輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話 作:科学大好き人間
そんなことより!! 映画公開日決まりましたよ!! 2025年7月18日!! 想定よりも早い!!! めっちゃテンション上がりましたよ!!! ということで映画を楽しみにしつつ、本小説の執筆も頑張ろうと思います。よろしければ最後までお付き合いください。
「なるほどな・・・」
俺は上弦討伐の要請で、宇随の管轄する地域、吉原遊郭へと向かい、現着した。
まさに今全滅する一歩手前というところで俺は助太刀に入る。相対している鬼の目には、『上弦』『陸』と刻まれていた。
「伊黒!! そいつは以前稲葉が言ってた童磨っていう鬼だ!! 氷の血鬼術は絶対に吸うんじゃねぇぞ!!!」
「五月蠅い。言われなくてもわかっている。鏑丸がしきりに警戒しているからな。どうやら奴の周辺に冷気を纏った目に見えない粒子が浮遊しているようだ。
蛇は嗅覚探知及び温度感知に長けている。鏑丸の支援があれば誤って吸い込むこともないだろう。」
「へー、君が首に巻いてる蛇ってただの飾りじゃないんだね? ちゃんと役に立っているなんて驚いたなあ。」
目の前の童磨という鬼は感心している。俺以外に蛇の呼吸を使う者も殆どいないからか珍しいのだろう。好奇な目線を感じるが、俺はそれが腹立たしかった。
「それで・・・向こうで騒がしく戦っているのはなんだ? 先ほど俺が一体砕いた人形と同じようなのが複数いたが・・・」
「伊黒さん。あの人形は童磨と同程度の規模の血鬼術が使えます。恐らくあと2体は追加で出せると思うので、充分に警戒してください。」
「警戒するのはいいが・・・胡蝶、あっちで戦っているのは誰なのだ? 正直・・・人間が相手できる規模の戦いではないと思うのだが・・・」
そう言い、俺は遠く離れたところで氷の血鬼術が連発され、周囲を銀世界に変えている辺りを一瞥した。
「あっちは・・・気にするな。とにかく童磨本体を何とかした方がいいから目を離すな伊黒!!」
「いや・・・気になるだろう・・・悲鳴嶼さんが現着したとの話も聞かんし・・・あの規模の攻撃を一体誰が対処しているというのだ? 鬼同士の内輪もめか何かか?」
「・・・・・・人間です・・・でも糞みたいな人なので気にしないでください・・・そんなことより伊黒さんは・・・」
「待て・・・人間? あの攻撃を受け続けている奴が人間だと言うのか? 気は確かか??」
俺は信じられないと意思表示する。俺はてっきり上弦同士が血鬼術で争っているのかと考えていたのだが、宇随や胡蝶の言い分では違うらしく、加えて詳細な情報共有をしたがらない。一体なぜ・・・
「伊黒・・・さん・・・あっちで・・・白峰・・・という人が戦っています・・・どうかあの人が殺される前に・・・童磨を・・・殺してくれませんか・・・!?」
「白峰? 聞いたことのない名だな・・・稲葉、お前の知り合いか?」
「はい・・・彼は特別・・・鬼殺隊に・・・必要です・・・死なせたくない・・・!」
「そうか。事情は呑み込めぬが、お前が言うのなら死なせるには惜しい男だということなのだろう・・・すぐに童磨を討伐する・・・!」
「うーん。蛇と意思疎通できる柱なんて珍しいけど、それでも一人で俺の相手は無理じゃないかな? 最低でも万全な柱三人はいないと勝負にすらならないと思うよ?」
