ソードアート・オンライン~LuLuの物語~ 作:ウンニーニョ
浮遊城48層(最前線55層)
《リズベット武具店》
ピンクの髪の少女《リズベット》はカウンターに頬杖をついながら考え事をしていた。
「どーするかなー」
この前、この店を買う時、同居人の少年に約束した自分の最高傑作。《ソレ》を作るためには今あるインゴットではダメだ。
最近、最前線である55層にドラゴンが作り出すレアなインゴットが取れるクエストが発見されたらしいが、自分ではレベルが足りない上に今のところ入手できたと言う情報は聞かない。
「あーもー」
リズがそう叫んだ時、カランとドアがなり一人の客が訪れる。
リズは慌てて営業モードに切り替えると「リズベット武具店へようこそ」と迎え入れる。
するとそこには黒ずくめの少年が立っていた。
「オーダーメイド、頼めるかな?」
少年のその言葉にリズベットは、お財布大丈夫かな? と失礼なことを考え、とりあえず今インゴットの相場が上がっていることを伝える。
すると少年はリズの心配を置き去りにして話し始める
「予算は気にしなくていいから、今作れる最高の剣を作ってほしいんだ。」
リズは《ソレ》を作るために私がどんだけ悩んでるか。と思いながらも相手はお客様。
「えっと、そういわれましても。具体的に性能の目標値とか出していただかないと。」
と、どれだけの物を作ればいいかを尋ねる。
少年は「あ、なるほど」と言いながら、後ろに担いでいた剣をはずす。
「それなら、この剣と同等以上の性能ってのはどうかな?」
少年の言葉にリズは「はぁ…」と言いながら受け取ると、あまりの重さに腕が持っていかれそうになる。
リズのパラメータよりも筋力要求値が高いのだろう。
この剣、この前あいつに渡した刀より重いじゃない。
などと考えながら剣を置き、タップする。
エリュシデータ
モンスタードロップの中では魔剣クラスの化け物じゃないかと考えていると。
少年は作れそうかと心配そうに聞いてくる。
なのでリズは「これならどう?」と店においてある中で一番できのいい剣を渡してみる。
すると少年は「軽いな…ちょっと試してみてもいい?」いきなりそう言って自分の剣、エリュシデータに向けて剣を振りかぶる。
リズは「そんなことしたらあんたの剣が折れちゃうわよ?」と止めるが、少年は「その時はその時さ!」と言って振り下ろしてしまう。
案の定、エリュシデータは…とはいかなかった。
振り下ろしたリズお手製の片手直剣の方が真ん中からポッキリといってしまったのである。
「うそ…」と言ってリズは少年から剣を奪い取るが、修復不可能。
剣はポリゴンとなってリズの手から消えてしまう。
リズは少年の胸ぐらを掴み「なんてことしてくれんのよ」と叫ぶが、少年は「まさか当てたほうが折れるなんて」と挑発的なことを言ってくる。
リズは「いい素材さえあればあんたの剣なんかポキポキ折れる剣を作ってやる」と言い少年は「ぜひお願いしたいね。」と言う。
もう売り言葉に買い言葉である。
それなら、とインゴットを取りに行くところから手伝ってもらうことに決まる。
少年が足手まといになると言い出すが、リズがマスターメイスであるのと、55層のクエストにはマスタースミスがいないと発生しないことから2人での出発が決まった。
勢いでのクエストではあるが、リズは《あいつ》の分もとれるか。と出発を決めたのであった。
☆★☆★
55層、ここが氷雪地帯だと知らなかったリズは、寒さに凍えていた。
生意気な少年《キリト》は「これでも着ておけ」とコートを出してくれるが、さっきの一悶着の後である。
このコートで《あいつ》のローブがあったことを思い出し。「私も持ってたから大丈夫よ」とコートを返し、ローブを着こむ。
歩いていくキリトの後ろを見ながらこんなヤツと二人で出かけることになるなんて妙なことになったな。
などとリズは考えながらキリトの後を追うのだった。
しばらく進むと水晶地帯。
リズは水晶に目を奪われる。
とくに、真ん中にある黒い水晶なんか特に目を引く物がある。
リズは走り出そうとするが、キリトに首を掴んで止められ、「ここからは俺一人でやる。リズは水晶の影に隠れていろ。」と言われる。
その時、リズは《あいつ》に初めてあったときのことを思い出していた。
あいつも岩陰に隠れろって言ってたっけ。
など考えながら、コクンとうなずくと、リズは水晶の影に隠れる。
