ソードアート・オンライン~LuLuの物語~   作:ウンニーニョ

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まえがき

お待たせしました。

浮遊城編、残すところあと1話です


ゲームの中の奇跡

 

浮遊城75層

 

攻略会議

各層のボスを倒すため、今までに得た情報を元に話し合い作戦を練るための会議。

そのため、今までボス戦に参加していなかったルルは参加していなかった。

 

「……やっと戻ってきたか」

 

ルルは会議が行われる洞窟の前でつぶやく、中に入ると見知った顔がちらほらとあった。

その中の1人が声をかけてくる。

 

「おールル!」

 

バンダナを巻いた野武士風の男、クラインである。

 

「攻略会議は久りぶりだろぉよ。わかんないことがあったらなんでも聞いてくれよな」

 

「大丈夫だっての」

 

ルルは苦笑しながらクラインに返す。

クラインはこういう奴なのだ。抜けてるように見えながら周りにしっかりと気を配る。

そのとき、2人の人影が洞窟に入ってきた。

キリトとアスナである。

ルルはクラインとともに近寄ると、話しかける。

 

「久しぶりだな、いいのか? 新婚生活ほっぽり出して」

 

ルルの言葉にキリトが答える。

 

「ああ。今朝二人で話し合って決めたんだ。向こうでちゃんと会って、付き合おうって」

 

「そうか。じゃあ、まずは今日のボスをさくっと倒さないとな」

 

「油断して、死ぬなよ」

 

2人は拳を握るとコツンと合わせる。

入り口からヒースクリフ、カッツェにリンド、スコールが入ってきた。

セレスティアもこちらに手を振りながら入ってくる。

 

「諸君、集まってくれたことに感謝する」

 

ヒースクリフが話し出し、会議が始まった。

会議の内容をまとめると、何もわかっていない。が正解だろう。

先遣隊が門に入った瞬間門が閉じ、次に開いた時にはボスの姿もプレイヤーの姿もなかった。

もちろん74層と同様に結晶は使えない。

つまりは門の内側に入り、出てこられるのはボスを倒したプレイヤーのみ。

それでもこのゲームをクリアし、現実世界へと帰るために攻略会議に集まったプレイヤーたちはボス戦へと赴く。

 

門が開き、プレイヤー達がなだれ込む。そして、門が閉じた。

今、75層ボス戦が始まる。

 

☆★☆★

 

誰かが言った。「上」と。

 

全員が上を向くと、そこにはボス、《ザ・スカル・リーパー》が壊れた人形の様に目を左右別々にぐるりと回しプレイヤーを見ていた。

10メートルはあろう骸骨のムカデ。

ザ・スカル・リーパーは自身の鎌のような一番前の足を振り下ろす。

その一撃で1人のプレイヤーがポリゴンに変わった。

 

「い、一撃だと⁉︎」

 

誰かがつぶやく。唖然としているプレイヤー達を尻目にザ・スカル・リーパーは逆側の前足を振り下ろす。

この一撃はキリトとアスナ2人がかりでなんとか受け止める。

それを見たヒースクリフは指示を飛ばす。

こうして戦いは始まった。

 

あれからどのくらいたったのだろうか?

どれだけの犠牲者が出たのだろうか?

それでもザ・スカル・リーパーのHPを少しずつ、確実に削っていった攻略組のプレイヤー達はついにザ・スカル・リーパーをポリゴンへと変えた。

全員、疲れ果て、ある者は大の字に寝転がり肩で息をしている。

 

「……何人やられた?」

 

クラインがいつもの元気もなく言う。

 

「14人死んだ……」

 

キリトがレイド人数を確認して答える。

 

「嘘だろ」エギルがそうつぶやく。

ここにいる全員が同じ気持ちだろう。それだけ衝撃的な人数だった。

最前線の選りすぐりのメンバー32人の内14人が死んだ。

のこり25層これからもっと強くなるだろう。100層までに何人死ぬだろう。次は自分の番では? そもそもクリアできるのだろうか?

さまざまな負の思いが渦巻く。

 

しかし、ルルは違うことを考えていた。

 

(おかしい、聞いてはいたが、今回もヒースクリフのHPは半分を下回らなかった。俺のレベルは過去の無茶なレベリングもあってキリトたちより10は上のはず、その俺でもギリギリまで削ったってのに? ユニークスキルだけじゃ説明できないだろ。確かあの時も……)

 

あの時、キリトがヒースクリフとデュエルした時、リズ、セレスティアと観客席で見ていた。

 

(あの時、キリトの最後の一撃が決まったと思った。しかしヒースクリフは防いで見せた。なぜか、そこにはなかった盾で防いで。あの時あの一撃を受けていたらHPが半分を下回った。それを防ぎたかった? なぜ? 半分を下回るとまずいことがある? …………まさか!)

