※一部飯テロ注意
ここ数日間、ハッキリ言って色々ありすぎた。
委員決めの日にカスゴm…マスゴミが不法侵入してきたり、その時に
癒治君は大事には至らなかったし、
だがその見通しが甘かった事を、私はこの日思い知る事となった。
その情報が私達普通科の生徒の耳に入ってきたのは、今日の放課後の事だった。
この日の1年A組のヒーロー基礎学の授業は、13号先生が建てた救助訓練用の施設
救助訓練の授業には、A組の担任の相澤先生の他にも、オールマイトと、我らが13号先生も担当教員として参加していた。
その授業の最中に、
生徒は、一人を除いて全員ほぼ無傷だったそうだ。
私が異変を察知したのは、5限目の美術の授業中に校長から連絡を受けたミッドナイト先生が、残りの授業は自習だと言い残して教室を飛び出した時だ。
先生の表情を見るに、非常事態である事は明白だった。
私達が教室で大人しく自習をしている間にも、パトカーが何台も雄英の敷地内に入ってきて、サイレンの音が教室の中にまで響いてきた。
その後警察の調査や事件の後処理などがあったらしく、教室に戻ってきたミッドナイト先生から事件の概要を聞かされた。
警察は、USJに侵入してきた
私達生徒は、親に迎えに来てもらって下校する事となった。
一人暮らしの生徒は、できるだけ固まって下校するよう先生から注意喚起を受けた。
「13号先生、大丈夫でしょうか…」
「………」
前の席の癒治君が、不安そうに口を開く。
襲撃してきた
先生方の容態が心配なのもあるが、それだけ強力な
仕方ない、ここは私が一肌脱ぐか。
「癒治君は確か一人暮らしだったな」
「えっ?あ、はい。両親が海外出張中なので…」
「ならば私の家に泊まりたまえ。ウチには私兵を兼ねた使用人がいるし、一人で過ごすよりは安全なはずだ」
「いや…でも、流石に迷惑じゃないですか…?」
「構わないよ。別に1人や2人増えたところで、どうって事はない。早速だが、和室と洋室どちらが良いかい?」
「えっ、えっ…」
私が尋ねると、癒治君が困惑した。
その間にも、客人が来るので衣類や寝具を揃えておくよう山根にメッセージを送った。
すると他のクラスメイトが、おずおずと手を挙げて私に話しかけてきた。
「あの〜…アタシも一人暮らしなんだけど、こんな事があって不安だし、泊めてもらえないかなー…って、流石に図々し──」
「ん?何を言っている、泊めるに決まっているだろう?非常事態だからこそ、助け合わねばなるまい」
「「「「えっ」」」」
「ああ、すまんが屋敷に泊めてやれるのは女子だけだ。当家が経営するホテルをこちらで手配しておくから、悪いが一人暮らしの男子諸君はそれで我慢してくれ」
私が言うと、男子達が目を点にする。
クラスメイトを平等に匿いたいのは山々だが、中には男子と一緒に泊まりたくない女子もいるかもしれないし、本人達が良くても親御さんがそれを許すとは限らない以上、匿う場所は男女で分ける他ない。
もちろん、男子が泊まるホテルにも、六徳家が経営する警備会社に連絡してウチの屋敷の警備と遜色ないセキュリティを敷いてもらう予定だ。
幸い今日が平日だった事もあり、ホテルを一棟丸ごと貸し切る事ができた。
当分はそれで我慢してもらうしかないが…
「いや、充分神対応なんだが」
「女神がここにいる…」
「俺今日から委員長に足向けて寝れねぇわ」
…どうやらいらない心配だったようだ。
◆◆◆
癒治side
私達一人暮らしの女子は、臨時休校の間、六徳さんの家に匿ってもらう事になった。