その時、水晶の中から竜が飛び出し、キリトに向かってブレスを吐く。
リズは「危ない!」そう叫ぶが、キリトは《エリュシデータ》を構えるとその剣でブレスを弾く。
リズは「すごい、あんな細い剣で」と思いながら思い出していた。
ニヤリと笑いながら《曲刀》で竜の爪を流し、躱す《あいつ》の姿を。
そう考えている間にも竜はキリトにHPを削られていく。
HPも残りわずか、しかし、リズここで油断してしまう。
「はやく、倒しちゃいなさいよ。」そう言って、顔を出してしまった。
竜はリズに狙いを定めると羽を使いストームを起こす。
リズは逃げようとするが、風につかまり体が舞い上げられる。
助けに来たキリトも風につかまり、共に舞い上がっていた。
こんな時にもリズは思い出す。
あぁ、あの時もこんな風に空に投げ出されたっけ。
たしかあの時は《あいつ》が私を抱えて逃げ出したんだった。
お姫様抱っこなんてされたのは生まれて初めてだったな。
などと考えて顔がほころぶ。
「リズッ」とキリトが叫ぶ声で現実に引き戻される。
キリトは手を伸ばしてきている。
そう、只今トラップの穴に落ちているのだ。
絶叫びながらリズは落ちていく。
途中でキリトに抱えられ、守られていることに気づかずに。
☆★☆★
目を開けると、雪の上だった。
「生きてたな。」下からキリトの声が聞こえてくる。
リズはここで初めてキリトに助けられたことに気づいた。
「ありがとう。」リズが慌ててお礼を言うが、キリトは「礼を言うのはまだ早いぞ、どうやって抜け出した物か」などと言っている。
リズは「転移結晶を使えばいいじゃない」そう言って結晶を取り出し、「転移、リンダース」そう叫ぶが転移は行われない。
結晶無効化空間…落ち込むリズにキリトが「考えがある。」と声をかけてくる。
希望を与えられ、リズの顔が明るくなるが、次に出た「壁を橋って登る」という言葉に目を細めてしまう。
言ってる間にキリトは上りだし、そして、落ちた。
バカ? そんなことを思っていると竜が帰ってきた。
キリトとリズは見つからないように隠れようと端に移動しようと駆け出す。
しかしリズはなにかにつまずいてこけてしまった。
「なによこんなとき。」
そう言って足元を見ると水晶のような物が転がっている。
もしかして?
リズは水晶を拾い上げるとタップする《クリスタライト・インゴット》
リズは目を見開いた。
探していたインゴットがあったのである。
「大丈夫か?」と近づいてくるキリトに、「この雪の中にインゴットがあるわ。探して!」とリズは叫ぶ。
リズとキリトはドラゴンが降りてくる前にできるだけ多くのインゴットを拾い集め端に隠れる。
集まったのは5つ。白い水晶が3つと黒い水晶が2つ。黒い水晶はタップすると《ダーク・クリスタライト・インゴット》と表示されていた。
しかし、なんでこんなところにあったのかしら?
リズが考えていると隣でキリトが話し出す。
「竜は水晶をかじり、体内で金属を生成する。
見つからないわけだ」
「でも何でこんなところに?」
「ここはトラップじゃなく竜の巣だった。竜が帰ってきているし、間違いないだろう。つまりそのインゴットは《竜のんこ》だ。」
その言葉にリズはあからさま嫌な顔をし、手に臭いが付いていないか確かめる。
しかしちゃんとしたレアインゴットなのだ。
臭うということはない。
ふぅ。と安心していると隣からキリトが話しかけてくる。
「それじゃ、脱出するぞ!」
キリトはそう言うとリズの体を担ぎ、走り出す。
壁をそのまま登ると竜の上に飛び乗り、落ちないように竜に剣をブッ刺したのである。
竜は驚き空へと舞い上がる。
穴を出たところで剣を抜き。キリトとリズは穴からの脱出に成功する。
リズは笑っていた。竜から逃げる時、私はいつも持ち運ばれる。《あいつ》に出会った時のことを思い出すと自然と笑みが浮かぶ。
あぁ、やっぱり私はあいつのことが好きなんだな。
リズがそんなことを考えていると「何とか脱出できたな」とキリトが話しかけてくる。
「そうね」と返しながらリズは口に出ていなかったか? と急に恥ずかしくなり、先に歩き出す。
「早く行くわよ」と手をヒラヒラと振り、顔を向けずに歩く姿が誰かに似ている。とキリトが疑問に思ったかどうかはわからない。
☆★☆★
ここは《リズベット武具店》
2人は帰ってきた後、早速キリトの剣を作り始める。
「あんた、真っ黒だし、少しは違う色を入れたほうがいいわよね」