 

そこまで考え顔を上げるとキリトが剣を抜きヒースクリフに向かって走り出していた。

 

(あのバカ、そのタイミングじゃ気づかれる)

 

ルルは即座に行動に移す。

キリトの反対から回り込むように走る。

キリトが剣を振りぬいたとき、驚いたような顔はしていたが、ヒースクリフはしっかりと盾で防ぐ。

すぐさま逆側からルルも刀で攻撃しようと振りかぶる。

ヒースクリフはこれにも驚きながら、しかし、確実に盾で防ごうとする。

その盾をルルは左手の魔爪で受け止め、こじ開けると刀を振り下ろす。

 

「キリト君、ルル君⁉︎ なにを?」

 

アスナが叫び全員が注目する。

ルルの刀はヒースクリフには届かなかった。

その代わりにヒースクリフの前にある言葉が浮かぶ。

 

 

Immortal Object

 

 

 

「システム的不死、ってどういうことですか? 団長」

 

アスナがヒースクリフに問いかける。

しかし、答えたのはキリトだった。

 

「この男のHPゲージは、どうあってもイエローに落ちないように、システムに保護されているのさ。この世界に来てからずっと気になっていることがあった。あいつは今、どこで俺達を観察し、ゲームを調整してるんだろうってな!でも俺は、単純な心理を忘れていたよ。どんな子供でも知っていることさ。人のやっているゲームを側らから眺めていることほどつまらないものはない。そうだろ?

 

 

 

 

茅場晶彦‼︎」

 

キリトの言葉に周りがざわつきだす。

 

「なぜ気づいたのか、参考までに教えてもらえるかな?」

 

ヒースクリフの質問に、キリトではなくルルが答える。

 

「あんたはその設定をレッドゾーンにまでは行かないにするべきだった。俺のレベルは過去に無茶なレベリングをしたのもあってキリトよりも10は上なんだ。その俺がレッドまで落として何とか生き残ってるのに、イエローすら落ちないなんてどれだけの高レベルなんだって疑問が出てきた。そのとき思ったのさ。あのとき、キリトとデュエルした時、あんたはキリトの最後の一撃をありえない動きで防いだ。速すぎたんだ。あれも、受けていればイエローに入るのを、いや、Immortal Object表示がでてくるのをどんなことしても防がなければいけなかった。そうおもった。違うか?」

 

「キリト君もかな?」

 

ヒースクリフの言葉にキリトがうなずく。

 

「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。キリト君の動きに圧倒されて、ついシステムのオーバーアシストを使ってしまった」

 

その言葉にざわついていた周りは絶句する。

周りを見回すとヒースクリフは話し出す。

 

「たしかに私は茅場晶彦だ。ついでに言えばこの城の最上階で君達を待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」

 

全員に衝撃が走る。

そうだろう。最強の味方が最後に立ちはだかるというのだから。

 

「なかなかいいシナリオだろう? 最終的に私の前に立つのは君達のどちらかだと予想はしていた。二刀流スキルはすべてのプレイヤーの中で最大の反応速度を持つものに与えられ、そのプレイヤーが勇者の役割を担うはずだった。……しかし、最大の反応速度を持ったプレイヤーは片腕がなく、勇者と呼ぶにはふさわしくなかった。

そこで、ルル君を除いたプレイヤーで最大の反応速度を持つキリト君に与えられたわけだ。軽微な差だったしね。

……しかし、ルル君は私の知らないスキルを持って帰ってきた。私は思ったのだよ。君にもやはり勇者の素質があったのだと!

