輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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弟のカナト君視点です。勢いで書いてたら長くなってしまいました。すみません。今話も幸せモードで書き進めたので楽しんでもらえれば幸いです。


67話 隣町デート

「カナエ、具合の方はどうだァ? しんどくねぇかァ?」

 

「もう~、実弥君ったら心配し過ぎよ~? でも、うふふ~、ありがとねぇ。寝起きの空腹時のつわり以外どうってことないわあ。」

 

 

現在、蝶屋敷の客間にて不死川さんが腰を下ろし、カナエさんが応対しているところだ。僕は二人にお茶と甘味を出す。

 

 

「麦茶とおはぎです。良かったらどうぞ。」

 

「ああ・・・いつも悪いなァ・・・」

 

「あら? 紅茶や抹茶はもう出してくれないの?」

 

「紅茶はカフェインが強いので念のため飲まないようにしてください。抹茶もカテキンが葉酸の働きを阻害するので胎児の成長には好ましくありません。まあ、少量なら問題ないとは思いますが・・・」

 

「そうなの? 稲葉君は何でも物知りねえ。」

 

「助かるぜェ、稲葉。お前としのぶが傍についてくれりゃあ安心できる・・・」

 

「お安い御用です。ただ、不死川さんはもう少しカナエさんの傍にいる頻度を上げていただければな、と。カナエさんを余り寂しがらせてはいけませんよ? 母体の精神安定も胎児の成長には必要不可欠ですから。」

 

「おお、そうかァ・・・そいつは済まなかったなァ・・・」

 

「もう~、実弥君ったらいつも鍛錬ばっかりしてるんだから。もっと一緒に居られる時間増やしたいのに~。」

 

「俺だってもっと一緒に居たいけどよォ、いつまた上弦が来るかもわかんねぇし、鍛錬は怠れねぇんだよ・・・間が言うにはあと一年以内なんだろォ?」

 

 

そう言って、不死川さんは僕に目線を移す。僕は顎に手を当てて思案する。

 

 

「雁哉の先見の明がどれくらい当たるかにもよりますが、そう遠くない未来で無惨の勢力と大規模な戦闘があるのは間違いないでしょうね。」

 

「稲葉君はどうしてそう思うの? 最近、十二鬼月の出現報告も殆どなくなってるし、死傷者も減って段々落ち着いてきてるように思えるのだけれど・・・」

 

 

カナエさんからは楽観的な意見が出るが、僕はそうは思えなかった。

 

 

「十二鬼月、下弦の出現がなくなったってことは、もう無惨が下弦鬼を育ててない可能性もありますね。ここ二年の間で、無線機による柱の救援で出現と同時に下弦鬼は何十体も討伐されているので。

 となると、今後出現するのは上弦になると思うので、間違いなく人死にが出る苛烈な戦闘が起こるでしょうね。楽観視は正直できないと思ってます。」

 

「そうなの・・・何だか怖いわ・・・」

 

「カナエ・・・! 上弦が来ようが何だろうが絶対俺が守り切ってやる! だから心配すんな!! 安心して待ってろォ・・・」

 

「実弥君・・・///」

 

 

不死川さんがカナエさんを抱きしめると、カナエさんは顔を赤らめて嬉しそうに笑う。やがて目がトロンとしてきた。

 

 

「あー・・・僕はここで失礼しますから後はお二人でどうぞご自由に・・・ってカナエさんストップ!! せめて僕がいなくなるまで待って!!??」

 

 

僕は大慌てでその場を退出した。その後客間のふすまに「立ち入り禁止」の張り紙をしておいた。あんな二人の様子をしのぶさんはじめ、蝶屋敷の子たちにはとても見せられない・・・

 

 

「あら? カナト君どうしたのですか? 不死川さんが来てると聞いたのですが・・・」

 

 

廊下奥からしのぶさんが顔を出す。いつもの隊服ではなく、紫陽花柄の白い着物に蝶の羽織を着た外行の格好だった。

 

