オリ主「…というコンセプトでお送り致します」
心操君と療子に近接格闘の基礎を教え終えた翌日。
遂に体育祭当日がやってきた。
「はふ……」
療子は、控室の隅で水筒に入った血を飲んで緊張をほぐしていた。
「療子、大丈夫か?」
「はい…」
私が話しかけると、療子は少し緊張しながらも笑顔で返事をした。
他のクラスメイトも、それぞれ精神統一を図ったり、控室のお菓子を食べたり、あまりやる気がない者は雑談したりしている。
「皆、そのままでいいから聞いてくれ。この体育祭を見ているほとんどの者は、私達を
私が言うと、クラスメイト達は悔しそうに俯く。
私のようにヒーローに興味がない者はどこ吹く風だが、体育祭に参加している普通科の生徒は、ほとんどが入試で挫折を味わった者達なのだ。
全国民が見ている前で脇役の烙印を押される、これ程屈辱的な事はない。
特に今年は、
だが私は、引き立て役のまま終わるつもりなど毛頭無い。
「だったら大人しく、引き立て役のまま終わるか?それとも大暴れして、私達に見向きもしない奴等に一泡吹かせるか?それを決めるのは、君ら自身だ」
私は、挑発するように他の皆に問いかけた。
すると皆は、顔を見合わせて自信なさげに言った。
「一泡吹かせるって…そんなの無理だよ委員長。だってこれ見ろよ、掲示板はA組の話題で持ちきりだぜ?」
「そりゃあ、六徳さんのおかげで多少力はついたけどさ…」
「俺らが注目を集めるなんて、できっこないよ」
皆、自分達がA組の引き立て役にしかならない事をわかっているのか、私の提案に対して消極的だった。
中には、自分達が引き立て役であるという証拠に、スマホで体育祭のスレッドを見せてくる者もいた。
うむ、確かにほとんどがA組のコメントだな。
だが皆、本心では、脇役扱いに納得していないはずだ。
「…まあ、普通に挑めば無理だろうな。だから、私に考えがあるんだ」
私は、頭の中で考えていた事をクラスメイトに話した。
すると皆は、案の定顔を引き攣らせてドン引きする。
…うん、想定内の反応だよ。
「……それ、マジで言ってる?」
「なるほどね、
「委員長ってさ、実は結構性格悪い?」
「ありがとう、最高の褒め言葉だよ」
ドン引きして尋ねるクラスメイトに、私は不敵な笑みを浮かべて答えてみせた。
すると皆は、顔を見合わせて頷いた。
「そういう事なら、やるっきゃないよね」
「面白そうじゃん」
「しゃーない、俺らも乗せられてやりますか」
私の提案を聞いたクラスメイトは、ほとんど全員がやる気を出した。
うむ、いい表情だ。
尤も、心操君と療子は、はじめから言うまでもなかったようだが。
「おっと、そろそろ時間だ。皆、大暴れしていこうか!」
「「「「おおーーーっ!!」」」」
私がクラスの皆を鼓舞すると、皆は声を揃えて己を奮い立たせた。
気合いは充分。選手入場といこうか。
『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらアレだろ!?こいつらだろ!!?
プレゼント・マイク先生のアナウンスと、観客席からの歓声がスタジアム中に響き渡る。
案の定、世間の注目はA組に集まっているようだ。
普通科の私でも、空気がビリビリと震える程の緊張感を肌で感じた。
『B組に続いて普通科C・D・E組…!!サポート科F・G・H組も来たぞー!そして経営科…』
雑い。
扱いの差が露骨すぎませんかマイク先生。
まあ私達普通科やサポート科は主役じゃないからまだわからなくもないが、せめてB組にはスポットライトを当てて差し上げろ。
「選手宣誓!!」
全員が入場すると、18禁ヒーローのミッドナイト先生が壇上でピシャッと鞭を打った。
18禁なのに高校の、しかも1年の部にいてもいいのか?
