輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話 作:科学大好き人間
「ようこそ!!! 今日から君は俺の継子だ!!! 柱になれるようしっかりと面倒を見てやろう!!!」
「はい!! よろしくお願いします!!!」
「・・・元気いいな、お前ら。」
現在、俺は全快した炭治郎を煉獄邸に連れてきたところだ。
煉獄には前日に予め伝えておいた。すると俺たちが到着する頃には、なぜか家の前で腕組みをして仁王立ちをしていた。
思いのほか来るのを楽しみにしていたらしい。
「竈門少年!! 屋敷へ案内しよう!! ついてこい!!!」
「はい!! 煉獄さん!!!」
「・・・炭治郎、話し方うつってないか?」
すでに影響を受けている炭治郎。今後コソコソ話ができない声量になったら困るな・・・
そんなことを考えながら、俺は二人が屋敷の中に入っていくのを確認し、後をついて行く。
「あなたが炭治郎さんですね。ようこそ、わが家へ。是非ゆっくりして行ってください。」
「千寿郎、少しの間厄介になるぞ。」
「はい、雁哉さん。」
煉獄の弟、千寿郎が奥の客間でお茶を入れてくれる。兄弟揃ってそっくりだ。何なら俺と同じ学校の桃寿郎ともそっくりだ。
煉獄家の遺伝子恐るべし。歴代の煉獄家の男子はみんな同じ顔なんじゃないかと思う。
俺がそんなことを考えていると、突如、部屋のふすまが開く。
そこにはこれまた煉獄とそっくりな中年男性が立っていた。
「ご無沙汰しています。槇寿郎さん。」
俺の挨拶など、耳に入っていないのか、槇寿郎さんは、炭治郎の方を見ていた。
「お前が日の呼吸を使うとかいう小僧か。杏寿郎・・・まさか、お前が日の呼吸の使い手を弟子に取る日が来るとはな・・・」
「そうです父上!! 今日から彼は俺の継子として稽古を受けます!!! しばらく賑やかになりますがご容赦頂きたい!!!」
槇寿郎さんは炭治郎を見て、苦虫を嚙み潰したような顔になる。
「杏寿郎。日の呼吸の猿真似をし、劣化した炎の呼吸の使い手であるお前が、そいつに何を教えられると言うんだ。」
煉獄は黙っている。俺はその様子を静観していたが、炭治郎はそうもいかなかったようだ。
「ちょっと待ってください・・・あまりにもひどい言い方だ! そんな風に言うのはやめてください!!」
「炎の呼吸の使い手に限った話じゃない。才能あるものは極一部、あとは有象無象。なんの価値もない塵芥だ。杏寿郎もそうだ。大した才能はない。お前に教えられることなど何もない・・・!!!」
「・・・何もないはずないでしょう?」
炭治郎が立ち上がりそうな勢いだったので、俺はそれを制する。代わりに俺が槇寿郎さんに反論する。
「道を極めた者が辿り着く場所はいつも同じです。呼吸の種類なんて関係ないです。
始まりの呼吸の剣士、継国縁壱さんのように、痣、赫刀、透き通る世界を使いこなせれば問題ありません。
そこに炭治郎が辿り着くためには、地道な研鑽と鍛錬の積み重ねをすることが大前提です。
煉獄はそれを最も愚直に続けている男です。加えて炎の呼吸は日の呼吸とよく似通っています。あなたが言うように真似をしているわけですからね。
炭治郎が日の呼吸を磨くのに、これほど適した模範の剣士はいないでしょう。俺もお館様もそれを信じています。」
槇寿郎さんもまさか俺に言い返されるなど思わなかったのだろう。明らかに動揺している。俺はダメ押しとばかりに続ける。
「日の呼吸が最強の御業なわけではありません。日の呼吸を使う縁壱さんが最強だっただけです。
だというのに、強くなれない理由を呼吸のせいにして、問題点をすり替えないでください。
俺たちが考えるべきは、如何に縁壱さんの技術を再現するか。その上で、如何に無惨を追い詰め滅ぼすかです。
