私の世直しアカデミア   作:M.T.

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尼羅鰐輔様、高評価を入れていただきありがとうございます!
面白いと思っていただけましたら、高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。



第40話 おじさんに触られました。おまわりさんこっちです

死柄木side

 

「ハァ…ハァ…ウ、エ゛ェッ、ゲホッ……」

 

 何だ、これ…

 あの女と目が合った瞬間、今まで霧がかかったように朧げだったものが、鮮明になっていく。

 

 前にも一度だけ、同じ事を経験した事がある。

 あれは確か…六徳家の先代当主が死んだのを知った時だ。

 あの時より鮮明に、記憶が蘇ってくる。

 

 死柄木弔(今の俺)を生んだのは、あの家だ。

 あの家には、お父さんと、お母さんと、おじいちゃんと、おばあちゃんと…華ちゃんと、モンちゃんと…

 

 ……あと、誰かがいたような気がする。

 誰だったっけ…

 

 

 

「華、転弧、今日は何して遊ぼうか!」

 

「こっちおいで、転弧」

 

 

 

 ……そうだ。

 全部思い出した。

 

 そうかよ、そういう事だったんだな、先生…

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

「ぬぉおおおおおおっ!!!」

 

 オールマイトとオール・フォー・ワンは、手四つの状態で組み合っていたが、その直後…

 オール・フォー・ワンは、“個性”を発動し、オールマイト目掛けて衝撃波を放った。

 オールマイトは、咄嗟に防御を取り、衝撃波を耐え凌いだ。

 

「6年前と同じ過ちは犯さん、オール・フォー・ワン。六徳少女を守り、貴様は今度こそ刑務所にぶち込む!貴様の操る(ヴィラン)連合諸共!!」

 

 オールマイトが拳を振りかぶって猛スピードで飛び出すと、オール・フォー・ワンが軽く左手を挙げる。

 

「それは…やる事が多くて大変だな。お互いに」

 

 オール・フォー・ワンの左腕が膨らんで手を振り下ろした次の瞬間、オール・フォー・ワンの掌から衝撃波が放たれ、オールマイトは遥か彼方へと吹っ飛んだ。

 

「『空気を押し出す』+『筋肉発条化』『瞬発力』×4『膂力増強』×3、この組み合わせは楽しいな…増強系をもう少し足すか…」

 

 オールマイトを吹き飛ばしたオール・フォー・ワンは、今使った“個性”を楽しそうに分析した。

 奴は、オールマイトと戦闘を交えつつも、私達を殺すチャンスを虎視眈々と狙っていた。

 

「SMASH!!!」

 

 オールマイトは、怒りを露わにしながらオール・フォー・ワン目掛けて拳を振り抜いた。

 オール・フォー・ワンは、オールマイトの振るった拳を片手で受け止め、余裕そうに笑う。

 

「僕は彼女に用があるんだが…戦うというなら受けて立つよ。何せ僕はお前が憎い。かつてその拳で僕の仲間を次々と潰し周り、お前は平和の象徴と謳われた。僕らの犠牲の上に立つその景色、さぞや良い眺めだろう?」

 

「DETROIT SMASH!!!!!!!!」

 

 オールマイトは、オール・フォー・ワンと拳を撃ち合った。

 オールマイトは自身の拳が放つ衝撃波で無理矢理オール・フォー・ワンの衝撃波を打ち消したが、身体にガタが来ていたのかガフッと血を吐いた。

 

「心置きなく戦わせないよ。ヒーローは多いよなあ、守るものが」

 

「黙れ」

 

「!」

 

 オールマイトは、オール・フォー・ワンの左腕を掴むと、そのままへし折った。

 

「貴様はそうやって人を弄ぶ!壊し!奪い!つけ入り支配する!日々暮らす方々を!理不尽が嘲り嗤う!私はそれが!許せない!!」

 

 そう言ってオールマイトは、怒りを露わにしながら拳を振りかぶった。

 そしてそのまま血を吐きながら、オール・フォー・ワンの顔面に拳を叩き込んだ。

 

「いやに感情的じゃないか、オールマイト。同じような台詞を前にも聞いたな。『ワン・フォー・オール』先代継承者、志村菜奈から」

 

 そう言ってオール・フォー・ワンは、不気味な笑みを浮かべた。

 志村菜奈。

 先代『ワン・フォー・オール』にして、オールマイトの師匠だった人だ。

 オール・フォー・ワンが言うと、オールマイトは怒りで表情を歪めた。

 おそらく、奴の口から軽々しく師の名前を出された事が許せなかったのだろう。

 

「貴様の穢れた口で、お師匠の名を出すな…!!」

 

「理想ばかりが先行し、まるで実力の伴わない女だった…!『ワン・フォー・オール』生みの親として恥ずかしくなったよ。実にみっともない死に様だった…どこから話そうか…」

 

 オール・フォー・ワンが言うと、オールマイトは怒りに身を任せて拳を振るう。

 

「Enough!!」

 

 オールマイトがオール・フォー・ワンを殴ろうとすると、オール・フォー・ワンは衝撃波でオールマイトを上空へ吹っ飛ばした。

 私は、“個性”で空気の流れる速度を調整し、オールマイトが大怪我を負わないように空中で受け止めた。

 

「六徳少女…!」

 

「しっかりして下さいよ。何の為に自分を曲げてあなたを頼ったと思ってるんです」

 

「……そうだったな」

 

「空中に足場を作っておいたので、ちゃっちゃと決着つけて下さい」

 

