輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話 作:科学大好き人間
それと既にお読みの方はあまり関係ないのですが、上弦出現時の話のタイトルを過去話も含め変更させていただきます。良くも悪くも誰が出るかタイトルでわかると面白くないかなと思いまして・・・なので今話も今後も少しぼかすと思います。何卒ご容赦ください。
「上弦の壱・・・」
炭治郎から声が漏れる。俺はすかさず炭治郎を俺の後ろに下がらせる。
「炭治郎。命令だ。今すぐ逃げろ。口答えは許さない。」
「っ!!! 雁哉さん!? でも・・・!!!」
「今のお前が戦える相手じゃない。禰豆子と善逸と伊之助と合流し、俺が列車の中に残してきた無線機を使って柱の増援を呼べ。
列車の横転は防いだから、壊れてはいないはずだ。そしたらすぐ他の柱と合流して保護してもらえ。
ここは俺と煉獄が時間を稼ぐ。行け!!!」
「っ・・・!!!」
炭治郎は歯を食いしばって顔を歪めていたが、すぐに列車へと走り去る。そんな様子を黒死牟が見つめる。
「逃がさぬ・・・」
ー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ー
煉獄が上弦の壱、黒死牟に突進する。黒死牟は刀も抜かず回避する。煉獄はその場を通り過ぎてしまう。
「炎の柱か・・・面影がある・・・だが今は・・・」
ー月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮ー
黒死牟の目線が煉獄に移った瞬間、俺は肉薄し抜刀する。
黒死牟は一瞬動揺したのか、体の硬直が見て取れた。俺の攻撃を回避せず、同様に抜刀し刃を重ねて防ぐ。
「そうか・・・お前が・・・猗窩座が言っていた今代の月の柱・・・私の後継者か・・・」
「っ! 後継者だと・・・! かつての主君を裏切った男がよくものうのうと・・・!!」
「・・・猗窩座が話したのだな・・・お前の名はなんという?」
「・・・間雁哉だ・・・お前は継国厳勝で相違ないな!!」
「・・・なぜ・・・私の名前を知っている・・・お前は一体・・・」
黒死牟が戸惑っていると、煉獄が背後に接近し斬りかかる。俺もその動きに連動し、型を繰り出す。
ー炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天ー
ー月の呼吸 参ノ型 厭忌月・鎖りー
俺と煉獄の挟み撃ちの攻撃を黒死牟は危なげもなく刀でさばく。尋常ではない反応速度だ。
俺が続けて刀を振ると、黒死牟は躱し、少し離れた場所へと退避する。
「ふむ・・・太刀筋も悪くない・・・誰からも教わらずによく再現したものだ・・・」
よく見ると黒死牟の着物にわずかな切れ込みが見て取れた。俺の太刀筋とは別の斬撃がかすったのだろうか。
「しかし・・・着物を裂かれた程度では・・・赤子でも死なぬ・・・」
俺が奴の着物を見ていたことに気づいたのか、奴はそう言い捨てる。
「なら次は頸だ。」
ー月の呼吸 弐ノ型 珠華の弄月ー
俺は突進し、左右交互に斬撃を浴びせる。当然のように黒死牟は躱す。
ー月の呼吸 陸ノ型 常世弧月・無間ー
俺はさらに距離を詰め、弐ノ型とは比べものにならないほどの波状攻撃を放つ。
しかし、黒死牟は何事もなかったかのように後退し、距離を取る。
「見事・・・我流の型とは言え申し分なし・・・」
俺は一度、煉獄のいる位置まで下がる。今はとにかく、炭治郎が無線で連絡を取って退避するまでの時間を稼ぐことに全力を注がなくては・・・
「しかし・・・月の呼吸は誰にも継承しておらぬ・・・どのようにして体得したのか奇妙なり・・・」
「教えるわけないだろ。」
「ふむ・・・お前の気配・・・この懐かしき雰囲気・・・ようやく合点がいった・・・実に感慨深き事・・・」
「・・・?」
黒死牟は顎に手を当て考える素振りをする。俺は奴から視線を外さず構える。
「うむ・・・やはり・・・そうか・・・」
「さっきから何だってんだ・・・! おちょくってんのか!?」
「間!! 落ち着け!! いつものお前らしくない!! 冷静さを欠いているぞ!!!」
俺が苛立っていると、隣の煉獄が俺を諭す。俺は一度息を吐いて自身を落ち着ける。やがて黒死牟は口を開いた。
「お前は・・・産屋敷当主の末裔・・・その子孫なのか・・・」
「っ!!!」
俺は思わず動揺する。なぜばれた!?
