与えたパス、それは【絶対的な力を人々に課す試練】である。
名はユッド。
我が分け身たる
先生、貴方は神の名を持つ生徒と交流し、戦い、分かり合いどう感じた?
……ほう、素晴らしい答えだ。
で、あれば、その知識は一旦捨て置くといい。
例え
この世界を統べる唯一神【YHWH】が……我と覚えよ。
この戦いに決着がつく頃には全てが元通りなのだ。だから先生も安心して
……始めよう。む、なぜそうも悲痛な顔をする。無理している?先生、貴方は勘違いしているな。これは『役割』、そして何より私はこの役割を重要視し、悦に感じているんだ。間違っているなどと言ってくれるなよ。
全てを灰燼に帰しなさい。
やぁ諸君。私だ。現在はゲヘナ学園でBDによる学習を行っている……が、正直大体わかっているので心底つまらない時間を送っている。学力に関しては3年の卒業試験を受けても問題なく合格するだろうという自負もあり、1年生の授業内容など今更であるとしか言えない。それにやはりBDによる自主学習……
なので万魔殿に入った後は議長に授業の免除を直談判しよう。もちろん実力を証明してだ。自由と混沌のゲヘナならワンチャンなんとかなるだろう。
ああそう言えばゲヘナには面白いことがあってな。第2校舎は比較的真面目な生徒達で集まって授業を受けているらしい。だからこそこうして静かに単位を取れているという訳だ。ちなみに他の連中からは第2校舎勢は嘲笑の対象らしい。まあゲヘナだから言いたいことはわかるが襲撃してこないあたり多少の気まずさは感じているんだろうな。
「……よし、こんなものだろう」
BDを見終わり校舎を後にした私は、無意識に早足で目的地へと向かう。
そう、温泉である!!
ゲヘナは火山がある地域に面しているので温泉が多く存在する。何やら温泉開発部とかいう物騒極まりない組織も居るが、すでにある温泉に行けば問題起きることもないだろう(フラグ)
キヴォトス人の体になって割と高音にも耐えられるようになったので行ってみたかった最高温度60℃超えの激アツ温泉に行ってみることにしたのだ!!温泉、温泉、温泉だー!!
数時間後
「ふざけるなよ…クソガキども……よくもまぁ私の至福の時間を邪魔してくれたナァ?」
ゲヘナ1と名高い温泉の中で、私は積み上げた温泉開発部達の死体(気絶)の上で怒りに満ち満ちていた。
「武器も持っていない状態で私に勝てるワケないだろう。ステゴロなら負ける気はせん」
事の発端は私が温泉に浸かり蕩けていた時、普通に温泉に入りに来た温泉開発部のメンバーにスカウトされたことに起因する。断固たる意思で断り続けていたところ集団で襲いかかって来たので、全員ぶちのめした。温泉内なので流石に銃も無く拳で解決した。が、正直もう温泉どころでは無くなってしまったのでやり場のない怒りを足蹴にしている下手人達に向けていた。
「風紀委員会よ。乱闘の通報があったのでき……た……ユヅキ?」
「む?ああ、ヒナか」
どうやら温泉のスタッフが通報してくれたらしい。そしてやって来た風紀委員はたまたま友人であるヒナだった。話が早く纏まりそうで助かるよ。
「これはどういう状況なの?」
「温泉開発部、スカウト、しつこい、襲撃、返り討ち」
「簡潔ですごくわかりやすいけれど、どうしてカタコトなの?」
「理不尽な怒りをヒナに向けないよう抑えてる」
「ユヅキも苦労しているのね」
ヒナは苦笑いしながらも後からやって来た風紀委員達に拘束した温泉開発部を引き渡していた。ものの見事に全裸ばかりの集団がドナドナされていくのはシュールで仕方がない。服くらい着せてやれよ……?
「それよりユヅキ、事情聴取があるから同行してもらえるかしら?」
「あいわかった」
ヒナがチラチラとこちらに視線を送り、目を逸らす事を繰り返している。どうしたのだろうか?
