輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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兄の雁哉君視点です。冒頭で若干の別作品オマージュがあります。気にしないでください。

あと、中盤以降の展開のためにオリキャラの存在を匂わせておきます。まあ、原作キャラに魅力を感じているので、あまり活躍させないと思いますが、念のため。


6話 月柱

「は・・・?」

 

「聞き取れなかったかな? 雁哉。この話は極秘事項だからできれば大きな声で言いたくはないのだけれど・・・」

 

「いや、聞こえてますよ。輝哉さん。だから、『は・・・?』って言ったんです。」

 

 

ここは産屋敷家の一室。部屋は完全に締め切っており、いるのは俺と輝哉さんの2名のみだ。

 

 

「・・・鬼になった・・・? 柱が? それも当時の当主を殺したって・・・なんで・・・」

 

「すまない。私もそこまでは詳細にわかっていないんだ。

 

 かつての月の柱は、始まりの呼吸の剣士の実兄だった。だから、当時だれも彼が鬼となり、鬼殺隊を裏切るとは思っていなかった。現在、私の屋敷の場所を、誰にもわからないように隠しているのはそういう出来事があったからだね。余談になったけど、そういう経緯を誰にも知られることがないように、当時の月の柱について記された記録は残っていないんだ。」

 

 

俺は思わず口元を手で覆う。胃がむかむかする。

 

少なくとも、俺が今まで見てきた柱たちは、一癖も二癖もある人たちではあったが忠義に厚く人格もしっかりしている人たちばかりだ。

 

なんとなく、柱とはそういう人たちがなるものだと思っていたが、どうやら月の柱は違ったらしい。

 

俺は月の呼吸について、より研鑽を積みたいと思い、最後の伝手で輝哉さんに何か知っていることがないか尋ねてみた。

 

しかしその内容は悪い意味で俺の想定を上回っていた。

 

月の呼吸は、今では俺にとって一番なじむ、誇らしさすら感じるものだ。

 

この剣技を生み出した人はきっと、尋常ではない努力の積み重ねと生まれつき類稀な剣技の才を持っているのだろうと、畏敬の念すら抱いていた。

 

それが今、輝哉さんの話を聞いて、その思いは一瞬で崩れ去った。

 

だが、そんな個人的な心情よりも、もっと考えなければならないことがあると、頭のなかで警鐘が鳴っている。

 

 

「輝哉さん・・・月の柱は結局鬼になった後、どうなったんですか? 倒せたんですか?」

 

 

俺の問いに、輝哉さんは首を横に振る。

 

 

「わからない・・・当時、実兄の責任を取って鬼殺隊を追放された始まりの呼吸の剣士は、生涯月の柱を探し続けていたそうだ。だが、結局どのような結末になったのか、一切伝聞も記録も残されてはいない。」

 

「そいつ今上弦の鬼なんじゃないですか? ただでさえ強い柱が鬼になって、300年以上研鑽を積んでいたら、誰も戦って勝てるはずありませんよ。過去の柱の死亡にも、そいつ何度も絡んでるんじゃないですか?」

 

「充分考えられるね。」

 

 

輝哉さんは目を伏せたままそう答える。

 

 

「わかりました。生きてることを顧慮して、そいつの対策は俺が練っておきます。複数名の柱の先輩たちに協力は打診するかもしれませんが。」

 

「ああ。でもあまり無茶はしてほしくない。君は私たちが望むにやまなかった、平和の時代の産屋敷の子どもなのだから。君だけを特別扱いすることは心苦しいが、命を最優先に行動してほしい。」

 

「大丈夫です。これでも俺はかなり慎重派の人間です。無謀なことはしません。それに・・・」

 

 

俺はそこまで言うと。横に置いていた日輪刀を持ち上げ、鞘から引き抜く。

 

その鍔元には、『悪鬼滅殺』の文字が刻まれていた。

 

 

「俺はもう柱です。今代の月柱として、必ずやつに引導を渡します。」

 

 

そこまで言い切って、俺は刀を再び鞘に納めた。

 

物言わぬ輝哉さんの目の前で立ち上がり、そのまま部屋の出口へ向かった。

 

 

「あ、言い忘れてました。念のため、確認です。」

 

 

部屋を出る直前、今一度輝哉さんの方に振り返る。

 

 

「俺に全集中の呼吸を教えた炭彦の祖先らしき人間、竈門の姓を名乗る人が見つかったら俺に教えてください。すぐに迎えに行きます。それと、白峰の姓を名乗るやつがいたら、そちらもお願いします。」

 

「以前言っていた炭彦君の祖先を鬼殺隊に引き込みたいのはわかるけど、その白峰という人の祖先を探すのはどうしてなのかな?」

 

 

