輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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兄の雁哉君視点です。黒死牟戦の描写を意識しています。


10話 風柱邸

ー風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎー

 

 

ー月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮ー

 

 

俺の使う風の呼吸とは比べものにならない速度で、目の前の男は旋回し突進しながら斬撃を繰り出す。

 

生半可な受けをすればこちらもただでは済まないと判断し、出の速い壱の型で迎撃する。

 

 

「はァア! こりゃあまた、面白い太刀筋してんなァア!!」

 

 

俺の頭上を飛び越えていくように身をひねって躱し、地面に着地したのは不死川さんだ。

 

現在、俺は風柱邸で月の呼吸の太刀筋をお披露目中だ。

 

煉獄邸でのやらかしがあったので、最初は型を振るう様を座ったまま見てもらうつもりだったのだが、

 

この人は血の気が多いのか、直接手合わせを言い渡された。

 

ひとまず、この人との手合わせさえ終われば、月の呼吸の太刀筋は現役の柱全員に見せたことになる。

 

 

「おらァア! どんどんいくぜェ!!」

 

 

ー風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹ー

 

 

ー月の呼吸 弐ノ型 珠華の弄月ー

 

 

風の風圧と月輪の斬撃がせめぎ合う。

 

 

「まだまだァア!!!」

 

 

ー風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風ー

 

 

爪の引き裂きに似た風の斬撃に対し、俺はそれを横なぎに一閃し払う。

 

 

ー風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪ー

 

 

しかし、その間に頭上から接近され、斬撃が打ち下ろされる。

 

俺はそれを木刀で受け止め、すかさず全身から木刀へと運動量を伝える。

 

 

ー月の呼吸 伍ノ型 月魄災禍ー

 

 

「!」

 

 

刀の振りなく弾き飛ばされた不死川さんは、一旦後方に下がる。

 

 

「なんだァア 今のはァア?」

 

「・・・発勁と似た要領ですね。中国武術の技の一種です。

 距離を詰められた時用の苦し紛れの手段として我流の型に入れました。

 まあ、月の呼吸とはまるで関係ない型なので、忘れていただいても問題ないです。」

 

「ハァッハア! じゃあ仕切り直しだァ!」

 

 

今度は型など関係なく、風の呼吸の斬撃をこれでもかと放ってくる。

 

風でズタズタにされるのはごめんなので、こちらも似たように月の呼吸の斬撃をありったけぶつける。

 

 

「ウオオオオオ!!」

 

 

これだけ月の呼吸の斬撃の余波を浴びせても、綺麗に捌いている不死川さんには驚きでしかない。

 

おそらく経験によるものなのだろう。この俺ですら把握しきれない斬撃を全て防ぐのだから。

 

自身の限界近くまで剣を振るい息が乱れるものの、このせめぎ合いに気分が高揚する。

 

この人なら、俺が現時点で使える最高火力の型を打っても問題なさそうだ。

 

 

ー月の呼吸 陸ノ型 常世弧月・無間ー

 

 

ー風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐ー

 

 

俺は最後の締めとばかりに一呼吸でありったけの波状攻撃を繰り出す。

 

それを不死川さんは凄まじい剣速で周囲を切り伏せ打ち上げるように風をまとった斬撃で受ける。

 

 

「ゼエゼェ・・・」

 

「はぁはぁ・・・ふう・・・これで俺が見せられる型は全てですね・・・」

 

 

調子に乗って過去一剣を振り回した気がする。腕が鉛のように重い。

 

 

「すみません。衣服をかなり割いてしまったようですね。弁償します。」

 

「いらねェよ、そんなもん。替えはいくらでもあらァア」

 

 

お互いかなり消耗したようなので、一度休憩することになった。

 

 

 

 

 

 

 

「間ァ、お前との手合わせで、全部の型捌いたやつァアいるのかァア?」

 

 

縁側で二人並んで一息ついている間、不死川さんは俺に質問してきた。

 

 

「現状、悲鳴嶼さんと不死川さんだけですね。といっても、実際に手合わせしたのが、他には宇随さん、煉獄さんのみなので、胡蝶・・・カナエさん、冨岡さんは対応してくるかわかりません。」

 

「そうかァ。やっぱり悲鳴嶼さんはさばけんのかァ・・・」

 

「はい。それどころか完封されましたよ。逆にこっちが何度死にかけたか・・・終わった後、『いい鍛錬になった』とだけ言われました。やっぱりあの人は格が違いますね・・・」

 

「そりゃあなあァ 俺でも足元にすら及ばねぇからよォ」

 

 

そこまで言い切った後、お互いに茶をすすった。

 

しばらくの間、会話が途切れる。

 

 

「・・・そういえば、つい数日前に、カナトが稽古を受けに来たって聞いたんですけど、どうでしたか?」

 

「あァ? ああ・・・まあ、いろいろあってなァ・・・」

 

「? カナトのやつ、何か失礼なことしたんですか? それとも見込みなしですか?」

 

「いや・・・そうじゃなくてなァ・・・」

 

「・・・?」

 

 

再び会話が途切れてしまった。何かまずいことでも言っただろうか?

 

不死川さんも心なしかバツが悪そうだ。

 

 

「間ァ・・・苦労かけて悪りィって稲葉のやつに伝えてくれやァ」

 

「え? どういうことですか?」

 

「それだけ言えば伝わるからあまり詮索すんなァ」

 

「・・・はい」

 

 

不死川さんがこんな風に困ってんの初めて見る。これは直接カナトに聞いた方が早いな・・・

 

俺は話題を変えることにした。

 

 

「ちなみにカナトの腕っぷしはどうでした? 俺あいつが蝶屋敷に行ってから直接手合わせしたことないんでわからないんですよ。」

 

「腕の方かァ・・・なかなか見込みあるぜェ。正直なんでまだ柱になってねェのかわかんねェくらいだなァ」

 

「そうなんですね。ちゃんと鍛錬を欠かしてないようで安心しました。」

 

「むしろ相当鍛えてんなァア あれはァ・・・まあ本人は不本意かもしれねェがなァ・・・」

 

「・・・?」

 

 

言わんとしてることがわからない。不本意ってことは強制的に鍛錬させられてんのかあいつは。

 

そういえば、蝶屋敷に住むようになったのって、花柱のカナエさんの弟子になったからって言ってたか。それでだな。

 

 

「なるほど。カナエさんが相当鍛えてくれてるってことですね。いいことじゃないですか。」

 

「そ・・・そうだなァ・・・」

 

「?」

 

 

なんだ? この人またバツが悪そうにしてるぞ。しかし詮索するなって言ってたし、今ここで問いただしても意味がないか。

 

詳細は全てカナトから聞くとしよう。

 

 

「それじゃあ俺は帰りますね。次の柱合会議でお会いしましょう。」

 

「ああァ 気を付けて帰れやァ」

 

 

 

俺は不死川さんとカナトの間で何があったか知る由もなく、風柱邸をあとにした。

 

 

 

続く

 

 

 

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