「ああ、ありがとう」

 

 私がオールマイトに発破をかけると、オールマイトは冷静さを取り戻した。

 私は、“個性”で空気の流れを遅くし、オールマイトが空中戦をする為の足場を作った。

 その間にもオール・フォー・ワンは、両手を広げながら語り出した。

 

「弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼、決定打を僕が打ってしまってよいものか…でもねオールマイト。君が僕を憎むように、僕も君が憎いんだぜ?僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきたものを奪っただろう?だから君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えて欲しいんだ!」

 

 オール・フォー・ワンは、そう言って再び腕を膨らませる。

 拙い、回避を……

 

「君が守ってきたものを奪う」

 

 私は、“個性”を使ってオール・フォー・ワンの攻撃を回避しようとしたが、演算が間に合わず、安全圏まで逃げきれなかった。

 だが、オール・フォー・ワンの放った衝撃波が私達に襲いかかる事はなかった。

 オールマイトが私達三人を庇う形で立ち塞がり、拳から放たれる風圧でオール・フォー・ワンの衝撃波を相殺したからだ。

 私達を庇って衝撃波をまともに喰らったオールマイトは、変身が解け、トゥルーフォームになっていた。

 

「まずは怪我をおして通し続けたその矜持、惨めな姿を世間に晒せ。平和の象徴。頬はこけ目は窪み!!貧相なトップヒーローだ。恥じるなよ、それが本当の君なんだろう!?」

 

 オールマイトのトゥルーフォームを見たオール・フォー・ワンは、大袈裟に高笑いしていた。

 さらにオール・フォー・ワンはオールマイトを煽るが、オールマイトの目はまだ死んでいなかった。

 

「……そっか」

 

「身体が朽ち衰えようとも…その姿を晒されようとも…私の心は依然平和の象徴!!一欠片として奪えるものじゃあない!!」

 

 オールマイトが鋭い眼光をオール・フォー・ワンに向けながら言うと、オール・フォー・ワンは大袈裟に驚いてみせる。

 

「素晴らしい!参った、強情で聞かん坊な事を忘れてた。じゃあこれも君の心には支障ないかな…あのね……」

 

 

 

 オール・フォー・ワンは、人差し指を立ててオールマイトに対し言った。

 

「死柄木弔は志村菜奈の孫だよ」

 

 オール・フォー・ワンは、オールマイトにそう言い放った。

 その言葉を聞いたオールマイトは、目を見開き、拳をだらんと下ろして放心していた。

 

「君の嫌がる事をずぅっと考えてた。君と弔が会う機会を作った。君は弔を下したね。何も知らず、勝ち誇った笑顔で」

 

「嘘を………」

 

 オールマイトは、ポツリと呟く。

 だがオール・フォー・ワンは、そんなオールマイトを嘲笑うように煽る。

 

「事実さ。わかってるだろ?僕のやりそうな事だ。あれ…おかしいなオールマイト、笑顔はどうした?」

 

 オール・フォー・ワンが両頬を両人差し指でクイッと上げながら煽ると、オールマイトの表情が絶望で歪む。

 

「き…さ、ま…!」

 

「やはり…楽しいな!一欠片でも奪えただろうか」

 

 そして、自分の行動を悔いるあまり、その場で立ち尽くした。

 それを見たオール・フォー・ワンは愉快そうに笑う。

 その姿は、心なしかイタズラに成功した子供のようにも見えた。

 

「〜〜〜ぉおおお───…!!」

 

 オールマイトは、情けない声を上げながら項垂れた。

 そんなオールマイトに、オール・フォー・ワンは腕を振り下ろそうとする。

 だが、その腕がオールマイトに振り下ろされる事はなかった。

 山根が氷の“個性”でオール・フォー・ワンを凍らせ、動きを止めたのだ。

 見ていられなくなった私は、オールマイトに向かって発破をかけた。

 

「何してるんですか、オールマイト…!!私を守るって言ったばかりでしょう!?私は今、ここにいる!!だから早く立って!!」

 

 今の私は、迂闊に“個性”を攻撃に使えない。

 回避に“個性”を維持するのがやっとで、迂闊に攻撃に切り替えれば演算をしている間にオール・フォー・ワンの接近を許しかねない。

 ただでさえ演算が追いつかない状態で無理矢理衝撃波を撃てば、山根や劫波をも巻き込む危険がある。

 そもそも保護対象である私は、戦闘への参加を許可されていない。

 せいぜい、自分達の飛行速度を上げつつ、オールマイトの足場を作るのが精一杯だ。

 今の私にできるのは、私の代わりに戦っているオールマイトに発破をかける事だけだ。

 

「六徳少女…もちろんさ。ああ…!多いよ…!ヒーローは…守るものが多いんだよオール・フォー・ワン!!だから、負けないんだよ」

 

 オールマイトは、笑いながら拳を振りかぶっていた。

 大規模な攻撃を何度も相殺し、オールマイトはとうに発動限界を迎えているはずだ。

 右腕のみのマッスルフォーム、歪な姿がそれを物語っていた。

 だが、それでも倒れなかった。

 無様を晒し全身から血を流してボロボロになろうとも、“最高のヒーロー”でいなければならないのだから。

 

「渾身。それが最後の一振りだね、オールマイト。手負いのヒーローが最も恐ろしい。腸を撒き散らし迫ってくる君の顔、今でもたまに夢に見る。二・三振りは見といた方がいいな」

 

