輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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無惨視点です。急遽今回は番外編とします。理由は無惨側の様子の描写を早々にした方がいいと思ったからです。続きを楽しみにしていた方はすみません。一話分お付き合いください。なお、本文の内容は、11話で童磨がカナト君に頭を赫刀で砕かれた後からスタートとなります。


番外編 鬼側の動向

「童磨。私はお前に失望した。なんだその様は?」

 

 

ここは日の当たらぬとある密室。私は頭部を破壊され、再生することもできず、おめおめと逃げ帰ってきた配下の一人、童磨を目の前で跪かせ、詰問する。

 

 

「柱ですらない鬼狩りに不覚を取り、頭部を潰された挙句、なぜとどめも刺さずに逃げ帰ってきたのだ? 朝日が昇る直前まで何をもたついていたのだ、お前は?」

 

 

しかし童磨は私の問いかけに対し、身じろぎ一つしない。私は腕を一閃し、童磨の上半身を薙ぎ払った。部屋一帯に大量の血と肉が飛び散る。

 

すると童磨は瞬時に上半身を再生させ、屈託のない笑顔で悪びれもせず話し始める。

 

 

「申し訳ありませぬ! 気絶したところを殺すつもりでしたが邪魔者が入りました故・・・」

 

 

私は再度腕を一閃し、童磨の頭部を破壊する。頭蓋がぶちまけられる。変わらず童磨は頭部を再生させ、再び屈託のない顔で笑い続ける。

 

 

「どのようにお詫びいたしましょう? 目玉をほじくり返しましょうか? それとも・・・」

 

 

みたび、腕を一閃し、童磨の頭部を吹き飛ばす。童磨はそれから暫くの間再生することなく、座して私の声を待っていた。

 

 

「邪魔者だと? 貴様、仮にも上弦の弐であろう? 柱だろうが何だろうが、邪魔された所で何一つ問題ないはずだ。

 お前が無様に頭部を砕かれたせいでこちらは一切の視覚情報を読み取ることができなくなったのだ。誰にやられた? 手短に簡潔に答えよ。」

 

 

私の言葉に従い、童磨は頭部を再生させ、短く答えた。

 

 

「わかりませぬ。竹刀を持った男に日の出まで邪魔をされたのです。」

 

「は?」

 

 

私は童磨の言葉の意味が分からず呆けた声を漏らした。

 

 

「竹刀を持った誰にだ? 柱か?」

 

「わかりませぬ。少なくとも日輪刀は携帯しておりませんでした故、鬼狩りかどうかも怪しく確認もできませんでした。」

 

 

私は童磨の頭の中を覗いた。嘘を言ってはいない。到底信じられぬ。つまり童磨は市井の人間一人に後れを取ったというのか・・・!?

 

 

「貴様・・・本気で言っているのか・・・!?」

 

「はい。無惨様に誓って嘘偽りありませぬ。」

 

「まさか、柱どころか鬼狩りですらない人間に後れを取るとは・・・上弦の弐も堕ちたものだな。数字を落とす。陸だ。今後私の命を果たせなかった時は殺されると思え。いいな?」

 

「・・・はい。」

 

「下がれ。」

 

 

そうして童磨はその場を去った。私は暫くの間、考えを巡らせる。

 

その竹刀の男はもういい。考えたところで仕方ない。それよりも、かの亡霊と同じ再生阻害の日輪刀を使う鬼狩りが現れたことが問題だ。今後その男がどれほどの力を振るうかわからぬ。

 

つくづく童磨がその鬼狩りを殺せなかったことに私は苛立った。

 

 

「いや、それも含めてどうでもいい。所詮童磨一人に爆薬なしでは戦うこともできぬ鬼狩り一匹、放っておいても変わらん。時間を無駄にした。腹立たしい。」

 

 

そう一人でつぶやき、私もその場をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて数ヶ月経ち、奇妙な変化が起こった。今までの鬼狩り共は日輪刀で鬼の頸を刎ねるしか能のない異常者の集まりだったのだが、一部の鬼が爆薬で痛手を受け、あっけなく殺されるようになった。

 

最初は鬼狩り共の猿知恵だと思っていたが、やがて爆薬の中に赫赫と発光した鉄の欠片が混ざるようになり、それを受けて体を硬直させ、成すすべなく殺される者が増え始めた。

 

私はその原因が気になり、さほど気にもかけていなかった増やしたくもない同胞共の視覚を共有する時間を増やした。

 

すると、驚いたことに、赫赫と発光する鉄の欠片を見た者は、私がかつて殺されかけたあの忌々しき亡霊が握る刀を思い起こしていることに気づいた。一体どういうことなのか?