実は僕もすでに私服に着替えている。いつもの羽織の下は大正浪漫の詰襟シャツに黒い和服と袴である。

 

 

「しのぶさん・・・暫くの間、客間には入らない方がいいよ・・・他の子にも伝えておいて・・・」

 

「どうしてですか? 何か問題でもあるのですか?」

 

「問題大ありだよ!? あんな淫らにイチャついてるところ他の子たちが見たらカナエさんのこと幻滅しちゃうよ!! 暫くの間立ち入り禁止にしとくから!!」

 

「ふえっ///!? 今そんなことになってるのですか///?? 姉さん身重の体でそんなことを・・・///」

 

「いや・・・流石に本番まではしないと思うけど・・・でも下の子には絶対見せない方がいいって・・・教育に悪い・・・」

 

「あはは・・・カナト君は年下の子たちへの気遣いが行き届いていますね・・・」

 

 

そうして僕ら二人は外出の準備を済ませ、アオイちゃんに言伝をして蝶屋敷を発った。

 

そう、今日はしのぶさんとお出かけする日だ。やっぱり休日って最高だなぁ・・・と僕はそんなことを思いながら、しのぶさんの手を引いて隣町へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だいぶ歩いたけど、しのぶさん疲れてない? 大丈夫?」

 

「ふふっ、私は仮にも柱ですよ? これくらいで疲れたりしませんよ?」

 

 

僕たちは徒歩で隣町まで移動した。僕がしのぶさんの体調を心配すると、平気な様子で返答される。

 

 

「そうだけど・・・今日はいつもと履物が違うからさ。足痛かったりしたらすぐ言ってね?」

 

 

今のしのぶさんは隊服の時のような歩きやすい草履を履いているわけではないので、いつもより疲れやすいのではないかと僕は懸念した。

 

 

「ふふっ、カナト君は心配性ですね。これくらいどうってことないですよ? 以前浅草を歩き回った時だって、今と変わらない履物でも平気だったんですから。」

 

「・・・それならいいんだけど・・・」

 

「でも、そうですね。丁度正午を過ぎる辺りなので、せっかくならお昼を食べてからあちこち見て回った方がいいかもしれませんね。休憩も兼ねてどこかでゆっくりしましょう?」

 

「うん、わかったよ。この町に一軒だけ洋食屋さんがあるからそこでもいいかい? 何度か通ってるから味は保証するよ?」

 

「まあ、それは楽しみですね。では早速そちらに向かいましょうか。」

 

 

しのぶさんからの提案で、僕たちは一度昼食を取ることにした。

 

僕がお店まで案内する途中に、いくつか営業しているお店が立ち並んでいた。僕としのぶさんは手を繋いでそれらを眺める。

 

 

「カナト君は寄りたいお店とかはありますか?」

 

「いくつかあるけど・・・しのぶさんはこの後予定とかあると思うから、あんまり時間取っちゃうのも考え物かな・・・」

 

「何言ってるんですか? 今日はカナト君と一緒に過ごすために丸一日休めるよう調整してありますよ? せっかくの二人きりでのお出かけなのですから遠慮しないでくださいね?」

 

「そ、そうなんだ、ありがとう。それじゃあ遠慮なく後で寄らせてもらうね。よし、目的の洋食屋さんに到着したよ?」

 

 

僕はこじんまりしつつも目新しい洋式の建物を指さして案内する。お昼時だが、今日は世間一般では平日のため、比較的待つこともなく店に入ることができた。

 

しのぶさんは席に座るとうっすら笑みを浮かべ内装を眺めていた。

 

 

「ん? どうしたの?」

 

「いえ、カナト君が好きそうなお店だなと思いまして。控えめでこじんまりしてますが、落ち着いてゆっくりできそうな良い場所ですね?」

 

「そうだね。以前はよく一人で気分転換に来て本でも読みながら過ごしたりしてたんだけど・・・」

 

「そうなのですね。なんだかその時のカナト君が目に浮かびます。紅茶を片手に難しい本を読んでそうです。」

 