「血は薄まっているが・・・何百年も経っているのだ・・・詮方なきこと・・・かつて私が仕えたお館様の血の気配を感じる・・・
その子孫がまさか・・・私の月の呼吸を継承し・・・今ここで相まみえるとは・・・実に感慨深い・・・
産屋敷家の記録に・・・私のことが書かれているのだろうか・・・とはいえ・・・それをもとに再現するなど非凡な才の成せる技・・・
少々驚いたが・・・気が変わった・・・」
「何・・・?」
俺が疑問の声を上げると、黒死牟は俺に手を差し伸べる。
「今この場で・・・産屋敷当主の居場所を言え・・・そうすれば命は取らぬ・・・
その褒美として・・・お前をあの方に・・・鬼として使って戴こう・・・
まさか・・・人間であることを捨てた後に・・・継子のような者を取れる日がこようとは・・・」
「・・・はあ!?」
俺は黒死牟の発言に心底憤慨した。俺が輝哉さんを売れば鬼として生かしてやるだと・・・鬼の癖に継子にするだと・・・!
「・・・冗談じゃない!!! たとえ四肢を裂かれたとしても、お前のような糞野郎の弟子になんかなるわけないだろ!!??
俺は死んでもお前らに隷属するような鬼になんてならない!!!!」
「ふむ・・・やはり説得は難しいか・・・致し方なし・・・ならば力づくで連れていくまで・・・
もし自害をする素振りを見せれば・・・即座にあのお方の血を与えよう・・・鬼にさえしてしまえば・・・貴様の知りうることは全て・・・あのお方に筒抜けになるのだから・・・」
「っ!!!」
「間!! ここは一度引け!! お館様の居場所だけは絶対に気取られてはならない!! ここは俺が盾となる!!!」
そういうや否や、煉獄は黒死牟に突進する。
ー炎の呼吸 伍の型 炎虎ー
黒死牟は煉獄の前から一瞬で姿を消し、俺の前に現れ刀が振り下ろされる。
俺は死を実感した。そのおかげか透き通る世界に入り、黒死牟の攻撃を躱す。
「見事・・・その年で私と同じ領域に立てるとは凄まじき才・・・だが・・・」
俺は全力で距離を取ろうとすると、黒死牟の刀が倍以上に伸びる。
ー月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映えー
「っが!!??」
一振りで複数の斬撃が大地を伝い俺にまで届く。距離は10m以上離れていたはずだが、俺は斬撃の余波を受け鮮血が散る。
「間!!!」
煉獄がすかさず奴との距離を詰めるが、それは叶わなかった。
ー月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾ー
「っ!!?? 近づけん!!!!」
奴の横なぎの一閃で周囲10mは不定形な斬撃の刃で埋め尽くされる。
ー月の呼吸 玖ノ型 降り月・連面ー
浴びせられるような斬撃の幕が煉獄に振り下ろされる。煉獄は縫うように躱すが、あちこちが裂け血が舞う。
「煉獄!!!!」
「間!! 俺に構うな!!!」
ー月の呼吸 拾ノ型 穿面斬・蘿月ー
夥しい数の斬撃を渦のようにまとった旋盤状の攻撃が、煉獄の負傷に動揺して動きを止めた俺に迫る。透き通る世界を駆使し、俺は横に転がるようにして躱す。
俺と煉獄はこのままでは切り刻まれて死ぬことを悟った。互いにほぼ同時に挟み込むように黒死牟へと突っ込む。
ー月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満纎月ー
視界すべてに飽和するかのような斬撃が台風のように吹きすさび、あたり一帯を根こそぎ薙ぎ払う。
視界の中で、煉獄の腕が切断されるのが見える。俺は全身を切り刻まれながらも、透き通る世界を駆使して斬撃のかすかな隙間を抜けて、黒死牟に肉薄する。だが・・・
「ふむ・・・随分堪えたがここまで・・・動けば臓物がまろび出ずる・・・」
俺は黒死牟の胴体に日輪刀を貫通させた状態で、辛うじて立っていた。全身から血が流れ落ち、内部のあちこちに斬撃が入ったことを感じ取り、何とか呼吸で止血するだけで微動だにできなかった。
俺は日輪刀を必死に握る。赫刀が発現すれば、こいつの動きを制限できる。そうすれば、もしかしたら煉獄が力を振り絞って斬りかかってくれるかもしれない。
しかし、俺の必死の願いも叶うことはなく、ただ震える手で刀を手放さないようにするだけで精一杯だった。
「お前の握力では・・・万全であったとしても赫刀は使えぬ・・・根本的に筋力が足らぬ・・・
産屋敷の人間だからなのか・・・あまりにか細く脆弱な体なのだから致し方なし・・・諦めるのだ・・・」
諦めろだと・・・ふざけるな・・・俺はまだ生きている・・・呼吸だってできる・・・透き通る世界には入れているんだ・・・
この際痣で寿命が縮まってもいい・・・心拍と体温を上げるんだ・・・!
