メリッサが特別な来客を迎えに行っていた頃、私は療子と心操君の二人と一緒にパビリオンを見学していた。
心操君が見たがっていた生物関連のパビリオンを見た後は、路上で弾き語りしているアーティストの曲を聴いたり、スポーツ系のアトラクションを体験してみたりした。
高さ50mもの壁を己の肉体のみで登るクライミングチャレンジは、中々に圧巻だった。
“個性”を使わずに壁を登っていく私達を、他の挑戦者達は二度見していたが。
…しかし、暑い中歩き回っていると、喉が渇いてくるな。
「なんか喉渇きましたね」
「メリッサが戻ってくるまで、カフェで待ってるか?」
「…だね。俺も正直そろそろどっか座りたいし」
「うん、決まりだ。イヴ、オススメのカフェを紹介してくれないか?」
『かしこまりました!』
私がイヴに命令すると、イヴは黄色く輝きながら返事をして、矢印型のオブジェクトを表示し近くのカフェへ案内してくれた。
イヴと過ごしていてわかった事だが、嬉しい時はイエロー系の色に輝く、という認識で合っているらしい。
さらに嬉しい感情が昂ると、光るだけに留まらず、光るオブジェクトをポンポン生み出したりする。
正直AIのくせに私よりも感情豊かなのが癪だが、毎回違うリアクションをしてくるので、見ていて退屈はしない。
『着きました!このカフェのオススメは、ブラックコーヒーとホットサンド、それからパンケーキです!』
イヴは、私達の周りにメニューのイメージを映し出した。
試しに空中に浮いたコーヒーに触れてみると、注文票にコーヒーが追加された。
ほうほう、これで注文できるのか。
というかこれ…まさか、I・アイランド内の全ての建物に対応しているのか?
だとしたら万能すぎないか、このAI。
便利な事この上ないが…私自身が、イヴの能力に振り回されないようにしないと。
冷静に考えてみれば、出所のわからないAIに勝手に主人認定されてI・アイランドでの生活を支配されているこの状況って、普通に危険だからな。
悪意を持った者が私の寝首を掻く為に送り込んだ刺客、という可能性もまだ捨て切れない。
だからこそ、早い事イヴを使いこなして自分のものにしなければ。
欲を言えば、島を出るまでには彼女の能力を今以上に引き出せるようにしたい。
そんな事を考えつつ、私はブルーマウンテンブレンドと卵のホットサンド、それと抹茶プリンを注文した。
心操君はコーラを、療子はミルクココア、タコス風ホットサンド、ハニーパンケーキ*1を注文していた。
注文をして5分もしないうちに、ウェイターが来てドリンクとスイーツを運んで来てくれた。
……おや?
◆◆◆
峰田side
オイラと上鳴は、I・アイランドでI・エキスポの間臨時のバイトを募集しているのを見つけて、一も二もなく応募した。
何故かって?
そりゃあまあ、時給は高いし、休憩時間中にI・エキスポを見学できるからな。
そして何より…
「お待たせしました」
オイラと上鳴は、テラス席に座っていた客にドリンクとスイーツを提供した。
すると席に座っていた客が、オイラ達に気付く。
「…って、あんたら確かヒーロー科の…」
「上鳴君と峰田君だね。君達もI・エキスポ目当てで来たのか」
「まあ、そんなところっスね」
クラスメイトと一緒にテラス席に座っていた六徳様の前で、オイラと上鳴は一番カッコよく見える角度で立った。
「どういう事ですか?」
「I・エキスポ中は島外から人が大勢来るから、飲食店やホテルでは臨時のバイトを募集しているのだよ。休憩中にI・エキスポを見学できるという好条件付きでな」
「ああ、それで…」
うひょおおお!!
流石六徳様、会う度にエロさが更新してるぜ!
何か身体の周りがキラキラ光ってるし…
……神か?
I・アイランドに来れば、六徳様のエロいドレス姿を生で見られると思って応募したわけだが…
こんなに早くお目にかかれるとはなぁ…!
