安泰だしな!なぁ〜、刹那?」

 

「うん。かいにぃがんばって」

 

 

 

 俺が医師免許を取ったら、オヤジも、刹那も喜んでくれた。

 全部、アニキの言う通りだった。

 アニキに勧められてやった事が、オヤジの、八斎會の為になっている。

 アニキには、一生感謝したって足りない。

 

「治崎さん、ありがとうございます」

 

「俺にできるのはここまでです。“個性”は……」

 

 泣きながら感謝してくる美輝に、“個性”を取り戻せなかった事を謝った。

 俺の“個性”で視力を回復させる事はできても、人によって千差万別の“個性”因子まで再現する事はできない。

 だが彼女は、涙を拭いながら首を横に振った。

 

「…大丈夫です。私には、心強い彼がいますから」

 

 そう言って美輝は、微かに頬を染めて宝生に寄り添った。

 “個性”を失っても自分なりの幸せを見つけようとしている彼女を見て、他の人間が皆こうなら良かったのに、と密かに思った。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

 犯人の死亡をニュースで確認した私は、壊理を死穢八斎會の本邸に送り届けた後、自室の書斎で今回の事件の事後処理を済ませながらため息をついた。

 すると山根が、ティーセットを運びながら話しかけてくる。

 

「お嬢様、もしや死亡した犯人の事を気にしていらっしゃるのですか?」

 

「ああ…奴には法の裁きを受けさせたかった」

 

 私が壊理奪還の為にヒーロー達に逮捕させた(ヴィラン)は、護送中に死柄木弔に殺害された。

 確かに壊理を攫った奴は、生温い刑では許されない重罪を犯した。

 それに、ヒーロー達との戦いで重傷を負い、どのみち永くなかったのかもしれない。

 だからと言って、身勝手に殺されていい道理などどこにもない。

 そう考えつつも作業を続けていると、死穢八斎會の会長から電話がかかってくる。

 私は、一度作業を中断して自室のソファーに腰掛けながら電話に出た。

 

 

 

「宴会?」

 

『ああ。壊理が無事帰ってきてくれたから、ウチの若い衆が今夜宴を開いてくれる事になってんだ。壊理を助けてくれた礼と言っちゃあなんだが、刹那も来い。壊理が、お前が来るの楽しみにしてるからよ』

 

 会長からの用件は、宴会のお誘いだった。

 『壊理が楽しみにしている』という言葉を聞いて、私は即決で参加する事にした。

 

「そういう事でしたら、是非。あ…ちなみに、お食事は何が出てくるのでしょうか?」

 

 私が尋ねると、山根が微笑ましそうにこちらを見てくる。

 ……食い意地が張ってて悪かったな。

 

『食事?ああ、出前で寿司を取るらしいが…』

 

「寿司!?俺作りますよ!」

 

 会長が答えると、新井が書斎に駆けつけて食い気味に言った。

 どんな地獄耳だよおい…

 こいつ、食の事になると軽い感じで人間やめるからな。

 

「というか、握らせてください!ちょうど旬の魚を仕入れたばっかなんで!」

 

『いや、だがなぁ。客に寿司握らせるってのも…』

 

「握らせない方が新井に悪いです。皆さんでどうぞ召し上がってください。新井のお寿司、美味しいですから」

 

「エリちゃんの為なら、100貫でも200貫でも握りますよ!」

 

 私が新井の寿司を勧めると、新井は興奮気味に言った。

 100貫でも200貫でもって、そんなに食わんだろ…

 あまりの熱量に、会長も顔引き攣らせてるよ。

 

『そ、そうか…なら、お言葉に甘えさせてもらおうか。ああそうだ、来んならお前んとこのモンも連れてこい。美味い酒があるからよ』

 

「ええ、是非」

 

 私は未成年だから酒は飲めないが、せっかく美味い酒をご馳走してくれるというのだから、壊理救出の功労者の亜楼達も同行させよう。

 それにしても、最近は何だかんだで忙しかったから、八斎會の皆と食事をするのは久々だな。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 宴会の30分前、私は狭間の運転する車で死穢八斎會の本邸を訪れた。

 インターホンを鳴らすと、数分も待たずに玄野さんが玄関の戸を開けてくれた。

 

「すいやせん、迎えもなく」

 

