矛盾の化身   作:ゼノアplus+

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「クソクソクソッ、今日は厄日だ!!私はただ食事に来ただけだったのに!!」

【キュイーン……】

「またアツィルトの光か……!?待て待て待て待て……これ以上は流石に……ッ!!


ドガァァァァァァァン!!!!


『クックック……貴方も立派なゲマトリアの1人。そして私の実験対象である『生徒』の1人なのです。『大人のカード』を使用しなければ生き残れないこの状況を作り出すために、わざわざ預言者を吊り出しました。さぁ……見せてください。その真価を、その代償を……!!』



違いを痛感する静観の理解者

遡ること数時間前

 

 

「アビドスへの立ち入り許可、ですか?」

 

「そうだとも。といっても、行きたいラーメン屋があってそこにさえ行けばすぐ帰るさ。暁のホルスに接触しようなんて微塵も思っていない」

 

 

ゲマトリアに正式に加入してから1ヶ月が経った。時の流れとは早いもので私も一端の万魔殿メンバーに認められてきた。

 

やはりチアキの存在が大きい。誰にでも分け隔てなく笑顔で接するあの笑顔の前では書類などその辺の雑草と変わらん。今日もさっさと雑草を処理して念願の柴関ラーメンに赴こうとしていた。

 

 

「私に許可を取る必要などないと思いますが……」

 

「アビドスは黒服の実験場だろう?土足で踏み入るのは私の居心地が良くない。まあ……私が美味しく食事をする為だな」

 

「そういうことですか。構いませんよ、現在はカイザーコーポレーションとのやり取りが主でアビドス自体にはあまり接触していませんから」

 

「分かった。じゃあ入るぞ」

 

「……念の為お聞きしますが、生半可な準備でアビドスに入るのはお勧めしませんよ?」

 

「いざとなったら転送装置で離脱するさ」

 

「そこまで万能的なオーパーツでは無いと説明しましたが、貴方がそういうのなら問題ありませんね。()()()()()()()()

 

 

無事、黒服からも許可が取れたので目の前に広がるアビドス砂漠に足を踏み入れる。

 

砂漠とはいっても元々はキヴォトス随一を誇っていた都市だ、高層にはまだ砂に埋没していない道路があるし地図や水分もしっかり準備してきた。

 

そう……試される大地アビドス。私は今、新たな地に足を踏み入れたのだ……!!

 

 

「なーんて、そんなこと考えても普通に着くんだがな」

 

「らっしゃい、見ねぇ顔だが1人かい?カウンターへどうぞ」

 

 

柴関ラーメン。アビドスで経営されている数少ない飲食店の一つ。ここのラーメンはアビドス廃校対策委員会お気に入りなだけあってとても美味いラーメンが提供される。しかも一杯580円とお手頃で、大将も人が良い今まで見た中で最高の飲食店だ。

 

 

「柴関ラーメンを一つ」

 

「あいよぉ!!」

 

 

懐かしい景色だな……そう感じるのは多分、私が前のキヴォトスでも訪れた事があるからだろう。

目を瞑れば、暁のホルスこと、小鳥遊ホシノ率いるアビドス高校の面々が楽しそうに食事をしている姿が浮かぶようだ。

 

 

「へい、柴関ラーメンお待ち!!」

 

「ありがとう。いただきます……ッ、美味い」

 

「そうだろうそうだろう、いい食いっぷりだなお客さん。他の地区から来たのかい?」

 

「ああ、ゲヘナからだ」

 

「はるばるこんな店までよく来てくれたもんだ。チャーシューチャーシュー丼サービスだ」

 

「何から何までありがとう。大将はどうしてここに店を?」

 

 

サービスされた丼物に舌鼓を打ちつつ大将とそんな会話をする。

 

 

「なあに、昔からここでやってるから愛着があるのさ。周りはどんどん他の地区に越していくが、どうにも離れる気にならねぇ。もっと条件のいい立地はあるが……この店を楽しみに来てくれる客が居るからな」

 

「ほう……素晴らしい心構えだ。ご馳走様、また来させてもらうよ。今度は食にうるさい奴を連れてくる」

 

「そりゃあいい!!腕がなるってんだ!!毎度あり!!」

 

 

久しぶりの柴関ラーメン……最高だ。

 

店を出て満たされた腹を撫でながら私は歩く。少し散歩でもするか……

 

 

そう考えたのが運の尽きだった。

 

 

突然の砂嵐が吹き荒れた。

 

