ソードアート・オンライン~LuLuの物語~ 作:ウンニーニョ
浮遊城49層(最前線50層)
ルルはベンチに座ってアイテムの整理をしていた。
そこに一人のプレイヤーが近づいてくる。
顔にねずみの髭のペイントのあるフードのプレイヤー。
情報屋《鼠のアルゴ》である。
「おー、ルルっち、いい情報もって来タゼ」
「アルゴか。どんな情報だ? レアアイテムの情報なら買うぜ」
ルルは画面をとじて笑いながらアルゴを見る。
「レアアイテムカ? 今話題なのはクリスマスイベの情報ダナ」
「クリスマスイベ?」
「そうダ。クリスマスにイベントボス《背教者ニコラス》が現れテ、あるアイテムをドロップするンダ。おっと、こっからは有料ダ」
「いくらだよ?」
アルゴの「2万ダナ」の言葉にルルは頷く。
「《背教者ニコラス》からドロップするのはこのSAOではあり得ないアイテム、《死者蘇生アイテム》ダ」
その言葉にルルは目お見開き、アルゴに詰め寄る。
「そいつはどこにいる?どこだ‼︎」
殺気立つルルをアルゴは「落ち着ケ、ルルっち。」となだめるが、ルルは止まらない。
ルルは思い出していたのだ。
かつて自分か属したギルドのことを。
そこにいた少女のことを。
聞き取れなかった最後の言葉を。
「コレ以上はまだわかってないンダ。クリスマス・イヴに現れるってことしカ」
それを聞いたルルは立ち上がると歩いていく「新しい情報が入ったら最優先で頼む」と言い残して。
☆★☆★
あれから一週間、12月24日。
あの後、ルルは情報を求め駆けずり回った。
アルゴからの追加情報はどこかのモミの木の下に《背教者ニコラス》は現れると言う。
ルルは辺りをつけていた。
35層迷いの森のワンフロア。
地図を見て進むと絶対に通らない場所に一本、大きなモミの木がある。
そこではないかと。
周りでは41層にあるモミの木の林に現れるのではないか? 1層のはずれにある一本のモミの木では? と言われているがルルは違うと読んでいた。
「ルルっち。いい情報があったら買うヨ? なんかないカ?」
「ないね」ルルはそう言いながら手をひらひらと振り町を出て行った。
☆★☆★
ここは《風林火山》のギルドホーム。
「ルルのやつがよ、最近異常なまでにレべリングしてるのを見たんだけどやっぱあれだよな?」
「ああ。クリスマスイベだろう? この前それとなく聞いてみたけど無視された」
「あいつはギルドを全滅させちまってるからなぁ」
「あぁ、たぶん縋りたいんだろう。わずかな希望に……」
「助けてやんねえとな。」
クラインとキリト、《風林火山》のメンバーは頷き、ホームを後にする。
☆★☆★
[血盟騎士団は26層にあるフィールドダンジョンの山の上にあるモミの木に決まったわ。ルルに会ったらフォローするね]
アスナからのメッセージにリズは願うことしかできない自分を攻めながら、それでも願い、待ち続ける。
「この1週間連絡もしないで、帰ってきたらとっちめてやるんだから」
強がりながら、顔の前で組んだ掌にぎゅっと力を込めた。
☆★☆★
23時30分、迷いの森。
積もった雪をザクザクと踏みしめながらルルは歩いていた。
「後30分か…ん?」
後ろから《風林火山》とキリトが現れる。
「つけてきたのか?」そう言い、進もうとするルルにクラインは呼びかける。
「待て、ルル! 俺達も手伝うさ、イベントボスがどれだけの強さかわからない以上、メンバーは多いほうがいいだろ?」
クラインの呼びかけにルルは曇った目をむけ、必要無いと返事を返す。
「それじゃ意味ないんだよ。これは俺の罪なんだから……邪魔をするなら……」
そう言ってルルは刀に手をかける。
そこにもう一組《青竜連合》が現れる。
ククク、そうルルは笑うと「お前らもつけられてたんじゃないか」そう話すと《青竜連合》の一人が喋りだす。
「ニコラスは俺達が倒す。通さないなら……仕方ないよな?」
そういうと全員が武器を構える。
「くそ、ルルおまえは行け!」
そう言うクラインには剣が迫っている。
キリトはコレを弾き、ソードスキルを発動する
《バーチカル》
システムによって加速された剣は聖竜連合の一人の剣を弾き飛ばす。
「クライン余所見するな! ルル、行って来い。その代わり、生きて帰って来いよ」
キリトのその言葉を背にルルは次のフロアへと消えていった。
「さて、これで通すわけには行かなくなったんだが、お互いオレンジになるのは嫌だろう? デュエルで勝負をつけないか? 初撃決着で、どうだ?」
この提案に聖竜連合の隊長はコクンと頷く。
全員総当りのデュエル。1人ずつ戦い勝ち進み最後に残っていたほうが勝ち。
《聖竜連合》vs《風林火山》+キリトの戦いが始まった。
☆★☆★
ルルは1人モミの木の前にやってくる。時刻は23時59分
……00時00分
シャンシャンシャンと鈴の音が聞こえてくる。
空にソリに乗ったサンタ《背教者ニコラス》があらわれた。
ニコラスはそりから飛び降りるとモミの木の下に着地する。
そして《背教者ニコラス》戦がはじまる。
ルルは刀を抜くと雄たけびを上げ切りかかる。
しかしニコラスは右腕でガードすると左手でルルを殴り飛ばす。
ルルは木にぶつかり咳き込み、HPは2割も減少してしまう。
それでもルルは立ち向かう。
かつて自分が守れなかった人を思いだしながら。
サチ…あの時、キミは最後になんていったんだ?