「別にそんなことないよ? 紅茶飲んでるのは当たってるけど、読んでるのなんて貸本屋で見つけた軽めの書籍ばかりだから。

 そういえば、以前国政医学会の討論会の様子が掛かれた学術雑誌とかもあったかな。もしその時にしのぶさんがいれば僕の代わりに読んでたかもしれないね?」

 

「そうなのですね。でも息抜きの時は医学書以外の本が読みたいですね。やはり疲れてしまうので。」

 

「そっか、まあ、僕も同じようなものかな。」

 

「ちなみにカナト君はどんな本を読んでいたのですか?」

 

「う~ん。いろいろあるけど、洋食の料理本とかかな?」

 

「料理本・・・カナト君も料理とかするのですか?」

 

「まあ、時々かな。カレーとかパスタとかはよく作るね。」

 

「ぱ、ぱすた?」

 

「ああ、聞いたことないか。イタリアの麺料理だよ。炒めたうどんみたいな食べ物だね。ペペロンチーノ、ボロネーゼ、ナポリタン等々、いろいろと種類があるんだ。」

 

「そ・・・そうなのですね・・・どれも初耳です・・・」

 

「まあこの時代だとなじみないかもね。年号が大正から昭和に変わればレストランで食べることができるかもだけど・・・ってメニューにあったね。さっそく注文してみよう。」

 

 

僕はメニュー表をしのぶさんに渡す。しばらくして何を頼むか決めたようだ。

 

 

「では、せっかくなので、カレーライスを。カナト君が日ごろ作ってる料理がどんなものか気になるので。」

 

「う~ん。ここの料理食べた後に僕の手料理は出せないかな・・・やっぱり本職の人には勝てないよ。」

 

「あら? もしかして作ってくれる予定だったんですか? では後日機会があれば作ってください。私、楽しみにしてますから。」

 

「いや・・・そんな期待されても・・・平凡なものしか出せないよ?」

 

「いいんです。カナト君が私の為に作ってくれたものなら喜んで食べますから。」

 

「そ、そう・・・まあ気が向いたらね・・・」

 

 

そうして、僕らは注文をして、料理を待つ。少しの間、僕らの間で沈黙が続くが、やがて先に口を開いたのはしのぶさんだった。

 

 

「未来では・・・洋食が主流になるのですか?」

 

「え? なんでそう思うの?」

 

「いえ、カナト君は洋食の方が口に合うようなので・・・」

 

「ああ、別にそんなことないよ? 100年後の未来でも家庭料理の半分くらいは和食だし、人によってはそっちの方が好きって人も多いからね。

 それに僕が洋食寄りの料理作ってるのは、和食ならアオイちゃんが作る料理の方が圧倒的に美味しいから、わざわざ自分で作る必要ないかなと思ってるだけだよ。」

 

「確かに、アオイの料理は絶品ですからね。伊之助君なんて完全に胃袋鷲掴みにされてますよ。」

 

「うん。もうくっつくまで秒読みだね。」

 

「あら? カナト君も気づいていたんですか? てっきりそういうのには鈍いと思っていたんですが・・・」

 

「・・・そ、そんなことないよ・・・これでもみんなのことは良く観察してるし、細かいことにも気づく方なんだよ? どうしてそう思ったの?」

 

「え? だ、だって、最初の頃はアオイや私の気持ちに微塵も気づいていなかったですし・・・/// そもそもカナト君は当時恋愛事とかあまり興味なかったじゃないですか///」

 

「ああ、それは申し訳ないと思ってるよ。」

 

「まあ、おかげでカナト君が他の子になびく心配もなかったのでそこは安心できたので良かったのですが・・・

 そういえば覚えてますか? 私の継子たち、最初はみんなカナト君に弟子入りしようとしてたんですよ?」

 

「え? そうだったっけ?」

 

「まったく・・・本当にそういうことに興味がなかったんですね・・・あの子たちみんな貴方に気があったんですよ? 最初は私もそれで気を揉んだものです。」

 

「え? そうなの? 全然気が付かなかったよ・・・」

 

