矛盾の化身   作:ゼノアplus+

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ゲマトリア面接Ver残りのメンバー

先日マエストロと対談してから早くも2週間。私は次の対談者たるゴルコンダとデカルコマニーの下を訪れていた。

 

 

「ようこそおいでくださいました。わたくしは貴方を歓迎致します」

 

「そういうこったぁ!!」

 

「お招きいただき感謝する。私はパラドックスだ」

 

 

丁寧な口調なのがゴルコンダ。首がなく後ろを向いた頭の絵画を持っている方だ。

そしてその絵画の中の頭がデカルコマニー、つまり『そういうこったぁ!!さん』だ。

 

彼らの空間は無数の絵画が浮遊し、あたり一面に空が広がっているという場所だ。これはこれで神秘的で美しい。

 

 

「初めに申し上げておきますと、わたくしどもは初めから貴方のゲマトリア加入に好意的です」

 

「……なんだって?」

 

「理由は明確。わたくしの研究する『記号』……パラドックスはよく理解しておられる、確認のため貴方自身をご説明いただけますか?」

 

「キヴォトス外の存在が、『神秘』と『恐怖』が混在する肉体=入れ物に入り活動が可能になった。

現在の私は『生徒である相反ユヅキ』と『ゲマトリア(仮)のパラドックス』という2つの入れ物を対価なく行き来できる。

 

『相反ユヅキ』には『生徒』、『ゲヘナ生』『万魔殿副議長』というテクストが、

『パラドックス』には……これからテクストを付与していきたい。

 

ああ……すまない、今の表現は的確じゃない。

 

【学園都市で繰り広げられる青春の物語(blue archive)という世界観に適応するために、私は『生徒』の形を成し、適応できなかった異物の側面が『大人』として現れている】

 

ここまでが私と黒服の研究成果だな」

 

「つまりそういうこった!!」

 

 

どういうこったよ。

 

 

「上出来ですね。我々ゲマトリアは現在、『崇高』へ至るための観測において『恐怖』側へのアプローチでしか成果をあげることができないのです。何故だと思われますか?」

 

「…………『生徒の神秘』では『崇高』に至る出力……いや、『解放』もしくは『先導』が出来ない?」

 

「なるほど。パラドックスの文学的表現はそうなのですね。『神秘の解放』、言い得て妙です」

 

「そういうこった!!」

 

 

2人……2人?の研究を分かりやすく説明するなら、

『事実を陳列するだけならば簡単である。それをどう表現するか』だ。

 

例えば『生殖』。

『性行為』はただの事実として、子を成す行為だ。

だが彼らなりに表現するなら『愛を確かめ合う行為』になるわけだな。

 

つまり……『言い得て妙』『言葉の綾』『そうとも言う』という事に明確な意味と存在を与える訳だ。

 

……すまない、自分で説明しておいてなんだがあまり理解できていない。

 

ネットミームでいいなら、『特攻』は事実で、『玉砕』『大和魂を見せてやる』は文学的な表現になるって事だ。そういうこった。分かったか?分かれよ。

 

 

「それで今の話がどう繋がる?」

 

「一つ、『神秘』の先の『崇高』に貴方ならば辿り着けるかも知れない。

 二つ、『生徒』の日常生活におけるテクストの変化の様子を観測したい。

 三つ、わたくしの知る中で初の、テクスチャーを貼り付けられた存在を観測したい。

 

これらを満たす貴方がゲマトリアに所属している方が連携が取りやすい、と考えた次第です」

 

「そういうこった!!」

 

「そういう事だったのか。ならば私も自身の探究に気合が入るという物だ。これからよろしく頼む、ゴルコンダ、デカルコマニー」

 

「こちらこそ、これから共に探究の道へ邁進したしましょうパラドックス」

 

「そういうこったぁ!!!!」

 

 

2人への挨拶が済んだので、次に備えることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

次は最難関、ベアトリーチェとの対談だ。ベアトリーチェはすでにアリウス分校を支配していることからアリウスに常駐している。情報の秘匿という観点から彼女がこちらに来てくれるという手筈になっている。

 

つまり私個人のあの真っ黒空間に招待することになったのだ。現在は真っ黒なだけでは無く、私専用のオフィスの様に整えたためまだマシに見えるが……一言くらいはキツい言葉を貰いそうだ。

 

