吉良吉影はキヴォトスでも静かに暮らしたい   作:爆死担当抹茶

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 新イベで登場するセナが可愛すぎてAC6万歳エディションによる難産が消し飛びました。ですが石がありません。貯める意志はあるのにね(ジジイ並)。
 皆様のいいね評価感想に全員『礼』だッ!


対策委員会の奇妙な冒険 その9

 

 わたしたちはアビドス高校へと戻ったはいいものの、今後の展望についてが最早絶望的といった状況に陥ってしまった。月9000万円の『利子』。一週間以内に3億円の『保証金』。到底学生5人が受け持てるような額ではないにも関わらず、カイザー理事(クソカスの代表)はそれを容赦なく課してきたのだ。対策委員会の面々の様子は、今にもPMC基地を襲わんとするシロコとそれを止めるホシノ、ノノミ。怒り心頭のセリカに、天を仰ぐアヤネ。

 

 かくいうわたしも表面上は冷静沈着を取り繕ってはいるものの、脳内は勿論カイザー(あのクソカスども)をどのようにして爆殺するかで一杯だった。わたしの『キラークイーン』であれば証拠一つ無く爆殺する事も可能だろうが……

 

「……行ってこなきゃ。あそこで何をしているのか、調べないと。だから止めないで……ホシノ先輩。徹底的に準備すれば……」

「また弄ばれるだけだと思うよ、シロコちゃん。おじさんも、ここにいるみんなも賛成はしないと思うよー。」

「……借金はもう、真っ当なやり方じゃ返せない。何か、別の方法を……。」

「だ、ダメですよ!それではまた……」

「私はシロコ先輩に賛成!学校がなくなったら全部終わりなんだから、もうなりふり構ってられない!」

「セリカちゃん待って!そんなことしたら、あの時と同じだよ!?」

「それでも……!この学校を、奪わせはしない……!」

 

 進む気配の無い議論。状況も状況なので無理もない。先生は現在の状況をどう覆すかで、わたしはバレないようどう爆殺するかで脳をフル回転させているので議論に参加は出来ていない。

 

「ほらほら、みんな落ち着いて〜。頭から湯気が出てるよ〜?」

 

 かつておやじが言っていた振り返ってはいけない小道*1のよーに無限ループを起こし始めた議論のピリオドを打ったのはホシノ。

 

「まっ、とりあえず今日はこの辺にしとこう。うへ〜、じゃあ解散解散〜。一回頭冷やして、また明日集まることにしようよ。これは委員長命令ってことで。」

 

 こうしてひとまずの解散となった。その後、ノノミ、アヤネ、セリカは家に帰り、ホシノ、シロコ、わたし、先生だけが残った。シロコが残っていた理由は退学届の件だろうが、ホシノが「また明日話そう」と言ったので、それを尊重することにしたのか、シロコは先生とアイコンタクトを取り、帰って行った。だが……

 

「"ホシノ、聞いてもいい(か)?"」

 

 大人二人がホシノの退部・退学届を差し出し、

 

「これ、シロコちゃんがやったんでしょー!?先生、きちんとシロコちゃんを叱って……」

"今は、この退部届について聞きたいな。"

「そっかー……。逃してくれそうには……ないよね?」

「狙った獲物は絶対に仕留める……」

「怖いこと言わないでよ吉影さ〜ん。……はあ、仕方ないなあ。面と向かってっていうのも何だし……ちょっとその辺一緒に歩かない?」

 

 ────────────────────────

 

 ホシノによって告白された内容。曰く、自分がアビドスで物心付いた頃には既にアビドスはメチャクチャで、廃れていた事。曰く、今の校舎は砂漠化から逃れる為に何回も引っ越した先の別館だが、対策委員会の皆と会えたのだから、ここが好きなのかもしれないという事。()()()()()()カイザー、そしてその理事すら恐れる『黒服』からのスカウトを受けていて、受諾すればアビドス高校の借金の半分を黒服が負担すると言われ続けていた事。

