輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話 作:科学大好き人間
「わあ! 君って三年前の花の柱の子だよね? 凄い偶然! これって運命って奴かなあ? しかもお腹に赤ん坊までできたんだね! いや~、実にめでたい! 親子揃って俺が食べてあげるよ!」
「アア!? ざけんじゃねえぞコラァ!!! てめえが童磨とかいう鬼か、塵屑野郎がっ!!! カナエには指一本触れさせてたまるか!!!」
「わ~・・・凄い剣幕・・・あ! ひょっとして旦那さんかな? そっかあ、じゃあ先に君を黙らせないとお喋りできないかな?」
童磨は鉄扇を取り出すが、間髪入れず屋敷の屋根から影が接近する。
ー蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角ー
童磨の体六か所から鮮血が飛び散り、途端に吐血する。
「今です!! 不死川さん!!!」
ー風の呼吸 捌ノ型 初烈風斬りー
不死川が童磨の傍を駆け抜け、すれ違いざまに水平斬りを与える。しかし、童磨は頸だけは扇で守っていたようで、すぐに再生する。
「わあ、久々にしのぶちゃんの毒を受けたよ。何だか癖になるね! でももうあまり効かないかも。」
以前の遊郭での戦闘で使ったものと全く同じ毒を打ち込んだわけではないが、しのぶの調合した毒の耐性が童磨にできつつあるのは事実だった。
「糞がぁああ!!! 切り刻んでやる!!!」
ー風の呼吸 漆ノ型 勁風・天狗風ー
空中で回転しながら縦に複数回斬撃を加えるがこれも全て童磨は捌く。
「うん。速いね! でも力はそうでもないかな? 攻撃回数は大したものだけど、黒死牟殿に比べればどうってことないね!」
「まだまだァ!!!」
ー風の呼吸 玖ノ型 韋駄天台風ー
童磨の頭上からありったけの斬撃が放たれる。童磨はさばき切れず全身から血が噴くもすぐに再生してしまう。
「しのぶ!! カナエと非戦闘員を安全なところへ連れていけェ!!! 頼んだぞ!!!」
「不死川さん!! 攻撃が来ます!!!」
ー血鬼術 凍て曇りー
童磨の扇の旋回で周囲に全てを凍てつかせる冷気の煙幕が放たれる。
ー風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐ー
着地後、不死川は回転し、下から上へ切り上げる斬撃で冷気を切り払う。
「え? 嘘、剣を振る時の風で防いだの?」
童磨はまさか回避ではなく迎撃されるとは思わなかったようで、一瞬動揺する。
ー風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風ー
ー血鬼術 枯園垂りー
不死川の爪の引き裂きに似た上下複数回の斬撃を、童磨は冷気を纏わせた扇の斬撃で相殺する。
ー血鬼術 蓮葉氷ー
童磨は扇を一閃し、蓮の花のような氷と粒子をあたりに散布する。
ー風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹ー
弧を描くような上下の斬撃で、周囲に竜巻に似た風の壁ができ、氷の粒子は押し戻される。
「嘘!?」
童磨は自身の血鬼術が剣を振る風で防がれる事実に驚く。すかさず扇で一閃するが、不死川は空中に躱す。
ー風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪ー
頭上より打ち下ろしの斬撃。扇二つで防ぐが、すぐさま不死川の蹴りが顔面に入る。
「ぶっ!?」
「刀で斬るしか能がないって思ってたかァ!? なわけねぇだろうがァア!?」
ー風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐ー
空中で身を捻り、下からの斬撃を放つ。童磨は後方に回避するが、不死川は追撃の手を緩めない。
ー風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎー
旋回しながら突進し、再び童磨に剣を打ち付ける。両の扇で斬撃を止める童磨は苦笑いを浮かべていた。
「今代の柱は粒ぞろいみたいだね? 俺の血鬼術吸わないで戦える柱多すぎるでしょ?」
「はっ! てめえは目立ち過ぎたからなァ!! 対策ぐらい練られて当然だろうがァ!!!」
それから何度も不死川は童磨に斬りかかる。血鬼術の発動を察すれば、迎撃用の型で風を起こし、氷を跳ねのけさらに追撃する。そうしたやり取りが長いこと続く。
「やれやれ、そんなに動き回って平気なのかな? 君が潰れれば、もう俺を止められる人はいないっていうのに。どうせならそろそろ疲れてくれると有難いんだけどなあ。早くカナエちゃんとお喋りしたいのに・・・」
「うっせえわ!! カナエには指一本も触れさせねぇって言ってんだろうがァア!!!」
気丈に振舞うも、四半刻攻め続ければ疲労の色くらいは浮かぶ。不死川もそれを実感してるからこそ、やや焦りもする。
「俺も君とばかり遊んでられないから、そろそろ決着を着けさせてもらうよ。」
扇の一閃で不死川を後方に吹き飛ばし、その一瞬で童磨は血鬼術を発動させる。
ー血鬼術 結晶ノ御子ー
童磨は分身を作る。不死川はすぐ破壊しようとするも、本体に迎撃され、近づくことができない。
ー血鬼術 蔓蓮華ー
ー血鬼術 冬ざれ氷柱ー
手数が倍になったことで、不死川も回避に回るしかない。しかし、それによって、童磨にさらなる猶予を与えてしまう。
ー血鬼術 結晶ノ御子×弐ー
「糞がァ!!」
ー血鬼術 凍て曇りー
ー血鬼術 散り蓮華ー
ー血鬼術 寒烈の白姫ー
流石に手数が四倍になると、近づくことすらできない。その間、せっせと童磨は分身を生成する。
「他の鬼殺隊施設に派遣した俺の御子も全部破壊されたようだから、遠慮なく最大数出せるよ。これで終わりかな?」
不死川が劣勢を強いられ始めると同時に、童磨の御子の頭上に影が差す。
ー音の呼吸 壱ノ型 轟ー
爆発と共に、御子が複数破壊され、土煙があがる。
ー蟲の呼吸 蜈蛟ノ舞 百足蛇腹ー
加えて、周囲を駆け回る影が次々と御子を破壊していく。
「姉さんたちの避難は完了しました!!」
「俺も全快してねぇが、派手にやってやるぜ!!!」
「・・・ありがてェ・・・」
御子は一瞬で二体まで減少し、童磨の両脇に退避する。
「まいったな。柱三人か。まあ、やれなくはないけどね。」
童磨は残りの御子をけしかけ、新たに血鬼術を発動させる。
ー血鬼術 結晶ノ御子・改 豊穣の白雪姫ー
童磨は御子に似た少女のような氷の分身を生み出す。すると、童磨はその分身を自身の後方に下がらせる。
「さあ、頑張って沢山増やしてね?」
童磨の一声がかかると、その氷の少女は血鬼術を発動させる。
ー血鬼術 結晶ノ御子ー
「はっ!?」
分身が分身を作り始める事態に、柱三人は驚愕する。
「あはは! この子は自分の子を一杯生み落とせるんだ。やっぱり女の子は素晴らしいね! この子は俺が守るから、そう簡単には壊させないよ?」
ー血鬼術 蔓蓮華ー
ー血鬼術 冬ざれ氷柱ー
ー血鬼術 散り蓮華ー
童磨と御子により、複数の血鬼術が発動する。これを柱三人で迎撃し、隙を見て御子を破壊するも、童磨の後ろに隠れた氷の分身は次々と御子を生成していく。
「糞がァ!!! きりがねえ!!! あの後ろの奴どうにかしないと、一生数が減らねぇぞ!!!」
「わかってるっつうの!!! 俺が御子の数減らすから、不死川と胡蝶は隙を見て本体と後ろで増やしてる奴潰せ!!!」
「了解!!」
それから四半刻の間、柱達と童磨との間でやむことのない攻防が続いた。状況は拮抗し続けるかに見えたが・・・
ー血鬼術 冬ざれ氷柱ー
「ぐあっ!!」
複数体の御子による集中砲火を受け続け、ついに宇随が血鬼術を防ぎきれなくなる。
「宇随さん!!!」
それに一瞬気を取られたしのぶが童磨の一閃を受ける。鮮血が散る。
「オラァア!!!」
ー風の呼吸 玖ノ型 韋駄天台風ー