しばらくの間正門の前で待っていると、一台の黒塗りのリムジンが停車した。
リムジンの中からは山根さんが出てきて、私達に深々と頭を下げた。
「お迎えにあがりました。お嬢様とご友人の方々。どうぞこちらへ」
そう言って山根さんは、車のドアを開けてくれた。
すると他の女子達が、顔を見合わせてヒソヒソと話す。
「執事だ…」
「本物?」
「サラッと育ちの違い見せつけられたわ…」
他の女子達は、黒のスーツを着て私達を出迎えてくれた山根さんを見て、驚いている様子だった。
そりゃあ、普通に暮らしてたら執事に会う事なんてそうないもんなぁ…
そんな事を考えつつ、高級感漂うシートに身を預けた。
「ソファーだ…!そふぁああ…!」
「一体いくらするんだこの車…」
他の皆は、山根さんの運転するリムジンの内装を見て、魂が抜けそうになっていたり、興奮したりしていた。
車の中には象牙色のソファーが充分なスペースをとって配置されていて、ローテーブルにはドリンクの入ったグラスと軽食が置かれている。
上の方にはテレビまで設置されていて、私の家のテレビより画質も音もいい。
これ、一体いくらお金かけてるんだろう…
…いや、これ以上お金の事を考えるのはやめよう。
◇◇◇
「着きました」
「ここが私の家だ」
「「「「はぇー…」」」」
車で揺られる事小一時間。
車から降りると、森かと思う広大な庭の中に、お城みたいな家が聳え立っていた。
山根さんが玄関の扉を開けてくれて、中に入ると、一生お目にかかれないような光景が広がっていた。
自分の顔が映るくらいに綺麗に磨かれた大理石の床に、カーペットが敷かれている。
奥には大階段が二つあって、さらにその奥には廊下が続いている。
天井からは、精巧に作られたガラス細工がところどころにあしらわれたシャンデリアが吊るされている。
「ゆっくり寛ぐといい。必要なものは全てこちらで用意するし、君達の安全は使用人達が保証してくれる。何か不明点があれば、いつでも気軽に相談してくれ」
いや…
寛げないです…
気軽に相談できないです…
「和室と風呂場は別館にある。山根、和室の案内を。私は洋室の案内をする」
「かしこまりました」
六徳さんが山根さんに言うと、山根さんは深く頭を下げて、和室を選んだ人達を別館に案内した。
この一連のやりとりから、二人が強い信頼関係で結ばれている事が窺える。
私達が呆然と立ち尽くしていると、猫耳を生やしたメイドさんが、カートを押しながら私達のところに来た。
「皆様、お手荷物をお預かりします」
「あっ…何かすみません」
「よ、よろしくお願いします…」
私達は、メイドさんが押してきたカートに、自分の荷物を積んだ。
…と言っても、学校から直接ここに来たから、荷物はほとんど無かったんだけど…
「では、部屋に案内しよう。ついてきてくれ」
そう言って六徳さんは、私達の前を歩いて屋敷の奥へと進んでいった。
六徳さんは、歩きながら屋敷の説明をしてくれた。
アンティーク調の照明で照らされた廊下の壁面には、肖像画が飾られている。
飾られているのは六徳家の歴代当主の肖像画で、中には教科書や歴史書で見た事がある人も何人かいた。
「地下は私専用のトレーニングルームになっている。使いたければいつでも使い方を聞いてくれ。1階は、ホールやパーティー会場、使用人室、事務室、医務室、あとはランドリールームが…2階には、君達が寝泊まりする部屋の他に、図書館と食堂、娯楽室、それからホームシアターを兼ねた講堂がある。3階は私の生活スペースになっているので、立ち入る際は私に一言声をかけるように」
