輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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兄の雁哉君視点です。前回のひきで今日終わるのは忍びないと思い、連投させていただきます。少しはマシになればよいのですが・・・


20話 痣 後編

「これは・・・一体どういう状況ですか?」

 

 

俺はいつものように、カナトと話をするつもりで蝶屋敷に立ち寄った。

 

この午後のおやつの時間ともいうべき時間帯なら、必ず蝶屋敷の客間に来てると思ったからだ。だが・・・

 

 

「少し話をした後、稲葉君は先に家に帰ったそうよ。アオイもそれからこの調子で・・・」

 

 

当のアオイは両の掌で顔を覆い、落ち込んでるのか泣いてるのか、一向に口を利かない。

 

その傍らで、カナエさんが困ったように俺に状況を説明してくれる。

 

 

「間君。私はアオイから事情を聞きだすから、あなたは稲葉君の後を追ってくれないかしら?」

 

 

俺はすぐに蝶屋敷を発った。

 

カナトの家は、生産拠点と蝶屋敷の中間地点にあり、比較的近くにある。

 

走って向かったこともあり、すぐにたどり着いた。

 

カナトの家は、草柱邸と言われながらも、敷地には一面藤の花が咲き誇っている。

 

しのぶの毒の研究で大量に必要だからと栽培してるとのことだ。

 

その他にも、多種多様な花が育てられているため、鬼殺隊では花屋敷と呼称されている。

 

浅草の某遊園地かよと突っ込むのは今は無しにしよう・・・

 

屋敷の玄関は入ると鈴の音が鳴る。

 

花屋敷は隠の人の出入りが多いため、来訪がわかるようカナトがつけたらしい。

 

だが俺は、玄関には入らず、庭の方に進み、縁側が見える場所に移動した。

 

 

「やっぱりここか・・・」

 

 

カナトが縁側に一人座っていた。心ここにあらずといった感じだ。

 

俺があと3歩の位置まで近づいてようやく気付いたようだ。

 

 

「・・・雁哉・・・?」

 

「随分と上の空だな・・・もうすぐ夜だってのに・・・鬼が来たらどうするつもりだったんだ?」

 

「・・・そうだね・・・日輪刀持ってこないと・・・」

 

「いや、いらねぇわ。冗談も通じないのかよ。」

 

 

うん・・・これは重症だな・・・藤重山みたいになってる庭にどうやって鬼が入るって言うんだ・・・

 

俺は何のためらいもなく、カナトの横に腰掛けた。

 

 

「蝶屋敷に寄ったらもう帰ったって聞いた。」

 

「そう・・・」

 

「カナエさんにお前のこと頼まれたぞ。」

 

「そう・・・」

 

「おい・・・」

 

 

俺の言葉にまるで答える気がなさそうなんだが、これは事情を聞ける状態なのか?

 

 

「よくわからんが、アオイが塞ぎこんでるみたいだったぞ。何があった?」

 

 

やがて、カナトは口を開いた。

 

 

「・・・告白されたから振った・・・」

 

「・・・おい・・・まじめに答えろ・・・!」

 

「事実だよ。」

 

 

なんだ? ただの痴情のもつれか? いや・・・それでこいつがこんな風になるとは思えないが・・・

 

 

「わかるように話せ・・・特にお前が落ち込んでる理由に焦点を当ててな。」

 

「・・・僕が落ち込む理由なんて・・・雁哉にはわかってるでしょ・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

正直こいつから事情を全て聞こうとしたら骨が折れるぞ・・・

 

ある程度、俺から話を持ち掛けないと会話にすらなりそうにない。

 

 

「痣のことを気にしてるのは知ってる・・・だがそれとアオイに何の関係がある?」

 

「・・・僕に寄り添いたいって・・・僕の痛みを和らげたいって言ってた・・・だからそばにいさせてほしいって・・・」

 

「・・・そうか。・・・で何が気に入らねぇんだよ。女に言い寄られるなんて俺でも経験ねぇぞ。」

 

「よく言うよ。雁哉には瞳ちゃんっていう可愛い彼女いるくせに。」

 

「あれは俺からいったんだよ。待ちに徹してくっついたわけじゃねぇわ。」

 

 

ようやくカナトから主体的な言葉が聞き出せた。結果流れ弾を喰らったが・・・

 

 

「いいから教えろ。何でへそ曲げてんだよ。」

 

「・・・へそなんて曲げてない・・・」

 

「わかったから・・・とにかく教えろ。」

 

 

こいつ・・・珍しく腹立ててんな・・・何が地雷だったんだ?