「関係ない・・・! 鬼は一匹残らず俺が斬り殺す!!」
俺は童磨の言葉を一蹴する。
ー蛇ノ呼吸 壱ノ型 委蛇斬りー
俺は奴に距離を詰め、出の速い斬撃を放つ。俺の太刀筋は見たことないのか、童磨は扇で受けるものの肩に斬撃が入った。
「すごい! 太刀筋が曲がるね! とても読みにくい!」
ー血鬼術 凍て曇りー
俺は煙幕のような氷の血鬼術を回避し、縫うように背後へ回りこむ。
ー蛇ノ呼吸 弐ノ型 狭頭の毒牙ー
「おっと!」
死角から頸を狙うが、こいつの反応速度は尋常ではないようで、少しばかり皮を切り裂く程度で終わった。俺はすぐに距離をとり、氷の粒子が浮遊していない場所まで下がると一気に息を吸い込む。
「わあ、すごいねえ。接近した時は息を止めて斬りかかってるんだね? そして離脱した時だけ呼吸をすると・・・でもそれって体への負担大きんじゃないかな?」
童磨の指摘は正しい。正直、息を止めて剣を振るうのはいつもの全集中の呼吸と真逆の戦い方だ。一つの型を放つだけでいつもの何倍も消耗する。
「ああ、だが消耗し切る前にお前の頸が刎ねられれば何の問題もない・・・!」
ー蛇の呼吸 参ノ型 塒締めー
俺は再度肉薄し、童磨の周りを駆け回り、様々な角度から乱れ斬る。俺の縫うような動きとうねる太刀筋に目が慣れないのか、童磨は俺の攻撃を捌き切れず全身から血しぶきをあげる。
再び頸に一撃を入れるが、切り裂くだけで終わる。俺は再度離脱し、肩で息をする。
「俺の血鬼術がなければ、そのまま畳みかけ続けて頸を刎ねられたかもしれないねえ。君の太刀筋なかなか読み切れないからさ。でも現実それは叶わないよ。
このまま攻撃を続ければ、君はすぐに疲弊して動きも鈍くなる。そうしたら君も終わりだねえ。それでも続けるかい?」
「・・・・・・」
まさに攻めあぐねる状況だ。俺の剣は届くが、決定打まではいかない。この周囲の氷の粒子さえなければどうとでもなるのだが・・・
俺がそう思案していると、突如、周囲に大量の氷柱及び蔓のような攻撃が降り注ぐ。俺は一早く全力で回避しその発生源を見定める。
「カナト!! 悪い!! 赫刀よこせ!! このままだと死ぬ!!!」
「白峰さん・・・! 用意はしていましたよ・・・! これを・・・!!」
少し離れたところで倒れたまま稲葉が自身の矛を掲げる。その場から動けないようで、このままだと血鬼術を浴びてしまうが、すぐに白峰と呼ばれた男は駆け寄り、自身の日輪刀と交換する。
「今度はそれを赤くしろ!! 頼んだぞ!! げほっ! ごほっ!!」
「白峰さん・・・まさか吸ったんですか・・・!?」
稲葉の声掛けに答えるより先に、白峰はその場をすぐ離れる。稲葉を巻き込まないようにするための判断か?
やがて奴は少し離れたところで氷の人形に囲まれ、四方八方から血鬼術の飽和攻撃を受けてしまう。俺は唖然とした。
「あ~あ。流石に死んだね。これで結晶ノ御子も全部君にぶつけられるよ。勝負あったねえ。」
童磨は銀世界となった吹雪の中心を見て笑いながらそうつぶやく。俺はあれの相手を今からすることを想像し身構えた。しかし・・・
ー氷の呼吸 弐ノ型・改 大紅蓮・氷輪回しー
赤い渦が周囲の吹雪を蒸発させている。信じられん・・・あの規模の血鬼術を矛の旋回で防いでいるのか!?