 そう言ってオール・フォー・ワンは、オールマイトにではなく、私に右手を向けて“個性”を発動しようとする。

 さっきのように私に向かって攻撃をし、じわじわと体力を削っていくつもりなのだろう。

 すると今度は、赤い炎がオール・フォー・ワンに襲いかかった。

 オール・フォー・ワンは、炎を浴びる前に、衝撃波で炎を逸らした。

 

「何だ貴様…その姿は何だオールマイトォ!!!」

 

 見ると、『ジェットバーン』で空中に浮いているエンデヴァーが、左手から炎を放っていた。

 どうやら、狭間に時間差でここへ転送させられたらしい。

 私とエンデヴァーは、今もなお限界を超えてオール・フォー・ワンに立ち向かおうとしているオールマイトに発破をかけた。

 

「煩わしい。精神の話はやめて、現実の話をしよう。さっきは衝撃波を相殺するのがやっとだったようだが…もう一度撃ったら、次は相殺できるのかな?」

 

 そう言ってオール・フォー・ワンは、再び私達の方へ掌を向ける。

 するとオールマイトは、血反吐を吐きながらも、両脚のみをマッスルフォームに変身させた。

 

「ゲホッ…させるか……!!」

 

 オールマイトが私達のもとへ駆けつけた直後、オール・フォー・ワンの掌から衝撃波が放たれた。

 私は、オールマイトへの負担を減らす為、今度こそ衝撃波を相殺しようとした。

 規則を破る事にはなるが…背に腹は代えられん。

 最悪国家公務員になる道は絶たれるだろうが、オールマイトが死ぬよりはマシだ。 

 

 私は脳細胞にトップギアを入れて、どの程度の衝撃波を撃てば相殺できるか、その最適解を求めた。

 だが、衝撃波を相殺する為に演算し直したのが仇となった。

 衝撃波を撃つ為に演算をした刹那、私は空間干渉系“個性”対策に生じさせた時空の歪みを解除してしまっていた。

 オール・フォー・ワンがそれを逃すはずもなく……奴は、『アポート』の“個性”を使って私を手元へと引き寄せた。

 

「キャッ!!」

 

 オール・フォー・ワンの手元に引き寄せられた私は、そのままオール・フォー・ワンに首を掴まれた。

 ちくしょう、ミスった……

 こうならないように、回避に全振りしてたのに…!

 拙い、拙い拙い…このままじゃ、本当にオチる…!!

 

「どうした?守るんじゃなかったのか、オールマイト」

 

「が……ぁぐっ……」

 

 オール・フォー・ワンは、私の首をへし折る勢いで握る力を強くした。

 私の首からは、ミシッ、メキッと嫌な音が聴こえる。

 苦しい…

 息が…できない……

 にげ、なきゃ…早く、演算……ダメだ、あたま、回らな……

 

「お嬢様!!」

 

「姉貴!!」

 

「刹那!!」

 

「六徳少女!!Nooo!!」

 

 私がオール・フォー・ワンに絞め殺されそうになると、山根と劫波、エンデヴァー、そしてオールマイトが血相を変えて叫ぶ。

 オールマイトは、オール・フォー・ワンに殴り掛かろうとしたが、オール・フォー・ワンは私の身体を持ち上げて盾にしてきた。

 ちくしょっ……

 こんなところで、死ねるか……!

 

「ぅぐ…!!」

 

 私は、オール・フォー・ワンの腕に触れると同時に、右手中指にはめた指輪に仕込んでおいた麻酔針を展開し、オール・フォー・ワンに突き刺そうとした。

 だが、針を突き刺す前に、オール・フォー・ワンがもう片方の手で私の手首を捻り上げた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

オール・フォー・ワンside

 

 『アポート』の“個性”で六徳刹那を引き寄せた僕は、彼女の首を掴んで握りしめた。

 彼女は、両手の指の肉球で僕の腕に触れて“個性”を発動しようとしていたが、不発に終わった。

 彼女の“個性”は、正常に思考が働かなければうまく使いこなせない。

 その気になればたった一人で世界を壊せる素晴らしい力だが、発動させなければ何の事はない。

 

 それにしても、オールマイトも節穴だね。

 いや…歴代『ワン・フォー・オール』継承者全員が節穴だったと言うべきか。

 ずっと近くに『ワン・フォー・オール』の正当な継承者がいたのに気がつかないなんて。

 

「緑谷出久。譲渡先は彼だろう?君もまるで見る目がないね…『ワン・フォー・オール』を継ぐべき者は、他にいたというのに」

 

「何が言いたい…!!」

 

「あのね…何故僕がここまで彼女に固執するかわかるかい?それは彼女が、初代『ワン・フォー・オール』…僕の弟の子孫だからだよ」

 

 僕はオールマイトに、真実を教えてやった。

 六徳刹那、そして六徳劫波。

 彼等は、与一の玄孫だ。

 

 彼等の4代前の当主の六徳沙羅は、与一の内縁の妻だった。

 六徳家が駆藤達と協力して与一を匿っていた2年の間に、沙羅は与一の子供を出産していた。

 沙羅の事は、僕に鞘替えした彼女の兄が殺したが、彼女の子供は既に六徳家の従者が海外に逃がしていた。

 その事を知った僕は、短命になる呪いをその子供にかけた。

 だがこれが、僕にとっても想定外の事態を引き起こす結果となった。

 元々六徳家が持っていた特別な能力と、与一の持っていた『ワン・フォー・オール』のエネルギーのほんの一部、そして僕のかけた呪いが複雑に混ざり合い、やがて一つの力となった。

 