「それで私、時々釘をさすつもりでカナト君の傍について回ってたんですよ? そしたらあの子たちも察したみたいで、途中から私の継子になったんです。」

 

「そうだっけ? てっきり僕が渡した訓練用の棍を振り回せなくて根をあげたとばかり思ってたよ。」

 

「まあ、それもあるでしょうね・・・あんな重量物、女性の身で扱うのは骨が折れますよ・・・私だって無理です・・・」

 

「そっか。それもそうだね。でも結果的にしのぶさんがあの子たちの面倒見てくれて良かったって思ってるよ? しのぶさん、下の子たちに教えるのうまいからさ。」

 

「まあ、私はいろいろと才能の面で劣るので、これでも頭を使って工夫して鍛錬してますから・・・その工夫の経験が継子の育成で活きてきたのかもしれませんね。」

 

「確かにしのぶさんって聡明でひと際賢い才女だもんね。戦えて、治療もできて、毒まで作り出せちゃったわけだし。」

 

 

僕がそう言葉を漏らすと、しのぶさんははにかみながら笑う。

 

 

「ふふっ、何だか懐かしい・・・カナト君が初めての私の任務に同行してくれた時のことを思い出しますね。その時も同じこと言ってたの覚えてますよ?」

 

「あ~・・・確かカナエさんの継子入りする時にそんな話聞いた気がするなぁ・・・」

 

「はい。私、今でも忘れていませんよ? あの時の言葉があったから、自分に自信が持てたんです。全部カナト君のおかげです。」

 

「いや、僕は思ったことを言っただけで・・・」

 

「それがむしろ、とても嬉しかったんですよ? カナト君は本心から私のことを認めてくれた。その後も私のことを必要としてくれた。それが本当に嬉しかったんです。

 今思えば、私はあの時から貴方に心を奪われていたのかもしれませんね?」

 

「・・・そうなんだ・・・」

 

「はい・・・私にとって、宝物の思い出です///」

 

 

しのぶさんは両の手を胸に当てて、嬉しそうに笑う。僕にとっては朧げな何気ない日常の記憶でしかないけど、しのぶさんにとっては印象に残ってるらしい。

 

そういった純粋な好意を向けてもらえることは、本当に恵まれていて幸せなことなんだろうと思う。

 

 

「じゃあ、これからはその思い出に負けないくらいしのぶさんを喜ばしてあげないとね。僕、頑張るよ。」

 

「ふふっ、カナト君は自然にしててください。これからも傍に居てくれるだけで私は幸せですよ?」

 

「・・・なんだか照れるね・・・」

 

「はい、照れてください。その方が私も嬉しいです。」

 

 

しのぶさんから底抜けに嬉しそうな笑顔を向けられて、僕は頬が熱くなる。流石に正面からここまで真っすぐな好意をぶつけられたら僕だって照れる。

 

そんなやり取りをしてるうちに、店員さんが料理を運んできてくれる。

 

 

「それがパスタですか? 以前浅草で食べていたスパゲッティと似てますね?」

 

「そうだね。まあ、スパゲッティもパスタの一種だからね。」

 

 

そういって僕は取り皿に少し麺をよそって、しのぶさんの方に寄せる。

 

 

「はい、お裾分け。」

 

「いいんですか? では私も・・・」

 

 

今度はしのぶさんが別の取り皿にライスとカレーをよそってくれる。

 

 

「ふふっ、半分こですね?」

 

「うん。一人だとこうはいかないからね。やっぱり外食は他の人と行く方がいいね。」

 

 

僕らは食事を進める。やはりここのお店の料理は美味しい。僕もしのぶさんも殆どしゃべらずに食べ進めてしまう。

 

 

「すみません。つい無言で食べてしまいます。とっても美味しいですね?」

 

「うん。むしろ料理に集中して良く味わって食べれたしいいんじゃないかな?」

 

 

やがて僕らは完食して、二人で紅茶を飲んで一息つく。

 

 

「甘いものはどうする? 何か頼む?」

 

