仕事でウェビナーの受講中、端末の画面が突然パッと暗転しまして。
突然の出来事にヒヤッとしつつ端末を確認したら、何も映っていないはずの真っ暗な画面に、浮かび上がっては消えたんですよ。
青白いリンゴが。
これが噂に聞くリンゴループ…
Danamon様、評価10を入れていただありがとうございます!
面白いと思っていただけましたら、お気に入り・感想・評価等よろしくお願いします。
5/28 最後の方を加筆修正しました。
なんか終わり方が雑になってしまった自覚があるので。
一週間遅れの心操君の誕生日パーティーの次の授業から、期末テストが返却された。
授業内でテスト返却と解説を行い、一週間最後のホームルームで成績発表が行われる。
月曜日の授業が全て終わった後、私は心操君に声をかけた。
「心操君。訓練が終わった後でいいから、この後付き合えるか?」
「ああ、うん」
私が尋ねると、心操君が頷く。
昨日光輝君の為に買ったプレゼントを渡したいんだが、やはり選んだ本人が一緒に行った方がいいからな。
あの後光輝君は、信頼のおける施設に預かってもらった。
今は、光輝君の里親を募集してくれているそうだ。
施設の職員や子供達と馴染めているかどうかの視察のため、プレゼントを持って施設を訪れるつもりでいる。
まあ職員も子供達もいい奴等ばかりだから、私が首を突っ込む事でもないと思うが…施設に入っても会いに行くと約束したからな。
◆◆◆
心操side
午後5時半、相澤先生に捕縛武器の使い方を教わった後、俺は六徳さんと一緒に光輝君のいる児童養護施設を訪れた。
六徳さん曰く、この施設には“個性”事故を起こしたり、
「お忙しいところすみません、分倍河原さん」
「刹那ちゃん、よく来たな!」
六徳さんが頭を下げると、施設を運営しているという六徳さんの知人が明るく迎えてくれた。
分倍河原さんは、16歳の頃に理不尽な理由で仕事をクビになったそうだが、その分倍河原さんを雇ったのが六徳さんの父親だったそうだ。
六徳さんの両親が亡くなってからは会社を辞め、児童養護施設を設立したらしい。
今では、施設の子供達からは面倒見のいいおじさんとして慕われているそうだ。
「で、隣のボウズは誰だ?彼氏か?」
「「友達です」」
分倍河原さんが尋ねると、俺と六徳さんが同時に答える。
このやりとり、デジャヴだな…
「今、光輝くんはいますか?渡したいものがあるんですが…」
「今奥の部屋で遊んでるぜ。ここで立ち話も何だし、上がってく?」
「では、お邪魔します」
六徳さんが尋ねると、分倍河原さんが俺と六徳さんを施設の中に案内してくれた。
児童養護施設って聞くともっと無機質な内装をイメージしてたけど、思ったより普通の家っぽいというか…言われなきゃ施設だとわからないな。
分倍河原さんは、俺達を2階のダイニングに連れて来ると、ダイニングの扉を開けて中に向かって呼びかけた。
「おーい、迫、操!刹那ちゃんが友達連れてきたぜ!」
分倍河原さんが呼びかけると、ダイニングで食事の支度をしていた男の人が、俺達の方へ歩み寄ってくる。
その人は、クルッと右手首を捻ったかと思うと、何も持っていないはずの右手からパッと花が現れた。
男の人は、手品で出した花を六徳さんに差し出した。
「遠方からはるばるようこそ、お嬢さんにお兄さん」
「相変わらずお上手ですね、迫さん」
男の人が紳士的に振る舞いながら花を渡すと、六徳さんが花を受け取りながら微笑む。
この人が迫さん、副業で分倍河原さんの施設の手伝いをしているマジシャンだそうだ。
ここに来る前に六徳さんから聞いた話によれば、マジシャンとして駆け出しの頃に六徳家にスカウトされ、就職先に紹介されたのがこの施設だったそうだ。
施設の手伝いをしているうちに分倍河原さんと意気投合して、今では『手品のおじさん』として施設の子供達に懐かれているらしい。
もはや施設の職員の方が本業になりつつあるそうだが、気の合う雇い主と自分を慕ってくれる子供達に囲まれて、悪くない気分だそうだ。
「2人ともご飯もう食べた?」
「いえ、まだですが…そちらは?」