「お気になさらず」

 

 迎えがなかった事を詫びる玄野さんに対して私は笑顔を浮かべ、狭間は私が屋敷に向かう途中で買ったお土産を玄野さんに渡した。

 靴を脱いで家に上がろうとした私の視界にあるものが映り、思わず頬をぴくりと引き攣らせる。

 

「………」

 

「お嬢、どうしやした?」

 

「いえ…別に」

 

 玄関の靴を見て立ち止まる私に、玄野さんが声をかけてくるので、私は笑顔で取り繕った。

 するとその時、屋敷の奥からパタパタと足音が聴こえてきて、壊理が駆け寄ってくる。

 

「お姉ちゃん!」

 

「壊理…元気そうで何よりだ。リンゴのお菓子買ってきたよ」

 

「わぁぁ、ありがとう!」

 

 私が言うと、壊理は満面の笑みを浮かべて喜んだ。

 壊理へのお土産は、リンゴをふんだんに使ったフランスの菓子パン、ショソン・オ・ポムだ。

 壊理が喜ぶと思って買ったんだが…こうかはばつぐんだ!やったね!

 喜ぶ壊理の顔を見て心の中でガッツポーズをした、その時だった。

 

 

 

「おい野郎共!!ちょっとこっち来て手伝え!!」

 

 廊下の奥から、新井の声が聴こえてくる。

 新井の声がした部屋を覗いてみると、普段のコックコートではなく板前の服を着た新井が魚を運んでいた。

 新井が運んでいたのは、全長2m程のマグロだ。

 

「おっきいおさかな」

 

「あれはミナミマグロだね。新井が後でお寿司にしてくれるから、それまで一緒に待ってようか」

 

「うん」

 

 私が壊理の手を引きながら話しかけると、壊理は小さく頷いた。

 ミナミマグロは、別名インドマグロ*1とも呼ばれ、クロマグロと並ぶ高級魚として知られている。

 マグロの旬といえば冬だが、ミナミマグロの生息地は南半球なので、日本だと旬は夏になる。

 ミナミマグロの身は濃厚で味わい深く、特にトロの上質な甘みは、クロマグロに勝るとも劣らない。

 これは今夜の宴会が楽しみだ。

 なんて考えつつ、玄野さんに案内された客間の襖を開ける。

 

 

 

「せっつなぁ〜!」

 

 満面の笑みで手を振る叔父が視界に入った瞬間、思わず脊髄反射で襖を閉めてしまった。

 玄関に叔父の靴があった時点で、嫌な予感はしていたが…

 数回深呼吸をして腹を括った私は、襖を開け、屈託のない笑顔を向けてくる叔父に話しかける。

 

「叔父上…来ていらしたんですね」

 

「そりゃあまあ、今回の事件の調査担当したの俺だし?俺にも参加する権利あるっしょ?」

 

「…そうですね。その節はありがとうございます」

 

 叔父の言う通り、今回壊理を救い出せたのは、公安幹部の叔父の力があってこそだ。

 叔父の事は個人的に苦手だが、だからと言って壊理の命の恩人を手ぶらで帰らせるほど、私も恥知らずではない。

 

「それにしても、珍しいですね。こんなに早く仕事が終わるなんて」

 

「まあ俺、天才だから」

 

「あ、そうですか。壊理、向こうで一緒に本読もうか」

 

 私は叔父をスルーし、壊理と一緒に本を読んだ。

 いつも私に協力してくれるのはありがたいが、ウザ絡みしてくるから、叔父の事は正直苦手だ。

 ちょっとした気遣いに絆されて甘やかすと2時間でも3時間でも絡んでくるから、いちいち反応しないのが得策だ。

 

 

 

「お嬢、食事の支度ができやしたぜ」

 

「ああ、ありがとう」

 

 叔父を華麗にスルーしつつ壊理と一緒に宴会が始まるのを待っていると、八斎會の構成員が宴会場に案内してくれた。

 宴会場に入ると、席がぐるっと四角く囲まれていて、中心部で新井をはじめとしたウチの料理人が調理を行う、高級寿司屋のような仕様になっていた。

 

「へいらっしゃい!!」

 