「「「「はい…」」」」
「食事は基本的に好きな場所で摂れるが、流石にこの人数にバラバラに食事を摂られると、使用人達の手間が増えるのでな。食事は食堂に来て摂ってもらう形で良いか?」
「「「「………」」」」
「ああ、それから、食べられないものがあれば早めに言ってくれ。まあ、いつも弁当を一緒に食べているメンバーは大丈夫だとは思うが…」
六徳さんの言葉のひとつひとつに、私達は首を縦に振るしかなかった。
ホテルですらここまでの対応をしてくれるところはそうないというのに、家に招いた同級生にここまでしてくれるなんて、器の大きさも含めて何もかもが私達とはスケールが違うと思う。
そんな事を考えながら六徳さんについて行くと、客間に着いた。
「ここが客間だ。ここに置いてあるものは、好きに使ってくれて構わない」
「「「「!!!?」」」」
客間だと言って通された部屋の内装に、私達は目と口を外れそうになる程大きく開いて驚いた。
普通のベッドの倍くらいの幅がある大きなベッドに、高級そうなソファーやローテーブル、大画面のテレビなんかが設置されていて、天井にはアンティーク調のシャンデリアが、奥の壁には暖炉が設置されている。
壁には絵画がかけられていて、綺麗に磨かれた床にはペルシャ絨毯が敷かれている。
備え付けのウォークインクローゼットは、私が今住んでる部屋くらいの広さがある。
客間には庭を一望できるバスルームとパウダールーム、さらには大型の冷蔵庫まで備え付けられている。
まるで高級ホテルのスイートルームみたい…行った事ないけど。
何も知らされていなければ、ここが六徳さんの部屋だと言われても信じてしまうと思う。
客間でこれなら、六徳さんの部屋はどうなっちゃうんだろう…?
「荷物は既に、部屋の中に運んである。服はクローゼットの中から好きなものを選ぶといい」
いや、スッと選べないです…
六徳さんの貸してくれる服なんて、畏れ多くて着れないです。
そう思いつつも、皆でクローゼットの中を確認した。
……あれっ?
この服、見た事ある。
一着数百万はするような超高級ブランドの服とかもあるんだけど、私達が使うクローゼットの中には、数百円から数千円の範囲で買える服も入っていた。
お手軽で流行を捉えた…いわゆるファストファッションまで幅広く置いてあるのは、正直意外だった。
「あれっ?これ、ウチがいっつも行ってる店のやつじゃん」
「何というか…リーズナブルな服もあるんだね」
「同年代の女子に人気なブランドの服を一通り揃えてみたんだ。同じ服が欲しくなった時、自分の金で買えなければ困るだろう?」
私達が服を選びながら六徳さんに話しかけると、六徳さんは平然と答えた。
ウチの委員長、気遣いがプルスウルトラしてる…!!
何だかんだで普段利用してるブランドの服が一番落ち着くから、正直ものすごくありがたい。
私は、ゆったりめのフード付きのピンクのトレーナーと、茶色のキュロットを選んで着替えた。
私達が服を選んでいる間に、六徳さんは着替えの為に自室に向かった。
私達がちょうど着替え終わったタイミングで、さっきのメイドさんがお茶とお菓子を運んできてくれた。
紅茶と一緒に運ばれてきたお菓子は、バターをふんだんに使ったクッキーにキャラメルをたっぷりコーティングしたアーモンドを乗せて焼き上げたフロランタンだ。
一口サイズに割ってから口に運ぶと、キャラメルの甘さとアーモンドの香ばしさが口いっぱいに広がって、幸せな気分になってくる。