 

まるでそれら欠片が全て、かつて亡霊の使った刀と同じではないか。奴らはその刀と同じ効力を持つ金属を手に入れた、もしくは再現する方法を確立したというのか!?

 

私は膨大な時間を消費し、その結論に行きつき、憤慨した。

 

 

「だからどうしたというのだ。柱程の実力のある者が使うならまだしも、爆薬頼みの雑な使用ではないか。恐れるに足らぬ。随分と時間を無駄にした。全く持って忌々しい。」

 

 

私は苛立ちながらも日ごろの作業に戻った。青い彼岸花さえ手に入れば何も問題ないのだ。

 

しかし、さらに数ヶ月後、無限城の管理を任せている鳴女より突拍子もない話を聞いた。

 

 

「何? 鉄砲撃ちだと?」

 

「ええ、無惨様。最近、鬼狩り共は鉄砲で戦う者が増えてきたそうです。」

 

「何を馬鹿なことを。鉄砲なんぞで鬼が狩れるものか。世迷言を・・・」

 

「嘘ではありません。現に鬼になって日の浅い者の中で奴らの鉄砲玉を受け、体を硬直させて動けなくなりそのまま頸を刎ねられ殺される者が続出しているそうです。如何いたしますか?」

 

 

私は少しばかり逡巡したが、吐き捨てるように言った。

 

 

「どうでもいいが・・・そうだな・・・目障りであることには変わりない。下弦の鬼共にそいつらの相手をさせろ。所詮鉄砲に頼る貧弱な者共など、下弦程度でも充分殺せるのだからな。」

 

「わかりました。無惨様より命があれば、下弦の鬼たちも躍起になって殲滅に向かうでしょう。私の血鬼術で鉄砲撃ち共に下弦を送りつければすぐにでも全滅するでしょう。」

 

「ではそうしろ。下弦の鬼共には私から伝えておく。この話はこれで終わりだ。下がれ。」

 

 

そう言って、私は鳴女を下がらせた。ここ最近鬼狩り共の動きが慌ただしい。なぜだ。今までこのような変化は一切なかったにも関わらず。甚だ苛立たしく思う。

 

だが、事態は予想外の結果を見せる。下弦共に鉄砲撃ちの鬼狩り共の相手をさせているうちに、柱と思われる鬼狩りが直ちに増援に来るようになった。

 

なぜだ? 下弦が現れて、四半刻も経たずに奴らは柱をよこしてくる。奴らの情報のやり取りは烏を使ったもので、さして素早く救援を呼べるものではないはずだ。

 

それから数ヶ月の間、鉄砲撃ちの鬼狩り共を殲滅するどころか、次々と送りつけた下弦の鬼が鬼狩りの柱に殺されていく。何の冗談なのか。

 

一体この数ヶ月の間に、何度下弦は入れ替わった? これまでの数百年、確かに鬼狩りの柱に下弦がやられることは多々あった。だが、それとは比べものにならない速度で下弦が削られていく。

 

やがて私はある決断を下した。

 

 

「もういい。下弦の鬼をこれ以上補充しても意味がない。私の血を大量に無駄にした。甚だ不愉快だ。」

 

 

私は、下弦で生き残っている魘夢と累を無限城に招集し、処分しようとした。

 

気まぐれで奴らに最期の言葉を聞きだしたが、思いのほか聞こえのいい答えが返ってきた。

 

 

「私は夢心地でございます。あなた様直々に手を下して戴けること。」

 

「僕は無惨様に励まして戴いたあの日の御恩を忘れたことはありません。その御恩に報いることができないことが唯一の心残りですが、あなた様の手で逝けるのなら本望です。」

 

 

私は気が変わった。

 

 

「気に入った。私の血をふんだんに分けてやろう。そして私の役に立て。鬼狩りの柱を殺せ。いいな?」

 

 

それから数日で、二人は私の血に適応した。特に累の適応速度は目覚ましく、新しい上弦に据えてもいいと思える程だった。

 

このまま順当に私の血を分け与え続ければ、百余年ぶりに新たな上弦を増やせるかもしれない。久方ぶりに私の心は踊った。

 

 

しかし、そんな私の気分の高揚も長くは続かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼舞辻無惨!! 俺はお前を逃がさない!! どこへ行こうと・・・地獄の果てまで追いかけて、必ずお前の頸に刃を振るう!!! 絶対にお前を!!! 許さない!!!!!」

 

 