リズはそういって《クリスタライト・インゴット》を取り出す。
ソレを炉に放り込むと、右手を振り、スキルを確認する。
あれ? とリズは自分の知らないスキルがセットされていることに気づく。
《魔工士》
しかしリズは、今はいいか。とそのままにし、キリトの剣を作るために製作武器の項目を出し、スクロールする。
すると一番下にまた、自分の知らない武器の名前がある。
《手甲魔爪》
何なんだろう? 首をかしげながらも片手直剣をタップし《クリスタライト・インゴット》を炉から取り出す。
「じゃぁ、作るわよ?」
リズがそう言うとキリトがうなずく。
リズは今日の出来事を思い出しながら剣を打つ。
初めはむかつくヤツだった。
キリトも優しいやつだった。
《あいつ》に行動が少し似ていた。
キリトのおかげで《あいつ》のことが好きだと再認識できた。
何十回か叩いた時、《クリスタライト・インゴット》は徐々に形をかえていき、青白い剣が生まれた。
「名前は《ダークリパルサー》私が初耳ってことは情報屋の名鑑にはまだ載ってない剣のはずよ。試してみて?」
キリトは《ダークリパリサー》を手に取ると振りはじめる。
「重いな、いい剣だ。魂がこもっている気がするよ」
キリトの言葉にリズは微笑み、うん。とうなずく。
そこでリズは思いついた疑問をぶつける
「ところでさ、なんで同じ位の武器が必要なの?」
リズの疑問に頬を掻くとキリトは右手を振り装備を変更する。
背中に《エリュシデータ》のほかにもう一本、《ダークリパルサー》が現れ、二本を同時に振るう。
それを見たリズが目を見開く。
「《二刀流》ってスキルなんだけど、オフレコで頼む。」
そう言ってキリトは装備を元に戻す。
オフレコで頼むか。
やっぱり《あいつ》に似てるな。
そんなことをリズが考えているとカランとドアが開いた。
「リズッ!」
栗色の少女が走りこんできた。《アスナ》である。
アスナはそのままリズを抱きしめる
「リズ、どこ行ってたのよ。店に来ても居ないし、マップ追跡もできないし、メッセージも帰ってこないし、心配したんだから」
「ア、アスナ? ごめん、ちょっとダンジョンにインゴットを取りに行ってて」
「ダンジョン? リズが1人で? いつもは《あの人》に任せてるのに?」
「まぁ、《あいつ》に頼めない事情があって……それに、一人じゃなくて、この人と」
アスナの質問にリズはそう言ってキリトを差す。
アスナは振り向くとキリトを見て目を見開いた。
「キ、キリト君!」
「おう、久しぶり? でもないか。2日ぶり?」
「そっか。早速来たんだ。行ってくれれば私も一緒したのに」
楽しそうに話す2人にリズはあっけにとられ「し、知り合いなの?」とたずねる。
するとキリトが「攻略組なんだ、2人とも」と言い、隣でアスナの目が和らぐ。
それを見てリズは思い出した。
ある日、リズはアスナの剣を研いでいた時の事、研ぎ終わった剣をアスナに渡し世間話を持ちかける。
「まーいど。今日はギルドの攻略に参加しないの?」
「んー、今日はオフにしてもらったの。ちょっと人と会う約束があって」
リズの言葉にアスナは微笑みながら答える。
「ふーん。」と言いながらアスナを見ると耳にピアスを付け、オシャレをしている。
「あー。そう言うことね」と言いながらニヤつき、アスナを肘でコノコノ、とつついているとゴーンと鐘が鳴り、「あぁ、そろそろ行かないと」そう言って、アスナは行ってしまった。
ドアが閉まった後、リズは笑顔で思った。
アスナ<も>見つけたんだね。大切な人を。
そう思ったことを思い出している中、話は進んでいる。
「強力な武器が欲しかったみたいだから、リズのお店を紹介したの。私の友達に変なことしなかったでしょうね? ダメだよ。リズにはもう《いい人》がいるんだから」
「す、するわけないだろ」
「口ごもるところが怪しい」
などと話が進んでいく。
いまさらながら《いい人》の部分に気づいたリズは顔を赤く染め「なによ《いい人》って」と反論し、照れ隠しに話題を変える。
「へ、変なこともなにも、私の店一番の剣をいきなりへし折ってくれたわよ。キリトは」
苦笑しながら爆弾を投下する。
「え、ごめん。」アスナが謝るが「アスナが謝ることないよ」そう言うと、リズはアスナに近づき、耳打ちする。
「ま、変だけど悪い人じゃないわね。応援するからさ、がんばりなよ。アスナ!」
「だ、だからそんなんじゃないって」
今度はアスナが顔を赤くし、反論してくる。
