ソードアート・オンライン~LuLuの物語~ 作:ウンニーニョ
浮遊城17層(最前線57層)
迷宮区とは反対側の森のはずれ、クエストも何もない場所。
誰も来ない、隠れてスキルレベルを上げるには絶好の場所。
そんなところにルルはいた。
ローブを脱ぎ、左手に《手甲魔爪・鉄爪》を装備したルルは一人狼の群れと戦闘中である。
と言っても、ここは17層。敵はルルにダメージという大きなダメージを与えられないし、与えられたダメージもバトルヒーリングスキルによりすぐに回復してしまう。
ルルは狼に攻撃されるのも気にせず、向かってくる狼を左手で切り裂きながら歩く。
「ふぅ、こんなもんかな。」
モンスタードロップも枯渇し、モンスターは現れなくなった。
そこで突然カサッと音がする。
こんな場所に人が来るのも珍しい。
ルルはレッドプレイヤーの可能性を考慮し、左手で鞘を持ち、刀を構える。
余談だが、スロットには《刀》《手甲魔爪》の同時装備。左手が復活したことにより、抜刀系のソードスキルが使えるようになった。
閑話休題
そこに、2本の剣を持ったキリトが木々の間から現れた。
2人はお互いを見て固まる。
2人共自分が隠しているエクストラスキルを見られたせいだろう。
先に話し出したのはキリトだった。
「ルル、お前その左手……」
「エクストラスキル《手甲魔爪》。使い物になるまで黙っとくつもりだったんだけどな……
それよりお前もソレ、エクストラスキルだろ?」
頭を掻きながらキリトの2本の剣のことを尋ねる。
「あぁ、エクストラスキル《二刀流》。会得方法がわからないからな……あんまり注目されたくないし。でもルル、そのスキルがあればボス戦に復帰できるんだよな?」
「まぁな。でも、俺だけが目立つのも嫌だし、その時はキリトの二刀流もお披露目だからな」
2人は笑いながら帰路に付く。
☆★☆★
装備を元に戻した2人は転移門で別れ、ルルは50層にあるエギルの店に向かっていた。
「やっほー!待ってたよルル」
後ろから声をかけられたがルルは振り向きもせず「俺は用がない」と手をヒラヒラと振り、歩く。
「あーもう、こっちは用があるんだってば! この前の話、考えてくれた? 左手がなくてボス戦には出られないけどさ、うちに入ってくれればいい待遇で迎えるってボスも納得してくれたし」
ルルに並んで歩き出したのは身長140cmくらいの水色の髪で前髪が眉より上、おでこを見せたボブカットの少女。
名前は《セレスティア》
こう見えてもDDD《聖竜連合》の3番手、《流星》と呼ばれる槍使いで、KoB《血盟騎士団》の《閃光》のアスナと2人で攻略組の2大女神などと呼ばれている少女だ。
閑話休題
「しらねーよ。俺はソロでいいんだって何回も言ってるだろ?」
「そんなこと言わずにさー。話だけでもいいから聞きに来てよ」
こんな調子でここ最近付きまとわれている。
こんなことになったのも56層の迷宮区、敵に囲まれていたセレスティアを助けたのが始まりだった。
「はぁ、一回話を聞きに言ったら今後付きまとわないか?」
「付きまとわない付きまとわない。それじゃぁ行こ行こ!」
そう言ってルルはうなだれながらセレスティアと一緒に56層にあるDDDの本拠地に向かった。
☆★☆★
ここはDDDの本拠地の応接室。
入る時に門番のプレイヤーに追放者! と驚かれた物の、ここにくるまでに誰にも会わなかった。
今、ルルは1人応接室の椅子に座っている。
セレスティアは団長を呼びに行っているため待たされている形だ。
ガチャ。ドアが開き、団長《カッツェ》と副団長《リンド》それにセレスティアが入ってきた。3人はルルの対面に座るとカッツェは話し出す。
「セレスティから聞いたよ。DDDに入ってくれるかも知れないと」
「話を聞けばもう付きまとわないって言われたから来ただけで、入る気はないよ」
その言葉にリンドが机を叩いて立ち上がり、セレスティアはあちゃー、と目を覆う。
「ふざけるな! DDDに入るかも知れないって言うから来てみれば、なんだその言いぐさわ‼︎」
リンドが怒鳴る。それをカッツェはリンドを右手で制し、話し始める。
「どういう事かな、セレスティア?」
「どうしても入って欲しくて、まずは話を聞きに来てもらう所からかなぁって」
セレスティアは舌をペロッと出しおどけ、カッツェはそれを見てと溜息をこぼした。
「そう言うことらしいな。まぁ俺はレアアイテムを取るためなら他人を傷つけるDDDの方針には同意できないからな」
「確かにDDDはそう言うことを黙認している。しかし、このゲームをいち早く終わらせる為には一箇所に強力なアイテムを集めるべきだという考えの下だ。