「何このベッド、メッチャフカフカなんだけど!」
「うわぁぁ、お風呂広っ!!」
「すごっ、これ泡が出るやつじゃん!」
中には、六徳さんがいない間に、部屋の探検をしている人もいた。
私達が運ばれてきた紅茶とお菓子に舌鼓を打っていると、六徳さんが戻ってきた。
「やあ、楽しそうな話をしていたね。私も混ぜてもらえないだろうか」
着替えを終えた六徳さんは、笑顔で話しかけてくる。
青いブラウスに、濃紺のフレアスカートといった格好だ。
上流階級育ちの彼女らしい、上品で落ち着いたデザインの服装だと思う。
そして、何人かの女子が、彼女の身体の一部を凝視していた。
「発育の暴力…!」
「富の象徴…」
「あんたら失礼よ」
六徳さんの胸を凝視して悔しがる女子達を、普段私と一緒にお弁当を食べている斥口さんが宥めた。
そんな女子達を見て、六徳さんがきょとんとする。
制服は身体のラインが出にくいタイプだから普段は皆気に留めないけど、六徳さんはかなり立派なものをお持ちだ。
お金持ちで頭も性格もいい上にスタイル抜群って、それもう天に二物も三物も与えられすぎじゃないかな…
その後は、六徳さんも加わって女子会を開いた。
別館の和室に案内された女子達も客間に来て、あとで和室も見せてもらう約束をした。
メイドさんがお茶やお菓子のおかわりを持ってきてくれて、今はお菓子を囲みながらお喋りしている。
「このお菓子メッチャ美味しいよ!」
「もうさ、箱に詰めて持って帰りたいよね」
「そんなに気に入ったのなら、レシピを教えようか?」
「えっでも、作るの難しいんじゃないの?」
「そんな事はない。きちんとレシピ通りに作れば、誰でも作れる」
「まじで!?じゃあ教えて!」
六徳さんは、メイドさんが持ってきてくれたお菓子のレシピを私達に教えてくれた。
今謹慎期間中だし、私も時間ある時に作ってみようかな…
そんな事を考えていると、六徳さんが話しかけてくる。
「ところで皆、何か困り事はないか?」
「困ってる事はないんだけど…ね」
「何というか…うん。一生分の贅沢を味わった気分」
「客間でこれとか、六徳さんの部屋とかどんな感じなんだろ…」
「見に来るか?」
「「「へ?」」」
「これといって興味を引くものは置いていないだろうが、それでも良ければ見に来てもいいぞ」
そう言って六徳さんは、あっさり私達を生活スペースのある3階に招き入れてくれた。
六徳さんの部屋…考えただけで緊張してきた。
「やばい、入試の時より緊張してきた」
「高級品の過剰摂取で死んじゃったりしないかな…」
「何て贅沢な死に方!?」
そんな会話をしつつ、私達は六徳さんに屋敷の中を案内してもらった。
3階には、小食堂やリビング、六徳さんの個室といった生活スペースや、音楽室やアトリエ、ダンスホールなんかの趣味部屋もある。
音楽室にはグランドピアノやヴァイオリン、ギターなんかの楽器が置かれていて、アトリエには六徳さんが制作したと思われる彫刻や油絵が置かれている。
もう一つの扉のプレートには『LIBRARY』と書かれていて、どうやら2階の吹き抜けの図書館に直接アクセスできるようになっているらしい。
「これ全部六徳さんの趣味部屋?」
「まあな」
「お部屋がたくさん…六徳さんって、多趣味なんですね…」
「命を狙われて学校に行けない事も多かったからな。屋敷から出ずに教養を身につける為に必要だったんだ」
私達の質問に、六徳さんは平然と答える。
命狙われるのに慣れるって、それもう完全に生活が高校生離れしすぎてませんか…?