なぜ、この浅草に、あの忌まわしき亡霊と同じ花札のような耳飾りをつけた鬼狩りがいるのだ。私は全身が総毛立ち、鳥肌が立つのを感じた。いや、落ち着け。見たところ鬼狩りの柱と同程度の実力しか感じない。

 

あの程度の鬼狩りであれば、上弦をけしかければ問題なく殺せるだろう。累でも充分殺せるとは思うが、奴は追加の私の血に順応中だ。今後のことも考えてやはりここは手堅く上弦を送るのが妥当だろう。

 

仮に耳飾りの鬼狩りがあの亡霊と同じ呼吸の使い手だったとして、今まで黒死牟に何人も殺させているのだ。全く問題はない。

 

私は人気のいない路地裏に足を運び、鳴女の血鬼術で無限城へと戻る。

 

 

「黒死牟、日の呼吸の使い手らしき鬼狩りが私の周りをうろちょろしている。即刻奴の頸を持ってこい。」

 

「御意・・・」

 

 

即座に黒死牟は耳飾りの鬼狩りの元へと向かったが、暫くして奴から思念が飛んできた。

 

 

(無惨様・・・申し訳ありませぬ・・・その(くだん)の鬼狩り・・・浅草の街には既に居ないようです。気配も匂いも一切感じません。)

 

(なんだと・・・そんなはずないであろう・・・!)

 

 

私は再び浅草に戻り例の鬼狩りの気配や匂いを辿るが、一切痕跡が辿れなかった。どういうことだ・・・?

 

 

(もういい。黒死牟、貴様が鬼狩り一匹も探せぬ能無しだとは思わなかった。剣の鍛錬しか能のない堅物がっ! 戻って引き続き、産屋敷家の痕跡でも探してこい。時間の無駄だ。)

 

(・・・御意・・・)

 

 

私は無限城に黒死牟が戻ったことを確認し、今度は猗窩座に思念を飛ばす。

 

 

(猗窩座、貴様は浅草から数理離れたところにいるな? 血鬼術を使って日の呼吸の使い手らしき鬼狩りを探し出して殺してこい。貴様ならそれくらい造作もないであろう?)

 

(お任せを、無惨様。即刻浅草に向かい、件の鬼狩りを殺して参ります。)

 

 

これでなんの問題もない。猗窩座の血鬼術なら、柱程の実力があるものであればすぐさま感知し探し出せるであろう。

 

今夜中にでも目障りな亡霊の影に気を揉む必要もなくなるのだ。私は満足げに無限城へと戻って猗窩座の視界を共有した。

 

なるほど・・・なぜ気配も匂いも辿れぬのか合点がいった。この診療所、血鬼術で隠されていたのか。大方浅草で噂になっている医者の隠れ家であろう。

 

私も逃れ者の仕業ではないかと勘繰っていたが、その予想はあたりだったらしい。

 

丁度いい。耳飾りの鬼狩りを殺すついでに、この診療所に隠れ住む逃れ者も猗窩座に殺させるとしよう。

 

私は上機嫌で猗窩座の視界を覗いていた。

 

最初、耳飾りの鬼狩りのそばに柱らしき鬼狩りが二人もいたが、それは些末なことだ。猗窩座ならどうということもなく殺せると確信していた。

 

戦闘も始まり、猗窩座の方が圧倒的に優勢だった。鬼が人間に勝つのは当然のことなのだから、さして不思議なことでもなかった。

 

しかし、矛の鬼狩りが赫々と発光する日輪刀を使い始めて状況がやや一変する。そうか、この男、以前童磨の頭を砕いた鬼狩りか。

 

それからは少々猗窩座も手こずってはいたが、やがて乱打で鬼狩り二人を戦闘不能にする。

 

猗窩座がいつものごとく矛の鬼狩りに向けて鬼の勧誘を行うがそれくらいは大目に見るとしよう。

 

それで決着かと思いきや、予期せぬ事態になった。

 

殺したと思っていた黒死牟と同じ月の呼吸を使う鬼狩りが起き上がり、猗窩座の攻撃を全て捌けるようになったのだ。

 

この短時間で一体何が起きた? 猗窩座が殺そうとするも、ただひたすら時間が過ぎるだけではないか・・・!

 

私が苛立ち始めると、夜明けが近づいてきた。猗窩座め、柱一人に何を手間取っている・・・!