「俺らもこれから。食べていくかい?」
「そうですね…では、お言葉に甘えさせていただきます。心操君はどうする?」
「じゃあ俺もご一緒していいですか」
「はいよ。操、食器そこ置いといて」
「うん」
迫さんが声をかけると、俺と同い年くらいの男子が食器をテーブルの上に置いた。
長めの白髪を後ろで結んだ、中性的な顔立ちの男子だ。
操と呼ばれた男子と一瞬目が合ったけど、そいつはすぐに黙々と食器を並べ始めた。
俺が何となく操を目で追っていると、迫さんがダイニングにいた子供の頭を撫でながら口を開く。
「あいつは、こいつらの一番上の兄貴だよ。
「知らない奴に人の事喋るなよ」
「ごめんごめん」
操がそっけなく言うと、迫さんが申し訳なさそうに笑った。
俺がそのやりとりを少し離れたところで見ていると、3、4歳くらいの女の子が、俺の制服のズボンを掴んで話しかけてきた。
「ねえ、おにいちゃんは、せつなちゃんのかれしさん?」
女の子は、キラキラと目を輝かせながら俺に話しかけてきた。
この子、見た目の割におませさんだな…
「ううん、友達」
「そっかぁ…じんせんせいとあつひろさん、次せつなちゃんが来るときはかれしさんつれてくるってゆってたのになぁ」
俺が首を横に振ると、女の子は少しつまらなさそうに俯きながら呟いた。
すると六徳さんが、迫さんの方を振り向く。
「そうなんですか?」
「え?いや、あれはただの冗談っていうか、そうなったらいいなぁ〜って願望を言っただけで…」
六徳さんが尋ねると、迫さんは若干動揺した様子で訳を話した。
多分、六徳さんが来たから浮かれてそんな話をしたんだろうな。
でも流石に気が早いんじゃ…?
俺がそう思った、その時だ。
「メシだー!!」
「ごはーん!」
別の部屋にいた子供達が、半裸でダイニングに駆け込んできた。
すると中学生くらいの女の子が、子供達を追って駆けつけてくる。
「コラァ!ちゃんと服着なさい!」
「や〜だね」
「パンツマン出動〜!」
女の子が追いかけてくると、悪ガキは“個性”を使って飛び回りながら逃げた。
ああもう、めちゃくちゃだよ…どうすんだこれ。
ふと六徳さんの方を見ると、彼女はこの光景を冷静に傍観していた。
「止めなくていいのか?」
「心配ない。いつもの事だ」
そう言って六徳さんは、食事の準備を続けた。
すると、その時だ。
「しょうがねえなあ〜…行け、俺達ィ!」
「「「任せろ俺!」」」
分倍河原さんが、“個性”で自分の分身を生み出し、分身に子供達を捕まえさせた。
分身はあっという間に子供達を捕まえ、服を着させつつお仕置きをした。
「くらえ、こちょこちょこちょこちょ〜!」
「わー!!」
分倍河原さんが脇の下を擽ると、子供達はキャッキャと笑った。
その光景を見て、迫さんや年長者達が「やってるやってる」と笑っていた。
ダイニングでの楽しそうな笑い声を聞いてか、子供部屋で遊んでいた他の子供達もダイニングに駆け込んでくる。
「光輝くん、刹那ちゃん来てるよ。今日は一緒にご飯食べるんだって」
10歳くらいの女の子が、口元に傷のある男の子の手を引いてダイニングに入ってきた。
この子が、六徳さんが話していた光輝君か。
光輝君は、六徳さんを見つけるなりパァッと表情を明るくした。
「お姉ちゃん…!」
「光輝君、久しぶり。元気にしていたか?」
「うん……」
「髪切ってもらえてよかったな」
そう言って六徳さんが光輝君の髪をわしゃわしゃすると、光輝君は微かに頬を染めながら頷いた。
光輝君の髪は、短く切り揃えられていた。
施設の誰かに切ってもらったのかな。
「はじめまして。俺は心操人使。お姉さんの友達です。よろしく」
「……光輝、です」
俺が手を差し出しながら名乗ると、光輝君は静かに会釈しながら、だがハッキリと自分の名前を言って俺の手を握った。
ずっと監禁されていてまともな教育を受けていなかっただろうに、礼儀正しい子だな…
「今日は光輝君に渡したいものがあるんだ」
そう言って六徳さんは、綺麗にラッピングされたプレゼントを光輝君に渡した。
「はい、プレゼント」