「死なないって言ったのに」「嘘つき」「助けて」色々な言葉が浮かんでくる。
ニコラスの右腕をサイドステップでよけつつ、刀を振るう。
一撃入れるがHPはそれほど減っていない。
連撃を入れようとするがニコラスの左腕が横薙ぎに振るわれる。
「クソが!」
ルルはバックステップでかわすが掠ってしまい体勢を崩される。
そこに右手が振ってきた。
ルルのHPは半分を切る。
ルルは回復結晶を使いHPを回復するとまたニコラスに向かっていく。
なんとなくパターンもつかめてきた。
ニコラスとルルの攻防は続く。
ニコラスのHPがあと一本になった。
ルルは回復結晶を使いきり、ポーションも後1つである。
ここで、ニコラスが動きを変えた。持って来た袋をあさり、片手剣を取り出す。
狂った瞳がルルを移すと剣が光りだす《バーチカル・スクエア》片手剣4連撃ソードスキルである。
ルルは転がってなんとか回避する。
前に飲んだポーションによりHPは徐々に回復しているが、HPは4分の3あたり、今4連撃なんて食らえばHPはなくなるだろう。
<それもいいか?みんなのところにいけるなら。>ルルは薄ら笑いを浮かべるとノックバックの起こったニコラスに《辻風》を叩き込む。
ノックバックは初級スキルのルルのほうが解けるのが早い。
ソードスキルを使わずに2、3、4と攻撃を加えていく。
ニコラスのノックバックが解け、剣が振るわれた。
ルルはバックステップで躱し。
攻撃を続けようと前に出る。
しかしニコラスの反対の手が目の前に迫っていた。
ルルは飛ばされHPはイエローに突入する。
ルルはポーションを飲み、HPがか回復するまで避け続ける。
HPが4分の3まで回復すると反撃に出る。
ついにニコラスのHPはレッドゾーンに突入する。
そこでニコラスはまたもやソードスキルを発動する。
片手剣3連撃《ヴォーバル・ストライク》
2撃目まで避けたルルだが、避けた方向がまずかった。
ニコラスに追い詰められていたのだろうか? 最後の一撃、避けられる方向に木があり避けられないのである。
最後の一撃をもろに受け、吹っ飛ばされたルルのHPは全回だったにも関わらずレッドゾーンにまで突入してしまう。
ポーションももう切れた。
ルルはもう無理だ。黒猫団のみんなの所に行くのかと諦めて目をつぶる。
ニコラスは剣を振り上げ近づいてきている。
目をつぶったルルの目の前に1人の少女が浮かんでくる。
ピンク色の髪の少女。
笑って手を振り、自分を呼んでいる少女《リズベット》
「……なんだ、まだ死ねないじゃないか」
ルルの目が開く。
そこにはさっきまでのような暗く曇った瞳ではなく、光を宿した、いつもよりも鋭い瞳があった。
ニコラスの剣はもう振り下ろされている。
普通なら間に合わない。
しかし、ルルは諦めなかった。
バックステップやサイドステップで避けるのではない。
剣の下を潜り抜けた。刀を剣に当て、滑らすことで、ダメージを抑えた。
剣の下を潜り抜けたとき、ルルのHPは数ドット。
刀は折れてしまっていた。
「うぉぉぉぉお」
ルルは刀を放し、体術スキル《閃打》を発動する。
拳はニコラスに突き刺さるとHPを0にする。
パリィ
ガラスの割れたような音が響き渡り、ニコラスはポリゴンと化す。
そして、その中からひとつのアイテムが現れた。
《還魂の聖晶石》
(サチ……)
ルルは《還魂の聖晶石》をタップする。
《還魂の聖晶石》
[このアイテムはプレイヤーが死亡してから10秒以内に使用することで死亡したプレイヤーを生き返らせることができる。]
(ハハハ…10秒以内かよ。俺達が死んでから脳を焼くまでのラグが10秒。それまでに使えってか? これじゃ、みんなの死を証明しただけじゃないか……)
ガンッ
ルルは近くの木を殴りつけると来た道を引き返した。
☆★☆★
「ハァハァ…」
風林火山の面々は大の字になって寝転がり、キリトも肩で息をしながら立っていた。
