輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。この話はネットで浅草の観光地を調べて書きました。他の方がHPで鬼滅の聖地巡礼の場所を解説してたりするので読んでてすごく面白かったです。書いてて現地にいるような気分になれました。
それと私事なのですが、今日は会社から出されたレポートを仕上げたいので、朝の時間帯に投稿します。忘れてしまうかもしれなかったので申し訳ありません。
それと、もし今話までの話で面白いなと思った方がもしいらっしゃいましたら評価して頂けると励みになります。星1評価でなければきっと嬉しいです。感想も誹謗中傷でなければ多分喜びます。一番は皆さんに楽しんで読んでもらうことなので、これからも可能な限り毎日投稿していきたいと思います。


29話 浅草デート

「もしも~し。稲葉君。起きてください。朝ですよ~?」

 

「んん~。あと少し・・・」

 

「もう、稲葉君たら・・・お寝坊さんですね。」

 

 

私は初めての洋式のホテルで緊張していたからなのか、比較的朝早く起きてしまった。

 

隣の少し離れたベッドでは稲葉君が寝息を立てており、私は彼に吸い寄せられるように近づく。

 

彼は洋式のホテルにもそんなに慌てることもなく、昨日は終始、比較的慣れた様子だった。

 

お館様の遠縁の家に養子として引き取られた経歴があるので、とても裕福な生活をしてたのか、こういうところは慣れているのかもしれない。

 

そんな彼の様子を見ていると、私は彼が自分とは違う世界で生きてきた人間なのだと実感する。

 

私の家も、薬売りの家だったから、比較的裕福だったけど、きっと彼ほどではないのだろう。

 

日ごろのしぐさ一つとっても、何だか上品で気品のようなものを感じる時がある。

 

私のような元町娘の女が、彼のような人と結ばれてよかったのだろうか。時々、そんなどうしようもないことを考えてしまう。

 

そんな風に思ってしまうと、やはり気分はよくない。私は首を振って、その思考を追い出す。

 

彼の寝顔をこんな近くで見るのは初めてだろうか。

 

どこか穏やかで、それとなく幼い顔つきで彼は眠る。

 

もともと顔だちもかなり整っていて、そんな表層的な部分も、私が彼に惹かれた理由の一つだ。

 

ついつい、そばに寄って彼を見つめてしまう。

 

いつまでそうしていたのかわからないが、日が徐々に高くなってきているのを感じて私は彼に声をかける。

 

 

「今日は浅草で一緒に過ごすんじゃなかったんですか? 早く起きないと時間なくなっちゃいますよ?」

 

「う~ん・・・わかった。もう起きる・・・」

 

 

彼はようやく覚醒したのか、上体を起こす。しばらく目をつぶっていたが、私がずっと傍らで稲葉君を見つめているのに気付いたのか、パチッと目を開く。

 

 

「どうしたのしのぶさん?」

 

「ううん。なんでもないです。ただ、稲葉君のことを眺めていたかっただけですよ?」

 

 

彼は私の返答に対し何を思ったのだろう。しばらくの間固まってしまった。私は何か、可笑しなことを言ってしまったのだろうか・・・

 

 

「そっそっか・・・まさかしのぶさんにそんな風に言われるとは・・・」

 

「? どういうことですか?」

 

「いや、なんでもない。それじゃあ朝ごはん食べに行こうか。」

 

「! はい。」

 

 

それから私たちはホテルの食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ~。浅草って今こんな感じなんだ。」

 

「稲葉君は来たことがあるのですか?」

 

「まあ、子供の頃、一回だけ。しかし、雷門がないんだね。」

 

「? 雷門は明治初期に火事でなくなっていますよ? 稲葉君も見たことはないはずですが・・・」

 

「あ~。うん。確かそうだったね。」

 

「?」

 

 

私たちは、浅草を観光していた。最初はやはり浅草寺からと思い、二人で向かったところ、稲葉君は明後日の方向へ向かってた。

 