「ここが私の部屋だ」
そう言って六徳さんは、自室の扉を開けた。
六徳さんの部屋にはブルーの絨毯が敷かれていて、キングサイズのベッドや座り心地の良さそうなソファー、高級な木材でできたドレッサーが置かれていた。
部屋にはガラス張りのバスルームと、10畳はくらいはありそうなウォークインクローゼットが備えつけられていて、奥の方には書類や本がたくさん置かれ最先端のパソコンが設置された書斎が見える。
でも気になるのはそれくらいで、何というか…思っていたより、シンプルなレイアウトだった。
お花とか、雑貨とか、部屋に彩りを加える為の小物は一切置いていない。
絨毯も、多分防寒と床の保護が目的だろうし、豪華さよりも機能性を突き詰めた部屋…といった印象を受ける。
何なら、私達が案内してもらった客間の方が、よっぽどお嬢様の部屋っぽく見える。
「奥の書斎は機密情報も管理してあるから、間違っても入るなよ」
「あれ…?何というか…」
「思ったよりシンプル…?」
「意外か?」
「あっいや、なんかもっとこう、豪華絢爛!みたいなの想像してたというか…すみません、はい」
「客間とかそんな感じだったからね…」
私達が顔を見合わせながら言うと、六徳さんがあっけらかんと笑った。
「何を驚いているのかと思えばそんな事か。あれは客に見せる用のレイアウトであって、私の部屋とは勝手が違う。まあ、一種のパフォーマンスだよ。自分が住む部屋は、やはりシンプルで機能的な方がいい」
六徳さんは、笑いながら私達の誤解を解いた。
確かに彼女の性格を考えればこういうシンプルな部屋の方が居心地がいいんだろうけど、客間だとそうはいかない。
3階以外の場所にやたらと高価な家具や美術品が置かれていたのも、名家としての威厳を示す為だったんだなぁ。
「…さ、君達は部屋に戻ってゆっくり寛いでいてくれ。食事の準備ができ次第、使用人が呼びに来る手筈になっているのでな」
そう言って六徳さんは、先に私達を客間に戻らせた。
彼女に促されて部屋に戻った私達は、客間を探検したり、トランプで遊んだりして過ごした。
するとさっきのメイドさんが、私達を呼びに来てくれた。
「皆様、お食事の準備ができました」
私達は、メイドさんに案内してもらった大食堂の席に座った。
六徳さんから聞いた話だけど、このお屋敷には大食堂と小食堂があるらしくて、今回みたいにお客さんがたくさん来る時は大食堂を、自分一人でご飯を食べる時は小食堂を使うって聞いた。
皺ひとつないテーブルクロスの上には、綺麗にセッティングされたカトラリーが置かれていて、周りの装飾が荘厳な雰囲気を醸し出している。
「本来ならマナーを守って恭しく振る舞うべき場だが、今日は無礼講だ。皆、肩の力を抜いて食事を楽しむといい」
私達が緊張でガチガチになっていると、六徳さんがフッと笑いながら話しかけてくれた。
その言葉のおかげで、緊張が解けてきた。
最初に食前酒代わりのノンアルコールカクテルが出てきて、メイドさんが手の込んだフルコースを運んできた。
「これ、一口いくらするんだろ…」
「気にしたら負けよ」
そんな会話をしつつ、私達は運ばれてきた料理を食べた。
料理はラスクとサーモンパテを使ったアミューズから始まり、前菜は庭の菜園で採れた野菜と甘エビのセルクル仕立て、スープはブイヨンまで一から手作りしたコンソメスープ、パンは専用の窯で焼いたバゲットが出てきた。
その後も鯛のポワソン、レモンのソルベ、黒毛和牛のヴィアンド、春野菜のサラダ、チーズの盛り合わせといった料理が出てきて、最後に私の好きなイチゴをふんだんに使った一口サイズのタルトがデザートに出てきた。
格式の高いフルコースでありながらも私達の好物が入っているところに、シェフの気遣いを感じる。
運ばれてきた料理は、どれも絶品だった。
六徳さんは、完璧なテーブルマナーで料理を口に運んだ。
