輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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弟のカナト君視点です。書いてて辛かったです。ワニ先生もこんな気持ちだったんだろうか・・・でもワニ先生欠損フェチらしいしどうだったんだろう・・・一読者の身では先生の胸中までは推し量れないのでわかりませんね・・・


56話 命に代えても

「すごいね! 妓夫太郎と堕姫を倒しちゃうなんて! 二人とも三年間で随分強くなったんだね! 俺感動したよ!!」

 

「・・・しのぶさん。」

 

「みなまで言わないでください。私も最低の気分ですよ。」

 

 

現在、吉原遊郭の街中で僕たちはかつての上弦の弐、童磨と会敵していた。時刻は草木も眠る丑三つ時といったところだろうか。

 

奴の背後には左肩を切り裂かれた炭治郎が突っ伏しており、その傍でカナヲが泣いて縋り付いていた。

 

 

「炭治郎っ!! 炭治郎っ!!! お願い!! ちゃんと息をして!!!」

 

「ヒュー、ヒュー・・・」

 

 

炭治郎は辛うじて回復の呼吸で体の傷を繋ぎ、出血を抑えているようだが、それもいつまで持つかわからない。そんな様子を童磨は振り返り確認する。

 

 

「ああ、ごめんね? 中途半端に斬ったから苦しいよね? 今ラクにしてあげるから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ー蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角ー

 

 

 

 

 

「ちょっ! いきなり!?」

 

「稲葉君!! 私が炭治郎君の傷口を縫合するので、その間カナヲと持ち堪えてください!!」

 

 

駆け抜けるようにしのぶさんが童磨に毒を打ち込み、炭治郎を抱えてそのまま過ぎ去っていく。 

 

僕はすぐに童磨に肉薄し矛を振るう。

 

 

 

 

 

 

ー草の呼吸 壱ノ型 草薙の一振りー

 

 

 

 

 

 

甲高い音がする。童磨は自身の刺された箇所を押さえているものの、問題なく僕の矛の一閃を片手の扇で防ぐ。

 

 

「ひどいなあ、君。人が毒で苦しんでる間に頸を刎ねようとするなんて・・・」

 

「お前は人じゃないだろ・・・! 糞野郎!!」

 

 

 

 

 

 

ー草の呼吸 弐ノ型 枝葉のざわめきー

 

 

 

 

 

 

瞬時に左右交互の斬撃を放つが、童磨は一瞬で姿を消す。気が付くと、僕の背後で血を吐いていた。

 

 

「あれぇえ!? 毒分解できちゃったみたいだ・・・ごめんねぇえ? せっかく使ってくれたのに・・・」

 

 

夥しい量の吐血をしているのに、こいつは笑っている。イカレ具合が見て取れるようだ。何が面白いのか、両手の指を重ね合わせ、ニコニコ笑っている。

 

 

「毒を喰らうのって面白いね! 癖になりそう!! しのぶちゃんだっけ? そんな死にかけの子なんてほうっておいて、他の毒をもっと試した方がいいんじゃない?」

 

「吐き気がします。話しかけないでください。」

 

「え~。そんな・・・つれないなあ・・・」

 

 

僕の後ろで刀を構えるカナヲちゃん。そのさらに背後で炭治郎の傷を縫合するしのぶさん。しのぶさんは手際がいいから、もう5分もすれば復帰できるだろう。炭治郎の避難も考慮したら、さらに追加で5分といったところか。

 

 

「お前の相手は僕がするよ。下の子を真っ先に狙う屑野郎には容赦しない・・・!」

 

「え~!? 言い方ひどいなあ。刺々しいというか、何だか怒ってるみたいだねえ。そんなに俺に会いたくなかった?」

 

「言うまでもないだろ・・・! お前の顔なんて二度と見たくなかった・・・! せっかくみんなで誰一人欠けることなく帰れると思った矢先に現れるなんて・・・空気読めよ・・・!!」

 

「そんなこと言われても・・・悲しいなあ。俺だって数字を落とされて妓夫太郎の視界共有させてもらえなくなったんだから、仕方ないじゃないか?