 席につくと、新井が軽快な掛け声を上げながら、私と壊理の目の前に寿司下駄を置いた。

 テーブルには既に醤油やガリがセットされていて、私と壊理以外の寿司下駄の上には、スズキ、アジ、イカ、海老、穴子、ホタテ、いくら軍艦、ウニ軍艦といった定番の寿司が綺麗に握られて並べられている。

 寿司のひとつひとつが洗練された職人技で握られていて、色鮮やかな寿司が並んだ寿司下駄はまるで宝石箱のようだ。

 

「あらいさん…」

 

「エリちゃん、今日は『大将』って呼んでくれよな!食いたいネタあったらどんどん言いな!世界一美味い寿司食わせてやっからよ」

 

 新井は、ニカっと笑顔を浮かべながら壊理に向かってサムズアップをした。

 八斎會の皆と新井曰く、私と壊理は好きな寿司を好きなだけ頼んでいい…という事らしい。

 

「えーっとね、サーモンマヨある?」

 

「カリフォルニアロール」

 

「アタシ、照り焼きチキン」

 

「回転寿司か!!後で握ってやっから、お前ら一回黙ってろ!!」

 

「いや握んのかよ」

 

 西馬、囲、医与の三人がわざとイロモノ系のタネを頼むと、新井がキレながらも真面目に対応をしたので、西馬が真顔でツッコんだ。

 手始めに軽快なテンポのギャグで笑いを誘ったところで、宴会が始まった。

 私は、達筆で書かれたお品書きを壊理に見せながら話しかけた。

 

「好きなの頼んでいいからな」

 

「たまごと…いくら」

 

「マコガレイの身とえんがわを1貫ずつ。それからアオリイカ、カンパチ、新子をもらおうか」

 

「あいよ!」

 

 壊理と私が注文すると同時に新井が寿司を握り、瞬く間に寿司下駄に寿司を置いた。

 私の寿司下駄の上には、私が注文した寿司5種に加え、綺麗に四角くカットされたギョクが乗っている。

 ギョクには、溶き卵に砂糖や調味料、出汁、魚のすり身、大和芋などを混ぜて焼いたカステラのような風合いの関東風と、溶き卵に出汁を混ぜて何層にも巻き上げる関西風があるが、新井が出してくれたのは関東風の方だ。

 私はまず、ギョクを箸で掴んで口に運んだ。

 

 …うん、美味い。

 卵と調味料とすり身の分量も、焼き加減も、完璧の一言に尽きる。

 これは寿司も楽しみだな。

 そんな事を考えつつ、握りたての寿司を一貫口に運ぶ。

 

「…美味い」

 

 うむ、寿司も文句なしだ。

 鮮度の高いタネを薄く削ぎ切りにする事で素材の味と食感が最大限に活き、シャリが口の中で程よくほぐれ、ワサビも辛すぎず自然な風味でタネを引き締めている。

 しかもいろんな種類のタネを楽しめるようにという配慮からか、新井は私と壊理の分だけ気持ち小さめに握ってくれている。

 そういう気遣いも含めて、まさに職人技だ。

 あまりの美味さに、次の寿司を口に運ぶ手が止まらない。

 やはり新井の寿司は、何度食べても飽きない。

 

「おいしい…!」

 

 壊理も、新井の握った寿司を夢中で食べていた。

 他の皆も、寿司を一貫食べる度に美味い美味い言っていて、中には感動のあまり涙を流している者もいた。

 

「美味え…!こんなに美味い寿司食ったの、生まれて初めてだ!」

 

「大将、あんたの寿司は世界一…いや、宇宙一だ!」

 

「おうよ!」

 

 構成員が目に涙を浮かべながら感謝を伝えると、『大将』と呼ばれて気分を良くした新井が得意げに笑う。

 …強面の大人が純粋に感動してるのって、なんか可愛いな。

 

「うまっ、寿司うまっ」

 

「うぃぃぃ〜、おめぇ酔っ払ってんのかぁ〜?」

 

「それは君だ」

 

「窃野ォ!醤油!」

 

「たまには自分で取れよ」

 

「てめぇ俺のウニ食ってんじゃねぇええええ!!」

 

「お前らせめて箸使え」

 