「は・・・? 何それ!? 俺の結晶ノ御子五体で取り囲んでるのに死んでないの!?」
童磨は予想外の事態なのか驚きを通り越して呆れている。俺はその隙をついて童磨に突進する。
ー蛇の呼吸 肆ノ型 頸蛇双生ー
俺は童磨のそばを駆け抜け、左右交互の斬撃を放つ。片腕と片足を切除した。
ー蛇ノ呼吸 壱ノ型 委蛇斬りー
とどめを刺すなら今しかないと、自身の最も速く消耗の少ない斬撃を放つ。頸に入る直前、扇を盾にされてしまうものの、刃をしならせ縫うように斬り払う。
俺は酸欠になりながらも一旦離脱する。離れた場所で膝を着き転んでしまうものの、童磨の状態を確認する。
「がふっ!! 危なかったよ・・・もう少し深く入っていたら頸を斬り落とされていたね。」
「くそっ!!」
俺はすぐに立ち上がる。童磨の攻撃に備えて剣を構えるが、奴は驚いたのか目を見開いていた。
「えーーーー・・・噓でしょ・・・」
「?」
どうやら俺を見てるのではない。俺の背後を見ているようだった。
「げほっごほっ・・・ふう・・・ようやく五体全部潰し終わったぜ・・・ごほっ・・・」
背後より、ところどころ凍傷の痕ができている白峰が現れ、俺の横に立つ。片手に矛を、もう片手に稲葉から回収したのか最初に持っていた日輪刀を携えている。
加えて咳をしている様子から、童磨の血鬼術をいくらか吸い込んでしまったことも見て取れた。
「お前・・・よく死ななかったな・・・」
「ああ? 誰だお前? 柱か?」
「蛇柱 伊黒小芭内だ。」
「伊黒か。小柄だが俺より年上か? まあいい。敬語はだるいからこのままの口調で喋らせてもらうぜ。ごほっごほっ!」
白峰はいけ好かなそうな男だが、腕は相当立ちそうだ。すぐ横に並んでいるのに気配をほとんど感じない。重心の取り方からして相当に武芸を嗜んでいることが予想できる。
「白峰・・・赫刀なら奴の血鬼術を無効化できるのか?」
「ああ? 見てなかったのか? 普通に氷蒸発させてただろうが。」
「ちっ・・・まあいい。なら奴に肉薄しても何の問題もないのだな。このまま奴の頸を刎ねるぞ。」
「俺はもとよりそのつもりだ。むしろ手柄横取りすんなよ? あいつは俺の得物だからな・・・ごほっ!」
白峰は矛を投げ捨てる。あの重さの矛を片手で持っていたのか・・・背丈もそうだが、相当に恵まれた肉体を持っているようだ。
「まさか俺の結晶ノ御子を全部壊しちゃうなんてねえ。でもいくらか俺の血鬼術を吸ってるから、そう長くは戦えないんじゃないの?」
「うるせえ。赫刀があればもう喰らわねえよ。さっさと俺の散財生活のために死にやがれ。」
「はー・・・なんでそんなにお金がいるのかなあ。何か買いたいものでもあるのかい?」
童磨は白峰に質問する。白峰は少しの間考える素振りをしていたが、やがて口を開いた。
「俺は俺のために好き勝手に生きるって決めてるんだ。浴びるように高い酒飲んで、舌が肥えるくらいうまい飯たらふく食って、派手でしゃれた上等な着物を着て、花魁みてぇにいい女を抱きまくるんだ。
仕事はしねえで日が高く昇ろうが好きなだけ寝て、気が向いたら賭場で飽きるまで遊びまくる。その為には金が腐るほどいる。柱になればいくらでも当主から金巻き上げられるだろうからな。
だからさっさとお前の頸をよこせ。ごほっ! ごほっ!」
「白峰・・・貴様そんな理由で鬼殺隊に入ったのか・・・!? 俺はお前を軽蔑したぞ・・・」
「はっ! お前らの評価なんて知るかよ。上弦さえ殺せれば文句ねぇだろ? ごほっ! ごほっ!」
「君ってさ、なんでそんなに自堕落なのかな? 少しは世の中の役に立とうとか思わないの? 俺みたいに人に尽くし世の中に貢献してみたらどうだい? きっとやりがいを感じられるよ?」
童磨は童磨で、訳の分からないことを言う。稲葉から聞いた話だと、救済と言いながら大勢の人間・・・特に子供を産める女性を好んで食い続ける胸糞の悪い奴らしい。その意味がよく理解できた。
「俺の親父は日露戦争でこれ以上ないってくらい国の為に尽くした。でもなんの見返りもなかった。今も国の為に軍人やってるのが心底理解できねぇ。」
「それさっきも言ってたね? だから君は贅沢三昧したいってことかい?」
「加えて俺のじいさんは元鬼殺隊の柱だった。」
「何っ!!??」
俺は思わず反射で声をあげてしまう。こいつの祖父が元柱だと・・・!?