 寿命と引き換えに、超人的な体質を次の世代に遺す力。

 それが、六徳家の人間が持つ六つ角の星の正体だ。

 オールマイトは信じられないと言いたそうだが…これは紛れもない事実。

 ギガントマキアが劫波の声に反応したのが何よりの証拠だ。

 

「当時の当主が弟の子供を身籠もっていたのは、僕も想定外だったけれどね。六徳家の人間が持つ特殊能力と、『ワン・フォー・オール』の『力をストックし与える』性質が複雑に混ざり合った結果、優れた才能を生む超人一家が生まれた。それが今の六徳家のオリジンというわけさ。君はそうとも知らず、『ワン・フォー・オール』を六徳家に渡さずに、どうでもいい子供に譲渡したんだ。どんな気分だ?僕を倒す為に脈々と受け継がれてきた力の結晶を、君の不甲斐なさのせいで、本来の継承者に拒絶された気分は?」

 

 もし刹那が『ワン・フォー・オール』を継承していたら、時間の概念を覆せる彼女なら、『ワン・フォー・オール』を不滅の力にする事さえ可能だろう。

 そうなっていたら、僕も一捻りにされていたかもしれない。

 だが、そんな事は絶対に起こり得ない。

 何故なら彼女は、今から死ぬのだからね。

 

 刹那の細い首を絞める手に、ゆっくりと力を入れていく。

 それにしても、こんなにも心苦しい事はないね。

 僕自身の血縁を、これから殺す事になるのだから。

 ああ、そんな風に思った事は一度もなかったかな?

 

「酸欠で思考が阻害されて、もうまともに“個性”も使えないだろう?そろそろ、君の“個性”を貰おうか」

 

 そう言って僕が刹那から“個性”を奪おうとした、その瞬間。

 僕の腕が内側から何かに引っ張られ、荒縄のように捻れた。

 

「!?」

 

 刹那の“個性”が今になって発動したのか?

 馬鹿な、この状態でまともな思考などできないはず…

 まさか、死に瀕した事で“個性”が強制的に発動したとでもいうのか…?

 …いや、今はそんな事はさして重要じゃない。

 “個性”を奪いさえすれば、僕の勝ちだ。

 

 

 

「っ…何だ?」

 

 僕が刹那の首を掴んで“個性”を発動した瞬間、視界が暗転した。

 どこからか強い力で引っ張られ、身動きが取れなくなる。

 それだけじゃない。

 僕の今まで奪った“個性”達が、どこかへと引き摺り込まれていく。

 “個性”達が引き摺り込まれた先は、空間が渦のように歪んでいて、その中心には六徳刹那がいた。

 まさか…この女、肉体を捨てて精神世界に殴り込んできたとでも言うのか…!?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

刹那side

 

 私は、薄暗くて無機質な空間の中で、大量にいる“個性”達を次々と大きな渦の中に引き摺り込んだ。

 オール・フォー・ワンに“個性”を奪われそうになった瞬間、無我夢中で“個性”を発動した私は、気がつくと奴の精神世界の中に潜り込んでいた。

 生死の境を彷徨った事でリミッターが外れたのか、それとも別の力が働いたのかはわからない。

 どうやら私の“個性”は、この精神世界においても作用しているようだ。

 実体のない精神は光の速度にまで加速され、オール・フォー・ワンの精神に殴り込んだ私は、空間を歪めて奴の侵蝕を阻んだ。

 

 重力というものは、端的に言えば時空の歪みだ。

 物質の受ける重力の大きさが強ければ強いほど、その物質に流れる時間が遅れる。

 そして、それは逆もまた然り。

 私が“個性”で時を遅くすればするほど、世界が私を中心に引きずり込まれていく。

 光すらも引きずり込む私の前では、一度空間の歪みに触れれば、如何に強力な“個性”だろうと抜け出す事はできない。

 精神世界(ここ)でなら、肉体の制約も、周囲への被害を気にして出力を調節する必要性も無い。

 今の私なら、掌の中でブラックホールを生み出す事さえ可能だろう。

 担任の13号先生のパクリっぽいが…少なからず影響を受けたであろう事は否定できんな。

 

 …ところで、精神や魂に質量はあるのだろうか?

 魂に21gの重さがあるという俗説なら聞いた事はあるが…

 私の“個性”によって周囲の“個性”達が引きずり込まれているという事は、少なくとも重力の影響は受ける…という事なのだろう。

 現実のルールに囚われないこの世界は、私の知的好奇心を刺激する事象に満ち溢れている。

 せっかく精神世界にいるというのに、疑問を検証している余裕がないのが惜しい。

 

 そんな事を考えている間にも、オール・フォー・ワンが私の精神を蝕もうとしてくる。

 私は、肉球の先からブラックホール擬きを生成し、周りにいた“個性”達をこちら側へと引っ張り吸収していく。

 私は彼等を利用する事に、何の躊躇いも罪悪感も感じない。

 父と母を殺した犯人に復讐すると決めた時から、私自身もどこか歪んでしまったのかもしれない。

 尤も、ここにいる“個性”の多くは持ち主がとっくに死んでいるので、元の身体に戻る手段が無い以上、どのみちオール・フォー・ワンの死と共に消える運命にあるのだがな。

 彼等に恨みはないが、どのみち消えゆく運命なら、せめて私の築く未来の糧になってもらおう。

 

「それは僕の力だ!返せ!!」

 

