輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話 作:科学大好き人間
「カ、カナヲ? 人目に付く場所でそういうことするのはどうかと思うわよ? も、もう少し控えなさい。」
「いいでしょ、別に。・・・私、しのぶ姉さんもカナト兄さんと同じようなことしてるの知ってるから・・・!」
「っ!? 何を言い出すの!? 私たちは決してそんなそんなやましいことは・・・!」
「うふふ~、しのぶったらこの前、稲葉君に縁側で抱きしめてもらってたでしょ~? 私見たわ~。」
「私はしのぶ様が稲葉さんと手を握って蝶屋敷の周辺を散歩しているの見ました・・・」
「ほら? しのぶ姉さんも人のこと言えないでしょ?」
「・・・なんで皆そんなところまで見てるのよ・・・///」
私は蝶屋敷のみんなと朝食を摂っているのだが、今日はカナヲが炭治郎君を連れてきて隣の席に座らせている。そしてあろうことか炭治郎君の腕に抱き着いている。
「いくらなんでも食事中にそんなことするのはどうかと思うわ、カナヲ?」
「カナヲ・・・しのぶさんの言うことも一理あるぞ? このままだと食べにくいし・・・」
食事中の炭治郎君もついに口をはさみ始めた。しかし・・・
「っ! じゃあ私が炭治郎に食べさせてあげる!! はい、あ~ん?」
こんなやり取りは昨日からずっと続いている。そう、炭治郎君がカナヲに告白して、二人が結ばれてからずっとこの調子なのである。
炭治郎君も最初は満更でもなかったのだが、本日の朝食時には既に困ったような顔をしていた。
なんでもご飯だけでなく、お風呂でも、寝るときでもカナヲは炭治郎君のそばから離れようとしないのだ。
昨日、カナヲが炭治郎君の浸かる湯舟やお布団の中に入ろうとした時は、炭治郎君の方が必死に制止してたけど・・・
それでも懲りることなく、カナヲは暇さえあれば炭治郎君の腕に抱き着いている。ずっと密着している。
私も恋する乙女の気持ちはわからなくもないが、だからって場所もわきまえずそういうことをするのは頂けないと思う。
「もうっ! カナヲったら!! いい加減にしなさい! 炭治郎君困ってるでしょ!?」
「炭治郎・・・私と一緒に居るの・・・嫌?」
「そ、そんなことないよ・・・///」
「ほんと!? じゃあずっとこうしてるね!!」
私は呆れて閉口してしまった。埒が明かないと思い、私は話し相手を変える。
「姉さん、この子全然ダメだわ・・・言われても何も聞き入れそうにないの。どうしてこうなっちゃったのかしら・・・」
「まあまあ、そんなこと言わずに。姉さんはしのぶの笑った顔が好きだなあ。」
「だって! 自分の感情を制御できない子はだめよ、危ない! 特に炭治郎君の貞操が危ない!!」
「もー、そんなに重く考えなくていいじゃない? カナヲは可愛いもの~!」
「理屈になってない!! 姉さんみたいにカナヲも妊娠しちゃうかもしれないわ!! 流石に早すぎるわよ!!」
「あらあら~、しのぶったらもうそんなことの心配してるの~? いいじゃな~い、可愛い甥っ子か姪っ子ができるわよ~?」
「もうっ!! 甥っ子姪っ子よりも自分の子どもの方が欲しいわよっ!! 私だって稲葉君とそこまで進んでいないのにっ!!」
「しのぶ様・・・食事中になんの話をしているのですか・・・? なほたちがドン引きしてますよ・・・」
「はっ!? ち、違います!! 今のは言い間違えです!!」
「あらあら~、しのぶったら稲葉君の子どもが欲しくてたまらないのね~? 今後稲葉君に相談してみたら~?」
「ちょっ!!?? 姉さんこそ一体何の話をしようとしてるの!? 今この場に男の子の炭治郎君だっているのよ!!??」
「・・・あの・・・俺・・・席外しますね・・・どうぞごゆっくり・・・」
「ちょっ!? 炭治郎君!! 誤解だから!! 勘違いしないでってば!! ちょっと待っ・・・待ちなさぁあああああい!!!!」
私の必死の叫びにも振り返ることなく炭治郎君はその場を去ってしまった。もちろんカナヲもくっついたままである。
「も~、しのぶったら大きな声出し過ぎよ~? 私のお腹の赤ちゃんもびっくりしちゃうじゃない。」
「あ・・・ごめんなさい・・・体に障ったかしら・・・姉さん平気?」
「も~、今度は心配し過ぎよ~? これくらいなんてことないわ~。」
そう言って、姉さんはまだ膨らんではいないお腹を優しくさする。
「ふふふ~。会えるのが楽しみだわ~。不死川君も最初は驚いてたけど、凄く喜んでくれたし、無事生まれるといいわねえ。」
「大丈夫!! 私が責任もって出産の時に手を尽くすから!! 姉さんはしっかり栄養摂って、体調管理に集中して!!」
