輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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兄の雁哉君視点です。独自解釈が多いですが、大目に見ていただけると幸いです。


18話 赫刀

 

「上弦の・・・掃討だと・・・!?」

 

 

柱のみんなから、驚きの声が上がる。俺は、カナトに作らせたホワイトボードに油性ペンで文字を書き込んでいく。

 

 

「はい。正確には、上弦を掃討し、無惨を討伐する作戦です。」

 

「雁哉ァ・・・上弦はもうかれこれ100年以上打ち取った記録がねェんだ・・・どういうつもりだァア」

 

 

さっそく不死川さんから物申される。続いて、悲鳴嶼さんが数珠を鳴らす。

 

 

「そもそも鬼の首領である無惨は、平安時代、即ち今より千年以上も昔から存在し、姿すら見たものがいないと聞く・・・

 間・・・一体どのような手で、無惨を討伐するのだ?」

 

 

柱たちからの視線が俺に集中する。

 

俺はホワイトボードに必要な説明を書き込んでいく。

 

 

「まず、現状について話します。俺たち鬼殺隊は現在500名程度で構成されており、剣士150名、隠等の非戦闘員が350名程度在籍しています。

 藤の花の家紋の家や、産屋敷家の関係者まで入れると、話がややこしくなるので割愛します。

 続いて、鬼の勢力ですが、首領の無惨、十二鬼月、そのほかの多数の雑魚鬼が存在しています。

 ここで押さえておきたいのが、鬼を一匹残らず掃討するのは非現実的だということです。

 なぜなら、無惨さえ居れば、鬼の数など無限に増やせるからです。

 よって、我々鬼殺隊は、無惨さえ討伐できれば、鬼はこれ以上増えないばかりか、その他の既存の鬼も含めて消滅し、目的を達成できるわけです。」

 

「いやいや。待て待て待て。その無惨を倒せずに今日まで至っているのが現実ではないのか?」

 

 

俺の説明に、伊黒さんから声が上がる。まあ当然だろう。予想は容易にできた。

 

 

「はい。即ち、如何にして無惨を倒すか。そこに我々は全力を尽くさなければなりません。」

 

「間君。さっきから当たり前の話しかしていないのですが、一体なにを私たちに伝えたいのですか?」

 

 

しのぶからも指摘が入る。俺はさらに話を進めた。

 

 

「無惨を倒すためには、奴を見つけ出し、大勢の柱で取り囲み、朝になるまで袋叩きにして倒すしかありません。

 なぜなら、戦国時代、始まりの呼吸の剣士が無惨の頸を刎ねたばかりか全身を切り刻んでもなお、無惨は逃亡し生き残ったからです。

 奴を殺すには相当数の戦力がいる。加えて、奴の下には柱よりも強い上弦が6体おり、そいつら一匹を倒すだけでも柱3人の戦力が要求されます。

 奴らを全て削り、無惨にたどり着くころには、柱の生き残りは一体何人残るでしょうか。

 少なくても俺は、無惨と上弦を全て倒そうと思ったら、最低でも柱相当の戦力が15名は必要だと思っています。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

俺の説明に全員が絶句する。始まりの呼吸の剣士が無惨と戦った時の話は、柱のみんなにはこれが初出だ。

 

加えて、上弦一体倒すたびに柱が1名殉職すると仮定して、無惨までに9名以上たどり着かせるのに必要な人数も伝えた。

 

現状柱は10名になった。柱の上限9名のしきたりを撤廃するよう輝哉さんに伝えたのは、この計算を根拠にしている。皮算用ではあるが・・・

 

 

「話を続けます。即ち俺たちが無惨を討伐しようと思ったら、現状鬼殺隊の戦力は圧倒的に足りないのです。

 そこで、それを補うために、みなさんにお願いがあります。」

 

 

俺がそこまで言うと、柱のみんなは顔を上げた。

 

 

「あと一年以内に、見込みのある継子を各自一人ずつ見つけて育成してください。

 ここにいる柱の半分でも継子が柱相当の戦力になれば、目標の15名には到達できます。」

 

「待て! 間!! そんな簡単に継子は育たん!! 俺の継子だった甘露寺はなんとか柱までこぎつけたが・・・

 大半は、弟子に取っても稽古に耐えられずみな逃げ出す始末だ!! よしんば稽古に耐えられたとしても任務中に死ぬことが多い!!

 第一!! 任務の片手間で弟子を鍛える程度では!! 柱相当の剣士などそう輩出できないぞ!!!」

 

 

煉獄から抗議の声が上がる。至極まっとうな意見だ。しかし俺はその問題をクリアするための手を既に打ってある。

 

 

「はい。煉獄の言う通り、任務の片手間で弟子の育成をチマチマしているようでは、そう柱相当の隊士など輩出できません。

 なので、雑魚鬼の掃討からは、柱のみなさんは手を引いてもらいます。」

 

 

「間君って言ったかしら!? そんなことをしたら鬼の被害が拡大するわ!!

