輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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カナヲちゃん視点です。漸くこの話投稿できるかぁと感無量です。


65話 二人の体温

「はあ・・・」

 

 

私は一人縁側でため息をついていた。遊郭潜入任務の後、炭治郎が大怪我をして大変だったけど、少なくとも傍に居られた。

 

意識が戻った後も毎日看病した。色々なお話をした。傍に居られる時間がとても沢山あった。

 

でも今は違う。炭治郎は怪我が完治すると、白峰について行った。透き通る世界の入り方を教えてもらうためだ。

 

それでも少しくらいは会える時間があると思っていた。稽古の合間に蝶屋敷へ戻って来てくれると思っていた。でも炭治郎はずっと鍛錬に集中しっぱなしで私に会いに来てはくれなかった。

 

寂しい・・・最近ずっとそう感じる・・・

 

感情が希薄になってた時はそんなことすら感じなかった。でも炭治郎のおかげで私は変わった。感情をうまく表に出せないだけで、胸の内には昂った気持ちで一杯だ。

 

炭治郎に会いたい。会ってお話して、二人で笑っていたい。触れたい。抱きしめてほしい。傍にずっと居たい。でもこの一週間それは叶わなかった。

 

炭治郎が鍛錬に行ってから三日後、カナト兄さんが蝶屋敷に顔を出した。カナト兄さんも遅れた生産の仕事で三日三晩泊まり込みで働いていたらしい。

 

しのぶ姉さんも三日振りに会えて本当に嬉しそうだった。手を握って肩を寄り添い合って縁側で座っていた。時々しのぶ姉さんがカナト兄さんに肩を抱き寄せてもらっているのを見た。

 

羨ましいと思ってしまった。しのぶ姉さんは好きな人と一緒に居られるのに、どうして自分はって思ってしまった。

 

 

ずるい・・・なんでしのぶ姉さんだけ・・・私みたいにずっと離れ離れになっちゃえばいいのに・・・

 

 

一瞬とはいえ今までの人生で湧いたことのない悪意・・・人の不幸を願う感情がよぎった。

 

しのぶ姉さんに対してそう思ってしまった瞬間、今まで感じたことのない自己嫌悪を抱いた。

 

私ってこんなに嫌なこと考える人間だったの? しのぶ姉さんのことも好きなのに、どうしてそんな風に思ってしまったんだろう。私はそれから暫くの間、塞ぎこんでいたように思う。

 

 

「カナヲちゃん。花屋敷に来るかい?」

 

 

翌日、カナト兄さんにそう言われた。私が元気をなくしていたのに気づいての提案だったのだろう。

 

 

「稲葉君。白峰の前にカナヲを連れて行くのはあまりしてほしくないのですが・・・」

 

 

しのぶ姉さんはカナト兄さんの提案を断った。以前白峰が蝶屋敷に居た際は、私もよく声を掛けられた。私もあの人は嫌いだ。何だか女の人を値踏みするような目で見てる気がする。

 

しのぶ姉さんがあの人を蝶屋敷から出禁にした理由もわかる。もしかしたら誰もいないところで手を出されていたかもしれないから。憶測でしかないけど・・・

 

 

「う~ん。でもカナヲちゃんここ数日本当に寂しそうだし、少しくらいは炭治郎に会わせてあげたいんだよね。僕が傍についてれば問題ないんじゃないかな?」

 

「気持ちはわかりますが、目を離した隙にもしものことがあるかもしれませんから。私は嫌ですよ。」

 

 

しのぶ姉さんは心底白峰を人として信用できないと言っていた。だから顔も見たくないし、私やアオイもあの人に会わせたくないとまで言っていた。

 

結果、私は炭治郎のいる場所に行くことができなかった。

 

カナト兄さんの最後の稽古を受けて、しのぶ姉さんにも認められて、ついに私は柱の任命も受けることになり、その後、支援部隊が大勢参加できない市街地や狭所での任務に向かうものの、心ここにあらずな気がする。

 

基本雑魚鬼しか会敵しないから、それでも手傷を負うことなんてないんだけど、カナト兄さんは毎晩生産現場で寝泊まりしながら心配しているそうだ。

 