「しっかし、最後に負けるなんてな。俺がいなかったら負けてたぞ?」
「ウルセー、こちとら連戦だったんだよ」
そんなことを言いながらもキリトとクラインは笑い会っている。
そこに、ルルが戻ってきた。
「おぅルル、蘇生アイテムは取れたのかよ?」
クラインのその言葉にルルはクラインに《還魂の聖晶石》を投げる。
クラインはそれをタップすると顔色を変える。
「おい、コレって…」
「俺たちは死んでから10秒で脳を焼かれて死ぬらしい。それまでならそのアイテムで生き返らせられる。それ以上…現実で死んだ人間は生き返らない」
ルルの言葉にその場にいる全員がなにも言えなくなる。
ルルがキリトに「回復結晶くれないか?」と結晶をもらい回復する。
じゃぁな。と手をヒラヒラと振り去っていくルルにクラインもキリトも《風林火山》のメンバーも誰も声がかけられなかった。
☆★☆★
48層
リンダースにある《リズベット武具店》
リズは机に肘を突き、祈っていた。
ルルが無事でありますようにと。
アスナからのメッセージはルルとは会わなかったと言うもの。
それだけなら問題ない《血盟騎士団》が《背教者ニコラス》と戦ったのなら。
しかし、《血盟騎士団》はニコラスとは出会わなかった。
そのことがリズを不安にさせる。
その時、ドアが開いた。
そこにはルルが立っていた。
リズはガンッと椅子を倒しながら立ち上がるとリズはルルに抱きつく。
突然のことにルルは驚くが、鼻で溜息をつくとリズの頭をなでる。
(やっぱり生きて帰ってきてよかった)
「悪い、刀が折れちまった。また作ってくれないか?」
ルルの言葉に「どんな戦い方すれば1日で耐久値が切れるのよ。」リズは泣きながらも笑顔を浮かべる
「今あるインゴットじゃ約束のは作れないから、それでも前のヤツよりはいいのを作ってあげるわ」
「あぁ、頼む」
二人は笑いあう
そこに、ルルへアイテムが届く。
差出人は…《サチ》からだ。
アイテムはメッセージを録音しておけるアイテムだった。
リズは「向こうに言ってるね。」というが、ルルは「一緒に聞いてくれないか。」と引き止める。
2人は並んで椅子に座り、メッセージが再生される。
『メリークリスマス、ルル。
君がコレを聞いている時、私はもう死んでいると思います。
えっと、何から言えばいいのかな?
私ね、ホントは始まりの町から出たくなかったの。
でも、そんな気持ちで戦っていたら、きっといつか死んでしまうよね?
それは誰のせいでもない、私本人の問題なんです。
ルルはあの夜から不安になった私に「サチは絶対死なない」って言ってくれたよね。
だから、もし私が死んだら、ルルは凄く自分を責めるでしょう。
だから、これを録音することにしました。
あとね、私、ルルがどれだけ強いか知ってるんだよ。
前にね、偶然覗いちゃったの。
ルルが本当のレベルを隠して私達と戦ってくれるのかは、一生懸命考えたんだけど、よくわかりませんでした。
でもね、私、キミがすっごく強いんだって知った時、うれしかった。すごく、安心できたの。
だから、私が死んでも、ルルはがんばって生きてね。
生きてこの世界の最後を見届けて、この世界が生まれた意味、私みたいな弱虫がここに来ちゃった意味、そして、君と私が出会った意味を見つけてください。
それが、私の願いです。
大分時間あまっちゃったね?じゃぁ折角クリスマスだし歌を歌うね。
♪~~~~~(赤鼻のトナカイ)~~~~~~♪
じゃあね、ルル。
君とあえて、一緒にいられて、本当によかった。
ありがとう。
さよなら。』
ルルの目から涙があふれ頬を伝う。
リズベットも涙を流しながら、ルルを抱きしめる。
…………サチ
…………俺は生きるよ。
…………君と出会った意味を探すために。
…………それに守りたい物があるから。
あとがき
赤鼻のトナカイ終了です。
黒猫団の話もコレで終わりですね。
次はどんな話になるでしょう?
オリキャラでも考えてみようかな?
それではまた次回。