…いや、それを言うのも今更だし考えるだけ無駄か。
際どい格好をしたミッドナイト先生の登場に、主に男子生徒がザワザワしていると、再びピシャッと鞭を打つ音が響く。
「静かにしなさい!!選手代表!!1ーA爆豪勝己!!」
ミッドナイト先生に呼ばれてポケットに両手を突っ込んだまま壇上に上がったのは、金髪を毬栗のような髪型にした爆豪という男子生徒だ。
爆豪君といえば、去年のヘドロ事件で人質にされながらも、オールマイトが来るまで必死に抵抗していた少年だ。
例年は、ヒーロー科の一般入試で首位だった生徒が選手宣誓をする事になっていたので、彼がヒーロー科の首席という事なのだろう。
どんな宣誓をしてくれるのか、楽しみだ。
「せんせー。俺が一位になる」
「「「絶対やると思った!!」」」
爆豪君が気怠げに宣誓すると、主にA組が総ツッコミを入れた。
この品位の欠片もない宣誓には…
「調子乗んなよA組コラァ!!」
「何故品位を貶めるような事をするんだ!!」
「ヘドロヤロー!」
当然、このようにブーイングの嵐となったわけで。
これに対して爆豪君はというと。
「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」
観客やライバルを全員見下して、首を切るジェスチャーでさらに煽った。
本当に品がないな。
こいつ本当にヒーロー科か…?
…と、言いたいところだが…今回に限っては百点満点だ。
これでお行儀の良い宣誓をしようものなら、策を実行に移すのを躊躇していたかもしれないが…そっちが勝手に煽ってくれるなら、こちらとしてもやりやすいというものだ。
ありがとう爆豪君、おかげで体育祭を面白くできそうだ。
お礼に、私達他科一同からほんのささやかなサプライズをしてやろう。
「さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう!いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が
ミッドナイト先生が指し示すプロジェクターには、『障害物競走』と書かれていた。
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約4km!我が校は自由さが売り文句!ウフフフ…コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」
コースさえ守れば…か。
それは、二度と走れなくなるような妨害も許されている…と解釈してもいいのだろうか。
えげつないな。
「さぁさぁ、位置に着きまくりなさい…」
スタートゲートが開き、ランプが一つ消える。
スタートゲートは、ヒーロー科が並んでいる列の後ろにあり、ヒーロー科に有利な位置だ。
…まあ予選ではヒーロー科以外はほとんど落とすから、仕方ないのであろうが。
と考えていると、また一つランプが消えた。
それにしても、やけにゲートが狭いな。
おそらく、ここで後先考えずに突っ走る生徒を大量に振り落とそうって算段なのだろう。
「スターーーーーート!!」
最後のランプが消えると同時に、ミッドナイト先生が合図を出した。
普通科とサポート科の生徒達がゲートに向かって走り出したので、私は声を張り上げて叫んだ。
「整列!!!!」
私が叫ぶと、無秩序にゲート前に集まっていた普通科とサポート科の生徒達がピシッと列を成した。
「D班前へ!!その他の者は後に続け!!!」
私が指示を出すと、呼ばれた生徒が真っ先に走り出し、その他の生徒は呼ばれた生徒がスムーズに走れるように道を作った。
そのおかげで、普通科とサポート科がゲートに殺到して鮨詰めになる…なんて事にはならず、全員がスタートゲートを滞りなく進んでいく。
だがそうはさせまいと、A組の紅白髪の男子…轟君が氷結で妨害してくる。
「さみいいい!!」
「何だこりゃ、動けねえ!!」
「待って今溶かす!」
凍らされた生徒達は、突然の氷結に動揺して一瞬足を止めはしたが、自分達の“個性”やサポートアイテムで氷を溶かしたり砕いたりして前に進んだ。
氷結に耐性のある生徒が盾となってくれているおかげで、私達は妨害を受けずにスムーズに最初の篩を突破できた。
私達に妨害が効かないと分かると、轟君は妨害を諦めて先に進んだ。