ついに不死川が童磨の分身を全て破壊し終わるものの、彼の状態とて万全とは言い難かった。
ー血鬼術 枯園垂りー
不死川も技を放って着地するわずかな隙を突かれ、利き腕とは逆の腕を斬り飛ばされる。
「ぐああああっ!!!」
「はい。もうおしまいだね? まあ、結構持った方だと思うよ?」
周囲の蝶屋敷の建物にはいくつも巨大な氷の支柱が突き刺さり、建物も凍結していた。医療施設としての機能は既に果たせない惨状となっていた。
「さて、避難したらしいカナエちゃんを追いかけないと。やっぱり食べるなら赤ん坊ごとに限るね。今どこにいるのかなあ?」
「ま・・・まだだ・・・俺はまだ戦えるっ! カナエのところには行かせねェ・・・!!」
「ん? まだやるの? 一応今日は鬼殺隊の施設の破壊活動しか命じられてないから君は見逃してあげてもいいんだけど・・・」
「うるせぇ!! カナエに手ェ出すぐらいだったら先に俺を倒してからにしろ!!!」
「ふ~ん。そう・・・じゃあそうするよ。さような・・・あれ???」
童磨はふいにふらつき膝を着く。まるで酩酊したかのように。
「わかってねェな・・・俺はわざと切らせたんだ・・・俺の血は上弦の壱すら効果があった!! お前だってわずかな時間かもしれねぇが、動きは制限されるはずだ!!!」
ー風の呼吸 捌ノ型 初烈風斬りー
不死川は一瞬で童磨に肉薄し頸へと水平斬りを放つが、童磨の姿が消える。
「忘れてたよ。君って稀血の中のさらに稀血なんだったね。」
気が付けば、凍り付いた蝶屋敷に突き刺さるひと際大きい氷柱の上に童磨はいた。
「せっかくだからカナエちゃんの前に救ってあげる。家族全員仲良く俺の中で一緒になるといいよ?」
ー血鬼術 結晶ノ御子・改 豊穣の白雪姫ー
童磨は再び、分身を生成できる分身を作り出す。
「この位置なら、君の血の影響も受けづらいみたい。あとはこの子達で遠くから削ればいいね。」
ー風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐ー
「うわっと!?」
一瞬で分身は破壊され、童磨は別の氷柱の上に退避する。
「急に近づかないでおくれよ。君の血の匂いはくらくらするんだ。」
不死川は腕を帯で縛ることもせず、呼吸で止血も敢えてせず、血をまき散らしながら童磨に斬りかかり続ける。
「まったく理解できないよ。腕だって痛いだろうに。早く俺に救済されて楽におなり? 苦しみから解放されることこそ幸せなことじゃないか?」
「お前みたいな塵屑野郎にはわかるはずもねェよ!!! 俺はカナエの旦那で、あいつの腹の中にいる子どもの父親だ!!!
俺の親父はどうしようもない糞野郎だったが、だからこそ、俺はあいつとあいつとの間で授かった子どもだけは大切にしてやりてぇんだよ!!!
父親っていうのは・・・命懸けて体張って必死になって妻子を守るのが役目だろうがァアアア!!!!!」
不死川はやむことのない斬撃を放ち続ける。そうしてどれほどの時間が経っただろうか、やがて、不死川は膝を着いて動けなくなった。
「だからさ、そんなに血をまき散らしながらずっと動き続けられるわけないじゃないか? 俺よりも君の方がふらふらになっちゃったね?」
「ま・・・まだだ・・・俺はカナエを・・・」
「ほら、意識も朦朧としてきただろう? 君が俺のかつての父親とは全然違う生き物だっていうことはよくわかったけど、頭の悪さだけは同じだったみたいだね。
おとなしくしてればすぐに救済してあげる。大丈夫。すぐに家族みんなで一緒になれるよ? 未来永劫、俺の中でね。」
童磨は片手のすそで口元を覆いながら、不死川に近づく。頸を一閃しようと扇を掲げる。
ー蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角ー
「うわっ!!??」
蝶の羽織が二人の間を通り過ぎ、童磨の体から鮮血が散る。すぐにしのぶは不死川を下がらせ、童磨に正対する。
「しのぶ・・・お前思いっきり袈裟斬りされてただろ・・・どうやって・・・」