どうやら雷門を目印に探してたそうで、それで迷ったらしい。稲葉君には焼失した雷門の幻影が見えるのだろうか・・・

 

まずは仲見世と呼ばれる浅草寺に続く表参道を進む。ここにはいろんなお店が並んでいる。

 

お菓子、人形、化粧品、仏像など並んでいる売り物は様々だ。

 

途中、『カナヲちゃん喜ぶかな?』なんて言いながら、稲葉君はお菓子屋さんに入って何かを買っていた。

 

やがて、仲見世を通り過ぎ、仁王門に突き当たる。

 

 

「あれ? 宝蔵門じゃないのこれ? 場所的に。」

 

「稲葉君。これは仁王門ですよ。」

 

「あれ~。なんで名前が違うんだろう。」

 

「ふふ。きっと子供の時に見て、名前を間違えて覚えてしまったんですよ。稲葉君も昔はうっかり屋さんだったんですね。」

 

 

今はこんなにしっかり者なのに不思議。子供の頃の稲葉君を知れたみたいで、私はつい嬉しくて笑ってしまう。

 

仁王門を見た後しばらく歩いていくと、浅草六区に到着する。ここはいわゆる娯楽街で、人がとにかく多い。

 

私が人波に押し流されそうになると、すかさず稲葉君が私の手を握る。

 

 

「大丈夫? しのぶさん。」

 

「はい!・・・ありがとうございます・・・///」

 

 

彼のこういった優しくて頼りになるところが本当に好きだ。私はきっと、今頬を赤らめているに違いない。

 

彼は私の手を握って、そのまま突き進む。人波から私を守るようにしながら。そんな彼を見て胸の内がじんわりと暖かくなる。

 

 

「へ~。ここって映画とかオペラとかあるんだ。どこも人気なんだね。」

 

「映画? もしかして活動写真のことですか? そうですね。とても好評のようですよ。どれか見てみますか?」

 

「う~ん。人が多すぎるから、ちょっと気が乗らないなあ。しのぶさんとはぐれるの嫌だし、一旦ここから離れたいかな。」

 

「・・・っ! はい・・・わかりました・・・!」

 

「しのぶさんは何か見たいものあった?」

 

「あ、いえ! 大丈夫ですよ! 稲葉君と一緒に居られる場所の方がいいです・・・!」

 

「それじゃあ、あっちの方に行こうか。人も少なそうだし。」

 

 

そうして私たちは人混みを避け、瓢箪池と呼ばれるきれいな噴水がある場所に移動した。

 

 

「わあ~。きれいだね。しのぶさん! 僕が前来たときはこんなところなかったよ!」

 

「? 瓢箪池は明治からありますよ?」

 

「あれ? そうなの?」

 

「ふふふ。きっと前回は浅草六区の方が気になっていたんですね。」

 

 

噴水にはしゃぐ彼を見て思わず笑ってしまう。本当に稲葉君は見てて飽きませんね。本当に・・・一緒に居られるだけで、どうしてこんなに嬉しいのでしょうか・・・

 

 

「あれ? あっちに高い建物があるね。あれは何だろう?」

 

「あれは凌雲閣ですね。通称浅草十二階と呼ばれる建物です。」

 

「へ~。中に何があるのかなあ。」

 

「そうですねぇ・・・あそこは日本で初めてエレベーターなるものを設置した建物なのですが、今は不具合のせいで運転停止してるそうなんです。他には・・・人気の芸妓(げいこ)さん100人の写真が飾ってありますね・・・」

 

「ああ、そうなんだ。興味あるね。」

 

「・・・稲葉君。芸妓さんの写真そんなに気になりますか?」

 

 

芸妓は色町で芸も達者な女性たちだ・・・稲葉君・・・興味あるんだ・・・やっぱり男の子なのね・・・

 

 

「日本初のエレベーターなのに動かないなんてもったいないね。十二階もあったら階段で移動するなんて大変だよ。どこが悪いんだろう。」

 

「そっち!!?? 芸妓さんじゃなくて!!??」

 

「え? 芸妓さんって何? しのぶさん知ってるの?」

 

「知っていますけど・・・稲葉君には言いたくないです!!」

 

 

私がひとりでにやきもちを妬いていると、彼はそんな突拍子もないことを言う。

 

稲葉君って、本当にそういう意味で女性に興味あるの・・・? 私には・・・興味持っていてほしいんだけど・・・!