うむ、賢い判断だな。
『おいおいおいおい!!どーなってんだこりゃあ!!?初っ端から大量に振るい落とされるはずのゲートを、普通科・サポート科が誰一人振るい落とされる事なく前進!!A組轟の妨害にもノーダメージ!!』
『妨害されるのを読んで、氷結に耐性のある奴等を前に配置したか。合理的な判断だ。おそらく、C組六徳の差し金だろう』
『ちなみに実況はこの俺、プレゼント・マイク。解説アーユーレディ!?ミイラマン!!』
『無理矢理呼んだんだろうが』
プレゼント・マイク先生の実況と相澤先生の解説に、私は内心ほくそ笑む。
この二週間、私はヒーロー科の生徒の“個性”をリサーチし、あらゆる事態に対処できるように策を講じてきた。
皆に参加してもらったキャンプでは、ヒーロー科に対抗する為の隊列の組み方を教え、大半の生徒が振り落とされるであろう第一種目への対策として、生徒一人一人を得意分野ごとに振り分けた班を作った。
今回は、拘束系の“個性”持ちに妨害されるのを予測して、拘束を破れる“個性”やサポートアイテムを持つ生徒で固めたD班を前に配置したのだ。
だがそれでも、ヒーロー科との実力の差は歴然。
ヒーロー科は、私達が作った隊列を押しのけて前へと進んでいく。
あっ、ヒーロー科の生徒が撥ねられた。
確か…A組の峰田君だったか。
撥ねられた峰田君がいた場所には、全長2mほどのロボットが立っていた。
そこに追い討ちをかけるようにコース上に地響きが鳴り、目の前に巨大な影が立ちはだかる。
前を見ると、大量のロボットが犇いていた。
これがヒーロー科の入試用の仮想
……いや、多いな。
600…いや、700くらいいる仮想
多すぎてゲシュタルト崩壊しそうだよ。
『さあいきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ!!』
マイク先生のノリノリの実況を聞きながら、冷静に状況を分析する。
これは…多すぎて通れないな。
下手に間を縫って進もうとするのは悪手だ。
なんて考えていると、轟君が巨大ロボを凍らせて先に進んだ。
すると普通科の生徒達が、轟君を追おうとする。
「あいつが止めたぞ!!あの隙間だ!通れる!」
ダメだ。
不安定な体勢のまま凍っているから、今通ったら崩れる。
「止まれ!!!」
私が叫ぶと、轟君を追いかけようとした生徒達が足を止めた。
するとその直後、その生徒達の目の前でロボットが崩れた。
『1ーA!轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!すげぇな!!一抜けだ!!アレだな、もうなんか…ズリィな!!』
「うっ……」
幸い誰も倒壊には巻き込まれなかったものの、轟君が凍らせたロボットの残骸に道を阻まれて先へ進めなくなってしまった。
おまけに、目の前でロボットが崩れるのを見た生徒達は、怖気づいて萎縮してしまっている。
ここはひとつ、私が音頭をとってやるか。
私は、パルクールの要領で仮想
そして時間の流れを精密に操作する事で水飴のように固まった空中でジャンプを繰り返し、巨大ロボの頭上まで空中移動した。
余談だがこの移動方法は、昔読んだ漫画の技をパクr…参考にしてみた。
“個性”を解除して巨大ロボの頭上に降り立ち、思いっきり息を吸ってから声を張り上げて叫ぶ。
「A班・B班、砲撃用意!!!!」
私が大声で叫ぶと、サポート科の生徒が40名ほど前に出て、持ち寄った圧縮パーツを組み立て始めた。
普通科の生徒も組み立てを手伝い、一分もしないうちに戦車型のサポートアイテムが完成した。
ドイツの主力戦車、レオパート・ツヴァイから着想を得た、貫通力の高いレーザー砲や対物ライフルでも傷一つつかない複合装甲を備え、1500馬力の出力と90km/hの機動力を誇るサポート科の最高傑作だ。
それを見たヒーロー科の生徒は、ぎょっとしていた。
「せ、戦車ぁ!!?」
「なんじゃありゃあ!?」
「ウソでしょ、そんなのアリ!?」
驚いているヒーロー科を他所に、砲撃班は大砲の照準を巨大ロボに合わせる。
組み立てを手伝った普通科の生徒は、自分達の“個性”を使ってサポートアイテムにエネルギーを充填した。
サポート科は、自分で作ったサポートアイテムの使用を許可されている。