気品溢れる姿は、どの角度から見ても美しいと思った。
運ばれてきた料理を完食する頃には、すっかりお腹が膨れた。
「ふぅ、お腹いっぱい」
「そういえばお風呂があるんだったよね?」
「ああ。別館に大浴場があるが…入るか?」
「あっ…じゃあ、せっかくだし…入ろうかな」
斥口さんが言うと、他の女子達も頷く。
すると六徳さんが、山根さんにお風呂の準備をするように言ってくれて、お風呂の支度ができるまでの間は好きに過ごすよう言われた。
六徳さんはやる事があるらしくて、自分の部屋に戻っていった。
「皆様、お風呂の準備ができました」
私達がホームシアターで映画を見ていると、ちょうど映画が終わった頃に山根さんが私達を呼びに来てくれた。
私達は、山根さんにお風呂場を案内してもらった。
お部屋のお風呂に入りたい人には、メイドさんがお風呂の使い方を教えてあげていた。
渡り廊下を渡って日本家屋の別館に行き、長い廊下を進んでいくと、一番奥に暖簾がかかった扉が見えた。
「ここが風呂場だ」
「「「「広っ!!?」」」」
扉を開けるとすぐ、広々とした脱衣所が広がっていた。
鍵付きのロッカーや洗面台が並んでいて、マッサージチェアまで置かれていて、まるで銭湯みたいなレイアウトになっていた。
「服はまとめて籠に入れておいてくれ。入浴中に使用人が回収して洗濯するから」
「マジかっ、銭湯かよっ!?この家マジ神なんだけど!?」
「矢田あんたうるさい」
「これでお風呂上がりのコーヒー牛乳とかあったら最高なんだけどなぁ〜…って、流石にこれ以上わがまま言っちゃあかんか」
「コーヒー牛乳?」
女子達の会話に、六徳さんがきょとんとする。
お風呂上がりのコーヒー牛乳を知らないとは…お嬢様なんだなぁ。
「銭湯行くと、自販機で色んな牛乳が置かれてるんですよ。コーヒー牛乳とか、フルーツ牛乳とか…それをお風呂上がりに飲むのが、銭湯の楽しみのひとつなんです」
「ふむ…なるほど、そういう楽しみ方もあるのか。勉強になった」
そう言って六徳さんは、スマホを取り出してどこかに電話をかけた。
「新井。客人達にコーヒー牛乳と…それからフルーツ牛乳とやらを作って差し上げろ。そうだ、風呂上がりに持ってきてくれ」
「「「「!!?」」」」
えっ……嘘でしょ?
確かにあればいいなー、とは言ったけど…
そんなすぐ用意してくれるなんて聞いてないよ…
「さてと」
私達が呆然としていると、六徳さんがその場で服を脱ぎ始めた。
えっ、まさか一緒に入るの…!?
「「「待って待って待って!!」」」
「どうした?」
「いや、六徳さんも一緒に入んの!?」
「そうだが?せっかく級友を招き入れたのだから賑やかな方がいいし、何より別々に入るとお湯がもったいないだろう?」
私達が尋ねると、六徳さんは当然のように答えた。
お嬢様にも節約しようって感覚はあるんだ…
そんな事を考えつつ、服を脱いだ。
ふと隣に立っている六徳さんを見ると、彼女のスタイルの良さに改めて目を奪われる。
一部に濃紺のグラデーションがかかった濡羽色のロングヘアと、宇宙を連想する濃い青の瞳に、陶器のようなきめ細やかな白い肌。
日々のトレーニングで余計な肉が削ぎ落とされ引き締まった身体に、富の象徴とも言えるご立派なバスト。
まさに神が創った芸術品とも呼ぶべき美貌に、その場にいたほとんどの女子から羨望の眼差しを向けられていた。
だけど六徳さんの身体には、昔負ったと思われる火傷痕がいくつも残っている。
背中やお腹の一部は、皮膚が引き攣って変色していて、彼女の凄惨な過去を物語っている。
「あの…その傷、痛くないんですか?」
「10年以上も前の傷だ。もう痛くはない」
私が尋ねると、六徳さんは平然と答えた。
特訓の時、六徳さんは“個性”は使い続ければ成長すると言っていた。