輝哉さんから疑問の声があがる。そういえばまだ詳細を伝えていなかったか。

 

 

「少なくとも2012年時点では、炭彦から呼吸を教わった俺たちが所属する剣道部が、全国大会ですら負けなしの最強の強豪校でした。しかし、それは炭彦の呼吸法を一目見て習得し、それを周囲にも勧めた男がいたからです。そいつが白峰です。俺の二つ上の先輩ですが、平和の時代に生まれたとは思えないような恐ろしい剣の才を持つ男でした。もし、この時代の白峰の祖先に会って鬼殺隊に取り込めれば、何か大きな変化が起こるかもしれません。」

 

 

「わかった。産屋敷の人脈を駆使して至急見つけよう。」

 

 

「ありがとうございます。それではまた・・・」

 

 

そうして俺は、屋敷を後にした。柱の任命後、着用を始めた紫色の羽織が、今はとても恨めしく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~あ。柱の昇任、先越されちゃったなぁ・・・ やっぱり雁哉は僕と違って天才だね。」

 

「昼間の休み時間中に自作でダイナマイトやらスタングレネード作ってるやつに言われたくねぇよ。この調子なら、誘導ミサイルやら核爆弾も作れそうだな。」

 

「いやいや、ミサイルは半導体がないと無理だよ。核爆弾だってウランがないと流石に作れないと思う。」

 

「材料があれば作れる自信あるのかよ。お前の方がよほど天才の化け物だろうが。」

 

 

毎度おなじみ、カナトとの作戦会議だ。

 

しかし、日ごとにこいつがとんでもないペースで現代科学ずらりの作成成果を聞かせてくる。

 

こいつがこの時代に居続けたら、人類の文明発展のペースがバグりだすんじゃないか?

 

現代にいた時に至っては、剣術の才能は白峰先輩っていうとんでもないのがいたから、俺なんて凡人の延長線上でしかない。

 

それより、カナトは別ベクトルのとんでも野郎だ。こいつはレオナルドダヴィンチの生まれ変わりか何かか?

 

スポーツ万能、成績優秀、科学の知識については某文明復興漫画の主人公かってくらい近代技術の知識がある。

 

加えて日曜大工の要領で職人顔負けの代物を趣味で作っちまうぐらいのヤベーやつだ。

 

こいつは神々の寵愛を受けた、この世の理の外側にいる存在なのかと疑わずにはいられない。

 

 

「それで、今後はどうする? 次は何を作るつもりなんだ?」

 

「そうだねぇ。作りたいものはいろいろあるけど、一旦洗濯機と冷蔵庫を作ろうかなと。」

 

「待て待て。急に火器造りから家電造りに移るな。方針がめちゃくちゃすぎる。」

 

「まあまあ。これにはちゃんとした理由があるんだよ。」

 

「理由?・・・わかった。教えてくれ。」

 

「まず、今の鬼殺隊の構造を考えると、ほとんどが雑魚鬼にも苦戦する一般隊士で構成されているよね?」

 

「まあ、言い方に棘はあるが事実だろうな。ほかの柱たちも言ってたことだ。」

 

「そうそう。でね、そうなると当然、死人だけじゃなく怪我人が大勢出るんだ。

 そうすると、蝶屋敷は慢性的な労働力不足に陥る。

 現時点で、柱のカナエさんは治療に専念できるほど暇じゃないから、実質しのぶさん、アオイちゃん、僕の三人のみで対応しなきゃいけない。

 加えて、病室のベッドのシーツや入院用の服の洗濯、患者の入院食の準備等にも膨大な時間が必要になる。

 そこで、洗濯の自動化、生鮮食品の冷蔵による買い出し回数の削減ができれば、かなり時間が浮くはずなんだ。

 そして、その時間で僕は次の科学製品の研究を、アオイちゃんは患者の看護と治療を、しのぶさんは薬の調製と毒の研究に充てられる。

 強いては、鬼に有効な近代武器や毒物薬物の生産と量産化が可能になって、雁哉が受け持つ遠距離支援部隊の戦力増強につながるはずなんだ。

 そうすれば、僕らの計画も次に進めやすくなる。

 だから、一旦洗濯機と冷蔵庫作らせてほしい!お願い!」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・わ・・・わかった。」

 

 

こいつ。一息でとんでもない長さの説明しやがる・・・

 

これも常中による肺活量の成せる技か・・・

 

ただ、一旦俺が出した要望の火器はそろった以上、正直不都合な話でもなかった。

 

むしろ・・・

 

 

「はあ・・・やっぱりお前は大したやつだよ。俺もそれが現時点での最適解だと思う。頼んだぞ。」

 

「うん! 任せて!」

 

 

血のつながりはないが、どうやら俺は本当に頼もしい弟を持ったようだ。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

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