 八斎衆や入中さんは、酒が入っているのかいつも以上にうるさ…楽しそうに食事をしていた。

 寿司だけではなく小鉢や卵焼きも手掴みで食べる部下に対し、潔癖症の廻兄は眉間に皺を寄せながら注意していた。

 廻兄の潔癖症は昔からだからな…仕方ない。

 

 

 

「っし、そろそろこのマグロ解体すっか!」

 

「よっ、待ってました!!」

 

 腹が少し膨れ、寿司の注文が落ち着いてきた頃、新井がマグロの解体を始めた。

 新井がさっきのマグロをまな板の上に置き、腰に差していた鮪包丁を侍の抜刀のように抜くと、皆のテンションが上がる。

 マグロの解体ショーが始まった。

 新井は、素早く頭や尾を落とし、次々とマグロを解体していく。

 そして5分もかからないうちに解体が終わり、寿司作りに取り掛かった。

 

「マグロ三貫お待ち!」

 

 新井と専属の料理人達が、あっという間に全員分のマグロ寿司を握り、寿司下駄に置いていった。

 赤身、中トロ、大トロの三貫盛りだ。

 一切の濁りや身崩れのない切り身の赤と、脂ののったトロのピンク、そして粒立ったシャリの白のコントラストが暖かみのある照明の下で映え、酢飯の甘酸っぱい香りが食欲を唆る。

 握りたてを、まずは赤身から戴く。

 

「んんっ」

 

 噛み締めた瞬間に旨みが口の中に溢れ、思わず喉を唸らせる。

 上を向き目を瞑って寿司を堪能していると、壊理が話しかけてくる。

 

「お姉ちゃん、おいしい?」

 

 私の様子を窺う壊理は、可笑しそうに笑っていた。

 そんなに美味いのが顔に出てたのか…

 なんか、恥ずかしいな。

 

「…ああ。すごく美味いよ」

 

 私が言うと、壊理はパクっと寿司を食べた。

 壊理は、緩んだ頬を両手で押さえて幸せそうに微笑む。

 

「ふふっ、ほんとだ」

 

 壊理の笑顔を見て、私も胸の奥がほんわかするのを感じた。

 すると他の皆も、ウチの料理人が握った寿司を食べ始めた。

 

「うんめぇぇ!!何じゃこのトロ!?こんなにうめぇトロ食った事ねぇぞ!!」

 

「美味い…美味すぎる…!」

 

「………!!」

 

 新井達の寿司は、すこぶる好評だった。

 中には涙を流す者や、無言でずっと噛み締める者もいた。

 

 全員分のマグロ寿司を握った後は、ネギトロ軍艦や鉄火巻きや炙りのタネなどが出てきた。

 寿司を作って出た残りの部分は、あら汁や骨せんべい、天ぷら、かき揚げ、皮ポン酢、もつ煮込みなどの料理に使われた。

 新井が仕入れてくれた魚は全て、文字通り骨まで美味しく戴いた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

亜楼side

 

「くぅぅぅっ!お酒おいしいっ!」

 

 私は、新井くんが作ってくれた骨せんべいやもつ煮込みをツマミに、八斎會の会長が用意してくれたお酒を熱燗で飲んだ。

 隣で狭間くんが何とも言えない表情で私を見てくるけど…

 せっかく私達の為の宴会を開いてくれてるんだから、少しくらい羽目を外したって別にいいでしょ!?

 

 私達が新井くんの料理を肴にお酒を嗜んでいる間、エリちゃんはお嬢様が買ってきたショソン・オ・ポムを美味しそうに食べていた。

 宴会場の奥の方ではお嬢様が、八斎會の構成員の方と一緒に麻雀に興じられていた。

 

「あ、出た。ツモ」

 

 立直直後に九萬を引いたお嬢様は、得意げな表情を浮かべながら手牌を倒した。

 

「九蓮宝燈。役満です」

 

「はっ!?え、嘘だろ!?」

 

 お嬢様が立直後一発で純正九蓮宝燈をツモ和了りし、8万点超えで圧勝なさった。

 さすがお嬢様…略してさすおじょだわ!

 

「俺もいいか」

 

「あ…治崎さん。ここどうぞ」

 

 治崎様が声をお掛けになると、お嬢様はすぐに席を立たれた。

 すると風天様は、ずいっとお嬢様に顔をお近づけになった。

 

「なんかさぁ…刹那、やけに治崎くんに対してよそよそしくない?昔は口を開けば「廻兄、廻兄」って言って治崎くんを追っかけてたろ?」

 

「いつの話ですか?」

 

 風天様がお尋ねになると、お嬢様は平然とした態度で受け流された。

 お嬢様が治崎様に懐いていらした、ですって!?