もし私が特訓を積めば、彼女の傷を消してあげる事はできるんだろうか…そんな思考が一瞬頭をよぎったけど、口には出さなかった。
「……わぁ…!」
服を脱いで身体をタオルで隠しつつ大浴場の扉を開けると、熱気が身体を包み込んだ。
お客さんが頻繁に来る事を想定しているからか、十分な数の洗い場が設置されていて、お風呂は全員が入ってもゆとりを持って浸かれる広さの檜風呂が、熱めのお湯とぬるめのお湯の二種類設置されていた。
小さいけど水風呂もあって、サウナもドライサウナとウェットサウナの二種類設置されている。
奥にある全面ガラス張りの扉を開けると、手入れされた美しい日本庭園と満天の星が一望できる、石造りの露天風呂があった。
普通のお湯じゃなくて温泉が張ってあるのか、湯気に混じって硫黄っぽい匂いがした。
「これって本物の温泉?」
「いや、流石に温泉の素か何か入れてるでしょ」
「源泉掛け流しだぞ」
「「「「!!!?」」」」
自宅で源泉掛け流して…
今日一番の驚きだよ…
「あ〜気持ちいい〜」
「アタシ今日からこの家住む〜」
「ムッ……どうも胸が浮いてきてしまうな」
「はあ゛っ!?こっちは浮くものなんてナインデスケド!?」
「矢田あんたマジでいい加減にしな?」
身体を洗って、室内のお風呂を堪能してから、皆で露天風呂に浸かった。
皆がうっとりと身体を休める中(一人だけ六徳さんの胸を見て発狂してる人がいたけど)、私はふと今日の事件を思い出した。
A組の皆が
先生達が痛い思いをして、A組の人達だって怖い思いをしたはずなのに、何もしてない私達だけこんなに幸せでいいのかな…
それって、不謹慎な事じゃないのかな…
そんな事を考えていると、不意に後ろから声をかけられた。
「どうした?浮かない顔をして」
振り向くと、六徳さんが後ろにいた。
私が一人で悩んでいるのを察してか、温泉を堪能している皆とは少し離れた場所で、私の話を聞いてくれた。
「…六徳さん。私、ずっと心の奥で引っかかってた事があるんです。A組の人達が危険に晒されて、先生方も大怪我を負ったっていうのに…私達だけ、こんなに幸せでいいんでしょうか…」
私は、事件に巻き込まれたA組や先生達の事がずっと引っかかっていた事、今が幸せであればあるほど罪悪感が膨らんでしまっている事を打ち明けた。
すると六徳さんは、私の隣に来て口を開く。
「……あのね、癒治君。そもそも、彼等は何故ヒーロー科に在籍していると思う?私達一般市民の安全を守る為ではないのか?私達が
「六徳さん…」
「私にできる事は、たかが知れているかもしれないが…君が不安だというのなら、安心できるまでここにいてもいいよ」
「…すみません。ありがとうございます」
六徳さんの言葉に、私は思わず涙を流した。
六徳さんは、私が泣いているのを見られないように、他の皆から私が見えない位置に移動してくれた。
彼女のさりげない優しさが、とても温かくて、ほんの少し救われた気がした。
お風呂から上がると、籠に入れておいた服は全て回収されていて、代わりに私達がさっき選んでメイドさんに渡しておいた浴衣やパジャマが、綺麗に折り畳まれた状態で置かれていた。
パジャマに着替えて、大浴場の隣にある休憩所でまったりしていると、メイドさんがコーヒー牛乳とフルーツ牛乳を持ってきてくれた。
「ぷはぁ〜、濃い〜!」
「甘〜い!」
濃厚なジャージー牛乳とジャマイカ産の超高級コーヒーをブレンドしたコーヒー牛乳と、バナナやマンゴーやオレンジといった数種類のフルーツをブレンドしたフルーツ牛乳が、透明なピッチャーに入った状態で運ばれてきて、その場でメイドさんがグラスに注いでくれた。
思ってたのとは少し違ったけど、これはこれで何だかリッチな味がして美味しかった。
ご飯とお風呂を堪能した私達は、別館を見せてもらってから部屋に戻る事にした。