 柱なしでどうやって日ごろの鬼の討伐任務をやりくりするの!?」

 

 

甘露寺も顔を青ざめて俺に抗議する。柱が現場にこない事態を想像して、一般隊士達の身を案じ、血の気が引いているのだろう。

 

 

「はい。至極もっともな指摘です。そこで、俺が管轄する元隠の遠距離支援工兵部隊を総動員し、一般隊士達の任務で連携し、やりくりしてもらいます。」

 

「は?」

 

 

ずっと静かだった冨岡さんから呆けた声が聞こえた。気にせず説明する。

 

 

「かねてより、俺は隠の遠距離支援工兵部隊の育成を行っていました。本日までに、彼ら50名ほどで協力し、500匹以上の鬼の討伐実績があります。

 もちろん、一般隊士達の協力があってこそですが・・・現時点で、負傷者こそでているものの、死者は一人も出ておりません。」

 

「間。お前がその遠距離支援部隊ってのを派手に育てていることはかなり前から聞いていた。

 しかし、俺の印象では、死人が出なかったのは運がよかっただけだ。現状、地雷原に鬼を呼び込んで爆破し、鬼が再生に手間取っている間に鬼の頸を刎ねる作戦一辺倒だろう?

 たまたま作戦が毎回機能して、たまたま鬼の頸を切れる隊士一人が隙を見て倒せていただけじゃないのか?

 今後、通用しなくなる恐れは充分に考えられるぞ。」

 

 

俺から事情を聞いている宇随さんはかなり鋭い指摘をする。そのうえで、俺の案は楽観的すぎるのではないか、と。

 

 

「流石宇随さん。俺の話だけでなく、現場の隊士達からも情報収集していたんですね。よく理解されています。」

 

「だったらお前の計画は・・・」

 

「でも、つい先月に完成した赤鱗手榴弾のことは聞いていませんよね?」

 

「・・・は?? なんだそりゃ??」

 

 

俺は今回目玉の情報をここで披露する。ほかの柱たちも目を丸くし息を飲んでいる。

 

 

「赤鱗手榴弾は、カナトが上弦の弐と戦った際に、日輪刀が赤く変化した現象から着想を得て二人で開発しました。

 まず、ご理解いただきたいのが、日輪刀の主成分である猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石ですが、

 これは熱や圧力もしくは衝突の際のエネルギー・・・つまり力が加えられることで赫赫と発光します。

 この状態を日輪刀で再現したものを赫刀といいます。これは始まりの呼吸の剣士が万力の握力で発現させたものと同じ状態です。

 この状態の刀もしは武器で鬼が負傷すると、再生することができません。

 無惨も赫刀で切り刻まれて再生することができなかったことから、その有用性は容易に考察できます。

 現在、この赫刀と同じ状態のものを、手榴弾内部での火薬による熱、圧力、衝突力で再現し、鬼に攻撃する兵器が赤鱗手榴弾です。

 今後これを量産し、現場の隊士に大量に使用してもらいます。雑魚鬼なら目を負傷させ再生阻害させた時点でほぼ勝ちは確定でしょう。

 簡単に頸を刎ねることができるようになります。

 将来的には、小銃でもこれと同じ状態の弾丸である赤鱗弾を撃てるように現在研究開発中です。

 これらが遠距離支援部隊に普及すれば、雑魚鬼の掃討は容易になるでしょう。

 以上のことから、柱が任務を請け負わなくても支障はないであろうことの根拠となります。ご理解いただけたでしょうか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

宇随さんはもちろん、他の柱たちも絶句している。この状況で、薄ら笑いを浮かべているのは、カナトと輝哉さんくらいだ。

 

 

「では、雁哉のいう通り、柱のみんなには継子の育成を最優先にしてもらってもいいだろうか?」

 

 

ここでさらにダメ押しの輝哉さんの発言が入る。まあ、概ね打ち合わせ通りだ。これで柱のみんなが納得してくれるといいのだが・・・

 

 

「一つよろしいか?」

 

「なんだい義勇?」

 

 

ここで冨岡さんから声が上がる。それを聞き、輝哉さんが発言を促す。冨岡さんっていざって時はかなり鋭い人だから、正直今日一怖い・・・

 

 

「現場に十二鬼月が現れた際はどうするんだ? 一般隊士の動きでは兵器があっても通用しないんじゃないか?