気が付けば炭治郎と会えなくなってもう一週間だ。食事もあまり喉を通らなくなってきた気がする。その事実にアオイはとても心配していた。

 

 

「しのぶ様。流石にカナヲを炭治郎さんに会わせてあげてはどうですか? 最近のカナヲの様子は目に余りますよ。」

 

「そうだよ、しのぶさん。今後の任務で支障が出るかもしれない。炭治郎の顔を見せるだけでもいいからさ?」

 

「・・・わかりました。明日カナヲを花屋敷に連れていきます。私が付き添うので夕方からでもいいでしょうか?」

 

「うん、わかったよ。僕も生産が早く終わったら先に花屋敷に向かっておくから。最悪僕が白峰さんをどっかに連れ出しておけば万が一もないだろうから。」

 

 

そうして今日がその日だ。私は縁側で待機している。今になって急に本当に会えるかどうか心配になってきた。私はため息をつき続けていた。

 

今日もし会えなかったら、次会える機会はいつになるだろう。三日後? 一週間後? 一か月後? そんなに待てない。待てる気がしない。

 

もういっそ一人でこっそり会いに行ってしまおうか。しのぶ姉さんは怒るだろうけど、気にしてられない。

 

私は炭治郎に会いたい。次会ったら二度と離れたくない。ずっと一緒に居たい。そのためにしのぶ姉さんの言いつけを破る自信がある。そんな気がする。

 

よし、日が傾いてきたらもう一人で会いに行ってしまおう。しのぶ姉さんの心配なんてもう知らない。私はそう自分で納得し、ただ時間が過ぎるのを待った。

 

どれくらい時間が経っただろうか。お昼を過ぎ、太陽も徐々に下がってきた。頃合いかと思い私は立ち上がる。もう待てる気がしない。私は出発することにした。その時・・・

 

 

「カナヲっ!!」

 

「っ!! 炭治郎っ!!??」

 

 

遠くから声がしたかと思ってそちらを見ると、炭治郎が蝶屋敷の塀を登って飛び越えていた。すぐに私に駆け寄って来てくれる。

 

 

「一週間振りだね! カナヲ!! 元気にしてたか!?」

 

 

お日様のように底抜けに明るい笑顔で私に声を掛けてくれる。ああ・・・もう我慢できそうにない・・・!!

 

 

「さっき丁度稽古が終わったんだ! だから真っ先にカナヲに会いに戻ろうと・・・っ!!」

 

 

それからの私の行動は衝動的なものだった。私は居ても立っても居られず、炭治郎に抱き着いた。

 

 

「カ、カナヲ!!??」

 

「遅いよ! 炭治郎っ!! なんで会いに来てくれなかったの!? 私ずっと寂しかったんだよ!!??」

 

「ごっごめん・・・」

 

 

炭治郎を困らせてしまったとわかっているけど、私は自分の感情を制御できなかった。

 

 

「稽古の合間に少しくらい帰って来てくれたっていいでしょ!? なんでずっと私のこと放っておいたの!?」

 

「カ・・・カナヲ・・・本当にごめん・・・」

 

「私・・・私・・・ずっと炭治郎の傍に居たいよ・・・もう離れたくない・・・!!」

 

 

私は声を震わせて炭治郎の耳元でそう声を絞り出す。もしかしたら泣いてたかもしれない。目頭が熱い。私は命一杯の力で炭治郎を抱きしめた。

 

 

「・・・ごめん、カナヲ。寂しい思いをさせてごめん・・・これからはずっと傍にいるから・・・」

 

「本当・・・? もうどこかに一人で行ったりしない?」

 

「ああ、本当だよ。約束する。これからはずっと一緒だ・・・」

 

「炭治郎・・・!」

 

 

私は抱きしめる力を緩める。すると炭治郎は私を抱きしめ返してくれる。そっと頭を撫でてくれる。暖かい・・・

 

やがて、炭治郎は私の背中に回してた手を離し、私の肩に手を置いて私を見つめる。とても真剣な眼差しで、つい私も見つめ返してしまう。

 

 

少しの間、そうしていたが、やがて炭治郎は口を開いて私にこう言った。

 

 