 到着したらもう決着ついてたみたいだし、あのお方から耳飾りの鬼狩りだけは死んでも殺してこいって言われてるんだから、そんなどうしようもないこと言わないでおくれよ。」

 

「・・・そうか。それで今目の数字が陸なのか・・・妓夫太郎の妹がそんなこと言ってた気がするな・・・まあいい。」

 

 

僕は矛を構えなおす。やがて矛の先が赫々と発光する。

 

 

「お前は今度こそ僕が殺す。しのぶさんやカナヲちゃん、炭治郎には指一本も触れさせるものか・・・!!」

 

「アハハ! 面白いこと言うね! 三年前は爆薬がないと満足に戦えなかったくせに。それにあの時は俺も手を抜いていたし、結局最後は君意識失ってただろ? そう何度も幸運が続くかなあ?」

 

「幸運・・・白峰さんのことか・・・お前は竹刀一本の一般人に後れを取ったんだろ? お前だってつけ入る隙くらいあるんじゃないのか・・・!」

 

「ん? 白峰? ああ、あの時君を殺そうとしたら突如として現れた男のことか。あれには驚いたなあ、日輪刀も持たずに打ち込んでくるんだからさあ。あいつ一般人だったんだね。世の中不思議な人がいるもんだねえ。」

 

「三年前の僕と一緒にしないでくれ・・・お前を倒すために、これまで腕を磨いてきたんだから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー草の呼吸 漆ノ型 千草生い茂る峰塵ー

 

 

 

 

 

 

僕は矛の切っ先を童磨に向けて静止した状態から、予備動作なしで一息に数十の突きを放つ。

 

不意を突いたつもりだったが、童磨は危なげなくそれらの攻撃を対の扇で捌く。

 

 

「なるほど・・・赫刀って奴だね? 鬼の細胞を再生阻害させたり、串刺しにして鬼の筋肉を強張らせたりできるんだってね。確かにそれなら突き技は合理的だねえ。」

 

 

こいつ、まさか全部捌くとは・・・! 一発くらいは入ると思ってたのに・・・! 妓夫太郎ですら頬に掠ってたはずなのに、こいつはそれ以上に反応速度があるっていうのか!?

 

 

「さてさて、今回はちゃんと俺も相手をしようじゃないか。じゃないとまたあのお方から大目玉を喰らうからね?」

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 蓮葉氷ー

 

 

 

 

 

 

 

周囲に蓮の花のような氷がまかれ、あたりに氷の粒子が浮遊する。僕は矛を旋回し、赫刀でそれらを蒸発させる。

 

 

「え? 嘘?」

 

 

予想外だったのか、童磨は一瞬硬直した。そのタイミングとドンピシャで、奴の頸に僕の矛が入る。

 

 

「がっ!? 痛い!!!」

 

「ちっ・・・掠っただけか・・・おとなしく死ねよ・・・」

 

 

童磨は回避後、距離を取る。右の頸筋に焼き切ったような傷痕ができ、どうやら再生できないでいるようだ。

 

 

「うわ~! すごいね! 俺の血鬼術が一瞬で蒸発したよ! 赫刀ってこんなに強力なんだね! 次からは気をつけないと・・・」

 

 

僕は一閃突きを童磨の目に放つ。しかし、やはり反応速度は伊達ではなく、僕の攻撃を難なく首を傾げて躱す。

 

 

「う~ん。だけど不憫だなあ。使い手の腕がお粗末すぎるね。まあこんな重い矛を振り回すわけだし、動きが緩慢で当然か。」

 

「っ!!!!」

 

 

僕は一度下がろうとするも、童磨の一閃を受ける。矛の柄でガードしたが、わずかに間に合わず、頸の皮一枚が裂ける。

 

 

「カナト兄さん!!!」

 

「っ!? 稲葉君!!??」

 

「大丈夫!! しのぶさんは炭治郎に集中して!!!」

 

 

僕は矛を構えたまま、みんなを庇える位置で立ちふさがる。頸からわずかに血が滴っているので呼吸で止血する。

 

 

「アハハ! お揃いだね!! 攻撃の時と違って、回避反応は速いんだね? 大口叩く割には逃げ腰だねえ。」

 

「黙れ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

ー草の呼吸 肆ノ型 穀種争乱ー

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は矛を旋回し、童磨に斬りかかる。しかし、童磨は涼しい表情で左右に体を傾け交互に躱していく。

 

 

「だから・・・君は攻撃するときの動きが緩慢なんだって。そんなんでよく猗窩座殿と戦えたね? ああ、そうか。猗窩座殿は攻め主体だから君は回避と防御に専念すればいいのか。それでだね。」

 

「黙れ・・・!!」

 

「しかし、猗窩座殿も不憫だなあ。この程度の鬼狩りに阻まれて、耳飾りの子を殺せず、あのお方からお叱りを受けるんだから。まあでもいいか! 今はお揃いの上弦の陸同士だし!」

 

「うるさい!! さっさとくたばれ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー草の呼吸 捌ノ型 万緑叢中に咲く緋華ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕にとっての最大回数最高速度の斬撃を童磨になりふり構わず乱れ振るう。暫く童磨は扇で捌いていたが、質量の差か、徐々に受けられなくなり片腕が斬り飛ばされた。