六徳さんがプレゼントを渡すと、光輝君は驚いて目を丸くする。
若干緊張した様子で袋のリボンを解き、中からリュックを取り出した。
「いい子にしてたご褒美」
「俺が一緒に選んだんだ。気に入ってもらえるといいんだけど…」
「…ありがとう」
六徳さんと俺が言うと、光輝君はリュックをぎゅっと抱きしめた。
顔が引き攣って上手く笑えていなかったけど、仕草を見れば喜んでいるのがわかる。
気に入ってもらえたみたいで良かった…
「コーキずりーぞ!」
「オレにもプレゼントよこせー!」
「Switch買えー!」
「だーうるせえ、お前らこの前誕生日プレゼントやったばっかだろ!?」
俺が安心したのも束の間、案の定というべきか、光輝君だけプレゼントを貰った事に不平を漏らす子供がいた。
さっきの悪ガキ二人が抗議すると、迫さんが二人の要求を突っぱねる。
すると悪ガキは、泣きながら六徳さんに駆け寄った。
「うえ〜ん、お姉ちゃ〜ん!」
「おじちゃんがいじわるする〜!」
悪ガキ二人は、泣きながら六徳さんに抱きついて、スカートの中に潜り込もうとした。
俺は、悪ガキ二人が六徳さんに抱きつく瞬間、口元が緩んでいたのを見逃さなかった。
こいつら、完璧に自分の立場をわかってやがる…
俺が止めようとしたその時、分倍河原さんがエロガキ二人の首根っこを掴んで引き剥がした。
「やめろっつってんだろ」
「何だよ、邪魔すんなオッサン!」
「タバコくせーんだよ!」
「いでで、タバコ臭えのは関係ねーだろォ!?」
分倍河原さんがエロガキ二人を引き剥がすと、ガキ二人が本性を表し、分倍河原さんの顔を抓って逃げ出そうとした。
思いっきりおもちゃにされてるけど…大丈夫かな、あれ。
◇◇◇
その後、俺と六徳さんは、施設の中で一緒に食事を摂った。
その日の夕食は、ミートソースパスタと夏野菜サラダと冷製コーンポタージュだった。
子供が食べやすいように味付けされた甘口のミートソースだったけど、それはそれで美味いと思った。
「いやー、ありがとうね。片付け手伝ってもらっちゃって」
「ご馳走してもらったんだから当然ですよ」
迫さんが笑いながら礼を言うと、六徳さんが洗い物をしながら答える。
俺は、洗い物を手伝いながら、ずっと気になっていた事を分倍河原さんに尋ねた。
「…あの。分倍河原さんはどうしてこの施設を設立したんですか?」
俺が尋ねると、分倍河原さんは教えてくれた。
中学生の頃に、
六徳グループの末端の企業に再就職するまでは、不運な目にばかり遭ってきた事。
それでいつからか、親や社会に見放された子供を見ると、自分の事のように思うようになった事。
「親に捨てられて野良犬みてえな目ェしたガキを見ると、胸糞悪りい気分になっちまうんだよな。別に、同情してるってわけじゃねえけどよ。もしあの時俺に居場所があれば、理不尽な目に遭ってなかったんじゃねえかって…思っただけの事だ」
俺には分倍河原さんが、社会の理不尽に苦しんでいる子供達に居場所を作ってやりたい、と言っているように聞こえた。
だけど多分、居場所が欲しかったのは、彼自身だったんじゃないかと思う。
その後も、片付けをしながら分倍河原さんの話を聞いた。
俺も“個性”で全てが決まっちまう人生に卑屈になってた頃もあったけど、この施設に来た子供達のほとんどが、そんなもんが可愛く思えるくらい悲惨な人生を歩んでいた。
もし俺がヒーローになっていたら、難儀な“個性”に振り回されている子供を救えただろうか。
ふとそんな考えが頭をよぎった。
「今日はご馳走していただきありがとうございます」
「いいって事よ!俺らは刹那ちゃんなら大歓迎だぜ!」
「気をつけて帰りなよ。はいこれお土産」
「ありがとうございます」
六徳さんが頭を下げると分倍河原さんはサムズアップをし、迫さんは俺と六徳さんにお土産を持たせてくれた。
「じゃあな。次来る時はカップルに…」
「「なりません」」
分倍河原さんが揶揄ってくるものだから、俺と六徳さんは同時にキッパリと否定した。
そういう事言うから、子供達に要らない誤解を招くんじゃねえの…?