電子機器にも影響が出たのかスマホの地図アプリが反応を示さなくなる。

ここで下手に動くのは得策では無かったが、動かなければ砂に埋もれるだけ。空を見え上げても砂嵐が濃くなってきていて太陽の位置から方角を確認することも出来ない。

幸い持ってきた食料や水はしっかりと鞄に詰めている為遭難したとしても数日はなんとかなる。転送装置も()()()起動しないが、砂嵐さえ収まれば使えるようになるはずだ。

 

そして歩き回ること3時間ほど。

 

流石に少し疲れてきたので休憩するために小岩に腰をかけた時、奴の声が聞こえてきた。

 

 

「まさか……おいおい、最悪の状況だぞ」

 

 

地鳴りのような音と共に、白銀に輝く装甲が砂嵐を穿ちながら姿を現した。

 

 

「ビナーだと!?どうしてこんな近郊に……違う!!私が砂漠側に歩いていたのか!!」

 

 

デカグラマトンの預言者、第三セフィラ、ビナー。

 

大蛇のような長い胴体に鯨のような特徴を併せ持つ起動兵器。奴はアビドス周辺の砂漠を周遊している存在で、目に映るモノを悉く破壊している。

 

かのカイザーコーポレーションでさえ、対デカグラマトン大隊という対ビナー専門の軍隊を持つほどの危険度を誇る実質的なアビドスの王者だ。

 

 

「クッ……いや待て、黒服がパスを得ていたはず……なんだと?砂嵐が晴れているのに転送装置も通信機も使えない……ビナーの仕業か」

 

 

ビナーが私の存在に気づいた。私を認識し、分析し、敵対者として定めた。

 

 

「やるしかないってか」

 

 

私は愛銃を取り出し構える。いくら射撃が当たらないとはいえあの巨体ならばそのうち命中する。最悪身体能力で近づいてぶん殴る。

 

そしてビナー私に向かって突進してきた。

 

 

「それはっ、ズルだろうが!?」

 

 

ビナーからの()()を全部避ける気でいた私だが、流石に物理的な衝撃は逃しきれない。

奴の進行方向から抜け出そうとするが、執拗に追ってくる。一応牽制射撃をしているが効いている様子はない。

 

 

「やっば……当たる……ゴハッ……!!」

 

 

いっっっったい!!

 

ビナーの突撃に轢かれた私はあまりの痛みに体が動かず受け身を取ることも出来ずに砂の上を転がった。

 

……ああ、神秘が高すぎるツケだな。今まで戦闘において碌なダメージを受けてこなかったから、いざこういう場面で弱い。

 

 

「ぐぎ………ケホッ……ケホ……」

 

 

砂が口に入って気色悪い。

痛い、怖い、辛い……

 

戦いは好きじゃない。

人に銃を向けることすら忌避感があるくらいだ。いずれは強敵を前にこうなるのも理解していたはず……だが、

 

 

「ここで死ぬには……勿体無いよなぁ!!!!」

 

 

私だけの持ち味を活かせ。

 

自分で自分の指揮をしろ。

 

砂上では奴の方が有利だ。

 

ならば……()()()()

 

私は翼をはためかせ、天高く飛ぶ。

 

 

「どうだビナー、見下ろされるのは……いや、見上げるのは初めてだろう!?」

 

 

ビナーは私が空を飛んでいることに対し数秒だけ停止したあと、背部のVLSからミサイルを放ってきた。

 

 

「クハハハハ!!!!照準が私目掛けて飛んで来るんだ、外しはしないさ!!」

 

 

いつかの日にロボットアニメで見た、飛んできたミサイルに対しバルカンを乱射する事で誘爆させ攻撃を防ぐやり方。

 

私は銃を撃ちまくってミサイルを破壊し、爆発の煙の中から滑空し肉薄する。

 

 

「張り付いたぞ!!まずは一撃……堕ちろ!!」

 

 

滑空の位置エネルギーを利用しビナーの頭部に向けて全力で足を振り抜く。

 

驚異的な身体能力から放たれた一撃はビナーの巨体を撃ち抜き激しく仰け反らせることに成功した。

 

 

「ハハ、ハハハハハ……なんだ、攻撃は効くんじゃないか。だったら……そのうち倒せるな」

 

 

ハードコアでフロムゲーをやるようなモノだ。攻撃が一切通らないならこのままなんとか奴の攻撃をかわしながら逃げるしか無かったが弾薬はいつか尽きる。だが、撃退させさせる事ができればその心配も必要ない。