それに、キリト君も私の予想を超える力を見せた。君にも勇者の素質があると私は確信している。今回の出来事も……

こうゆう予想外な出来事こそネットワークRPGの醍醐味だと思わないかい?」

 

ヒースクリフの言葉に切れた血盟騎士団のプレイヤーがヒースクリフに切りかかる。

 

「俺達の忠誠、希望を、よくも‼︎」

 

そう叫び切りかかるプレイヤーをあざ笑うかのようにヒースクリフは左手を振り、GM用のメニューを開くとそのプレイヤーをマヒ状態にする。

麻痺になったプレイヤーはヒースクリフに攻撃を与えることもできずに地に伏せる。

ヒースクリフはコマンドを操作し、次々に麻痺にしていく。

立っているのはヒースクリフの前に並び立つ二人、キリトとルル。

 

「どうするつもりだ? このまま全員殺して隠蔽するつもりか?」

 

キリトが問いかける。

 

「まさか、そんな理不尽なマネはしないさ。こうなってはいたしかたない。私は一足先に最上階にある紅玉宮にて君達を待つことにしよう。ここまで育ててきた血盟騎士団、そして、攻略組プレイヤーを途中で放り出すのは不本意だが、なに、君達の力ならたどりつけるさ。だが、その前に、キリト君、ルル君、君達には私の正体を見破った褒美を与えなくてわな。

 

……チャンスをあげよう。

 

今、この場で私と戦うためのチャンスだ。むろん、不死属性は解除しよう。私に勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがこの世界からログアウトできる……どうかな?」

 

「駄目よ2人とも、今は、今は引いて。」

 

アスナは2人を止める。

死んでほしくないから、この戦いは分が悪すぎるから。

 

「そーだよ。みんなで生き残る道を考えよう? リズの元へ帰るんでしょ、ルル」

 

セレスティアもルルを止める。

 

(この世界が終わる……)

 

ルルは考えていた。

 

(ここで、クリアすればもう誰も、死ななくていい。サチや黒猫団のみんな、ディアベルのように、死ななくていい。でも、ここで死んだら、キリトも……それはダメだ!)

 

ここで、今まで沈黙を続けていたルルが動いた。

ヒースクリフと向かい合い、キリトの少し後ろにいたルルは手に持った刀を振りぬいた。

 

ルルのカーソルがグリーンからオレンジに変わる。

 

キリトの右腕が宙を舞い、床へと落ちた。

回復し、満タンだったキリトのHPは4割ほども削られる。

全員が信じられないとルルを見る。

ヒースクリフもである。

ルルはとまらずキリトをアスナのほうへ蹴り飛ばす。

 

「なあクソ虫、これでキリトは戦えないだろう? 褒美は俺だけが貰う。ここで、俺と1対1で戦え」

 

その言葉で全員が理解する。キリトを庇ったのだと。

 

「おい、ルル! 俺も戦う。ヒースクリフ!」

 

キリトが叫ぶがヒースクリフはため息を吐くとメニューを操作し、キリトに麻痺を付与する。

 

「いいだろう。これは私と君との一騎打ち。君が勝てばゲームはクリアされ、負ければ私は紅玉宮へと去る」

 

ヒースクリフとルル、2人は剣を抜き向かい合う。

 

「なぁエギル、これまで中層のプレイヤーのサポートありがとうな。知ってんだぜ、お前が儲けのほとんどを中層の育成につぎ込んでたこと」

 

ルルが周りに向けて口を開いた。

 

「クライン、なんやかんやいつも気にかけてくれてたよな。感謝してる」

 

「キリト、このゲームが始まった時、俺に戦い方を教えてくれたこと感謝してる。そのお陰で俺は今ここでクソ虫を殺せる。」

 

「セレスティア、アスナ、もちろん死ぬつもりはない。

……けどもし、もし死んだら、リズの奴のそばにいてやってくれ。あいつの助けになってやってくれ。 ……頼む」

 

その言葉を最後に、ルルは周りの声をシャットアウトしヒースクリフに目を向ける。

後ろから声がするが、それを聞けば刀が鈍るから。

 

「さあ、殺してやるよ、クソ虫‼︎」

 

そう言ってルルはヒースクリフに向かって走り出す。

ルルの刀をヒースクリフは盾で受け、いなすと、自身の剣をルルに向けて突き出す。

その剣をルルは左の甲冑の腕の部分ではじき、盾をこじ開け、刀を突き出す。

顔面に向かって突き出された刀をヒースクリフは顔を捻ってよけるが頬をかすめ、HPが少し減少する。

その間もヒースクリフの剣はルルに突き出される。

今度は左手の肘の部分で下に弾いたルルだが、勢いを殺しきれず、わき腹をかすり、HPが少し減る。

 

一進一退の攻防が繰り広げられる。

 

戦い始めてどれだけの時間がたったのか、ついにその時が訪れる。

ルルの左手の耐久値がなくなり砕けた。

何とか次の攻撃は刀で防ぐが、間髪入れずに攻撃判定を持った盾が襲いかかる。

これにより、ルルの刀も吹っ飛ばされ、宙を舞う。

 