 

私がそう思うや否や猗窩座はすぐさま耳飾りの鬼狩りへと向かう。よし、これで最低限の仕事は果たしてくれるかと私は安心したのだが・・・

 

 

 

 

ーヒノカミ神楽 炎舞ー

 

 

 

 

猗窩座の視界にかの亡霊と似通った剣撃が振るわれ、私自身も一瞬かつての記憶がよみがえり体が震え硬直する。

 

しかし猗窩座が避けられる程度の一撃だとわかり、それも杞憂に終わった。だが、おかげで猗窩座は耳飾りの鬼狩りを殺せずそのまま逃げ帰るハメになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「猗窩座よ・・・何故あの程度の鬼狩りも殺せぬまま逃げ帰ってきたのか・・・わざわざ黒死牟の次にお前を呼び寄せたにも関わらず・・・!!」

 

「申し訳・・・っぐ!!!」

 

 

私は自身が人間として隠れ住む屋敷で、猗窩座を糾弾していた。私が指をかざすだけで猗窩座は血を吐いて全身を震わせていた。

 

 

「お前の血鬼術の有用性は買ってはいるが、肝心の実力が伴わなければ何の意味もないであろうが・・・!! 猗窩座っ!!!」

 

 

猗窩座は全身の痛みに耐え、跪いたまま私の叱責を聞き続けている。

 

 

「上弦の参も堕ちたものだ。童磨に続き猗窩座、お前までもがこのような体たらくだとは・・・恥を知れ。」

 

「・・・返す言葉も・・・ありません・・・」

 

 

私は指をかざすのをやめた。

 

 

「数字を落とす。童磨と同じ陸だ。あの童磨と同じ数字というだけでもお前にとっては屈辱であろう。しかしお前は童磨と違い何一つ言い訳をしなかった。わずかながら猶予をくれてやろう。

 今後黒死牟に貴様の鍛錬を任せる。お前にとってはそれすらも屈辱であろうが知らぬ。悔しさを噛み締めた上で私の為に今よりも一層強くなれ。

 女を食わぬ我儘も今日までだ。存分に人を喰らい、今までの比にならぬほど強くならねば今回の失態を許しはしない。

 最近、鬼狩り共の動きが盛んだ。役立たずとはいえ、下弦も全員奴らに狩られた。貴様ら上弦にこれ以上の失態は許さん。次私が命じるまでに、黒死牟よりも強くなれ。できなければ殺す。いいな?」

 

 

「っ!! ・・・御意・・・!!」

 

「わかったら下がれ。」

 

 

やがて猗窩座はその場を去った。私ははらわたが煮えくり返るような思いだったが、今後について考えを巡らせた。

 

戦うことしか能がない黒死牟よりも、索敵能力に秀でた猗窩座が力を着ければ、今後私の思い通りに事を運びやすくなるかもしれない。鳴女も徐々に私の血に順応し、血鬼術の空間転移の範囲も広がり始めている。

 

今後こやつらに忌々しい産屋敷家の居場所や、日輪刀及び赫赫と光る鉄砲玉の生産拠点を探させて潰せば、鬼狩り共を確実におとなしくさせることができるはずだ。

 

此度の騒動の結果は不愉快極まりないが、今後のことを考えて、猗窩座には特別に寛大な措置を取ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




以上が現段階で開示できる鬼側の動向です。今回の番外編で取り組んだ課題は以下の通りです。

1. 無惨が臆病で頭が悪いという設定を残す
2. 原作とは違う独自展開にきちんとした理由付けをする

1.については本当に難しかったです。臆病という性格は「自分で手を下さない」「炭治郎の耳飾りや日の呼吸を見て怖がる描写を入れる」でカバーしたつもりなのですが、「頭が悪い」は具体的にどんな描写を入れればいいか悩みました。最終的に、「問題ごとを先送りにする」「事態が悪化してるのに碌な対策をしない」「感情的になり合理的な判断ができない」でカバーしました。筆者にはこれが限界でした。
2.については、雁哉君が結成した遠距離支援部隊の発展の様子やカナト君が発明した無線機の存在を匂わせて、原作とは違う状況であることを補足しました。加えて猗窩座が炭治郎君の追手に選ばれた理由も、愈史郎君の目隠しの術で黒死牟が追跡できなかったため、羅針で追跡できる猗窩座が次点で選ばれたような描写にしました。正直穴だらけの設定だとは思うのですが、二次小説ということである程度は大目に見ていただけると幸いです。今後話がさらに進んだら、また鬼側の動向を書きたいと思います。以上で番外編終わりです。次回からは雁哉君と煉獄さんが黒死牟と戦い始めます。原作とは違ったハラハラを味わってもらえたら筆者としては嬉しいなと思います。それではまた次回。
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