なんて考えつつ、俺は六徳さんの家の車に乗せてもらって帰った。
「長居させてすまないね」
「いや、俺が勝手に付き合っただけだし…」
私用に付き合わせた事を謝る六徳さんに、俺は首の後ろを手で押さえながらそう答えた。
一緒に光輝君のプレゼントを届けに行ったのも、視察に最後まで付き合ったのも、全部俺の判断だ。
それに、今回六徳さんの用事に付き合ったおかげで、俺がやらなきゃいけない事がわかった気がする。
強すぎる“個性”に人生を狂わされた子供は、俺が思っている以上にいるし、何ならこれからもっと増えていくと思う。
今までは
「俺、救けたい」
「………そうか」
俺が言うと、六徳さんは静かに頷いた。
六徳さんは頭が良いから、俺が言いたい事を全て汲んでくれたんだと思う。
それ以上詮索しようとはしなかったけど、代わりに俺の額を指先の肉球で押しながら言った。
「だったらまずは、今回の期末に集中しようか。君はまだ学生なのだからな。尤も、もう結果は出ているから、今からできる事は無いが…」
「…わかってる」
俺は軽く息を吐いてから、六徳さんの言葉に返事をした。
山根さんの運転する車が、俺の住んでいるアパートの近くに停まった。
車を降りると、六徳さんが車の中から手を振りながら声をかけてくる。
「じゃ、また明日」
「うん」
六徳さんと挨拶を交わすと、車のドアが閉まり発車した。
俺は、遠くなっていく車を見送りながら、アパートの中へと足を進めた。
◆◆◆
刹那side
時は流れ、土曜日。
最後のテスト返却が終わった後のホームルームで、運命の成績発表が行われる。
「皆さん、お疲れ様でした。期末試験の個人成績を配ります」
「ウワァこの時間一番やだ」
担任の13号先生が、集計した個人成績表を出席番号順に渡していく。
成績を確認すると、クラス全体での平均点は中間より上がっていた。
期末は中間に比べてレベルが上がっていたし、主要5教科に加えて副教科のテストもあったのに、大したもんじゃないか。
私?
取ったよ、学年1位。
今回は範囲が広かったし、テスト期間中に色々と予定が重なってしまったので、少々不安ではあったが…
思えば、要らん心配をしすぎたかもしれない。
ちなみにヒーロー科は、A組もB組も全員赤点はゼロ。
あの物間君も、私の勉強会と、B組の皆のサポートのおかげでギリギリ及第点をもらえたそうだ。
まあ、とにかくよく頑張った。
「やっと終わったー」
「ねえ明日休みだよね。期末終わったしさ、どっか行かない?」
「えー、クソ暑い中外行くのヤダ。クーラーきいた部屋でアイス食ってゴロゴロしてたいよー」
「太れ」
「それはもっとやだー」
ホームルームが終わった後、矢田君と斥口君が翌日の予定の話をしていた。
確かにこの暑さだと、外に出るのも億劫になるな。
特に明日は、最高気温が35度に達するらしいし。
かといって家にこもってばかりいると、運動不足になりがちだ。
そういう日は、家のプールで泳ぐに限る。
だが一人でプールを使うのももったいないし…二人を誘ったら来るだろうか?