 私がオール・フォー・ワンから“個性”を奪うと、オール・フォー・ワンは怒りと殺意を剥き出しにした。

 直系の先祖ではないとはいえ、こいつと血が繋がっているというだけで反吐が出る。

 だが私には、子孫として、こいつに引導を渡す義務がある。

 あとは、乙女(わたし)の身体に素手で触れた罰だ。

 

「やけに感情的だな、()()()。私と遊ぶというなら…浮気は許さないよ」

 

 私は、らしくもなく冷静さを失って向かってくるオール・フォー・ワンを煽った。

 こんな“個性”(もの)、そんなに欲しけりゃくれてやる。

 その代わり、私はお前がせっせとかき集めてきたものを全て奪う。

 

 お前には、更生の余地さえ与えない。

 「懺悔」も「謝罪」も要らない。

 贖罪など、許さないし認めない。

 お前のような人間は、悔い改めるな。

 お前だけが、永遠に独りで罰を受け続けろ。

 お前のいない世界で、いつしか誰もがお前を忘れて生きていく。

 それだけが、私を救うんだ。

 

 

 

「遊びは終わりだ」

 

 オール・フォー・ワンは、周りにいた“個性”を使って私の精神を蝕もうとしてきた。

 ありとあらゆる苦痛が、涅槃寂静の如き一瞬すらも絶える事なく襲いかかる。

 精神をじわじわと侵され、私の吸収のスピードが落ちる。

 この世界は奴の精神世界なのだから、当然ながらこの世界の主導権は奴にある。

 どんなにブラックホール擬きで周りの“個性”を吸収しようと、精神の侵蝕には抗えない。

 

過去の栄光(ちちおや)とワン・フォー・オールの出涸らしが…力を持って調子に乗ったか?ここは僕の世界だ。お前がどんなに強かろうが、主導権は僕にあるんだよ。残念だったねぇ、これが僕に勝てる最初で最期の──」

 

 オール・フォー・ワンは、精神を蝕まれていく私を嘲笑いながら挑発してきた。

 普通の人間なら、このまま奴に取り込まれるか、心が摩耗して消えてしまうのだろう。

 だが私は、大人しく奴の思い通りになってやるつもりはない。

 精神の侵蝕を自力で振り切り、“個性”を全開にして、さらに吸収のスピードを上げた。

 

「出涸らしじゃなかったか?」

 

 私が笑いながら空間ごと吸収していくと、オール・フォー・ワンの笑顔が失せる。

 私には、何に代えてでも成し遂げたい理想がある。

 無限に続く苦痛()()()で、止まってなどいられるものか。

 地獄の業火など、私にはぬるま湯に等しい。

 

「っ…!これは……」

 

 それだけじゃない。

 私が吸収した“個性”達が、私の心が擦り切れて奴に取り込まれないように、私を引き留めてくれていた。

 奪った“個性”に歯向かわれた事が不愉快だったのか、オール・フォー・ワンは表情を歪めていた。

 

「ハハハッ!我が物顔で使っていた“個性”が、こんなにあっさり寝返るとはな。よっぽど日頃の行いが良いようで!」

 

「馬鹿な…お前は、僕のものを引き剥がしていただけだろうが」

 

「お前にはわかるまい。これがお前と()()との格の違いだ」

 

 私は、私を見下して嘲笑ってきたオール・フォー・ワンを、逆に嘲笑った。

 お飾りの私には、父のようなカリスマ性も、劫波のようなタフネスも無い。

 だからこそ、彼等のオール・フォー・ワンに対する怒りや怨みを利用した。

 

 私は、暴力を信じない。

 お前には、暴力さえ生温い。

 お前というこの世界の神を殺し、心を壊す。

 その為なら私は、私の手には余る暴れ馬だろうと飼い慣らすし、どんなに勝率の低い賭けにも全てを擲てる。

 奪った“個性”が自分ものになったと勘違いし、自分のものにならなかったらキレ散らかしているお前とでは、格が違うんだよ。

 

 私は、精神の侵蝕をものともせず、周りにいた“個性”を吸収した。

 すると、その瞬間だった。

 

 

 

「一人で突っ走ってんじゃねえ、クソ姉貴!!」

 

「お嬢様!」

 

 劫波と山根が現れ、私のもとへ駆けつけて…というか、()()()()()

 これは…嬉しい誤算だ。

 どうやらこの精神世界で本気を出した事で、私の“個性”が現実世界にも影響を及ぼし、近くにいた二人も私に引っ張られて来たらしい。

 私が無意識のうちに強制的に二人を引きずり込んだのか、それとも…

 

「来てくれたのか…?」

 

「うるせえ、てめえの為じゃねえ。俺自身の為だ。こんなカス野郎に手こずってんじゃねえよ、バカ姉貴!」

 

「この命に代えてもお嬢様をお守りすると、約束しましたから」

 

 私が尋ねると、劫波と山根が答えた。

 世界一可愛い弟と、世界で一番信頼している養父が助けに来てくれた。

 こんなにも心強い事はない。

 

「せっかく命拾いしたというのに、こんなところにまでわざわざ来て…君の家族は、よほど無駄死にしたいらしい」

 

 そう言ってオール・フォー・ワンがエネルギー弾を放つと、劫波がそれをサッカーボールのように蹴り飛ばし、山根が雪の結晶のような氷でバリアを作って私を守ってくれた。

 私はその間にも、残りの“個性”を吸収してオール・フォー・ワンから引き剥がしていく。

 私が“個性”を引き剥がしている間に、オール・フォー・ワンは、今度は劫波と山根の精神を蝕もうとしてきた。

 