黒服が仲介してくれたおかげでやり取りも最小で済んでいるので取り決められた時間まで待機だ。後5分もないけどな。

客人をもてなす為に紅茶の準備も済んでいるし、トリニティ程ではないがそれなりの菓子類も用意した。ベアトリーチェの性格上一口も手をつけない可能性が高いが用意しないよりは良い。

 

そして時間になり、私の目の前に転送装置のゲートが開いた。

 

 

「ここがお前の空間ですか。殺風景……まだまだ未熟者のようですね、パラドックス?」

 

「ようこそ、ベアトリーチェ。黒服曰く、深層心理が関係するとのことなのでまだその領域に至っていないのだろう。今後に期待してくれ」

 

 

ベアトリーチェ、赤い肌に純白のドレスを着用した貴婦人のような異形だ。

 

 

「ふん……お前のような子供がゲマトリアに参加すると聞いた時は、ゲマトリアも落ちた物だと思いましたが……どうやらそれは私の勘違いだったようですね。

ロイヤルブラッドの価値には劣りますが、お前も十分に使えそうです」

 

 

先ほどからお前だの、未熟だの、劣るだの、上から目線の言葉が目立つが、その通りに傲慢な性格をしている。

だが実際にベアトリーチェはかなりの手腕を持っている。トリニティ総合学園に帰属しなかったアリウス分校を丸ごと支配し私兵に変える手際の良さ、ロイヤルブラッドと呼ばれる希少な血統である秤アツコを保護するマスクなど技術も人心掌握も出来る有能な人物だ。

 

 

「ははっ、勘弁してくれ。今はパラドックス……これでも大人の1人なんだ……ああいや、だからこそか。大人の女性同士の会話は難しいな」

 

「これくらいはすぐ出来るようになりなさい。交渉や契約の際に必須事項となるのですからね」

 

「手厳しいが、今の私には必要な事だ……今なんと?」

 

「最近の新人は2度も同じことを言わせるのですか?」

 

「いや、その、なんだ……貴方は私がゲマトリアに参加することに反対するのかと思っていたんだ」

 

 

交渉や契約はゲマトリアとして活動する上で必須事項だ。これらを利用することで自身と対象にパス(道)を繋げることが出来るようになる。

出来るようになれ、と言われたがまさかゲマトリアとして活動するならば、という話になると思わなかったんだ。

 

 

「別に、どうでも良いのです。私はゲマトリアそのものにプライドも責任も持ち合わせません。あくまで自身の目標を達成する為の『利害の一致』。ならば、その利害に新しいものが加わるのは喜ばしいでしょう?」

 

「……なるほど、貴方はそういう割り切りができるタイプなのか。私の事が気に食わないから反対すると考えていたが……謝罪する」

 

「自らの本心をあけすけに言葉にするのはおよしなさい。そういうとこも含め、お前という存在自体は気に食わない、いえ……必要なかったはずでした」

 

「はずだった?」

 

「お前は私の研究のサンプルとして興味深いことに変わりありません。『恐怖』でしか『崇高』にアプローチ出来ない我々からすれば、『神秘』を保持したまま『崇高』に近いお前という存在は貴重。そのうち力を貸してもらいますよ。もちろん私の研究資料も提供します。それが、ゲマトリア内での取り決めです」

 

 

……すごいな。互いに気に食わない事に変わりはないが、研究者として、一国の当事者としての実力は申し分ない。他のメンバーはそれぞれ拘りが見えるが、彼女のそれは『結果』なのだろう。ならばむしろマエストロやゴルコンダデカルマニーコンビよりもやりやすいかもしれないな。

 

私の差し出した紅茶に一瞬目を細めたベアトリーチェだが、マナーにも精通しているのか上品に嗜んでいる。まずいな……本当に気に食わない奴ではあるが、見習うべき点が多いのも事実。

 

 

「随分と良いものを用意しましたね、その姿勢は評価しましょう。私からお前に掛ける言葉は一つだけです。

 

パラドックス、結果を示しなさい。

 

では私は用事があるので失礼します」

 

「…………ああ」

 

 

そう言い残してベアトリーチェは私のオフィスを去った。

 

本当にあれは私の知っているベアトリーチェか?

ベアトリーチェと言えば生徒を使い潰し自身が崇高に至るための土台でしかないと考えるような外道だったはずだが…………

 

いや、違うな。

 

これは同族嫌悪だ。今の私の目標は『自身の探究』。なればこそ私は私という『生徒』を使い潰すことなど当たり前のように出来てしまう。ベアトリーチェは私のそういうところも見抜いていたのだろうな。性格は終わっているが、敵対しないというだけでも今のところは十分だと思おう。

 

……ほんっっっっっとうに気に食わない奴ではあるんだけどな!!