 その話、詳しく聞きたい…!!

 でも、そういうセンシティブな話を根掘り葉掘り聞くようなマネはできないわ。

 私が我慢しようとしたその時、活瓶様が風天様にお尋ねになる。

 

「えっ、何スかぁその話?初耳」

 

「あれ?知らない?刹那、治崎くんの事好きなんだよ」

 

 風天様は、お酒に酔った勢いで特大爆弾を投下なさった。

 先程まで冷静だったお嬢様は、所謂宇宙猫状態になっていらっしゃった。

 私も含めて使用人達は、『うわあやりやがったこいつ』、と言いたげな目で風天様を見た。

 風天様には、酒に酔うと身内自慢が止まらなくなる悪癖がある。

 自慢だけならまだいいけど、身内自慢の延長で本人が秘密にしていた事を平気でバラしたりもするから、迷惑極まりない。

 そんなんでよく公安幹部が務まるな、と何度思った事か。

 すると見かねた執事長が、風天様を止めに入る。

 

「風天様、それ以上は…」

 

「小さい頃は治崎くんにベッタリでさ、『大人になったら廻兄のお嫁さんになる』っていっつも言ってたんだよなぁ。そういやぁ、治崎くんにラブレター書いた事もあったっけ。『廻兄とわたし』ってタイトルでさ、そりゃあもう熱烈な──」

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 風天様の話の途中で、お嬢様の絶叫が宴会場に響き渡った。

 その瞬間、さっきまでの楽しい宴の場が、一気に凍りついた。

 お嬢様は、耳まで真っ赤にしながらその場で突っ伏して号泣された。

 会長とエリちゃんは、泣いているお嬢様を見てポカンとしている。

 治崎様と玄野様は、気まずそうに頭を抱えていらっしゃる。

 

 九蓮宝燈は、和了ったら死ぬと言われている役だけど…

 ある意味、死んだわね。

 

「皆様、どうぞ引き続きお楽しみくださいませ」

 

 執事長は、泣いているお嬢様に肩を貸し、介抱しながら一緒に退室した。

 いや…楽しめって言われても、この状況じゃ無理でしょ…

 おかげで酔いが覚めちゃったじゃない。

 

 私は、心の中でため息をつきつつ、元凶となった男を睨みつけた。

 小雪ちゃんや狭間くんも、殺気のこもった目で風天様を睨む。

 お嬢様の部下全員から殺意を向けられている事に気がついた風天様は、ようやくご自身の立場を理解し、オロオロと言い訳を始めた。

 

「え?いや…俺はただ、刹那を応援しようと思っただけで…えっ、ちょっ、首はやめっ…「フシャーーーーーーッ!!!」ア゛ーーーーーーーー!!!!」

 

 風天様の言い訳も虚しく、小雪ちゃんがイカ耳になって尻尾を膨らませながら風天様の喉元に噛みついた。

 私達も、小雪ちゃんに続いて風天様を制裁した。

 風天様はご隠居様のご子息だから、本来はお守りする立場のお方だけれど…私達、風天様じゃなくてお嬢様の部下だし。

 お嬢様を泣かせる奴は、誰であろうと全員敵よ。

 ある程度お灸を据えたら、後は彼の奥様に叱ってもらいましょうか。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

 ………死にたい。

 叔父上に黒歴史をバラされ、羞恥のあまり皆の前で泣いてしまった。

 山根に連れられて客間に来た私は、座布団に腰を下ろし、ちゃぶ台に突っ伏しながら口を開く。

 

「…山根」

 

「何用でございましょう」

 

「殺せ」

 

「……心中お察しします」

 

 そう言って山根は、ちゃぶ台の上に冷たい水を置いてくれた。

 私は、水を飲んで頭を冷やし、ぐちゃぐちゃになった心を落ち着かせた。

 