隣の女子も、いい身体してますなぁ。
「峰田…」
「ああ…」
「「やっぱりこのバイト応募して良かったぁ!」」
オイラと上鳴は、感動の涙を流しながら抱き合った。
だが…
「HEY!ウェイター!」
せっかくの夢の時間をぶち壊す声が聴こえてきた。
振り向くと、店側の席に座っていたラッパー風の男二人が騒ぎ立てていた。
「このポテトYO!ケチャップがついてねーんだYO!どーなってんだYOU!?」
「さっさと持って来いYO!グズグズすんなYOU!」
チッ、野郎の注文はお呼びじゃねーんだよ。
可愛い女子との会話を邪魔してクレームを入れてきやがった男二人に、オイラは心の中で大きめの舌打ちをした。
オイラと上鳴は、六徳様に助けを求めるように視線を向けてみるも…
「ほら、お客様がお呼びだぞ。応対して差し上げろ」
冷たくあしらわれた。
くっそぉ、せっかくの夢の時間がぁ…!
「ちくしょう、こいつらうぜえ…」
オイラが聴こえないように愚痴を漏らしつつクソ客の応対をしていた、その時だった。
「お待たせ、刹那ちゃん!」
「やあ、メリッサ。ん?緑谷君達も一緒なのか」
「えっと、これはその〜…」
テラス席の方から、楽しそうな声が聴こえてきた。
うっひょお、金髪美女だぁ!
って、何で美女が緑谷と一緒にいるんだ?
麗日に八百万、耳郎まで…
ちくしょう、緑谷ァ…許っ羨!!
オイラもそこに混ざりてえよぉ…!
「おい、そこの2人」
オイラが緑谷に嫉妬を爆発させそうになっていると、マスターがオイラと上鳴に声をかけてきた。
振り向くとマスターが、緑谷達が注文したドリンクを乗せたトレイをカウンターの上に置いていた。
「これ、テラスの3番テーブルに持ってって」
「「喜んでぇ!」」
オイラと上鳴は、駆け足でドリンクを持って行った。
オイラ達がドリンクを配ると、緑谷達はオイラと上鳴がここにいる事に驚いたもんだから、上鳴とオイラはここでバイトをしている訳を話した。
「給料貰えるし、来場した可愛い女の子とステキな出会いがあるかも…しれないしなぁ!」
そう言ってオイラは、クラスの女子と談笑していた美女に視線を向ける。
「おい緑谷、あんな美人とどこで知り合ったんだよ!?」
「紹介しろ、紹介…!」
上鳴とオイラは、美女の事を緑谷に問い詰めた。
すると例の美女は、オイラ達の事をクラスの女子に尋ねる。
「彼らも雄英生?」
「俺達も雄英生です」
「ヒーロー志望です」
上鳴とオイラが女子の前でカッコつけようとした、その時だった。
「何を油を売っているんだ!!バイトを引き受けた以上、労働に励みたまえええええ!!」
「「いやああああああああ!!」」
うわあああああ飯田ぁ!?
ちくしょう、ずっと見張ってたのかよぉ!?
「い、飯田くん!?」
「来てたん!?」
麗日が尋ねると、飯田がロボットダンスをしながら話す。
「ウチはヒーロー一家だからね!I・エキスポから招待状を戴いたんだ!家族は予定があって、来たのは俺一人だが!」
「飯田さんもですの!?私も、父がI・エキスポのスポンサー企業の株を持っているものですから、招待状を戴きましたの!」
飯田と八百万は、ここに来た訳を話した。
麗日と耳郎は、八百万の招待状が余ってたから譲ってもらったらしい。
「明日からの一般公開日に全員で見学する予定ですの!」
「良ければ、私が案内しましょうか?」
「いいんですか!?」
「うん!」
「「「やったあ!!」」」
「「俺達も連れてって!!」」
女子達が見学すると聞いて、オイラ達が便乗しようとした、その時だった。
戦闘系アトラクションの方から、衝突音が鳴り響いた。
その音に驚いた皆は、飲食代を置いてアトラクションを見に行った。
オイラ達が女子達を目で追っている間にも、マスターが突き刺すような視線を向けてくるもんだから、仕方なく業務に戻る事にした。
すると、近くの席に二人客がドカッと座った。
オーバーサイズの帽子とパーカーを身につけた小学生くらいの子供と、お揃いのパーカーを着た赤い髪の美女の二人組だった。
「ご注文は?」
「オレンジジュース2つ」
「……これ」
「あと、卵のホットサンド2つ」
オイラ達が注文を訊くと、美女が素っ気なく注文した。
オイラが美女に見惚れている間、上鳴は子供の方を見て怪訝そうな表情を浮かべていた。
「………?」
「何だよ、どうした上鳴?」
「今の客、誰かに似てなかったか?」
誰かって、そりゃあ誰かには似るだろ。
そんなに気になるような事か?