「ぐっ……!!」

 

 オール・フォー・ワンが“個性”を使って劫波と山根を蝕むと、劫波は僅かに眉間に皺を寄せ、山根は顔にピシッとヒビが入った。

 こいつ、また私の家族に手を出すとは…もう楽には死ねんな。

 お前は、絶対にやってはいけない事をした。

 私が殺気を放つのもお構いなしに、オール・フォー・ワンが劫波と山根を取り込みにかかった、その時だった。

 

 

 

「そこまでだ、兄さん」

 

 誰かが、オール・フォー・ワンの侵蝕を食い止めた。

 私の目の前には、白髪で細身の男性が立っていた。

 私は彼を見た瞬間に理解した。

 ……ああ、この人が私の高祖父か。

 

「また僕を阻むか、与一」

 

「刹那と劫波は、僕とサラの子孫だ。サラが命懸けで遺したこの子達を、兄さんには殺させない」

 

 与一さんは、劫波と山根が壊れないように守ってくれた。

 今だけじゃない。

 きっと今までも、私達の中で見守り続けてくれていたのだろう。

 与一さんが私達を殺させまいとオール・フォー・ワンに抵抗していると、オール・フォー・ワンが与一さんに憐れむような目を向けた。

 

「必死だな、愚かで可愛い弟よ。だが、無駄な努力だ。お前が守ってきたものは、ここで途絶えるのだからね。たとえ生き延びたとしても、血が薄まった彼等に、もうお前の力を後世に遺す能力はない。それはつまり、お前が遺し、せっせと守ってきたものが、彼等の代で途絶える事に他ならないんだよ」

 

 オール・フォー・ワンは、与一さんだけでなく、彼の子孫である私達の事を憐れんだ。

 私達六徳家が持つ六つ角の星は、初代『ワン・フォー・オール』である与一さんの力と、元々六徳家が持っていた体質が複雑に混じり合った結果生まれた特異体質だ。

 その力の本質は、基礎能力をストックし、次の世代に遺す事だ。

 だが世代を経るごとに血が薄まり、力のストックによる急激な進化に反比例して、その力を次の世代に遺す力は弱くなっていく。

 

 現に私には、力をストックする力も、それを次の世代に遺す力も無い。

 その力を持っていた劫波も、短命の呪いを解く為に私の因子を移植した事によって、力を遺す力を維持できなくなった。

 もはや私も劫波も、六徳家が代々受け継いできた力を次の世代に遺す事はできない。

 それはつまり、私達より先の世代には、オール・フォー・ワンに勝てる力を持った子供は産まれてこないという事だ。

 

 その事実を悟った私は、絶望するでも悲観するでもなく──心の底から笑った。

 私と劫波の子孫は、六徳家の呪いから解放され、『普通』の人生を送る事ができる。

 こんなにも嬉しい事はない。

 

「……何がおかしい?」

 

「ありがとう、伯父様。お前が与えたのは、絶望ではなく希望だ。おかげで、お前を今ここで倒さなければならない理由ができた」

 

 ああ、本当に、感謝するよ、オール・フォー・ワン。

 おかげで、私はもう何があろうと曲がらない。

 今ここで、お前を討つ。

 私達の呪われた歴史ごと、お前を地獄へ連れて行く。

 私や劫波の子孫が、お前のいない世界で幸せに生きられるように。

 

「……!」

 

「うわっ、何じゃこりゃ!?」

 

 私がオール・フォー・ワンの“個性”を引きずり込もうとしたその時、身体の内側から力が溢れてくる。

 気がつくと私の身体には、うっすらとだが白いオーラのようなものが纏わりついていた。

 劫波の身体にも、私と同じ白いオーラが見える。

 

「馬鹿な…何だ、その力は」

 

 オール・フォー・ワンは、信じられないものを見る目で私達姉弟を見ていた。

 理屈はわからんが…おそらく、私達の中にある微かな『ワン・フォー・オール』のエネルギーが、与一さんに影響されて表面化したようだ。

 

「刹那、劫波。どうか、兄さんを止めてくれ」

 

「与一ぃぃぃぃぃいいいいっ!!!」

 

 与一さんが私達姉弟の背中を押すと、オール・フォー・ワンは今までで一番大きな声で叫び散らしながら、

 与一さんに掴み掛かろうとするオール・フォー・ワンを、山根が奴の身体を凍結させる事で制止した。

 

「見苦しい。大好きな弟に拒絶されたのがそんなにショックか?」

 

 私は、オール・フォー・ワンにゴミを見るような目を向けながら、淡々と煽った。

 

「こうなったのはあんたの自業自得だ。あんたが私の両親を殺さなければ…そもそもあんたが私のご先祖様にちょっかいを出さなきゃ、何も起こらなかったんだ。あんたの敗因は、たったひとつだ…伯父様。てめえは、()()を怒らせた」

 

 そう言って私と劫波は、身体から溢れてくるエネルギーをブラックホール擬きにつぎ込んで増幅させ、それをオール・フォー・ワンめがけて解き放った。

 エネルギーを注ぎ込んで何十倍にも膨れ上がったそれは、オール・フォー・ワンの精神世界を壊しながらさらに膨れていく。

 そのままオール・フォー・ワンごと飲み込もうとした、その瞬間だった。

 

「………っ」

 

 突然、強制的に精神世界から弾き飛ばされ、現実世界に戻ってきた。

 何だ…?

