輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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三人称視点です。ハードな展開が暫く続きます。猗窩座が原作より遥かに強くなっている理由は「番外編 猗窩座と黒死牟」に書いてあります。もし読んでない人がいれば先にそちらを読むことを推奨します。それでは本文どうぞ。


72話 上弦同時襲撃

「貴様の闘気、相当に練り上げられている。いや、今消えたな。至高の領域、透き通る世界とやらに入ったか・・・」

 

「貴様が猗窩座か・・・稲葉の報告にあった以上の手練れだ。かつて戦った上弦の壱と遜色ない強さだ・・・」

 

「悲鳴嶼さん!! 一度下がって赫刀の準備を!! 暫くの間俺が受け持ちます!!!」

 

「杏寿郎・・・貴様も至高の領域に入れるのか。やはりただの羅針では心もとないな。俺も本気でやろう・・・」

 

 

周囲に倒壊した支援部隊の宿舎の瓦礫が散らばっている。半刻もしないうちに、宿舎の半数以上は破壊され、鬼殺隊の施設としては既に復旧不可能な状態となっていた。

 

あちこちに拳銃を持ったまま体が欠損した射撃部隊の隊士の死体が転がっている。猗窩座相手に赤鱗拳銃での戦闘は殆ど意味をなさなかったようだ。

 

煉獄が赫刀を隻腕で構え、透き通る世界に入ったまま、臨戦態勢を取る。一方で、猗窩座は迎撃の構えを解いて、脱力して棒立ちとなり目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー破壊殺・羅針・改 明鏡止水ー

 

 

 

 

 

 

 

 

すると猗窩座の足元に、水鏡を彷彿とさせるような青い紋様が浮かび上がる。猗窩座の凄まじい鬼気が消え、あたりが静寂で包まれる。

 

 

「来い・・・杏寿郎・・・!」

 

「行くぞ・・・猗窩座・・・!!」

 

 

一瞬で肉薄し、煉獄は剣を一閃する。

 

 

 

 

 

 

 

ー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ー

 

 

 

ー破壊殺・脚式 冠先割ー

 

 

 

 

 

 

猗窩座は上体を下げて躱し、その勢いで蹴り上げる。煉獄は間一髪でそれを回避し、身を翻す。

 

 

「透き通る世界で見ているのに、一切の動きが予測できん!! 体内においてすら、動作の瞬間まで起こりが見受けられないとは・・・!!」

 

 

煉獄は驚愕するも、すぐに思考を切り替え、追撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー炎の呼吸 伍の型 炎虎ー

 

 

 

ー破壊殺・鬼芯八重芯ー

 

 

 

 

 

 

煉獄の突進技に対し、左右交互に放つ拳打で猗窩座は迎撃する。斬撃は全て弾かれ、煉獄は後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

 

「ぐっ! なんという重さだ!!」

 

 

煉獄は両足で踏ん張り、何とか態勢を維持する。対して猗窩座は自身の両の拳についた傷痕を眺めていた。

 

 

「赫刀相手に拳をぶつけるのは分が悪いか・・・次からは捌くとしよう。」

 

 

猗窩座が目線を煉獄に向けた瞬間、猗窩座の頭上より赫赫と発光する鉄球が振り落とされ、轟音ともに土煙があがる。

 

 

「煉獄!! 二人で挑まねば、こやつを倒すのは不可能と心得えよ!!」

 

「わかった!!」

 

 

猗窩座は鉄球の攻撃を回避していたようで、打ち下ろされた場所よりも下がった位置に立っていた。

 

 

「お前達。一度黒死牟と戦っているのだろう? 奴はなぜ最期に頸を差し出すような真似をしたか知っているのか?」

 

 

ふいに猗窩座から予想外の問いかけが飛ぶ。悲鳴嶼も煉獄もその意図がわからず、黙ったまま正対し構える他なかった。

 

 

「俺は奴と三か月にも及ぶ死闘により、今の力を手に入れた。奴は今の俺と遜色ないほどの手練れだったはず。お前達はどんな手を使って黒死牟に負けを認めさせたのだ?」

 

 

悲鳴嶼も煉獄も応えず臨戦態勢を崩さず構えたままだ。猗窩座はその様子にため息をつく。

 

 

「もしも弱者のような卑怯で卑劣で汚い手を使って殺したというのなら、俺は奴の弔いをせねばならんな。まあ会敵した以上手心を加えてやるつもりも毛頭ないが・・・」

 