 

作戦が決まって希望も見えてきたので気合を入れ直しビナーを見据えたところで、その異変に気づいた。

 

 

【キュイーン…………】

 

 

「ああ?…………アツィルトの光!?」

 

 

アツィルトの光とは、ビナーの持つ最大火力の熱光線のことだ。その威力は巨岩だろうが難なく溶かすほどの高熱。流石の私とはいえこれを食らえばひとたまりも無いだろう。

 

 

「チッ……『恐怖』!!」

 

 

私は瞬時に自身を反転させ恐怖を身に纏う。神秘を纏っていた時よりも力が溢れるのを感じ取った私は、全力で飛翔しビナーの射角から逃れるために奔走する。

 

そしてついに、必殺の一撃が放たれる。

 

 

「やばいやばいやばいやばい!?!?あいつ、アツィルトの光を撃ちながら射角を変えれるのか!?流石に聞いてないぞ!!」

 

 

なんとビナーは光線を放ちながら、飛び回る私に向けて首を動かしているのだ。

 

まだ光線との距離は離れているがそれでも熱量がありすぎて私のところにまで熱が伝わってくる。

 

必死に逃げてはいるとそのうち冷却モードに入ったのか、アツィルトの光を中止し再度突進やミサイルでの攻撃を行なってくる。

このまま距離を取られていたらそのうちまた冷却が終わりアツィルトの光を放ってくるだろう。そうなればもう、私のジリ貧だ。

 

そう思ったのも束の間、元々発射時間を調整して様子見だったのか、すぐにアツィルトの光をもう一度放とうとしてきていた。

 

 

「またアツィルトの光!?待て待て……これ以上は流石に……うおあぁぁ!?!?」

 

 

もう一度放たれた熱線に反応が遅れ、すぐに逃げたはずだったが……ギリギリで回避したせいで翼を火傷してしまった。

 

 

「あっつう……!!熱いで済むだけ、ヘイローに感謝しないとな……!!ああ、クソッ……使うしかないのか……ここで?」

 

 

攻撃を避けながら、私は懐にある『大人のカードのカケラ』の存在を思い出す。

使用のためには一度『神秘』に反転しないといけないが、今その隙を伺うのは厳しい。せめてもう一度蹴りを入れたいところだがこれもなかなか難易度が高い。

 

 

「救援は見込めない。カイザーが来てもこの戦闘には参加しないだろう。ゲマトリアにも通信ができない。私1人では倒しきれない……ハハッ、ここまで来ると、作為的なモノを感じるよなぁ……黒服ゥ!!」

 

 

絶対にアイツの仕業だ。ええい、新人に対して随分と豪華な歓迎をしてくれる!!

最近なんだか優しいと思ったらこういうことか!?

 

クソッ、こんな事なら事前の許可どりなんかしなければよかった。コソッと柴関に行ってコソッと帰れば完璧だったのに。

 

 

「うん?さっきより体に力が入る……なるほど、憎悪も『恐怖』の強化対象ということか。良い情報が得られたな、こんな状況じゃなければなァ!!」

 

 

数発目のアツィルトの光が私に向かって放たれた。間一髪のところで回避したがあまりの熱で天使の翼の一部が焦げた。あっちいいいいいいいい!?!?

 

 

「どうにか強制的に中止させる方法……いや、行ける!!」

 

 

私は狙いを定めてビナーの背後に回り込み急降下を開始する。

 

私の狙いは単純、自滅させる事だ。ビナーが巨体で、上空にいる私に少しでも近づくためにその巨体の大半を砂から露出させていることが幸いしている。熱線が追ってくるなら、その胴体に飛び込む事で自滅、または攻撃の中止をさせることができれば御の字。

出来なくとも明確な隙は生まれる。

 

 

【キュウゥゥゥン】

 

 

「作戦勝ちだクソ蛇め……!!」

 

 

狙い通り、ビナーは攻撃を中止。だが私との距離が近づいたことでまた巨体での攻撃に切り替えてきた……が、近づいたのは私も同じ条件。

 

胴体に蹴りを放ち、0距離でマガジン全部撃ち切った。

 

 

「今だッ……『神秘』……ああ、使ってやるさ。使わずに死ぬくらいならな!!」

 

 

 

【大人のカードを使用する】

 

 

「使用ッ!!」

 

 

そして……光が溢れる。

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