「だったらウチに来るか?」
「えっ、いいの?」
「家にプールがあるんだが、1人で使うのももったいないのでな。よかったらと思ったんだが…」
「いや、でも流石に悪「行く!!」
私が二人を家に誘うと、矢田君はその場で即答した。
「いやっほーい!!泳ぐぞー!!」
「あんたは少しは遠慮するって事を覚えろ」
矢田君が泳ぐような仕草をすると、斥口君がため息をつく。
せっかくの休みだし、誘えるだけ誘ってみるか。
「療子も来るか?」
「はい、行きます!」
療子からも、いい返事が貰えた。
結局、クラスの女子はほとんど来てくれる事になった。
亜楼に頼んで、水着を用意してもらわんとな…
「あとは誰を誘うんですか?」
「ああ、心操君も誘おうと考えている。身体強化メニューを考えたのでな」
私がラインで心操君をプールに誘おうとすると、療子が止めた。
「それはやめときましょう」
「何故だ?せっかくなら一緒にトレーニングをした方が効率が良いと思うのだが」
「尚更やめておいた方がいいです。多分、逆効果ですから」
私が反論すると、療子は首を横に振った。
療子がここまで言うなら、誘わない方がいい事情があるのだろう。
そういう事なら、仕方ないがメニューだけ送って自分でトレーニングをしてもらうか。
◆◆◆
癒治side
早朝にアパートを出発した私は、クラスの女子皆と一緒に、山根さんの運転する車で刹那ちゃんの家に来た。
初めて迎えに来てくれた時は驚いたけど、今では山根さんともすっかり顔馴染みだ。
刹那ちゃんのお家に何度もお邪魔しているおかげか、私も贅沢慣れしてきたと思う。
お城かと思う程に広い豪邸の中に入ると、メイド長の亜楼さんが私達を出迎えてくれた。
「皆様、ようこそお越しくださいました。皆様の分の水着はご用意しております。どうぞこちらへ」
そう言って亜楼さんは、私達を地下のトレーニングルームに案内してくれた。
中には考えつく限りのトレーニング機材が並んでいて、刹那ちゃん自身登山が趣味だからか、擬似的な高地トレーニングができる低酸素室もある。
あと、ジムの一角はパルクール専用ルームになっていて、その中の壁の一部がボルダリング仕様になっている。
命を狙われて外出できない事が多かったから、屋敷の中でトレーニングができるように、お金をかけてこれだけの設備を作らせたんだろうなぁ…
「…わあ、すごい」
雄英のジムにも負けないくらい広いジムを抜けた先には、更衣室があった。
更衣室の中には、私達のサイズに合わせた水着が既に用意されていた。
私は、その中の一着を手に取って、早速着替えてみた。
私が選んだのは、フロントクロスのトップスとハイウエストのボトムスを組み合わせたピンクのビキニだ。
入学したての頃はご飯の食べ過ぎでお腹周りが少し気になっていたけど、刹那ちゃんに教えてもらったトレーニングを始めてから3ヶ月が経った今では、余計な肉が落ちてうっすらだけど腹筋が割れてきた。
入学前は、どんなに頑張って筋トレしても、腹筋が割れた事なんてなかったのに…
…やっぱり、刹那ちゃんの指導が優秀だったんだなぁ。
着替えを終えた私は、他の皆と一緒に隣のシャワールームで汗を流した。
それにしても、皆立派なものをお持ちで…
私は背が低いし、胸も大きくないからなぁ。
なんて思っていると、更衣室の扉が勢いよく開いた。
「おまたー!!」
「うわ、矢田それどうしたの」
「家にあったやつ持ってきた」
「どんな家だよ」
私達がシャワールームでシャワーを浴びながら喋っていると、水着に着替えた矢田さんが勢いよく入ってきた。
矢田さんは、鱗のようなものが描かれたウェットスーツを着ていて、足にはフィンを履いていて、顔には魚の被り物みたいなものを被っていた。
何だろあれ、半魚人…?
