輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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しのぶさん視点です。こういう大事な話はやっぱり男性から言うべきだと思うんですよね。こんなこと書くとジェンダー差別とか言われそうですが、創作物の中の話なので、あくまでも浪漫の話だと思ってください。ではどうぞ。


68話 夫婦

「これは・・・?」

 

「僕からしのぶさんへの贈り物だよ。受け取ってくれるかい?」

 

 

私は彼から包みを渡される。私は恐る恐るそれを開封する。すると・・・

 

 

「っ! これって・・・!」

 

 

それは櫛だった。紫の(すみれ)の模様がある漆塗りの上等なもので、私がカナヲに買ったものとはまた違う、どこか特別な品のように感じた。

 

私は途端に頬が熱くなるのを感じた。

 

 

「・・・カナト君は・・・ご存じなのですか? この時代に男性が女性に櫛を送る意味を・・・///」

 

「うん。当然知ってるよ。確か、江戸時代からの流行でそういう文化があるんだよね?」

 

 

私はカナト君に答えることなく、受け取った櫛を持って目を見開くことしかできない。

 

青天の霹靂というべきか、私は驚いて何も言葉にできずにいた。なぜなら、彼が私に、この場で求婚の意を伝えているのだから。

 

暫くの間私が動揺していると、彼は困ったように笑って語り掛けてくる。

 

 

「ごめん。驚かせちゃったよね? でもそれを渡すなら、今日この場所がいいなと思ったんだ。しのぶさんはここで何があったか覚えているかな?」

 

 

私はその問いかけを受けて、ようやく言葉を紡ぐことができた。

 

 

「・・・はい・・・もちろん覚えていますよ・・・だって、私がカナト君に初めて思いのたけを打ち明けた場所なのですから・・・」

 

 

そう答えるとともに、じわじわと彼の申し出に実感が湧いてきて、全身に熱を帯びるのを感じた。一方で彼は続ける。

 

 

「うん・・・あの日、僕は都合のいい夢を見てるんだと思ってたよ。しのぶさんが僕に思いを寄せてくれてたなんて、始めは信じられなかったから・・・」

 

「・・・き、気づいていなかったのなんて・・・カナト君ぐらいなものでしたよ///? 姉さんもアオイもカナヲも、なほたちも、柱の皆さんだって知ってたくらいなんですから・・・///」

 

「そっか・・・」

 

 

彼は横顔を見せて微笑んでいる。小川のせせらぎだけが聞こえてくる。

 

 

「実はあの時・・・いや、あの時まで、僕の心にはぽっかり穴が開いていたんだ・・・」

 

「えっ?」

 

 

彼はふいにそんなよくわからないことを言いだす。

 

 

「僕と雁哉は何の前触れもなく、この時代に飛ばされてきた。最初は何か僕たちには果たさなければいけない使命のようなものがあって、それで神様か仏様が僕たちをこの時代に遣わしたんじゃないかと思ってた。

 でも、暫くして、僕は痣を発現して、先の短い寿命を突き付けられた。どうしてって思ったよ。僕は自分のできることを一生懸命にやってるのに何でこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだろうって・・・」

 

「カナト君・・・」

 

「無惨だか何だか知らないけど、そいつを倒すためにこの時代に連れてこられて、どうして早死にしなきゃいけないんだろうって思ったよ。

 雁哉が励ましてくれて、しのぶさんや蝶屋敷のみんなに良くしてもらって、それで何とか立ち直れはしたけど・・・その後もずっとどこか現実逃避しながら生きてた気がする・・・」

 

「・・・・・・」

 

「もし次上弦とかに会敵したら・・・僕はそこで死ぬんだろうなって漠然と考えてた・・・あの時は生きようって本気で思えなくなってたんだ・・・でも・・・」

 

 

そこまで心の内を吐露したカナト君は私に向き直る。

 

 

「しのぶさんは、そんな心にぽっかり穴が開いたような僕に・・・純粋な気持ちを注いでくれた・・・暖かい愛情を注いでくれた・・・それがたまらなく嬉しくて・・・満たされた気がしたんだ・・・」

 

「カナト・・・君・・・」

 

「それから僕はこう思ったんだ。僕がこの時代に来たのは、生まれてきたのは・・・全部、全部・・・しのぶさんに出会うためだったんじゃないかって・・・

 しのぶさんと幸せになるために生まれて来たんじゃないかって思えたんだ・・・!!