 最悪の場合、部隊で動いてるのが裏目に出て、大勢の死者がでるぞ。」

 

 

冨岡さんの発言で、再び柱のみなさんから視線が俺に集中する。めっちゃ圧を感じる・・・

 

 

「ご指摘ありがとうございます。その場合は、すぐさま柱を派遣します。柱が駆け付けるまでは、現場の隊士には火器で時間稼ぎをしてもらいます。

 その時に備えて、支援部隊には必ず一人無線機を持たせておきますので、鎹烏以上の速度で連絡ができると思います。」

 

 

「待ってください。無線機って何ですか?」

 

 

予想外の単語だったのか、しのぶから声が上がる。ほかの柱も同様に気になったようだ。

 

 

「・・・電話ってあるだろ・・・あれは電話線がつながってる同士でやり取りするけど、無線は電波っていう電磁波を飛ばして連絡を取る・・・その機器のこと・・・」

 

 

俺は疲れた声色で回答する。もうすでにしのぶがやらかしたから時すでに遅しだが・・・

 

 

「しのぶさん無線機気になる!? じゃあ原理教えてあげるね!! 始まりは1895年のイタリアで・・・」

 

「おい、カナト!! やめろ!!! しのぶも余計なこと聞くな!!! カナトが科学講義を半日かけてやり始めるぞ!!!」

 

「は!! すみません!!! カナト君なんでもないです!! この話は聞かなかったことにしてください!! お願いします!!!」

 

「ええ~!? せっかく質問してくれたのに~。つれないなぁあ・・・」

 

 

俺は速攻カナトに釘を刺し、加えてしのぶに訂正させた。冗談じゃない・・・カナトの無線機講座で柱合会議が全部潰れるところだった・・・

 

 

「カナト。代わりに今度私に教えておくれ。だからこの場では控えてもらえないだろうか?」

 

「わかりましたお館様!! ちゃんと説明できるよう資料作っておきますね!!」

 

 

仏の微笑みで、輝哉さんから助け船が出る。ひとまずありがたいが、輝哉さん・・・後悔しても知りませんよ・・・

 

 

「それでは、十二鬼月が出た時の対応についても懸案事項は払拭できたかな? 義勇。」

 

「は! もう一点よろしいですか?」

 

「なんだい、義勇?」

 

 

冨岡さん・・・まだ何かあるのか・・・これ以上爆弾は落としてほしくないのだが・・・

 

 

「もし仮に、柱の人数が増えて、上弦を全て掃討できたとして、無惨は俺たちの前に現れるのでしょうか?

 始まりの呼吸の剣士の時同様、行方をくらませるのでは?

 そうなれば、柱をいくら増やしても奴を倒せなければその努力も無意味になってしまう。」

 

 

うん・・・ごもっともな意見だ・・・この人は学生の卒論発表会の質疑応答で重宝する人だ・・・発表者には地獄だが・・・

 

まあ、対策は考えてあるから問題はないが・・・

 

 

「それについては手はあります。無惨の目的を逆手に取るのです。

 奴は太陽を克服することを目的としています。その手段として、青い彼岸花の捜索と、太陽を克服する鬼の出現を待っています。

 ちなみに青い彼岸花とは、無惨を鬼にした花の品種です。

 我々が先に青い彼岸花を見つけ出し、産屋敷家で情報を独占します。そして、独占した事実を奴らに伝えるのです。

 そうすれば、無惨は産屋敷家を探しに出てこないわけにはいきません。

 今代中に現れなければ、情報を抹消すると伝えれば、奴は必ず我々の前に現れるでしょう。」

 

「な・・・なるほど・・・!」

 

 

よし・・・説得できたな・・・これで決着がつけばいいが・・・

 

 

「ちなみに青い彼岸花はどこに生息しているんだ?」

 

 

流石冨岡さん・・・凄まじい抜かりなさだ・・・ここまで手ごわいとは思っていなかった・・・

 

 

「それは現在捜索中です。奴らが千年見つけられない以上、絶滅している可能性もありますが、朝顔のように朝方から午前中までしか咲かない花の可能性もありますので、奴らよりは発見の可能性はあると思います。」

 

「わかった。おかげですべての疑問が腑に落ちた。礼を言う。」

 

 

ようやく終わった・・・もう柱合会議で今後の方針の発表なんて二度とごめんだ・・・

 

俺は他に質問がないのを確認し、輝哉さんに目配せする。

 

 

「では、今後は雁哉のいう通り、各自新しい継子の育成に力を注いでほしい。

 君たちの働き次第で、鬼舞辻無惨を倒せるかどうか決まる。よろしく頼むよ。」

 

「御意!!」

 

 

 

締めの輝哉さんの言葉で、その日の柱合会議はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




実は赫刀については原作であまり言及されていません。禰豆子の爆血、万力の握力、日輪刀同士の衝突以外に描写がないため、雁哉君が言うような話があってもいいのかなと思い、こんな内容で投稿しました。因みに赤鱗手榴弾なんて原作には影も形もないです。筆者が勝手に思いついた設定です。不快だったらすみません。ちなみに手榴弾内部で赫刀になった金属破片が散り散りに周囲に飛ぶ様子が、赤い鱗が飛び散るように見えるかなぁとイメージして名前を付けました。とりあえずこの兵器のおかげで隠でも鬼の討伐に貢献できるようにしました。これ以降鬼殺隊の雑魚鬼討伐は集団戦術が基本になります。雁哉君は代えの利かない天才集団で牽引するよりも代えの利く有能が多い組織づくりを目指しています。今回の内容が死に設定にならないよう今後面白い話を書けるよう頑張りたいと思います。
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