 

 

「・・・雁哉は僕に弱音吐いたことなんてないよね・・・」

 

「はあ? めっちゃあるわ。よく愚痴ってるわ。」

 

「でも、僕の前で本当に辛そうにしてるところ見せないよね・・・やっぱり雁哉は僕のお兄さんだからかな?」

 

「まあ、それもある・・・か?」

 

「僕も蝶屋敷の子たちの前ではそうありたかったんだよ・・・」

 

「ん?」

 

「でもアオイちゃんは僕が無理して笑ってるって気づいてたらしいんだ・・・だから素直に話してくれって言われた・・・」

 

「素直に話せばいいじゃねぇか・・・」

 

「いやだよ・・・また悲しい顔させるじゃないか・・・雁哉だって僕に心配かけたくないからいつも気丈にふるまっているんだろう?」

 

「・・・まあ、そうだが・・・っておい・・・そんな理由で腹立てたのか? アオイに? あいつはまだ十三だぞ?

 

 八つ当たりなら俺か、他の柱の先輩でいいだろうが・・・お前らしくないだろ・・・」

 

「ごめん・・・こらえきれなくて・・・」

 

「・・・」

 

「やっぱりさ・・・痣のせいで長く生きられないって思うと・・・それだけで辛くて・・・なんで僕だけって・・・

 いや、みんなには痣なんて出してほしくないけど・・・気持ちの方が整理できなくて・・・

 ねえ雁哉。僕らはなんでこの時代に飛んできたんだろう。神様や仏様が無惨を倒させるためにそうしたのかな?

 この時代で産屋敷家が滅べば、僕らの存在も同時に消えるのかな。だったら倒すしかないとは思うんだけど・・・

 でもさ・・・その結果僕に痣が出て・・・長生きできない体になって・・・それが必要なことだっていうならさ・・・

 なんのために僕は生まれてきたんだろう? 無惨を殺すためだけに生まれてきて、それで死ななきゃいけないのなら・・・

 僕は今までなんのために生きてきたんだろう? もうさ・・・死にたくないのに・・・生きてる意味がわからないよ・・・」

 

「・・・カナト・・・」

 

 

そこまで言い切った後、カナトの目からとめどもなく涙が溢れだした。

 

嗚咽が、夜の帷が降り切った後も、あたりに響き続ける。

 

 

「カナト。お前、上弦の弐と戦った時に言ってたんだろ? しのぶから聞いたぞ。」

 

「・・・え?」

 

 

カナトがふいに俺の方を見る。俺は続ける。

 

 

「『僕たちは生きていく中で幸せになる・・・そのために、生まれてきたはずだ』ってな。もう答えでてるじゃねぇか。」

 

 

カナトは涙を指先でぬぐう。

 

 

「でも・・・どうやって・・・僕は今十六で・・・あと10年も生きられないのに・・・」

 

「じゃあ思う存分楽しまないとな。人の2倍3倍いろんなことを経験していい思いすればいいじゃねぇか。

 せっかく女から言い寄られる経験もしたんだから、死ぬ前に全部経験しとけよ。」

 

「いや・・・アオイちゃん十三だし・・・それはちょっと引くよ・・・」

 

「別にそういう意味で言ってねぇわ・・・けどまあ、人に大事にしてもらうってのは中々望んでも叶わないことだぞ。

 お前のことを大事にしてくれる人たちのことをないがしろにするのはよくないんじゃないのか?」

 

「・・・・・・」

 

 

カナトにも思うところがあったのか、少しだけ表情が緩んだ気がした。

 

しばらくして、カナトは微笑んだ。

 

 

「・・・そうだね。大事にしてくれるのに、突き放すなんてひどいよね。アオイちゃんに謝ってくるよ。」

 

「・・・今から?」

 

「え? だって早い方がいいでしょ? 雁哉のおかげで元気出てきたし。」

 

「そ・・・そうか。しかし、今からだと寝る前の時間帯になるから迷惑だろ? 明日の朝一にしたらどうだ?」

 

「う~ん。そっか。そうだね。明日の朝すぐに蝶屋敷に行くよ。」

 

 

何はともあれ、こいつが前向きになってくれてよかった・・・

 

今までずっと痣のことで悩んでいたことも、これで少しは落ち着くだろう。

 

 

「ねえ。雁哉。」

 

「ん?」

 

「ありがとう。やっぱり雁哉は僕の頼れるお兄さんだよ。」

 

「・・・兄が弟を気にかけてやるのは当然のことだろ・・・」

 

「あはは。それもそっか。蝶屋敷のみんなもだけど、雁哉には一番感謝してる。これからもよろしくね。」

 

「わざわざよろしくされることもねえわ。」

 

 

そうして、俺は腰を上げ、ニコニコするカナトを尻目に、花屋敷から立ち去った。

 

 

 

続く

 

 

 




無事カナト君が持ち直しました。筆者が余命宣告されたら多分仕事続けられなくなると思います(おい)
なのでカナト君はえらいです(適当)
好き嫌いが分かれるキャラクターだと思いますが、温かい目で見てもらえるとありがたいです。
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