「てか矢田、あんたそれで泳ぐ気?」
「オーイエス!どうだ見ろ、生足魅惑のマーメイドだぞ!」
「マーメイドなんて贅沢なもんじゃねえだろお前は」
矢田さんが水着を見せびらかすと、斥口さんが辛辣な返しをする。
ほんとに仲良いなこの二人…
「わぁ…!」
シャワーを浴びて強化ガラスの扉を開けると、思わず感嘆の声が漏れた。
エキゾチックな内装の室内に、大きな四角いプールと、小さな円形のプールがあって、暖かみのある水中照明がプールをぼんやりと照らしている。
プールサイドには観葉植物やサンベッドが置かれていて、バーカウンターまで完備した贅沢空間になっている。
私が非現実に心を躍らせていると、刹那ちゃんがプールから上がった。
「やあ、我が家へようこそ。歓迎しよう」
そう言って刹那ちゃんは、ゴーグルを外しながら微笑んだ。
刹那ちゃんは、紺色のハイレグの競泳水着を着ていて、美脚を惜しみなく露出させている。
濡れた水着がてらてら光っていて、何だろう、すごくえっちだ…
裸の時よりえっちなの、ほんと何なの。
これ、やっぱり男子を連れて来なくて正解だったかも。
女子の私ですらドキドキしてるのに、男子が刹那ちゃんの水着姿なんて見たら、泳ぐどころじゃなくなっちゃうよ。
「えっちコンロ点火!エチチチチチチチチチチチチw」
「うわっ」
私が刹那ちゃんに見惚れていると、矢田さんがカッと目を見開いて刹那ちゃんの胸を後ろから揉みしだいた。
すると斥口さんが素早く矢田さんの頭を掴んで刹那ちゃんから引き剥がし、矢田さんの顔を勢いよくプールに突っ込んだ。
「がばばごぼぼぼぼ!!!」
斥口さんが矢田さんの顔をプールの中に突っ込むと、矢田さんがジタバタ暴れる。
…うん、見なかった事にしよう。
その後私は、刹那ちゃんやクラスの皆と広いプールで水球をして遊んだ。
疲れて休憩をしている時は、新井さんがバーカウンターでジェラートやノンアルコールカクテルを作ってくれた。
私達が楽しく遊んでいると、さっきまでうるさかった矢田さんが急に大人しくなった。
「やべ、おしっこしたくなってきた」
「いちいち報告しなくていいから」
「
「早くトイレ行ってきなよ」
「ねえ待って、この水着1人で脱げないんだけど」
「じゃあどうやって1人で着たんだよ」
矢田さんは、トイレに行こうにも1人で水着を脱げずに困っていた。
他の皆が呆れながらもトイレに行くよう促すと、矢田さんがとんでもない事を言い始める。
「つーかさ、ここでしちゃダメかな」
「はぁ!?何言ってんのあんた!?」
「だって漏れそうなんだもん。ちょっとくらい塩味効いてた方がよくね?」
「良くない!」
「どーいう神経してんだお前」
「さいってー!」
「しね」
プールの中で用を足そうとする矢田さんを、皆が非難した。
すると矢田さんは、開き直ったように笑う。
「皆気にしすぎ!プールでおしっこなんか誰かしらしてるっしょ?いいんちょもそんくらい許してくれるって!」
矢田さんは、周りの女子達の冷たい視線も気にせずあっけらかんと笑った。
誰かしらやってるから、どうせやってもやらなくても同じだから。