 

しかし、同時に、僕は凄まじい激痛を感じ、その場で膝を着く。どうやら向こうの腕を切り飛ばしたと同時に、こちらは右側の肋骨を一閃され全て切断されたようだった。

 

 

「がふっ!!!」

 

「っ!!!! カナト兄さん!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー花の呼吸 肆ノ型 紅花衣ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の頭上を飛び越え、カナヲちゃんが上下に捻るように行き交う斬撃を童磨に放つ。しかし、奴は一瞬で姿を消してしまう。

 

 

「うん。その子が邪魔で辿りつけなかったけど、うまく挑発に乗ってくれたね。」

 

「っ!!??」

 

 

童磨は炭治郎を治療するしのぶさんの正面に立って笑っていた。扇を掲げ、炭治郎に振り下ろす。

 

しかし、寸でのところでしのぶさんが炭治郎を抱き上げ躱す。しのぶさんの背中から鮮血が飛び散る。

 

 

「えーーーー・・・ どうして庇うの? その子はもう戦力にはならないだろう?」

 

「ごほっ・・・稲葉君ならそうしました・・・だから私は全力で炭治郎君を守ります。例え・・・この命に代えても・・・!!」

 

「うーん。よくわからない考え方だなあ。わざわざ身を挺して庇う必要なんてないだろう? しかも君、柱なんじゃないの?

 そんな死にかけで大して役にも立てない隊士を庇う暇があったら、俺に毒でも打ち込めばよかったのに・・・」

 

「・・・あなたにはわかりませんよ・・・私は・・・稲葉君を愛しています・・・だから・・・最期くらい・・・彼の想いに報いたかっただけです・・・」

 

「へえ~、君ら恋人同士になったんだ! おめでとう!・・・でも安心して? もう苦しまなくていいんだ。俺が君を救ってあげる。彼もこの後救ってあげるから、俺の中で二人一緒に悠久の時を過ごすといい。」

 

「・・・はあ・・・それだけは死んでも御免なのですが・・・この状況を考えるに仕方ありませんか・・・腹立たしい限りです・・・」

 

「師範!!」

 

 

炭治郎を抱きしめ、その場で座り込み、動けなくなったしのぶさんに背後から童磨は笑って近づく。僕は助けに向かおうとするも、動けば切れた肋骨が肺に刺さりそうだ。

 

カナヲちゃんも全力で駆け寄るも距離的に間に合いそうもない・・・ここまでか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ー音の呼吸 壱ノ型 轟ー

 

 

 

 

 

 

 

突如爆音が鳴り響く。周囲に爆風が吹く。やがて煙が収まると、童磨の前には全身傷だらけの満身創痍とも言うべき宇随さんが立っていた。

 

 

「胡蝶と稲葉は絶対に死なせない!! 例え、この命に代えても!!!」

 

「宇随・・・さん・・・?」

 

「へ~。その傷、妓夫太郎の血鎌によるものでしょ? そんなに全身切り刻まれて、よく毒で死ななかったね? そもそも出血多量でどうして生きてられるのかな?」

 

 

ケラケラ笑う童磨に対し、宇随さんは既に息が切れている状態だ。回復の呼吸で傷口を塞ぐだけでギリギリなのだろう。

 

 

「しのぶちゃんだっけ? その子もなんだけど、どうして命を捨ててまで死にかけの他の人を守ろうとするのかな?

 どのみちみんな俺に殺されるんだ。ならそんな苦しい選択なんてする必要ない。みんな諦めて、俺の中で安らかに過ごせばいいんだ。

 あまりにも君たちが可哀そうだから、今日だけ特別に男も女も関係なく食べてあげる。俺は優しいからね。」

 

 

宇随さんが助けに来たところで、状況はほとんど変わらない。一度切り結べば、瞬時に絶命するだろう。仮にここへ善逸と伊之助が無理して駆け付けたところでどうにもできないだろう。

 

唯一、希望があるとすれば、宇随さんの奥さんたちが隠の人達と合流して他の柱を呼んでくれている可能性だけど・・・それも間に合うか怪しい・・・ここまでか・・・

 

 

「ぐうの音も出なくなったね? じゃあ一人ずつ頸を刎ねて・・・」

 

「お前か? カナトが言ってた遊郭に隠れ住む上弦の鬼って言う奴は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が今度こそダメだと思ったその時、童磨の背後から寝巻の着物姿で日輪刀だけを持って近づく白峰さんが現れた。

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

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