「心外だ!! 俺たちは正々堂々真正面からぶつかった!! 数の利で戦ったことを卑怯というのか!?」

 

 

猗窩座の一方的な決めつけに煉獄は抗議の声をあげる。

 

 

「いや・・・そこまで言うつもりはない。生身の人間が鬼と戦うのだ。負傷すれば入れ替わりながら多数で戦うことは当然の戦術であろう。だが、それだけであの男が負けるとは思えん。」

 

 

猗窩座は攻撃する素振りを見せない。殺す前にその真相だけは聞いておきたいと言わんばかりである。やがて悲鳴嶼がその質問に回答する。

 

 

「猗窩座よ・・・私たちは確かに黒死牟と戦った。あの時の私たちの実力では、奴一人に一切敵わなかったと言ってよいだろう。あの日、あの場所で奴の頸を刎ねたのは間雁哉という男だ。」

 

「産屋敷の血を引く鬼狩りか。そいつはどうして黒死牟を殺せたのだ? 俺も一度戦ったことがあるが、今のお前たちの方が幾分マシだと思える程度の男だったはず。

 もしや弱者が使うような反吐の出るような汚い手を使ったのではあるまいな?」

 

 

今までほとんどの鬼気を発していなかった猗窩座から、一瞬凄まじい怒気が漏れる。すぐにそれはおさまり、悲鳴嶼は構えを崩さずに答える。

 

 

「間は黒死牟が人間だった頃の文献を読んでいた。奴の人となりや人柄を把握していたように思う。最期、間は奴との対話を望んだ。そして奴の潜在的な願望を叶えてやったのではないか? 私にはそう見えた。」

 

「なに・・・?」

 

「産屋敷の現当主であるお館様もそうだが、あの方はいつも、その時人が欲しくてやまない言葉をかけてくださる人なのだ。間もそういう人間に近しい男なのだろう。

 きっと黒死牟もそうだったのではないか? 数百年ずっと待ちに待った言葉を間に投げかけられ、あの男は鬼ではなく人として最期を迎えたように思う。だから頸を差し出したのではないか?」

 

「戯言を・・・そんなことで奴の心が折れるものか・・・俺には理解できんな。」

 

「鬼になった貴様には理解できぬやも知れぬな? 少なくとも間は黒死牟に理解を示していた。そしてあろうことかあの男を肯定さえした。

 柱としてあるまじき行為だが、それが黒死牟の琴線に触れたのではないか? そのように心を砕く行為を、卑怯などと言われる筋合いはない・・・!」

 

 

猗窩座は暫く考える素振りを見せるが、再びため息をつく。

 

 

「もういい。俺達武人は孤高に生きる者。他者への評価など関係ない。自身で自身の武を肯定できれば良いだけの話だ。黒死牟はそれができなかった。ただそれだけの・・・くだらない話なのだろう。

 まあいい。俺の問いに正直に答えたことには感謝しよう。だが、俺たちは敵対する者同士。一切情けや容赦をかけてやる義理はない・・・!」

 

「当然だ。私たちとて、お前達鬼に遠慮などせん。全霊を持って屠り去るのみだ!!」

 

 

そうして再び、苛烈な戦いが繰り広げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、草柱のカナトは同じ柱である伊黒と甘露寺の二人と共に襲撃に遭った生産拠点を回っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー草の呼吸 壱ノ型 草薙の一振りー

 

 

 

 

 

 

 

発見した童磨の結晶ノ御子を一閃し破壊する。すると、傍に居たもう一体がそれに反応し迎撃してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 寒烈の白姫ー

 

 

 

 

 

 

 

カナトのいる一帯を根こそぎ凍らせる冷気が放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

ー草の呼吸 肆ノ型 穀種争乱ー

 

 

 

 

 

 

赫刀を旋回させると、その周囲のみ冷気が蒸発していく。そうして耐え続けるカナトとは別に、結晶ノ御子の背後に影が忍び寄る。

 

 

 

 

 

 

 

ー蛇ノ呼吸 弐ノ型 狭頭の毒牙ー

 

 

 

 

 

 

頭蓋を一閃され砕け散る。やがて周囲の冷気はおさまる。

 

 

「ひとまず今のが最後か?」

 

「伊黒さん、ありがとうございます。少なくともこの第二生産拠点にいる結晶ノ御子は全て倒し終わったようですね。」

 

 

二人が状況を確認していると、伊黒の背後より甘露寺が現れる。

 

 

「周囲を警戒したけど、何もいなかったわ!! 第一第二と生産拠点を回ってきたけれど、これで終わりかしら!?」

 