「どうかしたか?」
「服を着てちょうだい。同性とはいえ、ユヅキの体は刺激的すぎる」
「……ああ!!そうだったな。すまない、すぐ着替えるよ」
「……胸……私より全然ある……」
「ヒナはそもそもちゃんと睡眠を取らないからだろう?健康的な生活を続けていればしっかり身長も胸も大きくなるだろうよ」
制服を着ながら、私はそう返した。ヒナも意外と気にしていたのだな。私からすればそのモフモフの髪をどう維持しているのか気になるところだが。
「ユヅキが風紀委員会に入ってくれれば少しはマシになるかもね」
「いやぁ……生憎と、所属する場所はもう決めていてね。ヒナには悪いが」
「どこなの?」
「万魔殿。議長から直々に誘われているんだ」
「!!……そう、議長が。なら仕方ないわね。あの人の破天荒にはついていけるの?」
「その時はそれ以上の破天荒で張り合おうじゃないか」
「それはそれで……ダメそうね」
着替え終わったので迷惑料代わりにコーヒー牛乳を何本か購入してヒナと共に風紀委員会へ向かう。
「入学式の時に目をつけられてな、飛行して見せたら気に入られた」
「ユヅキも飛べたのね。同じ、嬉しい」
なんだこの可愛い生き物は?お持ち帰りしていいか?……ダメか。
「私は滑空が出来るくらいだけど……ユヅキ、その翼で飛べるの?」
「飛んで見せよう」
「ひゃっ、ユ、ユヅキ?何を……」
「行くぞ」
私の歪な翼を見てヒナは疑問に思っているようだがならば見せてやろう。私の飛行をな。
私はヒナを抱えて一気に飛翔、そこら辺の建物よりも高く舞い上がったと同時にヒナを前に放り投げる。
「ユヅキ!?」
「一緒に飛ぶぞ、友よ」
「ッ、ええ!!」
私の声に短く返事をしたヒナはそのまま羽を使って滑空を開始、流石はヒナだ。風の流れを読んで上手く滑空している。
「空は気持ちがいいな!!ヒナ!!」
「ええ、そうね。今まではただの移動にしか使ってこなかったけれど、こうして友達と一緒に飛べるのは……楽しいわ。でもユヅキ、お返しよ」
建造物の屋上まで滑空したヒナは私に向かってジャンプし、私の背中を蹴り上げてさらに大ジャンプ、そしてまた滑空を始めた。
「やってくれたなヒナ!!」
バランスを崩した私は負けじとヒナと同じ高度まで飛翔しまた並び飛ぶ。
「どう?ゲヘナまで競争する?」
「いいな、やってやる」
その日、風紀委員とゲヘナ生がゲヘナ自治区を飛んで警備をしていると噂が広がり、犯罪率が低下したとかしないとか。まあ私には知る由もないが。
◆
事情聴取兼ヒナとの飛行デートから時はたち、早くも1ヶ月が過ぎた。私は兼ねてからの計画通り、万魔殿への所属を伝えるために議長と約束を取り付けていた。
現在地はゲヘナ学園の待合室のような場所。万魔殿や風紀委員会の客を案内する部屋だ。
うーむ、少し緊張して来たな。
「よぉ、待たせたな後輩」
「いや、それほど待っていない。なんとか緊張をほぐそうとしていたところだな」
「ハハッ!!お前ほどのやつでも緊張とかすんのかよ」
ノックも無しに部屋に入って来たのは、待ち人である田中サユリ議長だ。この日を待っていたと言わんばかりの笑顔だ。
「噂聞いたぜ?空崎と飛んでたんだろ?羨ましいぜ全く。あたしも空を飛べたらなー……っと、世間話はここまでだ。こっからは歩きながら説明するぜ」
「ああ、頼む」
私はまだ入るとは一言も言っていないんだがな、議長はもう入部する気でいるらしい。まあ実際入るのだから手間が省けるというものだ。
「……そんでもって、今年の一年で見込みがあるのはお前を除いて2人。まあどうせ挨拶してもらうから今は紹介しねぇ」
「ほう……仲良くなれるといいが」
「お前にゃ余裕だろ。2人とも面倒な性格してねぇし」