◆◆◆
デヴィットside
刹那と腹を割って話した後、私はトシと再会を果たしていた。
メリッサが、私に内緒でトシを招待してくれていたらしい。
だが感動の再会…とはいかなかった。
トシの異変を察知した私は、半ば強引にトシを診療カプセルに押し込み検査した。
その結果…前回と比べて、“個性”数値が異常な程に下がっている事がわかった。
「どういう事だ、トシ…“個性”数値が、何故これほど急激に下がっているんだ?オール・フォー・ワンとの戦いで損傷を受けたとはいえ、突然この数値は異常すぎる!一体君の身体に、何があったというんだ…」
「ゲホッ…長年ヒーローを続けていれば、あちこちガタも来るさ」
私がトシを問い詰めると、トシは咳き込みながら誤魔化した。
“個性”数値の変化が老いや負傷によるものでない事くらい、私にはわかる。
トシが本当の事を話さないのは、おそらく私やメリッサを巻き込むのを恐れての事だ。
だが30年も連れ添った親友だからこそ、知らなければならない事だと私は思う。
「トシ…私の話を聞いてくれないか」
私は、トシがここに来る前に刹那と話した事を、トシに伝えた。
トシに頼り切っていたのをこっぴどく叱られた事、そのおかげで私も考えが変わった事。
そして、トシが今雄英で次世代のヒーローを育てていると聞かされた事。
「そうか…六徳少女が、そんな事を…」
「君が平和の象徴でいられなくなったとしても、人々が
私は、トシに詰め寄って尋ねた。
トシは、まだ話すのを躊躇っていた。
「しかし……この事を話せば、君やメリッサが危険に晒される事に…」
「私が何年君の相棒をやっていると思ってる。そんなの、君についていくと決めた時から、とっくに覚悟していた事だ」
「……そうだな。その通りだ」
そう言ってトシは、“個性”の秘密を話し始めた。
正直、あまりにも荒唐無稽な話すぎて、頭がついていかなかった。
だがトシが嘘をついているようには思えなかった。
「“個性”が無い…!?」
「ああ。だが、聞いてくれデイヴ。私の“個性”は、消えたわけでも、誰かに奪われたわけでもない。私が、自分の意志で譲渡したんだ。さっき君に紹介した、緑谷少年にね」
トシの“個性”、『ワン・フォー・オール』は、オール・フォー・ワンに対抗する為、遥か昔から聖火の如く受け継がれてきた“個性”である事。
元々メリッサと同じ“無個性”だったトシは、彼の師匠からその力を受け継ぎ、『オールマイト』になった事。
そしてもう平和の象徴でいられる時間は長くないと悟ったトシは、その力を同じ“無個性”だった緑谷君に託した事。
それが、トシがずっと私にさえ隠していた秘密だった。
「私はそう遠くない未来に、オールマイトではいられなくなる。だが、希望が消えたわけじゃない。私の力を継いだ緑谷少年や、雄英の皆…そして六徳少女が、今よりずっと明るい未来を築いてくれる。私はそう信じているよ」
「…だったら、緑谷くんや刹那、そして雄英の皆が、君にとっての希望だと…そうなんだな?」
「そうだ」
私がトシに確認すると、トシは力強く頷いた。
「…わかったよ、トシ。未来のヒーロー達の為に、私も出来る限りのサポートをしよう」
「ありがとう、デイヴ」
トシと腹を割って話した私は、約束の証に固く握手を交わした。
トシの秘密を聞いた私は、
◆◆◆
癒治side
激しい衝突音を聞きつけた私達は、戦闘系のアトラクションへと駆けつけた。
『クリアタイム26秒、第5位です!』
「切島くん!?」
見ると、挑戦者と思われるA組の…確か、切島君の姿がスクリーンに映し出されていた。
A組の人、他にも来てたんだ…
『さあ!次なるチャレンジャーは…』
女性の実況と同時に、入場ゲートから爆豪君が出てくる。
「か…かっちゃん!!?」
『それでは、
爆豪君は、開始の合図と同時に爆破を使って空を飛んだ。
「死ねえええええええ!!!」
死ね…?