別館は、道場と大浴場、客間、宴会場、六徳さんの趣味部屋、そして六徳さんのご両親の仏壇が置いてある部屋があった。
和室派の人達に用意された客間は、生花や壺、水墨画が飾られ、日本庭園が見える広々とした空間になっていた。
別館を一通り探検した後、私達は本館に戻って自分達の客間で過ごした。
ちなみに、部屋のお風呂も気持ちよかったらしいから、明日は早めに起きて部屋のお風呂に入ってみようと思う。
そんな事を考えつつベッドに身を預けると、ふかふかで肌触りのいい毛布が私の身体を包み込んだ。
◆◆◆
刹那side
皆と一緒に風呂に入った後、私は自室に戻って作業に取り掛かった。
私の手元にあるのは、先日USJに襲撃した
六徳家は世界有数の速さ・正確さを誇る情報網を持っており、警察庁やヒーロー公安委員会とも太いパイプを持っている。
故に当家の人間が警察や公安から捜査協力の依頼が来る事は珍しい事ではなく、その際本家の当主である私にも調査内容の一部を知る権利があるのだ。
私が調査していた、ワープの“個性”を持つ“黒霧”という男。
そしてイレイザーヘッドこと相澤先生に重傷を負わせ、オールマイトにも決して軽くはない負傷を負わせた“脳無”という謎の
奴等は“
ここ30年の個性届を遡っても一致する人物が見つからなかった事から、個性届を提出しておらず、名前も偽名である可能性が高い。
…しかし、たった20代かそこらの若者が、強力な“個性”を持つ曲者を従えてUSJを襲撃する事など、できるものなのか?
もし、奴等を裏で操る黒幕がいたとしたら?
私がその黒幕なら、どこでどうやって、そいつらを操る?
私は、そいつが取りうる行動を片っ端から頭の中でシミュレーションした。
とりあえず、連合の連中の目撃情報や、不審なダミー会社やテナントの入っていないビルなど奴等が隠れ家として利用しそうな場所を、当家の情報網を駆使して探し出す事にした。
犯人がどこの誰であれ、必ず探し出して法の裁きを受けさせる。
私は、あの日から、世に蔓延る犯罪者共を一人残らず裁くと決めたのだ。
11年前の春。
あの日までは、私はヒーローに憧れる普通の子供で、毎日が幸せだった。
母は私の弟になるはずだった子供を孕んでいて、私は新しい家族ができるのを心待ちにしていた。
だが母の出産予定日を間近に控えていたあの日、何の前触れもなく屋敷の中に
私も死を覚悟したその時、山根が助けに来てくれて、私だけが生き残った…いや、
私はあの日から、来る日も来る日も、あの
外に出るのが怖くて、ずっと屋敷の中に引きこもっていた。
だがある日、ふと思った。
何故私が、奴から逃げなければならないのだろうか。
被害者の私が日の下を歩けず閉じこもって、加害者がのうのうと日の下を歩いている。
本当に追われるべきは、どちらなのだろうか。
私は、その時に誓ったのだ。
必ず犯罪者に一人残らず法の裁きを受けさせ、何の罪もない人々が日の下を堂々と歩ける社会を作ると。
一度は両親を殺した犯人を殺して復讐する事も考えたが、六徳家の人間として生まれたからにはいつ如何なる時でも文明人であれという父の教えが、私を踏みとどまらせてくれた。
…もっとも、身勝手な
だが私は、両親の仇がいなくなったくらいで、今更引き返す事は無い。
今は目の前に、裁くべき奴等がいる。
癒治君が…私の友達が泣いた。
身勝手な奴等のせいで、ただ幸せに過ごす事に罪悪感を抱いてしまったのだ。
そして何より、私達の担任である13号先生が傷つけられた。
必ず、この報いは受けさせてやる。
作中でオリ主ちゃんの巨乳ネタがやたらコスられてますが、そんなにめちゃくちゃ爆乳ってわけでもないです。
作者の中では、Fカップくらいの感覚です。
A組の期末前の修行パートいります?
-
書け
-
いらん、本編進めろ
-
んなもんより他の番外編書け
-
好きにしな