 

 砂に塗れた校舎で全てを話し終えて、そして諦観するようなホシノの表情には……それでも失いたくないナニカがあることを感じさせるものがあった。この表情をした人間は何でもする。おそらくは……

 

「……まあ、1ミリも悩んでなかったって言ったら嘘だし。ちょっとした気の迷いっていうか。」

「……それは『悪い意味』かどーかが気になるな。」

 

 まるでホシノの心の中を見透かしているように声を掛けるが、案の定そうだったらしい。

 

「……今は先生に、メザトい吉影さんもいる。だからみんなは大丈夫。……まあ、それでも……うん、もう捨てちゃおっか。」

 

 この期に及んで軽口を叩くとはたまげたが、たまげてる場合ではない。ホシノは退部学届を破り捨てた。

 

「うへ〜、スッとした〜。おじさんチト荒い性格だった頃もあってね〜。焦ってトチ狂いそうになると紙を破いて冷静を保つようにしてたのさ。」

 "物には当たらないように……"

「冗談だよ〜……そんな心配するような目で見ないでよ……私がそんな目線を向けられるような権利は無いんだし。

「何か言ったか?この吉良吉影メザトいだけでなくミミザトくもあるが……」

 

 さっきの軽口に対するちょっとした意趣返しをしつつ、一瞬聞こえたよーな気がする何かについて問う。

 

「何も〜。それよりも余計な誤解を招いてごめんね。ただ、こんな話をみんなにしたところで、心配させるだけで良いことも何も無さそうだったからさ。でもまあ、可愛い後輩たちにいつまでも隠しごとをしたままっていうのも良くないし……明日、みんなにちゃんと話すよ。」

 

 ……わたしの全身の直感が叫ぶ。そんな確信の『か』の字もないようなものを信じるかどーかで言えばわたしは信じない方だが、今回ばかりは……

 

「……顔の皮膚を見るとわかるんだ、『汗』とかでテカるだろ?その感じで見分けるんだ……*2

 "……。"

「……。」

 

 変な目で見られようが気にしない。

 

「ホシノ……『ウソ』をついてるな?それしか方法が無いと諦め、それを実行する為に『ウソ』をついてるな……退学……しないなどと……*3

 

「ウソをつ "ここまで!"

 

 先生の静止で荒げた声を引っ込める。

 

「……うん。ありがと、先生。そして吉影さんも含めて、みんなのことを、よろしく。」

 

 ──この瞬間、吉良吉影は理解した。

 

 彼女ら(ホシノと先生)は確率的にわたしであれば絶対に投げないような『賽』を投げた事。ホシノはそれほどの覚悟を持って学校を、ひいては対策委員会を『守ろうとしている』事。

 

 吉良吉影は、自分の人生観を否定されたような気がした。

 

 己の『平穏な生活』を。

 

 『トラブル』の無い植物のような『人生』を。

 

 身を投げ打つような『覚悟』の力に。

 

 『トラブル』だらけの彼女たち(対策委員会)の『人生』に──

 

「そうだね、奇跡でも起きてくれればいいんだけど……。」

 

 ……何だ……この言いようの無いような……『敗北感』に似てまた異なる……『否定』なのか?いや……わたしの人生は間違ってなど……落ち着け……一旦……落ち着くんだ……

 

「じゃあ、また『明日』。先生に、吉影さん。」

 

「さよなら。」

 

 立ち去っていくホシノの背中は、あまりにも……遠い。

 

 ────────────────────────

 

「……影……」

「吉……影……!」

「……なん、だ……?」

 

「吉影ぇッ!!」

 

 どこか聞き馴染みのあるような声がした気がしたので目を開けたが……随分とやかましいモーニングコールだ。……さて、声の主のツラを拝……何ッ!?