 かつては、廻兄に恋心を抱いていた事もあった。

 八斎會の為にボロボロになって頑張っているところが、かっこいいと思ったんだ。

 私がヒーローになって、八斎會の皆を悪い奴等から守れば、喜んでくれると思っていた。

 だが廻兄は、職業ヒーロー…もっと言ってしまえば、“個性”ありきで成り立つ超人社会そのものが大嫌いだった。

 好きだった廻兄に、『お前はヒーローに向かない』とまで言われた。

 

 廻兄のヒーロー嫌いを知った日は、部屋にこもって一晩中泣いた。

 『ヒーローになる事』と、『廻兄と一緒になる事』は、両立できない。

 どちらかを取るなら、どちらかを切り捨てなければならない。

 それは、当時の私にとっては、どうしようもなく耐え難く、受け入れたくない現実だった。

 それでも散々悩んで、私が出した答えは…

 

 廻兄への想いを切り捨てる事だった。

 私は、憧れたヒーローになる為に、恋を諦める事にした。

 

 だがヒーローに失望した今なら、廻兄が超人社会やヒーローを嫌いになるのもわかる。

 私には、(ヴィラン)などというものを生み出してそれを倒す事で名声を得ている職業ヒーロー、人類には早すぎた“個性”という力、それを当たり前のものとして受け入れている現代社会、その全てが歪んで見える。

 

 私は、夢と恋路の間で葛藤した挙句、どちらも自らの手で絶ってしまった。

 今思えば、廻兄はこうなる事を見抜いていたんじゃないかと思う。

 今となっては考えても仕方のない事だが…もしあの時ヒーローになるのを諦めていたら、私は今でも廻兄の事が好きだったのかな。

 

「………被身子や療子なら、どうしたかな」

 

 どうして会ったその瞬間から被身子や療子に興味を持ったのか、わかった気がする。

 私と真逆の価値観を持っているからだ。

 私は、理想と相反する感情を排除してしまうから…好きなものを好きと言える二人が、羨ましかったんだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ございません」

 

 私は、醜態を晒し宴の席を台無しにしてしまった事を会長に謝罪した。

 その隣では、亜楼が変形させた毛髪で叔父上()()()()()を縛り上げていた。

 すると会長は、きまり悪そうに口を開く。

 

「まあ…何だ。すまねぇな」

 

 非礼を詫びるつもりが、逆に気を遣わせてしまった。

 その言葉に何も言えず、つい黙り込んでしまう。

 すると壊理が話しかけてくる。

 

「お姉ちゃん、また来てくれる?」

 

「うん」

 

 私は、壊理の身体を抱きしめながら頷いた。

 この笑顔が見られるなら、何度でも来よう。

 壊理が無事で、本当に良かった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

???side

 

()()失敗か…まあ、こうなるだろうとは思っておったわい」

 

 死柄木がナインを始末したと報告を聞いた儂は、使用済みのカプセルの前で誰にでもなく愚痴を吐いた。

 マスターピースを生み出すため、肉体改造を施し、先生の“個性”因子を移植したんじゃが…

 蓋を開けてみれば、攫うように命じていた子供をヒーローに奪い返され、儂が大事に育てた愛しのハイエンドは捕まり、本人もヒーロー相手に惨敗する始末。

 せめて、邪魔な死穢八斎會を潰してくれていれば…

 マスターピースの前身としては完成度が高かっただけに、残念じゃわい。

 

「それにしても…六徳家のガキ共は、()()()()()つくづくワシらの邪魔ばかりしてくれるのぉ」

 

 六徳家。

 世界総人口の8割が“個性”を持つ超人社会となった現代でも、異質な一族じゃ。

 “個性”の代わりに知能や身体能力が発達し、世代を経るごとに素体の性能が向上した結果、“弱個性”の片親からも“強個性”の子供が産まれるようになった。

 何百年にもわたって過酷な環境に適合できる遺伝子を残し続けた結果、生物としての進化によって“個性”特異点を克服した、稀有な例と言えよう。

 そしてとうとう、現当主の代で“個性”特異点を超越した。

 