 何が、起こった…?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

オールマイトside

 

「ぐああああぁぁぁぁっ!!!」

 

 六徳少女から“個性”を奪おうとしていたオール・フォー・ワンは、突然苦しみ出して叫び声を上げた。

 それだけではなく、六徳少女の身体から微かに白い湯気のようなものが出ているように見える。

 何だ…?何が起こった?

 いや…今はそんな事はいい。

 今のうちに、六徳少女を救い出し、オール・フォー・ワンを倒す!!

 

 私は、拳を振りかぶりながら飛び上がり、渾身の一撃をオール・フォー・ワンに叩き込もうとした。

 だがその瞬間、私とオール・フォー・ワンの間に黒い渦が現れ、その中から死柄木が出てきた。

 Shit!!

 なんつー間の悪さだ…!!

 

「死柄木!!」

 

「全部、お前のせいだ!!死ね!!」

 

 ワープゲートの中から飛び出した死柄木は、殺意を剥き出しにしながら右腕を振りかぶった。

 彼の姿を見た私は、オール・フォー・ワンの言葉を思い出し、拳を振りかぶったまま一瞬動きを止めてしまう。

 

 那由他は、オール・フォー・ワンが『ワン・フォー・オール』歴代継承者のご家族に接触してくるであろう事を予期していた。

 だから彼は、歴代継承者のご家族に異変がないかを確かめる為に、わざわざ御忍びで出向いて挨拶回りに行っていた。

 私は那由他から話を聞いて、15年前にお師匠のご家族に何があったのかも知っていた。

 お師匠のご家族は、15年前の事故で全員亡くなったと思っていたんだ。

 まさかあの事故に生存者がいて、それが死柄木だとは、考えた事もなかった。

 もし本当に彼がお師匠の家族なら、私は…!!

 

 私が動きを止めた一瞬の隙に、死柄木は私──

 

 

 

 

 

 ──ではなく、オール・フォー・ワンの腕に触れて“個性”を発動した。

 

 六徳少女の首を掴んでいたオール・フォー・ワンの腕が崩壊し、六徳少女が真っ逆さまに落ちていく。

 死柄木に腕を壊されたオール・フォー・ワンは、驚きと苛立ちを露わにしていた。

 

「な…んの、つもりだ…!?弔!!」

 

「俺はずっと、何かに苛立ってた。何に苛ついてるのかもわからずに、ただ漠然と、気に入らないもん全部壊してた……この怒りは全部、あんたに向けりゃあ良かったんだな」

 

「何を……」

 

「全部思い出したよ。人の人生ぶち壊しやがって」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

死柄木side

 

「ヒーローになりたい?そりゃあいい!なりたいもんになって、生きたいように生きりゃあいい!」

 

 僕がヒーローになりたいって言ったら、おじさんは笑顔でそう言ってくれた。

 

「大丈夫。おばさんは、転くんのそばにいるからね」

 

 おばさんは、いつでも僕の味方でいてくれて、僕が一人で泣いてたら心配してくれた。

 

「刹那ちゃんは優しいね。ぼくの話を嫌がらずに聞いてくれてさ」

 

「あー、あぅあ」

 

 僕がお父さんと喧嘩した時、刹那ちゃんは僕の愚痴を嫌がらずに聞いてくれた。

 

 僕を救ってくれた人は、確かにいたんだ。

 おじさんと、おばさんと、刹那ちゃん。

 よく家に遊びに来てくれて、華ちゃんやモンちゃんと一緒に、僕と遊んでくれた。

 

 『いつかヒーローが』『ヒーローが助けに来てくれる』、そうやって誰もが誰かを見て見ぬ振りする世界なんて間違ってる。

 だからこれからは、みんながヒーローにならなきゃいけないんだって、おじさんはそう言ってた。

 そうすれば、きっとみんなわかってくれるはずだからって。

 

 そうしたら、お父さんも、お母さんも、おじいちゃんも、おばあちゃんも、僕にヒーローになるなって言ってこなくなった。

 おじさんが来るようになってからは、毎日が楽しくて幸せだった。

 僕は、優しいおじさんと、おばさんと、刹那ちゃんが大好きだった。

 だけどあの日、全部がグチャグチャに壊れた。

 

 おじさんが家に遊びに来てた時、刹那ちゃんが急に熱を出して、おじさんとおばさんが刹那ちゃんを病院に連れて行った。

 その直後、『崩壊』の“個性”が発現して、僕が触ったものが全部壊れて塵になった。

 どうやって止めるのかわからなくて、泣いて助けを求めた僕を、皆は助けようとした。

 だけどどうやっても止められなくて、僕を助けようとした皆を、僕が壊した。

 

 俺は、皆を殺した自分を憎んで、あの日の記憶に蓋をした。

 俺は、先生に殺されたおじさんとおばさんが、俺を救ってくれた事すらも思い出せなかった。

 先生は、何もかも全部忘れた俺を拾って、自分の後継者に仕立て上げようとした。

 

 今の世界が腐りきっているのは、先生が…あいつが、おじさんとおばさんを殺したせいだ。

 僕の話を聞いてくれた優しい刹那ちゃんを、あいつは殺そうとした。

 全部、全部、あいつが悪い!!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

オールマイトside

 

「お前が、おじさんとおばさんを…死ね!!」

 

 死柄木は、オール・フォー・ワンに憎しみをぶつけ、その肉体を“個性”で崩壊させようとしていた。

 そうしている間にも、死柄木の『崩壊』によってオール・フォー・ワンから解放された六徳少女が落下していく。

 六徳少女は気絶していて、自力での空中移動ができないようだった。

 私が六徳少女のもとへ向かおうとしたその時、エンデヴァーが六徳少女の身体を掴み、炎の噴射で落下の速度を殺した。

 

「エンデヴァー…!」

 

「グダグダじゃないか、全く!これ以上俺を失望させるな!!」

 

 エンデヴァーは、六徳少女と死柄木の事で足を止めかけた私に発破をかけた。

 後輩達が見ている前で、これ以上格好悪いところは見せられんな…!