そうやって考える人達が、少しずつ皆で使う場所を汚していくんだと思う。
なんだか、環境汚染の本質がわかった気がする。
「矢田君」
突然、後ろから低い声が聴こえて、背筋がゾワっとする。
振り向くと、刹那ちゃんが怒りの表情をしながら矢田さんを睨んでいた。
「人の家で粗相するな。今すぐトイレ行ってこい」
「ヘイ!!」
刹那ちゃんが命令すると、矢田さんはダッシュでトイレに向かった。
刹那ちゃんが、いつになく本気で怒っている。
刹那ちゃん、普段は優しいけどルールを破るような行動は許せないタイプだからなぁ。
私が矢田さんを目で追っていると、他の女子の皆が刹那ちゃんを見ながらボソっと呟いた。
「「「怖……」」」
女子皆の心の声が一致した瞬間だった。
普段は優しくて気を配れる人が怒ると、本当に怖いんだよな…
矢田さんがトイレに行ったその直後、どこからか西馬さんがプールサイドに現れる。
「失礼します。お嬢様」
「どうした?」
「それが…たった今、情報が入りまして…」
西馬さんは、刹那ちゃんに耳打ちをした。
すると刹那ちゃんの表情が険しいものに変わる。
「…わかった。こちらで対応しておく」
そう言って刹那ちゃんは、足早にシャワールームへと向かった。
「すまない皆、用事ができたので出掛けてくる」
「用事って…もしかして、何かトラブルでもあったんですか?」
私は、シャワールームに向かう刹那ちゃんに声をかけた。
すると刹那ちゃんは、突き刺すような鋭い視線を向けてくる。
「君には関係のない事だ。余計な詮索はするな」
「っ……ごめんなさい」
刹那ちゃんの視線と声に気圧された私は、謝る事しかできなかった。
刹那ちゃんは、何の理由もなく冷たい態度を取るような人じゃない。
もし私達を突き放すような態度を取るとしたらそれは、私達を守る為だ。
西馬さんが持ってきた話というのは、十中八九
刹那ちゃんは私達を遠ざけて、自分一人で尻拭いをしようとしている。
そんなの、許せない。
刹那ちゃんじゃなくて、何もできない自分が許せない。
悔しくて、涙が溢れてくる。
私は、目に悔し涙を浮かべているのを悟られないように、水の中に潜って目を擦った。
…せっかくのプール、楽しめなくなっちゃった。
◆◆◆
刹那side
プールから上がった私は、今動ける者達を招集し、木椰区のショッピングモールに向かわせた。
私も40秒で身支度を済ませ、現地の警察署に直行した。
今し方西馬から、A組がショッピングをしているという木椰区ショッピングモール近辺にて、不審人物を発見したとの報告を受けた。
A組は4月に
正直、考えすぎだと思っていたのだが…
私の抱いていた嫌な予感は、的中してしまった。
A組のショッピング中に、
奴は私の部下達の包囲網を逃げ切り、黒霧の“個性”を使って姿を消した。
客の安全確保の為、ショッピングモールは一時的に閉鎖。
警察によって、徹底的な捜索が行われた。
私も、貴重な休日を半日潰して連合の捜索と事件の後処理にあたった。
「
しかし、奴等はどうやってA組の前に姿を現した…?