いきなりの暴言にきょとんとしていると、爆豪君は仮想
爆豪君が撃ち出した爆破は、標的全てを正確に撃ち抜いた。
す、すごい…
『これはすごい…!タイム6秒、トップです!!』
女性がタイムを知らせると同時に、爆豪君は山岳から飛び降りる。
すると観客席から歓声が上がる。
その時、近くにいた切島君が観客席を指差した。
「あれ!?あそこにいるの緑谷じゃね!?」
切島君がそう言うと、爆豪君はいきなり観客席の柵に飛びついて威嚇してくる。
「なんでてめぇがここにいるんだァ!!?」
「や、やめようよかっちゃん!人が見てるから!」
「だから何だってんだ!!」
「やめたまえ爆豪くん!!」
爆豪君が緑谷君に突っかかってくると、緑谷君や他のA組の人達が止めた。
爆豪君は体育祭優勝の副賞がI・エキスポへの招待状だったらしくて、切島君は爆豪君の付き添いに来たらしい。
「何?これからアレ挑戦すんの?」
「いや、僕は…」
「私、やってみたいです!」
私が手を挙げると、他の皆がきょとんとする。
うぅ、ヒーロー志望でもないのに出しゃばっちゃって、恥ずかしい…
なんて思っていると、刹那ちゃんが口を開く。
「いいんじゃないか、やってこい」
「刹那ちゃんと心操くんは?」
「私はいいかな、性に合わん」
「俺も遠慮しとく。コスチューム持ってないし」
ですよねぇ…
冷静に考えてみれば、コスチュームもないのに参加するなんて無謀すぎたかも。
でも今更『やっぱりやめる』とも言えず、どうしようか考えていると、メリッサさんが声をかけてきた。
「あ、待って療子ちゃん。参加するならこれをつけて」
そう言ってメリッサさんは、保護剤入りのグローブとシューズ、それから肘当てと膝当てを渡してきた。
試しに装着してみると、思ったより軽くて動きやすい。
「ありがとうございます…!」
私はメリッサさんに借りた装備を装着して、
『
「やあああああああっ!!」
開始の合図と同時に、私は全速力で走り出し、岩山を一気に駆け上がった。
岩山の上から標的の位置を確認して、グローブで思いっきり殴りつけた。
すると拳の一撃で、ロボットの頭部が粉々に砕け散った。
すごい、このグローブ…鉄の塊を殴りつけても全然痛くない…!
私はその調子で、次々とロボットを撃破していった。
最後のロボットを蹴りで撃破した私は、息を整えて汗を拭いながら着地した。
「はふ…」
『クリアタイム35秒、第9位!女性挑戦者の暫定2位です!』
私がクリアした直後、女性MCが結果を発表して、歓声が沸き起こった。
やった、トップ10に入れた…!
まあ、メリッサさんが貸してくれたガードありきだけど…
「すごいわ、療子ちゃん!」
「9位やて、すごいねぇ!」
「やるじゃん」
「ウム、よく頑張った」
「この前組み手した時より強くなってない?」
私が観客席に戻ると、メリッサさんやA組の皆、刹那ちゃんと心操君が褒めてくれた。
刹那ちゃんのサポートAIのイヴさんも、褒めてくれているのか、黄色く光っている。
なんだろう、恥ずかしいけど嬉しい…
「ありがとうございます…ヒーロー科の皆さんに比べたら、全然大した事ないですけど…」
私がそう言うと、爆豪君以外が『何言ってんだこいつ』みたいな目で見てくる。
私、なんか変な発言しちゃったかな…
「はっ、啖呵切ってたくせにこのザマかよ。雑魚が」
う、うぅ…
「やめろ爆豪君。誰もが君のように戦えるわけではないよ」
「ぐっ…!」
私が凹んでいると、刹那ちゃんが爆豪君を咎めた。
刹那ちゃんが腕を組むと、腕の上に乗ったおっぱいが強調されて、爆豪君は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
完全にトラウマになってるなぁ…
「緑谷君、挑戦してきたらどうだ?」
「えっ、僕ですか!?」
「いいアピールチャンスになるだろう。参加してこい」
そう言って刹那ちゃんは、緑谷君の背中を押した。
その後爆豪君は緑谷君に悪態をついたけど、なんか緑谷君が適当に返事をしていたせいで麗日さんの『でもやってみないとわかんないんじゃないかな』発言にまで勢いで頷いてしまい、結局成り行きで参加する事になった。
爆豪君に煽られて無理矢理参加させられた緑谷君だったけど…
結果は、3秒台を叩き出してぶっちぎりの1位。
麗日さんと飯田君は褒めてたけど、案の定爆豪君はものすごく荒れていた。
そして、その直後に参加した轟君が4秒台を叩き出した。
やっぱり爆豪君はまた荒れた。
…うぅ、あっという間にトップ10圏外になっちゃった。
私が内心凹んでいると、刹那ちゃんが小声で話しかけてくる。
「心操君、療子。ちょっとついてきてくれるか」
「刹那ちゃん…?」
刹那ちゃんは、半ば強引に私と心操君を連れ出した。
刹那ちゃんは、どこか焦っているように見える。
どうしたんだろう…?