「カナヲ、聞いてくれ。俺は・・・俺は・・・! カナヲのことが好きだ・・・!!」

 

 

一瞬時間が止まったのかと思った。常中で癖になっているのに、普通の息をすることさえ忘れた。

 

 

「俺は・・・カナヲの一生懸命なところとか、ほんとは人と話すのが苦手なのに頑張って会話をしようとしているところとか、とっても好きだ。

 しのぶさんやカナエさん、カナトさんのために少しでも力になろうと頑張っている、ひたむきなところとかが好きだ。

 実はついさっきまで自分の気持ちを自覚できてなかったんだ。でもカナヲと再会して実感した。俺はカナヲのことが好きなんだって。

 

 でもだからこそカナヲに知っていてほしいことがあるんだ。聞いてくれるか?」

 

「え? え!? ええっ!!??」

 

 

私は人生で最も混乱したであろう慌てぶりだった。炭治郎が私のことを好き? 夢でも見てるのかな・・・? でも、でもっ! この体温は間違いなく本物で・・・これは決して夢なんかじゃない!!

 

でも、だからこそ、炭治郎がさらに伝えようとしていることが気になった。炭治郎は一体私に何を伝えるつもりなの?

 

 

「実は俺・・・痣が出てるんだ。さっきの稽古でわかった・・・白峰さんが言うには、上弦との戦いで発現してたらしいんだ・・・

 俺は・・・カナトさんと同様に二十五までしか生きられない・・・長くてもあと十年の命なんだ・・・」

 

「っ!!!」

 

 

炭治郎に痣が・・・痣が出たの・・・!? そんな・・・どうして・・・カナト兄さんだけじゃなく炭治郎にまで・・・

 

 

「だからカナヲ・・・俺はカナヲの生涯を支えてあげることができない・・・! カナヲを一生守り通してあげるって言えない・・・!!

 それでも・・・それでも・・・!! 俺はカナヲと一緒に居たい!! カナヲの気持ちを聞かせてほしい!!!」

 

「っ!!!」

 

 

私の心臓が一段と跳ねる。ずっと早鐘のように鼓動している。でもだからこそ、私は黙っているわけにはいかない。炭治郎が私の答えを待ってるんだから・・・!

 

 

「私も・・・私も・・・!! 炭治郎のことが好き!! 大好き!!! ずっと傍に居る!! 絶対離れない!!!

 ほら、炭治郎・・・もうこれで寂しくないでしょう?」

 

 

私は再び炭治郎を抱きしめる。そっと優しく、包み込むように。やがて炭治郎の体の強張りもほどけていくようだった。

 

 

「カナヲ・・・ありがとう・・・俺、カナヲを命続く限り幸せにするよ・・・! 約束する・・・!!」

 

「うんっ!! 私も約束するよ!! 炭治郎が生まれてきて良かったって思えるくらい、これから先、命一杯幸せにしてあげる!! 約束だよ!?」

 

「ああ・・・」

 

 

そうして、私と炭治郎は二人でずっと抱き合っていた。やがても日も傾き始め、しのぶ姉さんが私を探して縁側にまで来る。

 

しのぶ姉さんの驚く声がしたような気がした。でも私たちはそんなことにまるで気が付かなかった。

 

 

 

 

ずっと二人の体温を感じ続け、ずっとこの時間が続けばいいのにと、そう思うだけだった。

 

 

 

 

続く 

 

 

 




ついに二人も結ばれました。筆者は浄化されかかっています。まるで朝日を浴びた鬼のように(ボロボロ・・・)
さて、原作の公式カップルですが、二人がくっつく際の詳細は不明だったかと思います。なので炭治郎君から告白してもらう展開にしました。カナト君としのぶさんの時は女の子の方からだったので、炭治郎君とカナヲちゃんの場合は男の子からアタックすべきだと思いこうしました。やっぱり長男を語るなら、ここは男らしく自分からいかないとですね! これには錆兎もにっこりのはずです(救済できなかったのが本当に口惜しや)。
筆者同様、炭カナのエピソードで浄化された方がいらっしゃれば、高評価お願いします。もっとそういう話書こうとやる気になりますので。それでは引き続きよろしくお願いいたします。
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