「勝負、ありだな」

 

ヒースクリフの剣がルルに向かって振り下ろされた。

 

 

☆★☆★

 

 

リズベット武具店

 

カン、カン。と金属をたたく音がする。

リズの顔には疲労が浮かんでいた。

昨日手に入れた《擬似精霊の黒曜石》かれこれ1000回以上叩いているが、変化は起きない。

しかしリズはルルを想い叩きつずける。

《擬似精霊の黒曜石》実はこのアイテム、SAOに1つしか存在しないユニークアイテムだった。

2000回をこえた時、ついに変化が生まれる。

ルルに似合いそうな黒い左手、見た目は鉄爪と変わらない。しかし今までのどんな《手甲魔爪》よりも高スペックな《手甲魔爪》《魔装テネブル》へと。

 

「やっとできたわぁ。はぁ、しんど……でもルル帰ってきたら喜ぶだろうな」

 

リズはそんなことをつぶやきながら、にへらとにやける。

そこで入り口に人が立っていることに気づく。

リズは顔を真っ赤にしながら「い、いらっしゃいませ」と接客の為立ち上がる。

その人影、暗めの茶髪を後ろで結び、前髪をピンで止めた女性は、微笑みながらリズに近づくと《テネブル》に触れる。

すると、女性と《テネブル》は光だし、そして消えた。

 

「え、ちょっと⁉︎ どうなってんの?」

 

いきなり消えた《テネブル》に、女性にリズは慌てふためき店中を探し回った。

 

 

☆★☆★

 

 

ヒースクリフの振り下ろされた剣は、ルルにあたる事はなかった。

その手前で槍と剣が交差し、攻撃を防いだからだ。

ルルは目の前の光景に目を見開く。

槍と剣を交差させルルを守ったのは、サチとディアベルだった。

 

「なんで……」

 

ルルがつぶやく。

回りも全員、信じられないという目で見ている。

 

「サチ、ディアベル、生きてたのか? 帰れたのか? 向こうに……」

 

ルルの言葉に2人は首を横に振り、ディアベルが喋りだす。

 

『これは、僕達の残りカス、残思のようなものさ。ルル君、後のことは頼んだって言っただろう? ちゃんとクリアしてくれよ』

 

サチが話し出す

 

『ねぇ、ルル。約束したよね。クリアして、この世界の最後を見届けてって約束したよね』

 

そう言って2人はルルに向けて微笑む。

 

「でも、もう武器が……」

 

『武器ならありますよ』

 

ルルの言葉をさえぎり、カツカツと女性が歩いてくる。

暗めの茶髪を後ろで結び、前髪をピンで止めた女性、グリセルダは微笑みながら手の中のものを渡す。

 

『これはさっき、リズベットさんが完成させたあなたの左腕です。受け取ってください。約束でしょう。あの人をここから出してくれるって』

 

繰りセルだの手の中の黒い腕は消え、ルルには新しい腕が現れる。

 

(サチ、ディアベル、グリセルダ。みんなの想い、そして、リズの想い)

 

ルルはグッと握り締めた左手を開くとヒースクリフを見据える。

ヒースクリフも来るか。と構えている。

ルルはヒースクリフに向けて地面をけると左手を振りかぶり、前へと突き出す。

 

(帰るんだ。そして、出会うんだ。 里香に)

 

 

ヒースクリフの盾とルルの左手がぶつかる。

一度は拮抗した2つの攻撃、しかしルルの体にいつか見た輝きが灯りそれと同時、盾は砕け、そのままルルの左手はヒースクリフを貫く。

 

ヒースクリフのHPが0になる。

 

「おめでとう。ルル君」

 

そう一言残し、ヒースクリフはポリゴンとなって消えた。

その時のヒースクリフの顔は笑っているように見えた。

そしてサチ、ディアベル、ぐりセルダの3人も微笑み、消えていった。

 

(サチ、ディアベル、グリセルダ、黒猫団のみんな、やったよ。リズ。やったよ)

 

そう思いながら、ルルは目を閉じ、勝利を噛み締めた。

 

☆★☆★

 

11月17日14時55分 ゲームはプレイヤールルによってクリアされました。

 

浮遊城全体にそう、アナウンスが響き渡った。

 

 

 

 

 




あとがき

どうでしたか? キリト君が目立たないのはいつものことです。もうしわけない。

浮遊城編のこすはエピローグ。

しばしのお待ちを。

感想、コメントお待ちしています。
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