◆◆◆
デヴィットside
トシと話を終えた私は、休憩を取らせていたサムを呼び出し、話を切り出した。
「サム。君から受けたあの提案だが…私は聞かなかった事にするよ」
「博士…!?何を仰っているんです、博士はあの研究をどうしても取り戻したいのではなかったのですか!?」
「ああ。私は、あの研究を取り戻した
「そんなの、研究を取り戻してから考えればいい事ではありませんか!ここで諦めてしまっては、六徳家の方々が博士の研究を守る為に費やした労力はどうなるんです!?」
私が自分の過ちを悔いると、サムは必死に私を説得しようとした。
…確かに、スポンサーが次々と掌を返した中、唯一最後まで私達の味方で居てくれたのが六徳家だったな。
特に刹那には、本当に申し訳ない事をした。
だからこそ、これ以上彼女の顔に泥を塗るわけにはいかない。
「その六徳家の当主が言っていたんだ。『研究者としてのプライドを持つべきだ』とね。私は、その言葉に従う事にするよ。尤も、悪事に手を染めようとした私には、研究者を名乗る資格などないのかもしれないが…」
「そんな…せっかくここまで来たんですよ!?必要な機材も、人も、もう全て揃っているんです!!今更計画を取りやめる事なんて、できるはずがない!!」
「機材は全て私が買い取る。違約金なら、いくらでも払う。君にも、君が雇った
「博士!!」
「すまないサム。とにかく私は、君の計画には賛同できない」
サムは私を説得しようとしてきたが、私は計画に賛同しない意志を示した。
するとサムは、どこか諦めたようにため息をついた。
「そう…ですね…博士、あなたの言う通りです。私が間違っていました」
「サム…」
「一度、頭を冷やしてきます。博士もレセプションパーティーの前に、一度休憩を取られてはどうですか。お互い、今日は疲れているようですし…」
「ああ、そうだな…」
いつもの穏やかな笑顔を浮かべるサムを見て、私はサムがわかってくれたのだと思った。
サムに促されるまま、先に研究室を出ようとした、その時だった。
「申し訳ございません、博士…」
「サム?」
サムの言葉に、後ろを振り向こうとした、その瞬間だった。
背中に硬い何かを押し当てられ、全身に衝撃が走った。
全身が痺れて自由が利かず、そのまま膝から崩れ落ちる。
見上げると、そこにはスタンガンを握ったサムが立っていた。
「あなたがいけないんですよ…長年あなたに仕えてきたというのに、あっさりと研究は凍結、手に入れる筈だった栄誉、名声…全て、無くなってしまった…!挙げ句の果てに、せっかくここまで来て計画を無かった事にするだと…!?冗談じゃない!!」
サムは、床に倒れた私を見下ろしながら激昂した。
私は…そこまでサムを追い詰めていたのか…
全部、私のせいだ。
私が、もっと早く気付いていれば…
「あなたは、散々私を裏切ってきた。これは、当然の報いですよ…」
「す、ま…ない……」
「今更謝られたって、もう遅いですよ…!」
そう言ってサムは、セキュリティ用捕縛装置を作動させて私を拘束し、どこかへ電話をかけながら研究室の奥へ移動した。
しばらくしてサムは、研究室の倉庫から大型のケースを運んできた。
サムはケースを開け、その中に私を押し込め、ケースの蓋を閉じようとした。
止めないといけないのに、身体が動かない…
誰か、助け……
「なっ、何だ!?」
突然、サムが狼狽えるような声を上げた。
顔を上げると、サムの周りに無数の光の粒が現れ、まるでサムの視界を塞ぐように飛び交っていた。
サムが光の粒を振り払おうと左腕を振るった、その瞬間。
「サムさん。ここで何をしているんですか」
この声は…
何故、刹那達がここに…?