 

だが、やはりベアトリーチェはダメそうだな。『結果』が全ての彼女にはその先がない。マエストロが分かりやすいが結果を出したあと、彼はその結果から芸術を表現する。

故に、ベアトリーチェには結果のその先の表現がない。

 

何が言いたいかというと、つまらない奴、というわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、全員からゲマトリア加入を認められたということですね?」

 

「ああ、どうやらそうらしい」

 

 

ところ変わって、黒服のオフィス。

ひと通り面会が終わったので、協力者である黒服に報告をしにきた。

 

 

「おめでとうございます、ではたった今より貴方はゲマトリアの一員。私ももちろん歓迎いたします」

 

「ああ……やっと最初の目標が達成されたよ。まだ一年も立っていないが随分と長く感じたな」

 

「クックック……すぐ慣れますよ。これから忙しいでしょうから。『生徒』をしながら『ゲマトリア』の研究……ベアトリーチェ並に忙しいでしょうね」

 

「彼女を比較対象にするのは勘弁してくれ。まあベアトリーチェもアリウスの生徒会長という立場だから……くっ、奇しくも似た立場ではあるのか」

 

 

うげ……意識すると心底気分が悪いな。

ゲマトリアとしての研究とは言っても当面は『生徒』としての生活が研究の一つだ。つまりタスクは一つ、これくらいどうという事もない。

 

 

「クックック、ではゲマトリアに正式に所属したパラドックスには『会議場への転送装置』を渡しておきましょう。そして授業を行います」

 

「授業……?黒服、貴方が?」

 

「おや、ご存知なかったですか。私は教員免許を持っていますよ」

 

「…………流石に冗談キツいぞ?」

 

「証拠を見せてもパラドックスは偽造だと疑うでしょう?ですから自称という事にしておきます」

 

 

どいつもこいつも私の心中を見抜いてくる。

ユヅキの時ならまだ子供だから、で納得できるがパラドックスの時にまで言われたら流石にもう認めざるを得ないかもしれん。悲しい。

 

 

「授業と言ってもアドバイスのようなものです。我々がここに所有している空間のデザイン……親しみやすく『模様替え』とでも呼びましょうか。模様替えのやり方や契約におけるパスの繋ぎ方などですね」

 

「急に可愛らしくなったな……いい加減あの真っ黒空間にも飽き飽きしていたところだ。正直かなり助かるが……お高いんでしょう?」

 

「貴方はそう疑うので授業という形にしたのですよ。ゲマトリアの先輩からのね」

 

「だからこそ授業料が発生しそうで怖いんだよ。最近の黒服はあの手この手で私に利があるように動いているからな。あとでまとめて請求されるのでは無いかと、生きた心地がしない」

 

「クックック……それは無粋ですよ。もちろん今後の貴方の研究成果は共有していただきますが」

 

「とんでもないものを要求されそうだ」

 

 

これが教員免許を持つものの姿か?いやそもそも人かどうかも疑わしいのに……いや待て、教員免許の顔写真はこの姿で写っているのか?めちゃくちゃ面白いだろう。なんか見たくなってきたな。

 

その後私は黒服から色々と教わり、ようやく真っ黒空間からおさらばする事ができた。

 

 

「んんーー……ふぅ、我ながら会心の出来だな。落ち着く良い空間だ」

 

 

綺麗な青空。窓から広がる水平線。そして昔ながらな学校の椅子、机、教卓、黒板。

なんと、夜という概念も実装できたのだ。夜の空にはたくさんの星々が広がる幻想的な場所となる。素晴らしい!!これは……いいものだ。

 

 

「そのうち仮眠室や来客用の面談室も増設しよう。きっと過ごしやすいだろうな」

 

 

どんな内装にしようか試行錯誤していた時、閃光が走ったかのように閃いたこの空間は他のデザインで苦労していたはずだったのにこのデザインだけはスムーズにイメージ出来た。

 

 

「自宅以外に自分だけの空間があると便利だな……下手にキヴォトスで『恐怖』になるとセイアが反応してしまうだろうし」

 

 

ふぁー……やることやって少し疲れたのだろう。眠くなってきたし少し昼寝でもしようかな。

 

おやすみ。

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