そうすれば握力だって増す! そしたら赫刀でこいつを強張らせて、すぐさま頸を刎ねれば勝てる・・・!! もう一息でこいつを・・・
「今のお前では痣は出せぬ・・・血を流し過ぎている・・・その状態ではどんなに呼吸をしても体温は上がらぬ・・・
震えているのは痛みや痙攣だけのせいではない・・・徐々に体が寒気に覆われているはずだ・・・もう諦めるのだ・・・」
「い・・・や・・・だ・・・!」
「そうか・・・致し方なし・・・無理やりにでも血を飲ませよう・・・抵抗する余力もなさそうだが・・・すぐに楽になれる・・・安心して鬼となれ・・・」
黒死牟はそういうと、握りこぶしを作り、俺の顎を持ち上げその上にかざす。
その手から、血が落ちようとした。その瞬間・・・
ー炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄ー
凄まじい轟音と突風と共に俺と黒死牟の間に刃が通る。その時の衝撃で、俺は黒死牟から吹き飛ばされ、地面へと横たわる。
「類稀なる剛剣・・・その太刀の威力申し分なし・・・これほどの剣圧・・・戦国の世の炎柱でも見たことはない・・・」
「そうか!! ならば思う存分受けるといい!! 俺は俺の責務を全うする!!!」
ー炎の呼吸 奥義 玖ノ型 煉獄ー
再びあたりに凄まじい音が鳴り響く。地面が震える。煙が晴れると、煉獄の刀は黒死牟の刀を押し込んでいた。
「残念だ・・・両の腕であれば・・・私の刀を叩き折り身をえぐり取ることさえできたであろうに・・・」
煉獄は残された右腕のみで、黒死牟とつばぜり合いに持ち込んでいた。
「片腕と、両足があれば充分!! 間は死なせない!! 鬼にもさせない!!! 間を守り、お館様も守り通す!!!