◆◆◆
刹那side
「サムさん。ここで何をしているんですか」
…ふぅ。
何とか間に合った。
私はイヴを使いこなす為、手始めにI・アイランド全体の状況を把握しておくようイヴに頼んでおいたのだが、そのおかげでサムさん…いや、サミュエル・エイブラハムの凶行をリアルタイムで知る事ができた。
イヴにこの島での異常を教えてもらった私は、部下に情報を発信し、今動ける部下には
その間に私は、サミュエルが博士にこれ以上何かする前に、信頼できる仲間を連れて研究室に駆けつけたというわけだ。
「サムさん…いや、サミュエル・エイブラハム。ここで何をしていたのか話せ。これは命令だ」
私がそういう間にも、山根は油断なくハンドガンを構える。
私がイヴに頼んでいつでも捕縛装置を作動できるようにした、その瞬間だった。
「う、撃ってみろ…撃てるもんならなぁ!!」
追い詰められて気が触れたのか、サミュエルはケースの中から博士を引き摺り出して抱き起こし、首元にペンを突き立てた。
こいつ…博士を人質にして逃げ果せる気か。
下手に刺激すれば、博士を殺されかねない。
それをわかっているからか、山根はサミュエルを撃つのを躊躇っていた。
すると心操君が前に出て、サミュエルに尋ねる。
「サムさん、あんた何でこんな事を…!?」
「う、うるさい…!お前達に、私の何がわかる!?」
サミュエルが心操君の質問に対して口を開いた瞬間、サミュエルは物言わぬ操り人形と化し、博士を解放した。
博士がサミュエルの手を離れると、療子が博士に駆け寄って容態を確認した。
「博士!」
私がイヴを使って博士の拘束を解除すると、療子は自分の血で造った回復薬を博士に飲ませた。
その間に私は、心操君に洗脳されているサミュエルを尋問した。
「すみません、出しゃばってしまって…」
「何を仰います。確保にご協力いただき、感謝します」
心操君が独断でサミュエルを洗脳した事を謝罪すると、山根は逆に心操君に感謝した。
事実、あの場で心操君がサミュエルを洗脳していなければ、博士は今もなお人質にされていた事だろう。
…尤も、心操君はまだヒーロー免許を持たない学生だから、欲を言えば彼の“個性”を使わずに事件解決するのが理想だったんだがな。
サミュエルへの尋問によって
するとサミュエルは、観念したように喋り出す。
「……流石は六徳家のお嬢さんだ。私がこれからやろうとしていた事も、想定済みですか?」
「当然だ。私には、
私がそう言うと、サミュエルは観念したようにため息をついた。
…まあ、偉そうにドヤ顔しながら言いはしたものの、ほとんどイヴの手柄によるものなんだがな。
私は、イヴを掌の上で操作し、ホログラムで映像を表示した。
「ドブネズミがどこへ隠れようと、私の掌の上だ」
◆◆◆
???side
同時刻、66番ゲートにて。
顔に迷彩メイクを施した男が、スマートフォンで連絡を取っていた。
だが、いつまで経っても応答がない事に痺れを切らす。
「チッ…サムの奴、しくじりやがったか。役立たずめ」
「どうします、ボス。あいつが我々を手引きする手筈になっていたはずじゃ…」
「狼狽えるな。ここまで準備して、今更やめられるか?」
「い、いえ…」
男が睨みながら言うと、部下はやや怯えた様子で首を横に振る。
「奴の裏切りや失敗は最初から織り込み済みだ。計画は続行する。行くぞ」
そう言って男は、武器を懐の中に入れて金属製の仮面をつけ、部下を連れてタワーに向かおうとした。
だがその時、男の目の前に光の粒が現れキラキラと輝く。
そして、その直後。
「そこまでだ!!」
六徳家の使用人達が、男の前にゾロゾロと現れた。
◆◆◆
西馬side
俺はお嬢様の命令を受け、
お嬢様のアシスタントのイヴちゃんのおかげで、この島の情報をリアルタイムで入手する事ができた。