「俺のじいさんは氷柱として鬼殺隊に貢献した。十二鬼月の下弦なら山のように討伐してた。当時の水柱、鱗滝っつうじいさんが生きてれば証言してくれるかもな。」
「鱗滝さん!!??」
遠くで竈門が声をあげていた。たしか鱗滝は冨岡や竈門の育手だったか。元柱だとは聞いていたが・・・
「俺のじいさんは鬼殺隊で相当貢献したはずだ。だが、ある日じいさんは妹を鬼にされた。じいさんは妹を庇ったが、当時の鬼殺隊当主は許しちゃくれなかった・・・」
遠くの竈門が目を見開いているのが、視界の端に移った。あいつと状況は確かに似ている。
「なぜだ? じいさんは柱としてこれ以上ないってくらいに鬼殺隊に貢献した。なのに妹は問答無用で処刑された。確かに妹は鬼になって正気を失っていたらしいが、一人も食い殺しちゃいなかったとのことだ。
なぜなら、じいさんがすぐに拘束し監禁したからだ。誰にも迷惑はかけてないはずだった。それなのに・・・」
「ふーん。可哀そうな話だねえ。」
何の感情もこもってない声で童磨は相槌を打つ。俺は他人事とは言えそれが無性に腹立たしかった。
「じいさんは俺がガキの頃、剣を教えてくれた。もし、鬼がいたら市井の人を守れるようにって。とっくの昔に鬼殺隊を除隊したはずなのにな。
なぜひどい仕打ちを受けておきながら人助けなんてできる? なぜ俺のじいさんも親父も組織のため社会のため国のために尽くそうとするんだ?
俺には心底理解できないね。胸糞悪い。鬼殺隊当主の産屋敷も、この国のお偉いさんどもも・・・善人の献身をていよく利用してるだけじゃねぇか・・・!」
「白峰・・・お前・・・」
「伊黒・・・お前らが鬼殺隊当主の為に命懸けで戦いたいって言うなら俺は止めはしない。価値観は人それぞれだ。強制はしない。
だがな・・・俺は決めたんだ・・・二度と他者の為に身を削ってたまるかって・・・だから俺は俺のためだけに戦う・・・否定されるのは我慢ならねぇ!!」
白峰から凄まじい怒気が漏れ出す。俺は無意識にたじろぐ。
「アハハ! じゃあさ、俺の万世極楽教に入りなよ? 信者からもらったお金で贅沢させてあげるよ? もし君が乗り気なら鬼にしてもいい。君なら黒死牟殿の後釜に充分なれると思うから。
どうだい? 柱になるより、そっちの方がラクだし、簡単だよ? 鬼殺隊のために血を流す必要なんてないじゃないか。」
こともあろうに童磨は鬼の勧誘をしてくる。俺は白峰を睨む。もしこいつが鬼に寝返るなら、俺は即刻こいつの頸を刎ねる・・・!
しかし白峰は漏れ出した怒気を童磨にぶつける。
「はっ! 俺が? 鬼に? 冗談言ってんじゃねぇよ。じいさんの考えは理解できなかったがな、じいさんから鬼の話は沢山聞いてるんだよ!
ただ一人鬼の首領のために奴隷のように未来永劫働き続けろってか!? ふざけんじゃねぇよ!!
お前は俺が殺す。そして、柱になって産屋敷から金を巻き上げてその金で贅沢する!! それが俺なりのつけの払わせ方だ・・・理解してもらわなくてもかまわねぇぜ?」
「そっか。それは残念。君なら上弦の壱にだってなれたはずなのにね? でも可哀そうな子だし君も俺が救ってあげるよ。俺は優しいからね。」
そうして童磨は扇を構える。白峰も刀を構える。怒気が漏れ始めてから、刀がギシギシ音を立てるくらい握りしめている。赫刀の色がより濃くなった気がした。
俺と白峰は、ほとんど同時に童磨へと突進した。
続く
鏑丸の有能さを書きたくてこんな話になりました。原作でも無惨の攻撃を鏑丸が失明した伊黒さんに伝えて戦ってる描写があったのであり得そうだなと思い書きました。あとNARUTOでもサスケが蛇は温度感知云々の話をしてたので対童磨戦でその設定を入れてみました。
さて、本小説の遊郭編も次回でラストです。あと一人だけ柱が登場する予定です。まあ伊黒さんが来た以上、最後の救援は誰なのかわかりそうですが・・・それでも最後まで楽しんでもらえると嬉しいです。