元宮チアキと棗イロハのことだろうな。チアキの方は陽キャすぎるからすぐ馴染めるだろうし、イロハの方はサボりのコツでも教えてやれば問題ないだろう。
「んでまあー……2年の方はちょっとクセが強いんだよなぁ……」
「というと?」
「権力欲の塊と破廉恥催眠術マニア」
「コメントに困るな」
「ははっ、だろ?それがまた面白いのよ」
羽沼マコトと京極サツキだろう。というかマコト……もうすでに権力欲ギラギラなんだな。
「権力欲の塊には敵対されてないのか?」
「んー……どうなんだろうな。議長の座を狙ってるのは間違いねぇけど、別にそのためにあたしを蹴落とすわけでもねぇし。あたしの政治を見て学んでんじゃねーの?その技を活かすも殺すもアイツ次第だけどな!!」
「なるほどな」
地位につけるまでは虎視眈々と物事を進めるタイプだったのか。念願の議長になれたから未来のマコトははっちゃけたんだろうなぁ。イブキもいるし。
サツキは……まあうん、普通にエロい。催眠術とかいう趣味も相まって余計に妖艶さが凄い。今の時点でも健在なのだろうか」
「それはそれとして議長、もしや下ネタが苦手かな?」
「ばっ!?なに言ってやがる!!」
「図星か、わざわざ破廉恥などというから恥ずかしい言葉を言うのは得意じゃないのかと思ってな」
「ちぇ、きづくの早過ぎだろ。あたしだって興味はあるけどさ。大衆の面前じゃあなぁ」
「つまりムッツリか」
「お前さっきから身もふたもないな!?そっちが本性か!!」
「堅苦しい口調なだけで言う時は言うさ。私だって健全な高校生……の、はず……?」
「なんでそこだけ疑問系なんだよ」
いやぁ、だって、ねぇ?私だって自分が何者か知りたいわけだ。流石に自信を持って言えることでもない。
「ついたぞ」
見覚えのある大きな扉を目の前に議長の足が止まった。ここも懐かしさを感じるな。きっと面子は懐かしさを感じないのだろうがな。
「よぉテメェら。連絡通りに全員集まってんな?今から新入部員を紹介するぜ」
「キキキ!!ソイツが噂の空飛ぶゲヘナ生か?議長もペットを見つけたらしい!!」
「……入学式で見たような気もしますね」
「わぁ!!元宮チアキです!!お友達になりましょう!!」
「あら、歓迎するわ。よろしくねぇ」
真っ先に返事をしたのは、上から順に羽沼マコト、棗イロハ、元宮チアキ、京極サツキだ。3年生がこの場に居ないようだがタイミングか?
「相反ユヅキだ。敬語は慣れていないので許して欲しい、これからご指導ご鞭撻の程よろしくお願いする」
「入学式で面白そうだからあたしがスカウトした。文句がある奴は後でユヅキと喧嘩しな。とりあえず……マコト、お前が見てやれ」
「キシシッ、承ったぞ。おい後輩、今日から私のことは『偉大なるマコト様』と呼ぶがいい!!」
すっごい、嫌なんだが……
「コイツがさっき言った権力欲の塊な。まあ今のうちに慣れとけ。あとほらよっ、ウチの腕章。それをつけたらお前も今日から万魔殿の1人だ。気張れよ」
「ああ、責任をもって受け取らせていただこう」
一旦マコトは無視して議長から腕章を受け取った私は、すぐに腕章をつけた。
「よし、つけたな。テメェら、一般部員にしっかり周知しとけ。今日から相反ユヅキは我らが万魔殿副議長の人を与える!!」
「…………ん、ちょっとまってくれ議長。今、なんと?」
「あらぁ、いいじゃない。じゃあ情報部長として早速全部員と風紀委員会に知らせてくるわね〜」
「おお!!早速、万魔殿定期新聞号外を制作してきますね!!」
「……はぁ、面倒そうな役柄ですね。ご愁傷様です」
今議長からあり得ない発言が聞こえたぞ。それよりも待ちなさいそこの2人、いやほんとに待ってくれ、そんな走ってまで部屋から出ないで……あぁ、遅かったか。
「議長、意見を申し上げる!!」
「却下だ」
「聞く前に!?」