 私は、両脚だけをマッスルフォームに変身させ、オール・フォー・ワンのもとへと飛んだ。

 オール・フォー・ワンは、自身を裏切った死柄木を殺そうとしたが、黒霧がワープゲートを開いて死柄木を守った。

 

「黑霧…お前まで、何のつもりだ…!?」

 

「私は、死柄木弔を守る者」

 

 黒霧は、ワープゲートを開いてオール・フォー・ワンをどこかへ飛ばそうとする。

 だがその直後、オール・フォー・ワンが身体から棘を放ち、黒霧を刺した。

 

「ぐぁ…!!」

 

「黒霧…!!」

 

 黒霧が刺され、六徳少女が気を失って足場もなくなった今、死柄木が支えを失って落ちていく。

 

「今更逆らって、どうにかなるとでも思ったか?お前は今までの人生で、何一つ自分の意志で選んでいないというのに」

 

 オール・フォー・ワンは、落ちていく死柄木に向かって言い放った。

 

「オールマイトを曇らせるには、お前が必要だった。だからお前からまだ見ぬ“個性”を持った因子を取り除き、『崩壊』の“個性”をお前に植え付け、ブースト薬を皮膚炎の薬に混ぜて少しずつ摂取させ、“個性”の暴走を誘発した。オールマイトへの嫌がらせの為に、今まで踊らされていた気分はどうだ?」

 

 オール・フォー・ワンの言葉を聞いた死柄木は、絶望の表情を浮かべながら落ちていく。

 オール・フォー・ワンは、棘の“個性”を使って、死柄木を刺そうとした。

 私は、死柄木の身体を掴み、右の拳から衝撃波で棘を砕いた。

 

「…もう大丈夫だ。私が来た…!!」

 

「オールマイト…」

 

 右腕だけをマッスルフォームに変身させた私は、オール・フォー・ワンの前に立ちはだかった。

 その間に黒霧が、最後の力を振り絞って死柄木を安全圏へと逃がした。

 オール・フォー・ワンは、私を見るなり青筋を浮かせながら左腕を振りかぶった。

 

「醜い。そこまで醜く足掻いていたとは、想定外だった。だが、その身体では次の一撃はどう足掻いても……」

 

 さっきの衝撃波を放とうと、オール・フォー・ワンは左腕を膨張させる。

 だが、その一撃が放たれる事はなかった。

 

「ぐ……!!あ、の…小娘…!!」

 

 オール・フォー・ワンは、突然左手で頭を押さえて苦しみ出した。

 それだけじゃない。

 オール・フォー・ワンが奪ってきた“個性”が一気に封じられ、奴は身動き一つ取れなくなる。

 

 同じだ。

 奴が六徳少女から“個性”を奪おうとした時と。

 六徳少女が、奴の中で抗っているのだな…

 彼女が作ってくれた一瞬、決して無駄にはしない。

 

 

 

 ――何人もの人が、その力を次へと託してきたんだよ。皆の為になりますようにと…一つの希望となりますようにと。

 

 ――次はお前の番だ。頑張ろうな、俊典。

 

 

 

 オール・フォー・ワンが動きを止めた一瞬のうちに、私は拳を振りかぶり…

 

「UNITED STATES OF SMASH!!!!」

 

 渾身の一撃を、オール・フォー・ワンの顔面に叩き込んだ。

 オール・フォー・ワンは、弾丸の如き速度で落ちていき…そして、海面に衝突した。

 その瞬間、衝撃波によって水面が大きく波打ち、遠く離れた島の海岸にも波が押し寄せた。

 二度と奴が浮かび上がってくる事はなかった。

 

 奴を倒した瞬間…私の中から、『ワン・フォー・オール』の残り火が消えた。

 さらばだ、『ワン・フォー・オール』。

 

 私も支えを失って落下しそうになったその瞬間、真下に氷の足場ができた。

 振り向くと、六徳家の執事の山根さんが、氷を出して私の身体を受け止めてくれていた。

 私は、氷の足場の上で…静かに、右腕を上げた。

 これが…『平和の象徴』(わたし)の、最後の仕事だ。

 

 

 

 

 




ぶっちゃけ原作でのアフォさんの敗因って、君を殴るしたせいだと思うんすよね。
お得意の遠距離攻撃でヒットアンドアウェイしてたらまだ勝ててた説。

同時期の原作より賢い立ち回りしてたのに、原作以上に醜態を晒す羽目になったアフォさん。
オリ主に心の抓み合いで負けるわ大好きな弟に邪魔されるわ、志村家救済ルートを無理矢理無かった事にしたせいで死柄木黒霧に裏切られるわ、マジでいいとこなさすぎる…
まあなんにせよ相手が悪すぎた。

オリ主の血筋は、ステイン事件後のデクとオールマイトの会話あたりから匂わせていた設定です。
可愛い弟が殺したいほど憎い女と子作りしてたら、そらアフォさんもブチギレ必至ですわ。
顔キ◯タマが親族とか、おいたわしさ爆血しすぎて草も生えない。
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