「そうですね・・・さっき露店で和菓子屋があったのでそちらに行きませんか? 姉さんが妊娠してからあまり行く機会もなかったので・・・」

 

「そうだね。そうしよっか。」

 

 

僕らはその後、会計を済ませて店を出た。先ほど通った道を戻ると、途中で駄菓子屋を見つける。

 

 

「あ、ラムネだ。」

 

「いいですね。せっかくなので買いましょう。カナヲがいたら喜んだでしょうね。」

 

「そうだね。きっと一人で何本も飲んじゃうだろうね。」

 

「確かに・・・ふふっ、想像できるのがなんとも面白いですね。」

 

 

談笑しながらラムネを一本ずつ買い、店の傍で瓶のふたであるビー玉を外して開ける。

 

しのぶさんが飲んでる様子を僕が眺めていると、僕の視線に気づいたのか目が合う。

 

 

「ど、どうしましたか・・・? そんな風に見つめられると飲みにくいのですが・・・」

 

「いや、つい目を奪われちゃってさ。やっぱりしのぶさんって美人さんだよね。」

 

「ふえっ///!? なんですか急に!? 人目につくところでそんなこと言わないでくださいよ!!」

 

「ああ、ごめん。つい本音が・・・」

 

「もうっ///!! からかって遊んでるんですか///!?」

 

「そんなつもりはないけど・・・でもそれも面白いかもね・・・」

 

「ちょっ!? 勘弁してくださいよ///!? 天下の往来でそんな辱めを受けさせないでください・・・///」

 

「いや、冗談だって。そんなに真に受けないでよ、しのぶさん。」

 

 

ついぽろっと出た言葉でこんなに反応してくれるなんてしのぶさんは本当に可愛いなぁ、とそんな呆けたことを思ってしまう。

 

僕も大概、しのぶさんにぞっこんらしい。まあ、自覚はあるんだけど。

 

ただ、このままだと埒が明かないので、僕はラムネをさっさと飲み干して提案する。

 

 

「さて、早く和菓子屋に行こうよ。時間なくなっちゃうよ?」

 

「もうっ! カナト君が変なこと言うのが悪いんですからね!?」

 

 

なんだかんだ怒りんぼなしのぶさんも可愛いなあと、そんなことを思いながらも僕は彼女の手を引いてそのまま歩いていく。

 

目的の和菓子屋の空いてる席に腰を下ろし、何を注文しようかと悩む。

 

 

「カナト君はやっぱり草餅ですか?」

 

「・・・それって僕が草柱だからってこと? しのぶさんにしては中々面白い冗談を言うね。まあ、好物だけど・・・」

 

「ふふっ、じゃあ私は桜餅にしますね。」

 

「あ、それって蜜璃ちゃんの好物でしょ? しのぶさんも好きなの?」

 

「ええ、まあ。よく付き合いで甘味処巡りをした時に一緒に食べてましたから。」

 

「なるほど、女子会みたいで楽しそう。」

 

「女子会・・・ですか?」

 

「うん。女性だけでご飯を食べに行ったりする宴会のことだね。明治に板垣退助の奥さんが開いてたのが発祥の起源らしいけど、詳細はわからないかな。適当に言ってみただけだからあまり気にしないで。」

 

「ふふっ、でもいいですね。今度から甘露寺さんや姉さん、蝶屋敷のみんなと外食する時にその言葉使ってみようと思います。」

 

「まあ、いいものだよね。みんなでご飯食べに行くのって。僕も今度炭治郎たちを引き連れてどこか行ってみようかな?」

 

「いいじゃないですか。せっかくなので私やカナヲも同席させてくださいよ。みんないた方がきっと楽しいです。」

 

「そうだね。考えておくよ。」

 

 

僕らはそんな他愛のない話をしながら甘味を味わった。やがて一息ついたところで、僕が話題を変える。

 

 

「あと二か所寄りたいところがあるんだけど、いいかな?」

 

「ええ、もちろんです。ちなみにどちらへ?」

 