 だから僕は・・・この命潰えるまで、しのぶさんの傍に居たい。しのぶさんと一緒に幸せになりたい・・・!! そう思ったんだ。だから・・・」

 

 

カナト君は、私の両手を包み込むように握ってくれる。

 

 

「僕と夫婦(めおと)になってくれませんか? 僕はしのぶさんがいいんだ。」

 

「っ///!!」

 

 

彼の言葉を聞いて、私の心臓はこれまで感じたことのないくらいに高鳴った気がした。胸に収まりきらないほどの感情が思わず溢れそうになる。

 

彼は私の手を握ったまま、俯きながら続ける。

 

 

「菫の花言葉には、『小さな幸せ』って意味があるんだ。そして、紫の菫の花言葉は『愛』・・・これからはただの恋仲じゃなくて・・・最愛の仲になりたいんだ。しのぶさんの答えを聞かせてほしい・・・」

 

 

彼は自信なさそうにそう言うが、私の答えなんて、とっくの昔に決まっている。加えて、今かけられた愛の言葉の数々に、私はとうとう溢れた気持ちを、感情を、とても制御なんてできなくなってしまった。

 

 

「・・・もです・・・」

 

「え? なんて?」

 

「私もです!! 私もカナト君と一緒になりたい!! 夫婦になって・・・ずっと傍で過ごしたい!! もう離れたくないですっ!!」

 

「っ!? しのぶさん!?」

 

 

私はカナト君に抱き着く。全身を振舞わせて抱きしめる力を自然と強めてしまう。もう我慢できそうにない・・・!

 

 

「私もっ! 私もカナト君が好き! 大好きっ!! もう片時も離れたくない!! 私嬉しくてたまらないっ! カナト君からそんな風に言ってもらえるなんてっ///!!」

 

「し・・・しのぶさん・・・?」

 

 

私の豹変ぶりにカナト君は動揺してるみたい。だけど、もう止まらない。この気持ちをただひたすら受け止めてほしいとそう思ってしまう。

 

きっと、カナヲが炭治郎君とずっとくっついていたいと思う気持ちも、こんな感じなんだろう・・・!

 

姉さんが不死川さんに何度も何度も求めてしまうのだって、こんな気持ちが沸き起こるからなんだろう・・・!

 

私は嬉しくて思わず涙を流してしまう。全身が震える。彼に縋り付き、自分自身を制御できないでいた。体が熱い。心臓も早鐘のように鳴る。

 

そんな私を抱きしめているカナト君が、突如、深刻な声色で私に呼びかける。

 

 

「しのぶさん! 一旦落ち着いて!? とりあえずゆっくり呼吸して!! 体温と心拍数もう少し下げて!! 痣出ちゃうよ!?」

 

「へっ///? 痣ですか///?」

 

 

私はそんな間の抜けた声しか出せない。やがてカナト君は私を抱きしめたまま、優しく私の頭と背中を撫でてくれる。

 

 

「はい、吸って~、吐いて~、吸って~、吐いて~。」

 

 

彼の呼びかけに応じ、私は深呼吸を繰り返す。やがて、全身の沸き立つような血の巡る感じも収まり、落ち着いていく。

 

 

「ふう・・・どうにか間に合ったかな・・・しのぶさんまで痣出ちゃったらどうしようかと思った・・・」

 

「え? ど、どういうことですか?」

 

 

私は少しだけ落ち着きを取り戻し、カナト君に抱き着いたまま質問する。

 

 

「うん、痣は体温39度以上且つ心拍数200以上で発現するんだ。だから、しのぶさんは絶対その条件を超えないでね? 約束してほしい・・・」

 

 

私は、驚きの事実を知らされる。まさか痣を出すのにそんな具体的な条件があったなんて・・・いや、それよりも・・・!