個人がその意見に反対の場合、別に無理にプレイヤーを攻撃することはない。現に3席にあたるセレスティアは一度もオレンジになったことはない」
「そう言うのも含めて俺はしがらみが嫌いなんだ。」
カッツェは無理強いはしないというがルル拒絶の言葉を口にする。
「でもさ、見学だけならいいんじゃない? ね? みんながどんな訓練してるかとかさ?」
「そうだね。折角ここまで来てくれたんだ。見学していくといい」
セレスティアとカッツェが妥協し、その横でリンドがギリッと顔をしかめる。
ルルはソレも断ろうとするが、その前にセレスティアはルルの手を引くと応接室を出て行く。
ルルは無理に振りほどくわけにもいかず、ついていくしかなかった。
残された2人はというと_______
「団長、《追放者》なんか入れたところでなんになるんですか?」
「彼はボス戦には参加できないが、迷宮区の攻略ペースはかなりの物だ。その分レアアイテムの入手率も高いだろう」
「利用できると?」
「しかし入ってはくれないだろうな。これはセレスティアのご機嫌取りのような物だ。今、彼女にDDDを抜けてもらうわけには行かない」
リンドはセレスティアのことがあまり好きではない。カッツェの言葉に顔をしかめるのだった。
☆★☆★
ルルとセレスティアは訓練場にきていた。
DDDは攻略ノルマのほかにも自由にデュエルにて訓練を行っている。
ルルを見た一人のプレイヤーが話しかけてきた。
「何でこんなところにお前がいる!」
そういって怒鳴り込んできたのはあの時、ルルに怒りをぶつけるしかなかったプレイヤー。名前を《レイダー》と言う。
レイダーはルルがボス戦を追放されたことで自分の怒りが正当な物だと勘違いし、その怒りを強めていた。
そうとは知らないセレスティアは「見学だよ。DDDに入るかも知れないしさ」などと言う。ルルはソレを否定するが、レイダーは気に入らなかったらしい。
「《追放者》がDDDに入ろうだなんておこがましいんだよ!」
レイダーはそう睨みつけるがルルは入る気はまったくない。手をヒラヒラと振り「だから入らねーよ」と突き放す。
その行動にレイダーはバカにされたと思ったのだろう。
「デュ、デュエルだ! ボス戦から離れたお前なんかより俺のほうが強いってことを証明してやる‼︎」
もはや論点があさっての方向に行っている。レイダーは頭に相当血が上っているのだろう。
そして、なぜか今ルルはレイダーと向かい合っている。
周りにDDDのメンバーが野次馬にあつまり、断れなくなったのだ。
セレスティアは申し訳なさそうにみている。
「はぁ、なんでこんなことになってるんだろ……」
ルルは刀で肩をトントンと叩きながら空を見ている。
「そんなことで勝てるとでも思っているのか?」
レイダーはすごい形相で両手斧を構えている。
2人の中間の空にデュエルスタートの文字が浮かんだ。
デュエル形式は初撃決着モード。
先に一撃相手に入れたほうが勝ちである。(掠るなどの微妙なダメージの場合はHPが半分を下回ると勝敗が決まる)
レイダーはルルに向かってダッシュすると上段に構えた斧を振り下ろす。
両手斧ソードスキル《グランド・ディストラクト》
斧は赤い光を纏い、振り下ろされる。
斧はルルの頭に向かって振り下ろされるが、ルルは刀でトントンと肩を叩いたまま体を回転させながら流れるように横に躱すとそのままレイダーの横まで歩き、首に刀を添える。
「……ま、参った」
レイダーは絞り出すような声で言った。
信じれなかったのだろう。
レイダー自身DDDの中でもかなりの強さ。それは自他共に認める所である。
ソードスキルを発動させた時には勝利を確認し、口がにやけたくらいだ。
周りで騒いでいた野次馬達もシンと静まり返った。それだけルルの強さが圧倒的だったのだろう。
レイダーがリザインし、ルルの前にYOU WINの文字が浮かぶ。
「それじゃ、俺は帰るから。」
あっけに取られていたセレスティアに声をかけるとルルは帰路に着こうとする。
セレスティアは慌ててルルを追いかける。
2人の背中をレイダーが睨んでいたが、2人が気づくことはなかった。
DDD本拠地の石橋の前、セレスティアは「ごめんね。なんかへんな事になっちゃって。」とさっきのことを謝罪する。
いつものように天真爛漫なセレスティアと違うことに調子が狂ったのだろう。ルルは「まぁ、気にするな」と頭をなでる。
そのまま去ろうとするルルにセレスティアはもうDDDに勧誘しないと約束し、その代わりにとフレンド登録を申し込むのだった。
あとがき
はい。オリキャラ3人登場。
《聖竜連合》よりカッツェとセレスティアにレイダーでした。
カッツェは怪しいですねぇ
セレスティアは…まぁね。
クラディールと被りそうなやつがいた?…気にしないでください笑