そして共闘が禁止されていないという事は、サポートアイテムの合作もアリだという事だ。
各自が部品を分担して持参してその場で組み立てを行えば臨機応変に対処できるし、組み立てのタイムロスはサポートアイテムを使っていくらでも巻き返せる。
動力源をエネルギー系の“個性”の生徒に任せてしまえば、わざわざ重たい燃料を持ち運ばずに済む。
部品のひとつひとつはサポート科の生徒達が自分達で作ったものだから、ルール上は何も問題ない。
一人一人の火力でヒーロー科に勝てないなら、数と戦術で対抗するまでだ。
「撃てぇぇぇっ!!!」
私が右手を振り下ろしながら叫ぶと、砲撃班が高火力のレーザーを撃ち出した。
サポートアイテムの主砲から撃ち出されたレーザーは、巨大ロボの装甲をいとも容易く貫通し、道を切り拓いた。
手前の巨大ロボを撃沈させたA班とB班は、戦車型のサポートアイテムで目の前の仮想
「レーザー!!?」
「マジかよサポート科!!」
「僕のネビルレーザーより目立ってる…☆」
『おいおいマジかよサポート科!!お前らいつの間にえげつねーもん作ってやがったんだ!?』
サポート科の猛攻撃に、ヒーロー科の生徒達は度肝を抜いていた。
実況席のマイク先生も然り、だ。
だが、この程度で驚いている暇はないよ。
目立つのが大好きな君らの為に、レースをもっと面白くしてやろう。
巨大ロボの上に陣取った私は、上体を反らして大きく息を吸った。
「大義は我等にあり!!!今こそ、私達を見下す傲慢なA組に目にものを見せる時だ!!同志よ進め!!同志よ叫べ!!同志よ戦えぇぇっ!!!」
「「「「「オオオオォォォォォォッ!!!!」」」」」
私が鼓舞すると、普通科とサポート科の生徒達は雄叫びを上げながら走る。
戦車班が目の前の仮想
『何だこりゃあ!?普通科六徳刹那、普通科とサポート科を従えて猪突猛進していく!!』
『爆豪の宣誓を利用して、普通科とサポート科を焚きつけたか。A組を追い込んでくれるのは、担任としてはありがたい限りだが…大衆の面前でヒーロー科首席をダシにするとは、いい度胸してんな』
『ナイス解説!!おらどーしたヒーロー科ァ!!走れ走れェ!!ボサっとしてるとゴッソリ足掬われちまうぞ!!』
相澤先生が解説すると、マイク先生がヒーロー科を煽った。
私の計画していた観衆に一泡吹かせる為の策とは、ヒーロー科、特にA組を悪役に仕立てる事で、普通科とサポート科の闘争心を煽る事だ。
A組という共通の敵を打ち破る為に力を合わせてプルスウルトラする、これが私の考えていたシナリオだ。
これでもしA組の代表がお行儀のいい宣誓をしようものなら計画が狂っていたかもしれないが、図らずも爆豪君が品性の欠片もない宣誓をしてくれたおかげで、普通科とサポート科の皆は私の予想をはるかに上回る頑張りを見せてくれた。
もちろん、A組に在籍しているのはほとんどが善良な生徒だ。そんな事は私もわかっている。
そもそも私はA組に対してこれっぽっちも敵意を抱いていない。
他の普通科やサポート科の生徒も、本気でA組を憎んでいるわけではない(本気でA組を憎んでいる生徒がいないとは言わないが)。
あくまでこれは、『打倒A組』というコンセプトで行われているパフォーマンスだ。
どうせやるのなら何かしらのコンセプトがあった方が、無いよりかは観衆へのアピールになる。
雄英が普通科やサポート科をA組の引き立て役にするのなら、こっちはA組を悪役にするまでだ。
せいぜい皆を焚きつける為の薪になってくれ。
「なんか…今年、他科の連中もレベル高くねぇ?」
「いいぞー!!正直やっちまえー!!」
私が普通科とサポート科を煽動すると、ヒーロー科無双に飽きてきたプロヒーロー達は、案の定私達に目を向けてきた。
私がこんな大袈裟なパフォーマンスをしているのには、主に理由が二つある。
ひとつは、六徳家当主として大勢の生徒を統率している姿を全国の視聴者に見せる事で、六徳家の信頼と誇りを維持する事だ。
私は全国の視聴者に興味を持ってもらえて、レースが面白くなると学校側も客側も喜ぶ。Win-Winというやつだ。
そして、もう一つの理由はというと。
「はぁーーーっ!!?なんで普通科とサポート科、こんなに動けるわけ!?」
「ねえ物間、これ予選は様子見とか悠長な事言ってる場合じゃなくない!?」
「すぐそこまで来てるノコ!」