手段はいくらでもありますし、新たに作り出せます。諦めることなく目的を成し遂げるまで考え続ければ必ず勝機は見えてくるはずです。
かつての21代目炎柱も、一度無惨を倒すための方法を実現することは不可能だと諦めておきながら後世にその方法を伝えた。
それは、世代を超え研鑽を積み重ね、いつの日か煉獄家の技と知識が無惨を滅ぼす一助となると信じ続けてきたからです。
どうかその脈々と受け継がれてきた想いを背負う煉獄に、今代の日の呼吸の剣士を育てさせていただけませんでしょうか?」
槇寿郎さんは目を見開いている。槇寿郎さんだけではない。この場にいる全員が息を飲んで俺を見ている。
やがて、槇寿郎さんは口を開いた。
「お前・・・なぜ知っているんだ・・・無惨の倒し方まで・・・まさか、炎柱の書を読んだことがあるのか!?」
「俺は産屋敷の人間ですよ? それくらいの機密情報あなた以上に詳しく知っていますよ。」
「お前は本当に倒せると思うのか!? 無惨という人外の化け物を・・・その縁壱という剣士でさえ、倒せなかったというのに・・・!!!」
「縁壱さんは最強でした。でもだからこそ一人で倒そうとして、その結果、無惨をあと一歩のところで逃がしてしまった。
俺たちはその反省点を踏まえ、今代ではそれを活かさなければならない。
個人で倒すのではなく、集団で。最強の御業で圧倒するのではなく、その御業に追随する者たちによる連携と戦略で逃がすことなく追い詰めて倒す。
俺はそれができると確信しています。今代の柱たちほどの実力があれば。その一角に炭治郎も加わわってほしいと俺は思っています。
ですのでどうか、煉獄が炭治郎の面倒を見ることを認めてはくれないでしょうか?」
そこまで言い切り、俺は槇寿郎さんの反応を伺う。その表情はどこか観念した様子だった。
「・・・好きにしろ・・・」
そうして、槇寿郎さんはふすまを閉めてその場から消えてしまった。俺はそれを確認して一息ついた。
「よし。これでもう文句は言われないだろう。」
「間!! すまない!! 本来であれば俺が父上を説得するべきだったのだが、いざその時になると言い返せなかった!!! 柱として不甲斐ない!!!」
「いや、柱だろうと、実の父親を説得するのは誰だって難しい問題だからな。それに今さっき言ったことは俺がずっと考えてきたことだから気にするな。」
「雁哉さんはなぜ今までそのことを煉獄さんのお父さんに言わなかったのですか? もっと早く伝えていれば、すんなり話は進んだんじゃないですか?」
俺と煉獄でいい感じに話がまとまっていたところで、炭治郎から指摘が入る。俺は腕を組み、遠くの景色を眺める。
「槇寿郎さんは最愛の奥さんを亡くし、その時の心的外傷を理由に柱を引退したんだ。あまりきついことは言いたくなかったんだよ。
でも、まあ、流石に今回は炭治郎の継子入りが懸かっていたし、遠慮してられないなと思って言ったわけだ。どうかこれで納得してくれ。」
「そ・・・そうだったんですね・・・何も知らず失礼なことを言いました・・・」
「いや、俺も言うかどうかは悩んでいたから丁度良かったよ。気にしないでくれ。」
「はい・・・!」
「よし!!! これで何の憂いもなく、竈門少年を鍛えられるというわけだ!!! 一切妥協はしないからそのつもりでいろ!!!!!」
「はい!!! 煉獄さん!!!!!」
「うん・・・もう少し声抑えてくれ・・・耳が痛いっつうの・・・」
俺の小声なんぞ耳には届いていないようで、この師弟はどんどんヒートアップしていく。
俺と千寿郎は互いに苦笑いし、その後の苦労について頭を悩ませた。
続く
大正コソコソ噂話
雁哉君は産屋敷当主の声音や動作の律動を受け継いでいます。その為、相手を説得する能力が一際高いという長所があります。今後の展開でこの設定が役に立つ日が来るかも・・・?