それが俺の責務! 責任をもって果たさねばならない使命だ!! 貴様はこの命に代えても必ず食い止める!!!」
「そうか・・・痣を発現し、透き通る世界にも踏み入れたお前の才が・・・今日ここで失われるのか・・・」
黒死牟は煉獄の額に発現した炎のような痣を見て、また煉獄が纏う雰囲気を読み取ってそのようにつぶやく。
「だからなんだ!!!」
「喪失を嘆いている・・・お前は鬼になる気はないのだな?」
「ならない!!!」
「そうか・・・ではこの場で・・・っ!?」
黒死牟の顔に動揺の色が浮かぶ。煉獄の刀が赫赫と発光する。片腕だけの力で押し込み、黒死牟の頸筋へと刀が触れる。
「っ!!!」
黒死牟の顔が歪む。触れたところから頸筋が焼けているのだろう。
「信じられぬ・・・!! 一体・・・! どこにこのような力が・・・!? 」
「鬼になった貴様にはわかるまい!! 俺の双肩には・・・今まで死んでいった隊士達の命と想いが込められている!!! これが・・・託され繋いできた者の・・・人間の力だ!!!」
煉獄の腕力は相当のものらしく、黒死牟は押し返すことができない。
「くっ・・・貴様は一体・・・何者だ!?」
「決まっているだろう・・・俺は炎柱・・・煉獄杏寿郎だ!!!」
「っぐおおおお!!!!!」
煉獄は黒死牟の刀ごと押し込み、頸を刎ねようとしている。黒死牟の刀から煙があがり、煉獄の刀が食い込む。やがて黒死牟の頸の半ばまで刃が通った。
「煉獄さん!!! 雁哉さん!!!」
気が付けば、炭治郎がすぐそばまで迫っていた。禰豆子も、善逸も伊之助も全員一緒だ。
「無線機で柱の増援はだいぶ前に呼んであります!!! あとは俺達が繋ぎます!!!」
ー雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・・・
ー獣の呼吸 壱ノ牙 穿ち抜き・・・
ーヒノカミ神楽 陽華突・・・
ー血鬼術 爆血・・・
「ウオオオオオオオオ!!!!!」
炭治郎たちの攻撃が入るか否かで、黒死牟が咆哮を上げる。
突如、黒死牟の体から無数の刀が飛び出し、周囲に斬撃が放たれる。
透き通る世界に入った煉獄は回避に回るものの、胴体に複数の斬撃を受けてしまう。
炭治郎、善逸、伊之助は各自の五感を駆使して寸でのところで躱すが、鮮血が散る。
禰豆子は回避できず、バラバラにされてしまう。
薙ぎ払われた中心部には黒死牟が一人立っていた。頸に半ばまで食い込んだ赫刀のせいで、動けず硬直している。
「ぐううううう!!!」
黒死牟は煉獄の赫刀を掴む。凄まじい苦痛の表情だったが、やがて、それは収まった。日輪刀が音を立てて地面に落ちる。
「驚かされたが・・・もはやこれまで・・・あのお方の命に従い・・・お前の命をもらい受ける・・・」
黒死牟はゆっくりと炭治郎に近づく。炭治郎はすかさず起き上がり刀を構えるが、到底抵抗できる戦力ではない。
「待て・・・俺はまだ・・・生きているぞ!! 炭治郎を殺したければ、まず俺を倒せ!!!」
俺は立ち上がり、黒死牟の後ろから声を掛ける。刀を辛うじて握っているだけでしかない・・・だが・・・今ここで黒死牟を相手にできるのは・・・透き通る世界が見える俺だけだ・・・
「そうか・・・しかしお前はもう満足に動くこともできぬはず・・・しばし待てば鬼にする故おとなしくしていろ・・・」
そういうや黒死牟は刀を振り上げる。無情にも俺の呼びかけは何の意味も持たなかった。
ー月の呼吸 拾陸ノ型 月虹・片割れ月ー
辺り一帯に月の呼吸の斬撃が滝のように振り落とされる。土煙があがり、静寂が訪れる・・・が、
ジャリリン・・・!
鎖のこすれるような音がした。
俺は目を開く。俺の・・・俺たちの目の前には・・・俺たちを黒死牟から庇うようにして立つ大きな背中が見えた。
「次々と・・・降って湧く・・・」
黒死牟はそうつぶやく。庇ってくれたその人は、斧を担ぎ鎖を携えて、手をかざす。
「我ら鬼殺隊は百世不磨。鬼をこの世から屠り去るまで・・・」
そこには鬼殺隊最強の隊士・・・悲鳴嶼行冥がいた・・・
続く
今回煉獄さんには痣、赫刀、透き通る世界のフルセットを発現してもらいました。原作でも猗窩座と痣なしで一対一で夜明けまで戦っていた訳ですし、発現の可能性はあるかなと。まあ、それくらいしないと兄上に殺されるだろうなと判断してこうなりました。それと重ねて申し訳ありません。大変心苦しいのですが、本小説の無限列車編ではあの人気キャラクターが死にます。ファンの方には先に謝っておきます。もう二話くらいでそうなると思います。それでも大丈夫という方は最後までお付き合いのほどよろしくお願いいたします。