「ありがとう、しのぶ。姉さん安心だわ~。」
私は姉さんの背中をさする。以前よりもだいぶ体温が上がってる気がした。
「さて、そろそろお片付けして、蝶屋敷の仕事しないとね~。」
「姉さん無理しなくていいから!! 私が身の回りのことも含めてやっておくから!!」
「カナエ様、しのぶ様、私もいるのでどうか気兼ねなくおっしゃってください。一通りのことはやっておきますので・・・」
「うふふ~、ありがとうアオイ。気持ちは嬉しいわぁ。でも少しぐらい体動かした方がいいと思うからそこまでしてもらわなくても大丈夫よ~?」
そうして私たちは片づけを済ませ、いつも通り隊士の治療や往診へと向かった。
「・・・ということがあったんです。昨日からカナヲはずっとあの調子で・・・」
「そっか。でも漸くカナヲちゃんの恋も成就して、しのぶさんとしては嬉しいんじゃない? 少なくとも僕は嬉しいけどね?」
「そうですけど・・・流石に昼夜問わずずっとくっついてるのもどうかと思いまして・・・あれじゃ急に任務が入った時に困ります。仮にもカナヲは柱な訳だし・・・」
日中の仕事をお互いに終わらせて、私たち二人は蝶屋敷の縁側で月を見ながら今日あったできごとを共有していた。
彼も生産の仕事をだいぶ消化できたそうで、今週くらいから現場に泊まり込みをすることなく私に会いに来てくれるようになった。それがたまらなく嬉しくていつも当直の空いてる時間にこうして話し込んでしまう。
「まあ、いいんじゃない? いっそ任務には炭治郎もついて行ってもらおうよ。恋人同士なら一生懸命協力して任務に取り組んでくれると思うよ?」
「でも、炭治郎君は上弦に狙われているので不安です・・・二人だけでは戦えるとは思えないので・・・」
「う~ん。隠の人達に貸し出している無線機を二人にも持たせた方がいいかもね。もし上弦と会敵したら、片方が時間稼ぎして片方が救援を呼べば何とかなるかもしれない。」
私のどうしようもない不安に対し、彼は具体的な対策を立ててくれる。こういうところが彼の頼もしいところでもあるのだけれど、それでも今はこの不安に寄り添ってほしいと思ってしまう。
「それでも、私は気が気でなりません。やはりカナヲのことは他の子以上に心配してしまうんです・・・」
「そっか。まあしのぶさんにとってカナヲちゃんは継子であると同時に可愛い妹だもんね。当然といえば当然だよね。」
そう言って、彼は私のことを抱きしめてくれる。彼の体温が私に安らぎをもたらしてくれる。やがて私の不安も少しずつ和らいだ気がする。私は少しだけ笑みを浮かべてもう平気であることを伝えた。
「ありがとうございます。何だか元気が出た気がします。」
「こんなことでいいなら、いつでもしてあげるよ? しのぶさんが望むなら、カナヲちゃんみたいにずっと抱き着いていたっていいんだし・・・」
「そ、それは流石に・・・恥ずかしいです・・・みんなの目も気になりますし・・・」
「そっか・・・それは少し残念だね・・・」
彼は私を抱きしめたまま、少し寂しそうにそうつぶやく。そんな彼の様子に少し罪悪感が湧いてしまう。私は声を絞り出す。
「カ、カナト君に抱きしめてもらえるのは私としても嬉しいです///・・・本当はずっとこうしていたいと思っていますよ///?」
「ん・・・ならよかった・・・そういえば最近は僕のこと名前で呼んでくれるようになったね? 夜だけじゃなくて、昼間もそう呼んでほしいな?」
「そ、それはまだ気恥ずかしいと言いますか・・・やはりみんなの目の前で急に呼び方を変えてしまうと、勘ぐられるじゃないですか///?」
「ん? なにを?」
「もう・・・みなまで言わせないでください・・・わかってるでしょう///?」
私は以前姉さんやアオイたちにからかわれた時のことを思い出し頬に熱を帯びる。
私とカナト君がお付き合いを始めてもう一年以上経つ。だからこそ、やはり私たちの仲がどの程度進んでいるのかみんなは気になるようだ。
もし、そんなみんなの目の前で急に下の名前でカナト君を呼び始めたら、絶対根掘り葉掘り最近あった二人の間でのできごとを聞かれる。そう思い私は未だにみんなの前で「カナト君」と呼べないのだ。
「まあいいや、二人きりの時だけでも充分嬉しいしね。カナエさんだって、未だに不死川さんのこと皆の前では苗字で呼んでるしね。」
「確かに・・・やはり二人きりの時は名前で呼び合っているのでしょうか?」
「うん・・・僕がいてもお構いなしに名前で呼び合ってイチャイチャしてたね・・・まさに今の炭治郎とカナヲちゃんのように・・・」
「ちょっと待ってください? カナト君、その状況で二人の傍にいたんですか?」