キリトは置いてけぼりを食らって目が点になっている。
そんな時また、カランとドアが開き、少年が入ってくる。
《あいつ》だ
少年が入ってきたことにキリトは驚き「ルルもこの店を利用してたのか」と少年に話しかける。
そこでアスナはニヤニヤと笑い。仕返しとばかりに口を挟む。
「利用もなにもルルはここに住んでるんだよ。リズの《いい人》だもんね」
爆弾を投下する。
リズは顔を真っ赤に染め、なにもいえなくなる。
ルルは苦笑しながら
「なに言ってんだよ。まぁここに住んでるのは本当だけどな」
と軽く流す。
アスナは「はぁ、鈍感」と溜息をつき、リズは思考停止。
キリトは驚き質問し、ルルは流し、答え、躱していった。
☆★☆★
キリトとアスナが帰った後、ルルとリズが話していた。
「リズ、《魔工士》ってエクストラスキル持ってないか?」
「それならさっき見たわよ。あれ、エクストラスキルだったんだ」
「そうだ。《手甲魔爪》を作るためのスキルさ」
「そうよ!《手甲魔爪》よ! 何なのアレ? 聞いたことのない武器だけど?」
「エクストラスキルだ。俺の《左手》を取り戻すための」
左手を取り戻すその言葉にリズは目を見開く。
「作ってくれるか?」そう話しかけるルルにリズは真剣な表情でうなずく。
やっぱルルには黒かな。
そう思いリズは炉に《ダーク・クリスタライト・インゴット》を2つ放り込む。
右手を振って《手甲魔爪》を選ぶと炉から《ダーク・クリスタライト・インゴット》を1つ取り出し、思いをこめて打ち始める。
今日再確認した自分の気持ちを込めて。
あの時聞いた《サチ》の思いを成し遂げられるようにと。
何十回か叩いた後、インゴットは形を変え漆黒の腕へと形を変える。
リズはタップし名前を確認する。
「《黒竜王の魔爪》だって。ぅわ、今まで見た中でパラメータもダントツね」
リズの言葉にルルは右手を振り《黒竜王の魔爪》を装備し左手を開いたり握ったりする。
リズはそれを見て涙を流し、ルルは「泣くなよ。」と頭をなでる。
そこでルルは気づく。
「そういえば、もう一個は炉に入れたまでいいのか?」
「あ……」
リズは慌ててもう一個の《ダーク・クリスタライト・インゴット》を取り出す。
しかし慌てたせいか、転がった《ダーク・クリスタライト・インゴット》はバケツに入ってしまう。
すると熱せられた金属が急激に冷やされたからだろうか? 水は蒸発し、バケツは吹き飛ぶ。
そこには《ダーク・クリスタライト・インゴット》だけが残った。
タップすると鉄くずやゴミになっていると言うこともなく。
《ダーク・クリスタライト・インゴット》がそこにあった。
しかし、冷めているにもかかわらず、黒い水晶の先の部分だけが赤く変色している。
リズは使っても大丈夫よね? と思いながらそれを炉に入れ、右手を振り、製作武器を刀に設定する。
リズは真剣な雰囲気になると《ダーク・クリスタライト・インゴット》を打ち始める。
何十回打っても形は変わらない、しかしリズは真剣に打ち続ける。
何百回か打っただろうか?
ようやく《ダーク・クリスタライト・インゴット》は形を変え、漆黒の刀、しかし刀の刀身に刃先に行くにつれて赤いグラデーションのかかった刀が出来上がった。
タップすると《霊刀・禍時》パラメータも異常なくらい高い。
「霊刀…まがときでいいのかな?」
「そうだろうな」そう言いながらルルは刀を持ち上げる。
「すごい刀だな。今までのどの刀よりもすごくしっくり来る」
「その刀、この前の約束の刀よ。それがあるんだから死なずに私のところまで帰ってきなさいよ」
リズはそう言うと、恥ずかしかったのかそっぽを向いてしまう。
「あぁ、必ず帰ってくるよ。リズのところに」
二人の間に沈黙が続く……
初めに耐え切れなくなったのはルルだった。
「あ、あのさ、リズ、前線で使う前に下層でスキルレベルを上げたいんだ。それで、そんなに強くない《手甲魔爪》を作ってくれないか?」
リズは小声で「意気地なし…」そう呟くと「わかったわよ」と言ってもう一本《手甲魔爪》を作るのだった。
あとがき
ということで、16話の裏で起きていたことでした。
なのでお泊りはありません。
原作絡むと長くなってしまいますね。自分の文才をもう少し伸ばせば平均的な文字数になるんでしょうか?
しかし、甘さの出し方に四苦八苦です。ちゃんと出せているのか?
そもそも甘さを理解しているのか?
コメントお待ちしています。