 

 

「・・・カナト君は知っていたんですね? どうして私に・・・いえ、他の柱の人達に教えてくれなかったんですか?」

 

 

私は少し冷たい声色を出して問い詰める。さっきまでの私の熱い声との落差に、彼は身震いを起こしていた。

 

 

「ご、ごめん・・・雁哉に秘密にするよう止められていたんだ・・・」

 

「雁哉君がですか? どうしてですか?」

 

 

私は純粋に気になり、続けて質問する。彼はたじろぎながら答える。

 

 

「強くなるためとはいえ・・・僕みたいに柱のみんなに寿命を短くしてほしくなかったからだよ・・・たった二十五で死ぬなんて・・・雁哉は鬼殺隊の損失だってそう言ってた・・・」

 

「そう・・・なんですね・・・」

 

「ずっと隠してたことは謝るよ・・・だけどしのぶさんにだけは痣なんて出してほしくない・・・! しのぶさんには長生きしてほしい! 幸せに生き続けてほしい!! だから・・・」

 

 

彼はそんな悲痛な声をあげる。私ははっとして、抱き着くのを一度やめて彼の顔を見て弁明する。

 

 

「ご、ごめんなさい・・・! そんな・・・そんなつもりはなかったんです・・・! 約束しますからどうか、そんな悲しそうにしないでください・・・!」

 

「ほ・・・本当?」

 

「ええ、約束します。私は痣なんて出しませんよ? その代わり、カナト君のずっと傍に居させてください。死がふたりを分かつまで、ずっと離れず傍に居続けたいんです。ですから・・・」

 

「うん・・・わかったよ・・・お互い約束だね。」

 

 

そう言って、彼は再び笑顔を見せてくれた、私はそんな彼の顔を見てつられて笑ってしまう。

 

 

「ふふ、いつものしのぶさんに戻ったね。それじゃあ、日も暮れて来たし、そろそろ帰ろうか。また明日もよろしくね?」

 

「・・・え?・・・」

 

「・・・ん?・・・」

 

 

彼の最後の言葉に疑問を感じ、私はそうつぶやいてしまう。彼もそんな私の反応が気になった様子だ。

 

 

「えっと・・・そろそろ帰らないと・・・しのぶさんは蝶屋敷に、僕は花屋敷に・・・」

 

 

彼のそんなあたりまえのような言葉を聞いて、私は無性に寂しさを感じてしまう。いつもなら我慢して、彼とここで別れの挨拶をしただろうが、今の私にその辛抱は利かなかった。

 

 

「・・・です・・・」

 

「え?」

 

「嫌です・・・! ここで別れるなんてっ!! まだ一緒に居たい!! 帰りたくないですっ!!」

 

「ええ!? いや、でも、もう夜になっちゃうし、そういう訳にも・・・」

 

 

私はそんな彼の言葉を遮るつもりで、彼の両の手を握る。

 

 

「せ、せめて・・・今日一日は・・・ずっと一緒に居たい・・・///」

 

 

私は意を決して断固たる意志を伝える。彼はきょとんとしていた。

 

 

「えっと・・・つまり?」

 

 

彼の困惑に対し、私は赤面して汗をかきながらも、必死に言葉を絞り出す。

 

 

「で、ですから・・・今夜はせめて・・・一緒に居たいです・・・泊まりに行ってもいいですか///?」

 

 

 

 

 

 

 

私は、普段の私なら到底考えられないようなことを口走り、彼をひどく慌てさせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




プロポーズの仕方は時代によってそれぞれだと思うんですが、しのぶさんには櫛を渡す方が情緒があっていいかなと思いこうなりました。江戸時代では粋な求婚の仕方だったらしいです。明治大正も古風な文化として残ってはいたようですね。ちなみに原作の求婚シーンって狛治と恋雪ちゃんのあれだけでしたっけ? あの花火が上がるシーンでの女性側からの求婚もいいなあとは思いつつも、筆者はどうしてか男性側からも捨てがたいと思ってしまいます。やはり浪漫なんでしょうか。
さて、次回はお泊り展開です。幸せモードはもう少し続きます。原作のハード展開の前にこういった話は書いておきたいのです。もう少々お付き合いください。
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