「まあ待て議長よ。なぜこうも突然新入りを副議長にするのだ。私こそがふさわしいだろう!!」
ここでまさかのマコト参戦。動機は不純そのものだが今はそれが大変助かる。
「テメェには会計部長の仕事があんだろ。後素行不良だ。残ったメンツと、後進育成の観点から1年でちょうどいいヤツがコイツだったんだよ。ユヅキ、書類仕事の自信は?」
「まあ人並みには出来ると自負しているが……」
書類……ショルイ?うっ、あたまが……なぜだ、書類の山、徹夜……存在しない記憶が脳裏をよぎる……
「なら問題ねぇ。当面はマコトについてゲヘナを見て回る研修、その後はあたしのとこで実務研修だ」
「ふむ、そういう事であれば理解出来る……いやそれがどうして副議長に?他に3年は居ないのか?」
「ああー……居るには居るんだが、書類で使える奴らは大体風紀委員会に持ってかれちまってんだよ。外部入学者の試験結果が
「なにぃ!?あの試験を……ユヅキ、なかなか出来るのだな。キキキッ、議長も良い人材を見つけてくるじゃあないか」
おや、あの試験満点だったのか。ちょこちょこ高校入学レベルとは思えない問題があったが、もしかして風紀委員会や万魔殿にスカウトするための別の試験という意味合いもあったのか?
「マコト、あの事言っていいか?」
「…………アレか?」
「おう」
「まあ……いいぞ。それぐらいでマコト様の名声は揺るぎはしない!!」
「コイツ留年しててな、本当だったらあたしと同じ3年生だったヤツだ。だから実質3年組って所だな。理由は学年末考査の日に電車を乗り間違えたらしい」
「えぇ……」
そういえば確かにマコトのプロフィールには、誕生月が3月にもかかわらず18歳となっていたはず。3年生なのはおかしいと思っていたが留年していたのか……ていうか、理由がアホの子すぎるだろう。
「駅前で暴れていた不良どもで交通網が混乱していたのが悪いのだ。タクシーにも被害が及んでいたからな」
「なるほど、それはタイミングが悪い」
「他の日にやったテストで解答欄一つずつずらしてたぞコイツ」
「…………」
「副議長の任は私が承ろう」
思ったよりやってるわこの人。議長が笑っていてマコトが黙ってしまったのが全てを物語っているようだ。これはまぁ……議長の後進育成を私も手伝った方が良さそうだな。
「サツキとチアキが学園に周知してくれるだろうが、ウチのヤツらは政治に興味がないからな。『ふーんそんな人がいるんだぁ、偉ぶったら痛めつければいっかぁ』くらいの感覚だから気をつけとけよ」
「……まあゲヘナだしな。留意しておこう」
相変わらず治安が終わってるなぁ、これでサユリ先輩がまともな議長で助かった。万魔殿の議長は投票制で、未来のマコトの投票率が4%弱だった事を考えると相当いい議長に出会えたのかもしれない。
「んじゃマコト、今日は学園の案内だけでいいから頼んだわ」
「分かった。議長はなにをするのだ?」
「ん?最近新入りが増えて調子乗ってる温泉開発部をシメてくる」
「キキキッ!!風紀委員会共が仕事を取られて悔しがるのが目に見えて浮かぶようだ!!」
「いや今はまだ罪状ねぇけど。やらかす前に一旦……な?」
「まあ気をつけてくれ」
……これ、本当に大丈夫か?
「イロハ!!暇なら着いてこい!!」
「今日はユヅキさんの紹介のための招集なので帰ります。
ユヅキさん、これから頑張りましょうね(私がサボりやすくなるので)」
「ああ。後同級生なのだから呼び捨てで構わないよ」
「分かりました。じゃあユヅキ、マコト先輩、失礼しますね」
マコトからの誘いをバッサリ切ったイロハは、いい笑顔で私に話しかけてきた。が、なんか副音声が聞こえる気がする。笑顔で語りかけてくるタイプだ。
この後めちゃくちゃゲヘナを回った。何回か襲撃にあったがマコトが全て処理していた。
うーむ。幸先が不安だ。