…まあ、流石にシールド博士と助手が
確保した助手に吐かせたという情報をお嬢様から聞いた俺は、イヴちゃんと協力して
俺とヒーロー達は、白いコートを着た
けど
「これはこれは。一体何の用で?」
「
「何の事かな?我々は、
狭間が宣言すると、ウォルフラムは平然とシラを切った。
まあ、実際
というかそもそも、タルタロス並みの警備を誇るI・アイランドに侵入しようと思ったら、内部にいる関係者に手引きしてもらうくらいしかないし。
「とぼけても無駄だ。貴様らの計画は把握済み。I・エキスポのタイミングを狙って、“個性”増幅装置を強奪するつもりだったんだろう?既に我々の仲間が、貴様らの仲間の逮捕に向けて動いている」
狭間はそう言って、油断なく日本刀を構える。
先輩方も、戦闘態勢に入った。
するとウォルフラムが不敵に笑った。
「…フン。どうやら、これ以上の言い逃れはできないようだな。やれ」
ウォルフラムが命令すると、奴の部下が一斉に襲いかかる。
こういう時、普段は先輩に任せてたんだろうけど…
今の俺は、無敵!!
「イヴちゃん、いける?」
『任せてください』
イヴちゃんは、周囲の敵の位置を瞬時に把握して、狙うべきポイントを俺に教えてくれた。
さらには、俺の脳の一部を拡張して、“個性”を限界以上に引き出してくれている。
俺は、尻尾の先から強力な電磁パルスを放ち、ウォルフラムの部下どもの意識を刈り取った。
イヴちゃんがいれば俺は無敵。いわばエレクトロマスターだ。
俺ら相性いいじゃん、イヴちゃんマジいい女。
さて、と。
敵はこれで全滅──
「チッ、役立たず共が…!」
とはいかなかった。
咄嗟に金属の鎧を生み出して電磁パルスを防いでいたウォルフラムだけは、気絶を免れていた。
ウォルフラムは、部下を見捨てて一人その場から逃げようとしていた。
でも、逃げようったってそうはいかねえよ?
「はーい動かないー」
狭間が新井先輩をウォルフラムの目の前に転送させて、新井先輩は大量の洗剤を分泌して奴の顔面に浴びせた。
ウォルフラムは、“個性”を使って新井先輩に反撃しようとしたけど、力を削ぎ落とされて立ち上がる事すらままならなかった。
「くそっ…“個性”が…!」
ウォルフラムは、残った力で懐からハンドガンを取り出した。
けど、ハンドガンが発砲される事はなく、亜楼先輩が奴を矢印で簀巻きにした。
「はーい簀巻き簀巻き」
「電脳ジャックー」
「押し込めー」
亜楼先輩が
I・アイランドには、科学者とその家族しか住んでいない事から、島内に
故に万が一島内から
時空の切れ目は、港に停泊している護送船に繋げてある。
装置奪還の為に入念に計画を練って、いざとなれば力づくでなんとかするつもりだったんだろうけど…
残念ながらウチのメンバー、戦闘封じ要員ばっかだからねぇ。
「もう大丈夫!!何故かって?私が来…あれ?もしかして、もう終わってる…?」
俺達がゆるーい感じで
来てくれたのはありがたいんだけどさ…一言言っていい?
「来るのが遅いですよ、オールマイト…」
オリ主「チートAIをPON 劇場版の展開をCRUSH!! CRUSH!! チート傭兵をPA PA PA(古い)」
タワー占拠なんてなかったんや。
オリ主が捕縛装置で拘束されてヴィランに辱めを受けるグヘヘな構想は露と消えました。
敵があっさりやられましたが、博士の装置がなかったらこんなもんでっしゃろ。
あと、ただでさえ心操連れてきてんのに、オリ主の部下がどいつもこいつも対人戦闘キラーばっかなのが悪い。
ほら、涙ふけよ。小五郎のおっちゃ…じゃなかった、ウォルフラム。
ちょっとイヴを強くしすぎましたかね。
まあ彼女の生い立ちを考えれば、これくらいやってもらわないと設定負けしちゃうので。