私達が猛進すると、“個性”をセーブしつつわざと予選通過ギリギリの順位で走っていたB組が、後続の私達の接近に焦ってようやく全力で走り始めた。
これがパフォーマンスの二つ目の目的だ。
余談だが、組織全体の能力を高める上で重要な事は、いかに下位層の能力を引き上げるかだと私は思う。
中位層や上位層の人間は、危機に対処する能力が備わっているからこそその地位にいられるのであって、下位層に追い抜かれる危機感を与えてやれば私が何もせずとも勝手にギアを上げてくれる。
この体育祭の主役はあくまでヒーロー科なので、私も本気で下剋上を狙っているわけではない。
普通科やサポート科は、予選通過はできずとも完走できれば御の字だ。
だが普通科やサポート科が誰一人振るい落とされなければ、ヒーロー科もギアを上げざるを得なくなる。
これは、私達からヒーロー科への最大級の激励だ。
蹴落とされるのが嫌なら、全力で走れ。
「クソがっ…!!」
普通科とサポート科がサポートアイテムによるゴリ押しで突き進んでいる間にも、爆豪君は両手から爆破を放って急上昇し、一抜けした轟君を追いかけた。
『1ーA爆豪、下がダメなら頭上かよー!!クレバー!』
爆豪君に続けて、瀬呂君と常闇君もロボの頭上を駆け抜けた。
他のA組も、次々と私達を追い抜かして突き進んでいく。
『一足先行く連中、A組が多いなやっぱ!!』
『立ち止まる時間が短い。上の世界を肌で感じた者、恐怖を植え付けられた者、対処し凌いだ者、各々が経験を糧とし迷いを打ち消している』
マイク先生と相澤先生の言う通り、やはりA組は強い。
私達が打倒A組を掲げて組んだ隊列を追い抜かしていくが、私の期待に応えてくれたので、むしろ嬉しいくらいだ。
砲撃班が巨大ロボを撃ち抜こうとしたその時、別の方向から大砲でロボが撃ち抜かれた。
「チョロいですわ!」
振り向くと、百が創造した大砲の砲口を巨大ロボに向けていた。
大砲好きだなおい…
なんて考えつつ、普通科とサポート科を煽動しながら突き進んでいると、正面に次の障害物が見えてくる。
『オイオイ第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーール!!!』
次に待ち受けていたのは、何十本もの石柱に無数のロープが張り巡らされた、大掛かりなアスレチックだ。
これは…飛行や立体機動ができる生徒が有利だな。
まあ私はパルクールの心得があるし、最悪落ちても空中での移動手段があるから平気だが、私一人が通過できても意味がないからな。
「発目君!」
「フフフフフフ、来たよ来ましたアピールチャンス!私のサポートアイテムが脚光を浴びる時!見よ、全国のサポート会社!ザ・ワイヤーアロウ&ホバーソール!!」
私がH組の発目君を呼ぶと、発目君は自らのサポートアイテムの宣伝を始めた。
今度は、発目君のサポートアイテムの出番だ。
『協力してくれたらサポート会社にもっとアピールできる』と話したら、二つ返事で了承してくれた。
今度は、飛行や立体機動ができる“個性”の生徒や、それを補助するサポートアイテムを作った生徒が前を走り、他の生徒を先導した。
私が所有している訓練場の常連トレーナーに指導してもらった生徒達は、キャンプでバランス能力や機動力を培っており、足場の悪い第二関門も難なく進んでいく。
「見てください、この安定性と軽やかな動きを!私のホバーソールとバックパックがあれば、災害時の救助活動も楽チン!100人乗っても大丈夫!!」
発目君をはじめとしたサポート科は、アスレチックから落下した生徒や第一関門で戦車に動力を供給して消耗した生徒を素早く回収しつつ、自分のサポートアイテムの宣伝に利用している。
確かに、救助専門のヒーローやサポート会社にはいいアピールになるだろうが…本当に商魂逞しいね君達。
『実に色々な方がチャンスを掴もうと励んでますねイレイザーヘッドさん』
『何足止めてんだあのバカ共…』
『さあ先頭は難なく一抜けしてんぞ!!』
マイク先生の実況と相澤先生の解説を聞きつつ、私は普通科の生徒達の前をパルクールの動きで進んで手本を見せた。
どうやら先頭の轟君は、既に第二関門を突破したらしい。
「くそがっ!!!」
前の方から、品のない声が聴こえてくる。
見ると、爆豪君が爆破で空中移動して突き進んでいた。