 

甘露寺はしてやったりと笑顔だが、カナトは浮かない顔で顎に手を当てて考えている。

 

 

「・・・肝心の童磨がいない・・・奴はどこにいるんだ?」

 

「・・・どこか見落としがあるということか? もう一度拠点を巡回するか?」

 

 

伊黒はそう提案する。カナトは頷く。

 

 

「はい。どこかに潜伏して結晶ノ御子の量産に専念している可能性はあります。再び結晶ノ御子が現れたら、その傍に童磨がいる可能性が高いです。戻りながら確認しましょう。」

 

「ああ、だがこれまで同様慎重に動くべきだ。こちらは柱三人もいるとは言え、奴はそれでも倒すのは至難だ。警戒しすぎるに越したことはない。」

 

「伊黒さんの言う通りよっ! カナト君も気が焦る気持ちはわかるけど、ここはじっくり見て回るべきだと思うわっ!」

 

「・・・うん・・・そう・・・だね・・・」

 

 

そうして三人は固まりながら周囲を確認し元の道を戻っていく。しかしカナトは胸騒ぎがやまず、冷や汗を流していた。

 

 

「童磨は・・・結晶ノ御子が得た情報をどれくらい把握することができるんだろう・・・」

 

「さあな。だが仮に把握できたとしても、分身を破壊されれば奴の行動は制限される。俺たちのやってることは間違ってないはずだろう?」

 

「・・・急いで蝶屋敷に戻った方がいい気がする・・・」

 

「カナト君っ! 気持ちはわかるけど、私たちは私たちの仕事をきっちりやらなきゃいけないわっ! しのぶちゃんの傍には不死川さんだっているし、結晶ノ御子が来たって平気よっ!」

 

「どうした稲葉。何を懸念している?」

 

「・・・もしも・・・もしも奴が結晶ノ御子の場所を把握していて・・・破壊された事実もオンタイムでわかるとしたら・・・僕たちが今蝶屋敷から離れている事実を奴は現時点で知っているってことになる・・・

 伊黒さん。あなたがもし童磨の立場だったらこの瞬間何を考えます?」

 

「そうだな・・・少なくとも俺達三人は固まっていて手が出しにくいから・・・手薄なところを狙うはず・・・俺たちともっとも離れた場所に位置する施設を・・・っ!!!」

 

「急ぎましょう!!! 奴の狙いはそれです!!!」

 

 

三人は大急ぎで、もとの道を引き返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蝶屋敷の縁側で、カナエは月を見ていた。その背後から、不死川が現れる。

 

 

「おい、カナエ。こんなところにいたら危ないだろうがァ・・・屋敷の中に戻れェ。」

 

「うん・・・わかってるんだけど・・・凄く嫌な予感がして・・・」

 

 

不死川は、うつむくカナエをそっと抱きしめる。

 

 

「大丈夫だ、カナエ。絶対俺が守る。お前は俺を父親にしてくれた。父親って言うのは、死んでも家内と子どもを守るもんだろがよォ。」

 

「実弥君・・・死んじゃダメよ? この子をあやす時に貴方がいなかったら私笑えないわ・・・」

 

「俺は死なねえよ。だから安心してろォ・・・ほら夜風が冷えてきた。そろそろ屋敷の中に戻って体を温めた方が・・・」

 

「あれ~? せっかくだし俺ともお喋りしておくれよ? わざわざ足を運んできたのにさあ。」

 

 

不死川も、カナエも、声の先を振り向く。庭先には一人の男がいた。カナエはその男の影を見て震えあがる。

 

 

「あ・・・ああっ!! どうして・・・どうしてこんなところに・・・!!」

 

 

その男は、月明りが差す場所に身を晒す。

 

 

「あれ? 君、以前に会った子だね? けど一応自己紹介しておこうか。俺の名は童磨。いい夜だねえ。」

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




童磨VS不死川さんも絶対書きたいと思っていた組み合わせです。原作でもカナエさんが殺されてるので、筆者としては元恋人の不死川さんと妹のしのぶさんで力を合わせてかたき討ちしてくれないかなぁと当時思っていました。本小説ではその筆者の願望通り描写します。特にこの小説では不死川さんはお父さんになっているので、父親の覚悟と意地を書きたいと思っています。だってカッコイイですから。別作品のNARUTOとかでもミナトが妻子を守る描写に子供の頃感動で打ち震えたことを今でも覚えています。それには及ばなくても、カッコイイお父さん像を頑張って描写していこうと思います。
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