 あの小娘の“個性”は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のはずじゃった。

 それでも不滅の肉体を手に入れられる可能性があったから、事件のどさくさに紛れて連れ帰り、“個性”を先生に献上して肉体は研究材料として利用するつもりだったんじゃが…

 彼奴は、生死の境を彷徨ったのをきっかけに“個性”が覚醒し、宇宙を構成する物理法則を根底から覆す、まさに神の領域に到達した。

 アメリカNo.1ヒーロー(スター・アンド・ストライプ)の『新秩序』ですら上限が存在するというのに、何のデメリットもなくオールマイトの全力並みの破壊力の衝撃波を撃ち放題など、それこそ別次元に干渉しているとでも考えなければ説明がつかん。

 

 先生でさえ未だに踏み込めていない境地に至ったのは、六徳家の血があってこそのものじゃ。

 マスターピースの素体としては、理想的な条件が揃っておった。

 ただひとつ足りないものがあったとすれば、『社会と自己の間の軋轢からくる強烈な感情』じゃ。

 

 先代当主の六徳那由他には、子供が2人いた。

 姉の方は、社会への憎悪を植え付けるには育ち過ぎていた。

 そこで儂と先生は、まだ母親の腹の中にいた弟に目をつけた。

 先生の“個性”を与えた子飼いの者達を六徳家の本邸に送り込み、屋敷を全焼させた。

 その後は救命医として病院に潜伏していた先生の腹心が、搬送された瀕死の母親の腹を裂いて胎児を取り出し、偽の死体とすり替えた。

 

 攫ってきた赤子を調べた儂は、面白い事を発見した。

 六徳那由他は、“個性”を持たない代わりにあらゆる“個性”に適合し、どれだけ“個性”を付与しても精神や肉体に異常を来さない体質の持ち主じゃった。

 攫った赤子は、父親の体質を100%受け継いでおった。

 六徳那由他と同じ体質を持つ子供なら、先生の“個性”因子をデメリットなしに受け入れられる。

 理論上は、完璧なマスターピースが完成するはず()()()()

 

 マスターピースに不可欠な感情を植え付けるため、攫ってきた赤子を、“個性”差別が横行する劣悪な環境下で育てた。

 子供の養母は、子供が“無個性”だとわかると、スラム街に捨てて行方を眩ませた。

 “無個性”に生まれた自分の運命と社会を憎み、破滅に向かって突き進んでいく怪物が生まれる、そのきっかけを作ったはずじゃった。

 じゃが子供は社会への憎悪や力への執着を抱くどころか、改造手術を拒否し、手下を従えて儂等に歯向かいおった。

 

 本人に力への強い執着が無ければ、改造手術の意味がない。

 結論から言って、彼奴の脳無化は失敗に終わった。

 せっかく、マキアをも超える逸材を見つけたというのに…父親そっくりのクソガキに育ったものじゃ。

 

「これも、お前の計算のうちか?…のぉ、六徳那由他」

 

 先生も儂も、お前には随分と痛い目に遭わされた。

 そういえば、6年前に先生がオールマイトに半殺しにされたのも、お前の仲間が先生の隠れ家を特定したせいじゃったのぉ。

 死してなお、儂等の邪魔をするか。

 

「まぁでも、“核”と研究データは手に入った。これさえあれば、研究は続けられるじゃろう」

 

 儂は、血液の入った試験管を照明に翳しながら口を開いた。

 今回の失敗は残念じゃったが、得たものもあった。

 これがあれば、不滅の肉体を得る事だって夢ではなくなる。

 マスターピースの誕生が楽しみじゃわい。

 

 

 

 

 

*1
インド洋でよく漁獲される事が名前の由来。インド原産ではない。




思ったより情報過多な回になってしまいました。

“無個性”の父親と“弱個性”の母親からチートオリ主が生まれたからくりが明かされました。
そして、オリ主の弟が生きている事がさらっと判明。
悉くオリ主ちゃんの地雷原でタップダンスをする梅干しとジジィの明日はどっちだ。
梅干しのせいで胃に穴が開きそうなオリ主ちゃんの為に、八斎會でエリちゃんと寿司パ。
原作との温度差で風邪ひきそう。

正直、作者は戦闘シーンよりお食事シーン書いたり読んだりしてる方が楽しいです。
作者がヒロアカ二次を書く時、シュガーマンこと砂藤くんを不在にしないのはそのためです。
お食事シーンって何で読んでて楽しいんでしょうね?

A組の期末前の修行パートいります?

  • 書け
  • いらん、本編進めろ
  • んなもんより他の番外編書け
  • 好きにしな
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