今回の遭遇は、偶然とは思えない。
奴等がスケジュールを把握しているのはほぼ確実だが、A組がショッピングに行く事は、昨日決めた事だったはずだ。
USJの時とは違って、事前にスケジュールを盗み見る事はできない。
私は百からショッピングの話を聞いたが、私が
もちろん私はショッピングの話を部下以外に話していないし、当家が扱う全ての通信機器には二重にも三重にも傍受対策をしている。
当家のセキュリティが破られようものなら、もはや人類は原始時代の生活をしなければならなくなる。
故にA組から情報が漏れた可能性が高いが、まあ結論から言ってしまえば、『連合に傍受の“個性”を持つ奴がいる』か、『A組の中に情報源がいる(無自覚含む)』かのどちらかだと思う。
『連合に傍受の“個性”を持つ奴がいた』というだけの話なら、そんなもの防ぎようがないし、それがわかったところでやる事はあまり変わらない(無論、だから放置していいというわけではないが)。
だが厄介なのは、もう一つの可能性だ。
生徒の中に情報源がいるとなれば、雄英の信頼は地に堕ちる。
それに、自分のクラスに情報源がいると知った生徒のショックは相当なものだろう。
今躍起になって犯人探しをする事は得策ではないが、かと言って情報源の確保が遅れれば遅れるほど、雄英の信頼や生徒のメンタルへのダメージは大きくなる。
対応を間違えれば、取り返しのつかない事になる。
生徒に直接尋問をするようなマネはできないし……
…とりあえず、連合の捜索は警察と部下に任せるとして、私はA組の生徒の素性を調べてみるか。
何か手掛かりになる情報が手に入るかもしれんからな。
「はぁ…」
せっかくの休日が台無しになってしまったな…
遊びに来てくれた皆にも、迷惑をかけてしまった。
近いうちに、この分の埋め合わせをしなくては。
私が警察署を後にすると、プールに泳ぎに来ていた女子達が駆け寄ってきた。
皆、私の用事が終わるまで待っていてくれてたのか…
私が皆のもとへ戻ろうとすると、複原君が療子を連れて前に出てくる。
「あのね、委員長。癒治さんが、お話したい事があるんだって」
複原君がそう言うと、療子が私に歩み寄る。
療子は、目を腫らして泣きじゃくっていた。
…そういえば、屋敷を出る直前、療子にキツい言葉をかけた気がする。
「刹那ちゃん…私、前に言ったよね。刹那ちゃんを一人にさせないって。私達が傷つかないように、余計な事考えないように、わざと突き放すような言い方をしたんだよね。でも、私は…そのせいで刹那ちゃんが一人になるのだけは嫌なの…!」
「療子…」
「刹那ちゃんは何も悪くない。私が頼りないって事くらいわかってる。でも、でも…!頼りなくても、相談くらいしてよ…一人で全部抱え込まないでよ…!クラスメイトでしょ?友達でしょ…!?」
療子は、涙を流しながら思いの丈をぶつけてきた。
療子は
だから余計な事を考えなくていいように、あえてキツい言葉をかけた。
療子が傷つくくらいなら、私が嫌われ役になるくらい、安いものだと思ったんだ。
療子の為を思って言った言葉が、逆に療子を傷つけてしまっていたのだな。
つくづく、自分自身の愚かさに腹が立つ。
理想の為に突き進んでいたはずが、なりたくない自分になっていた。
「すまなかった、療子。私が馬鹿だった」
私は、療子に頭を下げて誠心誠意謝った。
すると他の皆は、顔を見合わせてから、一斉に私を責めた。
「そうだよ委員長、あの言い方はないわ!」
「『関係ない』とか言われたら傷つくんですけど!」
「ごめん…」
「次言ったら、一生蒸し返すから」
「う…」
皆は寄ってたかって私を責めてきたが、反省の気持ちが伝わると、それ以上は責めてこなかった。
「はい、委員長は謝ったし、療子ちゃんは思いの丈をぶつけられたわけだし…この話はもうおしまい!今は皆で笑って、元気出そ!明日から、授業あるんだからさ!」
完膳君は、明るい笑顔で話を纏めてくれた。
委員長の私が暗い顔をしてどうする。
皆を安心させる為にも、笑っていなくてはな。
「ただいま」
私が笑顔で言うと、療子が私に抱きついて胸に顔を埋めてくる。
ついでに、他の女子も何人か私に抱きついてきた。
気持ちはわからんでもないが、流石にちょっと重い…
すいません、早よI・アイランド編書けよって思うかもしれませんが、ここしか挟むタイミングがなかったんです。
しれっとトゥワイスとコンプレスと外典救済。
外典は初期構成では
原作で日陰者だった人達が真人間になればなるほど、一部の良識人を除くヒーローや愚民が割りを食うという逆転現象。←自業自得
作者は、オリ主を完璧な人格者として書いていません。
精神的に実年齢より未熟なので、無自覚に人を傷つけたりうまく人に甘えられなかったり、人付き合いに色々問題を抱えてる子です。
A組の期末前の修行パートいります?
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書け
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いらん、本編進めろ
-
んなもんより他の番外編書け
-
好きにしな