 

 

「まあいいや。どうせ僕らにエレベーターは必要ないし、作らなくてもいいよね。産屋敷邸が十二階建てになったら考えるけど・・・」

 

「お館様のお屋敷を十二階建てにするのは流石に無理では!?」

 

「あはは、確かに。じゃあエレベーターはわざわざ見に行かなくてもいいや。」

 

 

稲葉君って一体何者なのかしら・・・一応専門は化学って言ってたけど、洗濯機や冷蔵庫なるものも作れちゃうし、化学の領域をはるかに超えている気がするのだけど・・・

 

彼の経歴には謎が多いから本当にわからない。お付き合いが長くなれば、いつか教えてくれるのでしょうか・・・

 

 

「う~ん。これで一通り見れたから、僕は満足かな。しのぶさんは他にも行きたいところある?」

 

「そうですね。今から他の観光地に移動するにしても時間がかかりますし、このくらいでいいのではないでしょうか? あとはみんなへのお土産があればきっと充分です。」

 

「わかったよ。ふ~。今日はいろいろ見れて楽しかったなあ。しのぶさんが案内してくれたおかげで、道にも迷わなかったし。」

 

「ふふふ。稲葉君一人だったら、火事で燃えた雷門をずっと探していたでしょうね。」

 

 

私はその時の様子を思い出し、クスクスと笑ってしまう。本当に可笑しい。稲葉君は一体何年生まれなんでしょうか。

 

私が一人でツボにはまって笑っていると、稲葉君の気配が変わる。

 

 

「迷子だ・・・」

 

「え?」

 

 

稲葉君はすかさず遠くで泣いている女の子に駆け寄る。

 

 

「大丈夫? お父さんとお母さんは?」

 

「? お兄さん・・・誰?」

 

 

私が遅れて駆け付けると、稲葉君が懐よりさっき買っていたお菓子を引っ張り出す。

 

 

「これ・・・本当はそこのお姉さんの妹にあげるつもりだったんだけど・・・よかったら・・・」

 

「! ありがとう! お兄ちゃん!!」

 

 

女の子は泣き止み、嬉しそうに稲葉君にお礼を言う。そんな子を彼は優しく頭を撫でる。・・・いいな、私にもしてほしい・・・

 

 

「どうして一人になったの?」

 

 

稲葉君がそう尋ねると、女の子は身振り手振りもしつつ説明する。

 

 

「お父さんが皮膚の病気で、ずっとお日様に当たれないの!! だから噂になってるお医者さんから薬をもらいたくて・・・それで・・・お母さんと出かけて・・・はぐれちゃって・・・」

 

「皮膚の病気・・・日に当たれない・・・ですって・・・!?」

 

 

私は思わず動揺する。その話・・・あまりにも鬼にとって都合がいい言い訳になるのでは・・・!

 

稲葉君も私と同じことを思ったのか、私に目配せをしてくる。

 

これは、ほうっておけない。今は休暇中で日輪刀はもっていないが、このままこの子を返すのは気が乗らない。

 

彼の目線に対し、私は頷く。すると稲葉君は穏やかな声でその女の子に尋ねた。

 

 

「そっか。お父さんのために偉いね。でもきっと一緒にいたお母さんは迷子になった君を心配してるはずだよ? ひとまず交番に行こう。もしかしたらお母さんが君を探すために立ち寄ってるかもしれない。」

 

「でも・・・交番の場所・・・わからなくて・・・」

 

「大丈夫。お兄さんとお姉さんが連れてってあげるから。」

 

 

そういうと、稲葉君はその子を抱きかかえる。ちなみにそれどころではないのはわかってるけど、いいなぁ・・・と思ってしまった。

 