「大袈裟な綱渡りね」
「おそらく兄も見ているのだ…かっこ悪い様は見せられん!!!」
『カッコ悪ィイーーーーー!!!』
A組の蛙吹君や飯田君も、難なく第二関門を突破した。
飯田君は、両腕を横に開いてTの字のポーズで爆走している。
確かに側から見れば変なポーズだが…本人は真剣なんだろうね。
第二関門も、私のアドバイスとサポート科の協力が功を奏し、誰一人振るい落とされずにクリアしていく。
誰も脱落しないどころかヒーロー科を追い上げる勢いで突き進む私達を見て、特にB組はさらに焦りギアを上げてきた。
いいぞ、その調子だ。
普通科とサポート科に足を掬われて脱落者大量…なんてみっともないザマは見せてくれるなよ。
「進めぇぇぇ!!!諸君には勇気がある!!諸君の力を思い知らせてやれ!!!」
私は、声を張り上げて鼓舞し、皆の恐怖心を打ち消した。
私が叫ぶと、高さのあるアスレチックに怖気付いて足を止めていた生徒も、勇気を出して前進した。
『C組六徳、煽る煽る!!凄まじい勢いでヒーロー科を追い上げていく!!これ、ワンチャン下剋上あるんじゃねえの!?』
『あいつ、売名の為ならマジでなんでもやるな…』
『コエー!!A組への殺意剥き出しだァーーー!!』
マイク先生は、人聞きの悪い事を言ってきた。
殺意って…心外だな。
私は、ヒーロー科にプルスウルトラしてほしいからこそ、こうして煽っているというのに。
「殺意?失礼だな、純愛だよ」
『愛ほど歪んだ呪いはねェーーーーーー!!!』
私が某特級呪術師を意識して呟くと、私の誰に向けたわけでもない独り言を拾ったマイク先生が、同じ人物を意識したであろうツッコミを入れた。
マイク先生は、私の煽動に便乗し、さらにヒーロー科の尻を叩く形で煽った。
おかげで会場は大盛り上がりだ。
そんなこんなで第二関門を大きなトラブルもなく突破し、最後の関門に向かって突き進む。
『先頭集団が抜けて下は団子状態!!上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずに突き進め!!そして早くも最終関門!!かくしてその実態は────…一面地雷源!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!ちなみに地雷の威力は大した事ねぇが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!』
『人によるだろ』
マイク先生が言うと、相澤先生が呆れ気味にツッコミを入れる。
地雷か…
私は爆発する前に駆け抜けられるが、訓練を受けていない普通科やサポート科の生徒は厳しいだろうな。
なんか前の方で爆豪君と轟君が足の引っ張り合いをして、観衆がそっちの方に気をとられているが、生憎私は先頭に興味がない。
醜い足の引っ張り合いがしたいなら、勝手にやっていてくれ。
「A班・B班前へ!!地雷を轢き潰せば、あとはただの平地だ!!強行突破するぞ!!」
私が指示を出すと、第一関門で戦車型サポートアイテムを組み立てたA班とB班が、一度分解したサポートアイテムを再び組み立て始めた。
今回は馬力と機動力に物言わせ地雷原を突き進むだけだから、第一関門のように普通科の生徒を動力源にする必要はない。
戦車班が前を行き地雷を轢き潰せば、あとは楽チンな散歩コースに早変わりだ。
ちょうどサポート科がサポートアイテムを組み立て終わった、その時だった。
『後方で大爆発!!?何だあの威力!?A組緑谷、爆風で猛追ーーーー!!!?つーか!!!抜いたあああああー!!!』
前方で大爆発が起こり、A組の生徒が高く舞い上がるのが見えた。
どうやら、A組の緑谷君が先頭二人を追い抜いたらしい。
これは…終わりが近いな。
私達も、うかうかしてられん。
「ゴールはすぐそこだ!!突き進め!!立ち止まるな!!!」
私は、先頭集団をフル無視して、普通科とサポート科を煽動した。
私が皆を導いている間に、再び前方で爆発が起こった。
『緑谷、間髪入れず後続妨害!!何と地雷原即クリア!!イレイザーヘッド、お前のクラスすげえな!! どういう教育してんだ!』
『俺は何もしてねえよ、奴等が勝手に火ィ付け合ってんだろう』
『さァさァ今一番にスタジアムへ還ってきたのは、この男!!緑谷出久だァアアアアア!!!』