「うん。本屋と雑貨屋のお店に行きたくて。そんなに時間は取らせないから。」

 

「別にゆっくり時間を使ってもらってもかまいませんよ? 何度も言うようですが、今日一日予定は空けてありますから。」

 

「そっか、ありがとう。じゃあ早速行こうか。」

 

 

僕らは和菓子屋さんを発ち、本屋へと向かった。

 

 

「いろいろな本が置いてありますね。カナト君はどんな本を探しているのですか?」

 

「うん。薬草の本と、花の図鑑だね。今度屋敷の庭で栽培を始めようと思ってて。それと花の図鑑はカナヲちゃんに渡そうかなと。

 炭治郎君と恋仲になってから、カナヲちゃん花への興味が出てきたみたいだからさ。くっついたお祝いにあげようと思って。」

 

「そうなのですね。では私も何か買った方がいいでしょうか。」

 

「う~ん。だったら、この後行く雑貨屋のお店の方がいいんじゃないかな? 二人から本をもらうのはカナヲちゃん的に気を遣わせそうだし・・・」

 

「そうですね。もともと本を読む子でもないですから、別の贈り物をすることにします。」

 

「そうだね、いいと思うよ。」

 

 

僕は目当ての本を見つけると会計を済ませ、しのぶさんを連れて雑貨屋に向かった。

 

 

「しのぶさんはカナヲちゃんに渡すものを選んでて。僕は店員さんと話をしてくるから。」

 

「? はい、わかりました。」

 

 

そう言い残し、僕らは少しの間、別行動を取る。僕は店主さんに挨拶を済ませ、事前に頼んでおいた目当てのものを受け取った。

 

僕が満足げに戻ると、しのぶさんはにこやかに僕の帰りを待っていた。

 

 

「カナト君は何を買ったんですか?」

 

「ん。あとで話すよ。それよりしのぶさんは何を選んだの?」

 

「ええ、私はこれにします。」

 

 

そう言って、しのぶさんは木製の使いやすそうな櫛を手に取った。

 

 

「カナヲも鏡の前で髪の手入れをするようになりました。炭治郎君を意識してのことでしょう。今は姉さんの櫛を借りているので、せっかくですからカナヲ専用のものを渡そうかなと。」

 

「うん。凄くいいと思う。きっと喜んでくれるよ。」

 

 

しのぶさんは会計を済ませ、店を出る。外は少しずつ日が傾き始めていた。

 

 

「う~ん。そろそろ帰り始めないと、蝶屋敷に着くころには日が落ちちゃうね。夜になってうっかり上弦にでも見つかったら洒落にならないし・・・」

 

「怖いこと言わないでくださいよ・・・もう少しゆっくり見て回ろうと思っていたのに・・・」

 

「いや、万が一のこともあるから今日はもう帰ろう。また別日にでも一緒にどこか出掛けようよ。」

 

「わかりました。少し物足りないですが仕方ないですね。帰りましょうか・・・」

 

 

そうして僕としのぶさんは帰路に就いた。来た時と同じ道を通り、ところどころ紅葉で葉が赤みを帯びている様子を眺めながら談笑しつつ歩き続ける。

 

やがて、花屋敷と蝶屋敷の分岐点へとたどり着く。時間は夕方の手前と言ったところか。夜までには余裕で間に合いそうだなと安心し、僕はしのぶさんへと振り向く。

 

 

「しのぶさん。少しいいかな? 大事な話があるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、僕は先程の雑貨屋で受け取った包みを取り出した。

 

 

 

 

続く

 

 

 




デートの描写は本作で漸く2回目でしょうか。意外と少ないですね。本当はもっと増やしたいのですが、なかなか難しいです。次書けるのが柱稽古編前半のみで、それがラストかもしれないです。なので最終章入ったらアンケート出すかもしれません。アンケートの出し方今だに把握していないですが、もしデート回読みたいという方がいれば、完結後に番外編で書こうと思います。
さて、最後の描写ですが、カナト君はしのぶさんに何を渡すつもりなのでしょうか? 次回をお楽しみに!
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