 

「吉影ぇ〜!!!お前のおやじじゃよ!かわいそうに〜〜〜〜おまえは血が出るぐらいに爪を噛むほど絶望するどころか……あまりのショックでこっち側にくるとは……じゃが吉影……同時にわしは嬉しいぞ……!」

 

 どういう事だ……?絶対に出会うはずがない『おやじ』が目の前にいる……?まさかショックでポックリ逝ったとかみたいなバカバカしい話じゃないだろうな……?

 

「吉影……お前は今まで『孤独』じゃった……性格上どうしても他人と関わろうとすることができなかったからじゃ……だが吉影、今のお前には『守ろうとしている』物が増えたのだからのう……!!」

 

 さらにわけのわからん事を述べるおやじ……そうか、これは『夢』……なのだな。わたしが目の前の現実を受け入れたく無いからこそ生み出した幻想……ここまで精神的に追い詰められてしまうとは……

 

「吉影……お前がショックを受けた原因は彼女らとのコンプレックスなのだろう……じゃが吉影、それは違うぞ。」

「いや……違わない……何も……わたしは……」

 

「泣き言をくっちゃべるなッ!!」

 

 !?おやじが怒鳴った!?わたしに対してだと!?

 

「人間は誰でもこの世に思いどおりにならない事がある事を幼い時に学習する……ほしいオモチャを買ってもらえなかったりほめてほしい時に誰も頭をなでてくれないといったようにな……吉影!お前はそんなどうしようもない時決してわめいたり泣き言をくっちゃべるような子供ではなかったはずじゃ!!それでもというならば……『口』を動かす暇があるならさっさと『手』を動かせ!『脳』を回すぐらいなら『足』で駆けろ!!『お前』は何に対しても劣らないのじゃ!!!お前が欲しいものがあるのならばお前自身の『選択』で掴み取れ!!!

 

 ……

 

 ……クックック。

 

 そうだった。

 

 わたしが今まで狙った獲物は逃さなかったように。

 

 思いどおりに事が運ぶようにすればよい。

 

 どうやらわたしも、何かを背負ったようだ。

 

 気づけば意識は闇に吸い込まれていた。

 

 ────────────────────────

 

 ……ここは、アビドスの医務室だな。

 

 外は明るい。銃声もする。どうやら先におっ始めているようだ。対策委員会は学校を守りたいのであれば……わたしも生徒を守るべく、駆け出すべきだな……シアーハートアタックよりも直線的でブレーク・フリー*4よりも初動が速くなるよーに、な。

 

 私の名前は『吉良吉影』。年齢33歳。

 

 このキヴォトスで先生の補佐を……いや、

 

『生徒のために働く』ことにした。

 

 おやじの激励に報いるためにもな。

 

*1
確か薬屋『ドラッグのキサラ』とコンビニ『オーソン』の間のあたりだったか?その時はバカバカしい話と思って聞いていたが……さっきから気になってしょうがない。あぁ……杜王町が恋しい……キヴォトスよりもよっぽど平穏なあの街が、恋しい。

*2
……頭がシンプルな丸刈りになってきた気がするぞ……いやそんなはずはない

*3
今度は髪の毛が柱のように上に伸びてきた気がするぞ……確実に気のせいなのだがなんなんだこれは……?

*4
銃弾を爆弾にして飛ばすやつさ……あれの名前を考えてみた時にポッと頭に浮かんできた……それだけだ(作者談:元ネタは言わずもがなQueenの『I Want To Break Free』です。作者には音楽知識なんてないので命名理由とかの深い考察をするだけ無駄ァ!です。)





 展開がアサルトブーストよりも直線的でクイックブーストよりも速くなった気がしますが私がカイザーをぶちのめして曇ってしまったホシノを晴らしたいからです。その為に吉良吉影には精神面でこいつ無敵か……?になって貰いました。
 投稿頻度は相変わらずですが世界が一巡するまでにはアビドス編2章までを完走します。気長にお待ち下さい。

時系列順(エデン条約先)か部順(パヴァーヌ先)か

  • 第2部 パッヴァーヌ24時
  • 第3部 エデン条約編
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