「うん・・・あの時はしんどかった・・・砂糖吐くかと思った・・・」
「いや、どうしてそんな状況に立ち会っていたんですか???」
「まあ、二人の逢引きに何度も協力してたし、花屋敷でこっそり二人が過ごせるよう取り計らってたからね・・・それでだよ・・・」
「・・・もしかして姉さんに命令されました?」
「流石しのぶさん・・・察しがいいね・・・その通りだよ・・・」
「あはは・・・カナト君は苦労人ですね。」
「いや・・・笑い事じゃないよ・・・本当に大変だったんだから・・・」
彼はその時のことを思い出してげっそりしている。そっか、姉さんも不死川さんと二人の時は遠慮がないから、今のカナヲを見ても止めようとしないのね。納得したかも。
しかし、あのおしとやかな姉さんが不死川さんの前ではカナヲのように骨抜きになっているなんて・・・姉さんも好きな男の人の前では恋する乙女になるのね・・・
そんな姉さんの姿を想像できなくて、私は暫くの間、物思いにふけっていた。
「まあいいや。そんなことよりまた二人でお出かけしようよ。来週くらいにまた休暇重なってるみたいだし。」
「そうですね。あれってやっぱり姉さんの仕業かしら・・・」
「うん・・・間違いなく・・・」
「そうですか。でも私は感謝してますよ? カナト君とまた一緒にどこか出かけられるなんて夢のようです。」
「うん、僕もだよ。鬼との戦いなんてやめて毎週二人で遊びに行きたいくらいだよ。」
「それは・・・流石に難しいでしょうね。柱二人分の穴埋めは中々できることではありませんから・・・」
「う~ん・・・そうなると、やっぱり無惨をさっさと倒すしかないのか・・・絶対しんどい目に遭うよね・・・嫌だなぁ・・・」
「もう、カナト君ったら。今からそんなでは勝てる戦いだったとしても勝てませんよ? 絶対二人とも生き残るって約束したじゃないですか? だから大丈夫です!」
「そうだね。しのぶさんの為なら必死に頑張れると思うよ。生き残った後のことをモチベーションに頑張らないとね・・・」
「・・・」
それから少しの間、お互い無言になる。先に口を開いたのは私の方だった。
「カナト君は、戦いが終わったらどうしたいですか?」
「う~ん・・・いろいろあるけど・・・そうだね・・・」
彼は暫く考えていたが、やがて無邪気に笑って答える。
「しのぶさんとずっと一緒に過ごせるならなんだっていいよ? その為にお金一杯稼げるようにならないとだけど・・・」
「お金の心配をしているんですか? そんなに気にすることでしょうか?」
「うん・・・気にするよ・・・だって僕が死んだ後もしのぶさんには何不自由なく過ごしてほしいから・・・」
「・・・カナト君・・・」
私は彼の気持ちに応えることができなかった。
「私は・・・お仕事に時間を取られて一緒に過ごせる時間が減るくらいだったら、お金稼ぎはほどほどにして慎ましく生活したいです・・・」
「まあ、僕も年がら年中働く気はないよ? お館様の関係者の人達の事業を手伝って、その功績に応じた報酬をもらうつもりだから。」
「・・・なんだか白峰みたいなこと言いますね?」
「はは、そうだね。でも、あの人は自分で稼いだお金は自分の贅沢の為だけに使いたいみたいだけど、僕は違うよ? しのぶさんと・・・もしかしたら新しくできるかもしれない家族のために使いたいんだ。」
「っ! それって・・・///」
「うん。そう受け取ってもらって構わないよ? 僕はこれでも真剣に考えているつもりだから。」
彼の遠回しな物言いに全身が熱を帯びる。彼の気持ちが嬉しくて私はにやけが止まらない。頬の筋肉が緩みっぱなしになる。
昼間姉さんについうっかり子どもが欲しいと言ってしまったあれは本音だ。しかしまさか、その本音を吐露した当日中に愛する彼からも同じ思いを伝えられるなんて・・・こんな幸せなことがあっていいんだろうか。
「あははっ、嬉しそうだねえ、しのぶさんも。」
「・・・嬉しいに決まってるじゃないですか・・・もう・・・茶化さないでください・・・///」
そうして暫くの間、私たちは互いに笑い合って夜が更けていくまで二人の時間を過ごした。
心なしか、いつもよりも触れ合う時間が長かったように感じた。
続く
ずっとこんな感じで幸せそうな描写を書いていたいですね。まあこの作品の原作の流れを考えるとずっとは難しいのですが・・・それでも幸せな気持ちになれるような話を書いていたいです。
一部の人からオリ主にも好感が持てるという声を聞けて筆者はとても嬉しく感じております。一応、この二次小説は彼ら兄弟二人の物語でもありますので、その行く末をどうか見守って下さると幸いです。