うむ、たった今一着がゴールしたか。
緑谷君に続けて、ヒーロー科の生徒が次々とゴールしていく。
私達も、彼等を追いかける形でゴールへと突き進んだ。
私の後ろにも何人かヒーロー科の生徒がいるが…まあ、例年ヒーロー科はほぼ全員が予選通過してるから、落ちる事はないだろう。
私はヒーロー科を蹴落とすつもりはないので、逆に落ちられたら困る。
『さあ続々とゴールインだ!順位等は後程まとめるからとりあえずお疲れ!!』
私がゴールしてしばらくして、普通科とサポート科が一気にゴールした。
素晴らしい事に、今年は全員がコースを完走した。
人数の関係で予選は通過できないだろうが、全員が全力を出し切って最後まで走れたので、私としては大満足だ。
だが皆を引き立て役にしたという意味では私も、A組贔屓をする雄英やマスコミと同じ穴の狢だ。
「すまないね皆。あんな形で利用して」
私は改めて、自分の売名の為に皆を利用した事を謝罪した。
散々踊らされた挙句予選落ちしたのだから、納得いかない者もいる事だろう。
だが皆の反応は、私の予想とは違った。
「何言ってんのさ、委員長!ウチらが完走できたのは委員長のおかげだよ!」
「俺、途中でリタイアしそうになったけど、六徳さんが鼓舞してくれたおかげでまだやれるって思えたんだ」
「わかる、なんか自分に自信がついたよね」
「何だかんだ楽しかったしなー」
「一瞬だったけど、ヒーロー達に見てもらえたし!」
「どうだ見たか!俺らだってやりゃあできるんだー!!」
皆は私を責めるどころか、むしろ感謝してきた。
予選を完走した事で自信をつけた者、パフォーマンスを純粋に楽しんだ者、やり切った自分を観衆にアピールする者、皆反応はそれぞれだったが、私に利用された事を咎める者は誰一人としていなかった。
うむ、皆体育祭が始まる前よりいい表情をしているな。
二週間サポートし続けた甲斐があったというものだ。
そう思っていると、御法君をはじめとする見学組が私達のもとへやって来た。
「皆おつかれ〜」
「コーラとフルーツ飴あんねんけど、食うか?経営科から貰うてん」
「「「食うー!」」」
見学組は、飲み物や食べ物を私達に配ってくれた。
どうやら見学組は、第一種目の間に経営科の手伝いをしていたらしく、売り子を手伝ったお礼に飲み物と食べ物を貰ったそうな。
見学組からのお恵みに、特にサポートアイテムに動力を供給していた生徒達は喜んでいた。
『いやあしかし、全員大した怪我もなく、よく頑張った!今年は全員レベル高かったよな、イレイザー』
『誰も途中リタイアせずに全員が完走したというのは、雄英史上初の快挙だ。ただし、これを見てる奴等に言っておくぞ。普通科やサポート科がここまでやれたのは、六徳の全面的なサポートがあってこそ。ヒーロー達が活躍できるのは、それを支える優秀なパトロンがいるからだという事を忘れるな』
『打倒A組とか言ってたが、何だかんだで激励してくれてたしな!何つーか…六徳家当主様様ってか?』
『そうだな。ああいう奴が率先して周囲を統率してくれるのは大歓迎だ』
私達が談笑していると、マイク先生と相澤先生が私のフォローをしてくれた。
二人の言葉に、思わず笑みがこぼれる。
先生方はきちんと私達の活躍を正しく評価してくれているようで何よりだ。
「実況に解説、喋りすぎ!さあさあ、順位が出揃ったわよ!」
ミッドナイト先生が、プロジェクターで空中に順位を表示した。
私の順位は…39位か。
予選通過ギリギリだな。
まあでも普通科・サポート科の完走という最大の目標は達成できたのだから、不満はない。
ヒーロー志望でない私が前に出過ぎるのも考え物だし、妥当な順位ではある。
こうして見てみると、上位はほとんどA組だな。
B組にも優秀な者はいるはずなんだが…私達普通科・サポート科連合の激励を受けてから本気を出すようでは遅かったという事だろう。
上の方に目を向けると、心操君と療子の名前もあった。
心操君は16位、療子は23位。
B組のスタートダッシュが遅かったとはいえ、ヒーロー科の中位層に食い込むとは、やるじゃないか。
「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場はは用意されているわ!!」
42名…?