やがて瓢箪池から移動し、浅草六区の交番に移動した。

 

相変わらず、人が多いため、私は稲葉君の羽織をつかんで後ろからついて行く。

 

やがて交番にたどり着くと、慌てている様子の帽子をかぶった洋服の女性がいた。

 

 

「お母さん!!」

 

「っ!! どこに行ってたの!? 心配したのよ!!!」

 

 

稲葉君が女の子を地面に降ろすと、女の子はお母さんらしき人に勢いよく抱き着く。

 

この女性は日光を浴びても崩れない。つまり間違いなく人間。鬼の可能性があるのは恐らく父親の方だ。

 

 

「無事合流できてよかったです。瓢箪池の方まで来てましたよ。」

 

 

稲葉君がそうにこやかに言う。

 

 

「保護してくださってありがとうございました! 私、本当にどうしようかと思って・・・!」

 

「お母さん! お兄ちゃんお菓子くれたんだよ? それにすっごく優しいの!! お父さんみたい!!」

 

「そう・・・良かったわ・・・でもいくらお父さんのためとは言え、勝手に町中に飛び出したら駄目でしょう?」

 

「でも! お父さんの病気を治すお薬見つけたくて! 浅草に凄いお医者さんがいるって聞いたから・・・」

 

「あれは噂よ。お父さんも一生懸命探していたけど、結局見つからなかったの。もう一人で探しに行っちゃだめよ?」

 

「は~い・・・」

 

 

女の子がおとなしく言うことを聞くと、母親はお辞儀をする。

 

 

「娘が大変ご迷惑をおかけしました! 本当にありがとうございました!」

 

 

引き続き、稲葉君が応対する。

 

 

「いえいえ。旦那さんの皮膚の病気治るといいですね。病名は何なのですか?」

 

「え? は、はい。高名なお医者様もわからないみたいで・・・どうしてそんなことを?」

 

「いえ。これでも僕は製薬会社の関係者でして。弊社の新薬が効きそうであればご用意しようかと思いまして。」

 

「そうなのですね。しかし、夫も製薬会社とは縁がありまして、それでも以前治らないのです・・・」

 

「そうですか。ではお役に立てそうもないです。申し訳ありません。」

 

「あ、いえ! 滅相もない!! 娘を連れてきてくれただけでも本当に感謝が尽きません! お気持ちだけでもありがとうございます!!」

 

「いえ。お構いなく。帰り道も気を付けてくださいね。お帰りは徒歩ですか?」

 

「あ、いえ・・・家は都内ですが距離がありますので、運転手が車で送迎してくれるのです。ご心配ありがとうございます。」

 

「そうですか。それなら安心です。お気をつけて。」

 

「はい。何から何までありがとうございます! それでは運転手を待たせているので失礼しますね。」

 

「え~? お兄ちゃんたちともっと一緒にいる~!」

 

「もう、困ったわね。家で月彦さんを待たせているのに・・・お父さんを困らせてはだめよ?」

 

「は~い・・・」

 

 

そう言ってその母子はその場をあとにした。

 

正直、かなり怪しいと思った。けど、私たちは休暇中で、日輪刀も持っていない。

 

居場所の特定のため、追跡してもいいが、流石にこれだけ人が多いと車と同じ速度で追跡すれば怪しまれてしまう。

 

それに、明るい昼間のため、建物の屋根の上を走っても容易に目撃者が出るだろう。

 

今回は、この情報を持ち帰ることを優先とし、私たちはその場を後にした。

 

 

 

 

 

続く




しのぶさんの幸せそうな様子が沢山書けて満足です。なら最後不穏な終わり方にするなって話なんですけどね・・・でも一切話が進まないのもどうなのかと思い、こんな構成になりました。ちなみに本小説では珠世さんの設定を少し変えております。今話を書くために捏造しました。原作ガチファンの方いらっしゃいましたら大変に申し訳ありません。二次創作なので温かい目で見てもらえると嬉しいです。次回は短そうなので、もしかしたら連投になるかもしれません。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
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