普通科とサポート科からは私、心操君、療子、発目君の4人が進出している。
という事は、ヒーロー科から二人落ちたのか。
これに関しては、ごめんというか、ドンマイとしか言いようがない。
パフォーマンスとして打倒A組を掲げはしたが、まさか本当に蹴落とす事になるとは思わなかったよ…
だが落ちた二人には、この悔しさを糧に一回りも二回りも成長してほしいものだ。
「そしていよいよ本選よ!!ここからは取材陣も白熱してくるよ!気張りなさい!!!さーて、第二種目よ!!私はもう知ってるけど〜〜〜…何かしら!!?言ってる側からコレよ!!!!」
ミッドナイト先生がプロジェクターを指差すと、そこには『騎馬戦』と表示されていた。
「参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが… 先程の結果に従い各自にポイントが振り当てられる事!」
ミッドナイト先生がルールを説明すると、主にA組が説明中に話し始めたので、ミッドナイト先生が「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!!!」と怒鳴りながら鞭を打った。
騎馬の組み方でポイントが違ってくる…という事は、自分の持ち点が低くても、高い奴と組めば騎馬全体の得点は高くなる。
ポイントのばらけ方によって取れる戦術が変わってくるのが、この競技の面白いところだ。
「与えられるポイントは下から5ずつ!42位が5ポイント、41位が10ポイント…といった具合よ。そして…1位に与えられるポイントは、1000万!!!!」
………ほう、1000万か。
これは…
「上位の奴ほど狙われちゃう…下克上サバイバルよ!!!」
ほぼ全員が、獲物を追う時の肉食獣の目を、1位の緑谷君に向ける。
…緑谷君、骨は拾っておくよ(死んでない)。
なお障害物競走の順位は、以下の通りです。
1位 緑谷出久(A組)
2位 轟焦凍(A組)
3位 爆豪勝己(A組)
4位 塩崎茨(B組)
5位 骨抜柔造(B組)
6位 飯田天哉(A組)
7位 常闇踏陰(A組)
8位 瀬呂範太(A組)
9位 切島鋭児郎(A組)
10位 鉄哲徹鐵(B組)
11位 尾白猿夫(A組)
12位 泡瀬洋雪(B組)
13位 蛙吹梅雨(A組)
14位 障子目蔵(A組)
15位 砂藤力道(A組)
16位 心操人使(普通科)
17位 麗日お茶子(A組)
18位 八百万百(A組)
19位 峰田実(A組)
20位 芦戸三奈(A組)
21位 口田甲司(A組)
22位 耳郎響香(A組)
23位 癒治療子(普通科)
24位 回原旋(B組)
25位 円場硬成(B組)
26位 上鳴電気(A組)
27位 凡戸固次郎(B組)
28位 柳レイ子(B組)
29位 拳藤一佳(B組)
30位 宍田獣郎太(B組)
31位 黒色支配(B組)
32位 小大唯(B組)
33位 鱗飛竜(B組)
34位 庄田二連撃(B組)
35位 小森希乃子(B組)
36位 鎌切尖(B組)
37位 物間寧人(B組)
38位 角取ポニー(B組)
39位 六徳刹那(普通科)←ココ
40位 取蔭切奈(B組)
41位 発目明(サポート科)
42位 吹出漫我(B組)
オリ主ちゃんが『煽動』の“個性”持ちの政治家のおっさんの上位互換な件。
普通科のオリ主ちゃんと癒治ちゃんが予選通過した代わりに、ヒーロー科からは葉隠ちゃんと青山くんが予選落ちしました。
つよつよオリ主と自己回復能力持ちには勝てなかった。
A組の期末前の修行パートいります?
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書け
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いらん、本編進めろ
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んなもんより他の番外編書け
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好きにしな