「ゼエ・・・ゼエ・・・傷口を縫合して呼吸で止血しました・・・今回は背中じゃなかったので・・・ゼエ・・・」
「わあ! しのぶちゃんのこと忘れてたよ! せっかくだからお姉さんと一緒に食べてあげる! 姉妹仲良く一緒におなり?」
「とっととくたばれ、糞野郎・・・」
「わあ、酷い言葉遣いだね? 女の子がそんな野蛮なこと言っちゃだめだよ?」
「しのぶ・・・お前動けんなら逃げろ・・・どうせ俺も宇随ももう戦えねェ・・・」
「嫌です・・・姉さんを未亡人にする気ですか? そんなの許しませんよ・・・!!」
「馬鹿野郎がァ・・・お前だってあいつのたった一人の妹だろうがァア!!! とっとと逃げやがれっ!!!」
「嫌と言ってるでしょう!? ゴホッ! 言葉で言いくるめられるほど、私聞き分けの良い女じゃないので・・・!」
しのぶも不死川もふらついたままだ。とても童磨相手に戦える状態ではない。
「しのぶちゃんの毒もほとんど効かなくなってきたし、もうこれで終わりにしようよ。君と過ごした時間を俺はきっと忘れないと思う。じゃあね?」
ー草の呼吸 壱ノ型 草薙の一振りー
赤い一閃が二人の間を通り、童磨の肘から先が宙に舞う。
「うわっ!! 痛い!!!」
「汚い手でしのぶさんに触れるなっ!!!!!」
童磨は片腕を失い、口元を押さえたまま後ろに下がる。だが、
ー蛇ノ呼吸 弐ノ型 狭頭の毒牙ー
透き通る世界に入った伊黒の死角からの攻撃が童磨の頸に迫る。しかし、童磨は反応した・・・というより、先に扇を構えてたのか、剣撃を防ぐ。
「残念。しのぶちゃんの恋人が来た時点で、他にもいないか警戒するのが当たり前だよね?」
「ちっ!」
童磨が扇を広げる予備動作を察知し、伊黒は一度退避する。以前片腕を凍らせれた時の忌まわしき記憶が反射的にそうさせた。
童磨は再び、蝶屋敷のひと際大きい氷柱の上に一瞬で避難する。
「惜しかったね。黒死牟殿と同じ気配を持つ君が、一番最初に斬りかかって来ていれば、俺の頸なんてあっさり切れただろうに。
しのぶちゃんの恋人の彼が先走ったりしなければね。彼はもう少し感情を制御できるようにならないとダメじゃない?」
「五月蠅い!! さっさと降りてこい!! 僕がぐちゃぐちゃにしてやるっ!!!!!」
「わあ、怖いね。手負いが多いとは言え、流石に柱6人も相手にするのは難しいかな? 今日はここまでにしよう。」
背後の建物の影から隙を伺っていた甘露寺の気配にも気づき、童磨はそう言って笑う。
ー血鬼術 霧氷・眠蓮菩薩ー
蝶屋敷の下から、観音像のような巨大な氷の像が出現する。周囲一帯に凄まじい冷気が立ち込め、視界が悪くなる。
「逃げるのか卑怯者!!! 次会う時は必ず、僕が落とし前を着けさせてやる!!! 必ずだ!!!!!」
「あはは~! その時は他にも可愛い女の子を連れて来てね~? そしたら相手してあげるから、じゃあね~。」
既に遠くから童磨の声がする。やがて氷の巨像は何をするでもなくひび割れて倒壊した。
「しのぶさん!!! ひどい怪我!! 大丈夫なの!!??」
「え・・・ええ・・・縫合はしてあるので・・・///」
隊服が裂けて、柔肌を露出した姿を見てカナトは心配し駆け寄るが、しのぶは羽織で隠し、後ろを向く。
「甘露寺ー!!! 大丈夫かっ!!! 甘露寺ー!!!」
「だ、大丈夫よ伊黒さんっ///!!! 急に大きな大仏様が現れたけど退避したから問題ないわっ///!!!」
伊黒はというと、わき目も振らず甘露寺の隠れていた方向へ一目散に駆けていく。甘露寺も「キャー!! 伊黒さんが心配してくれてるっ!! 嬉しいっ!!」とばかりに真っ赤になっていた。
「はあ・・・どいつもこいつも・・・俺と宇随の心配する奴はいねえのか・・・まあ傷ぐらい自分で止血するけどよォ・・・」
「はっ! すみません不死川さん!! しのぶさんの姿見て忘れてしまいました!!」
「私も申し訳ありません・・・すぐに治療をします。」
「ああ、助かる・・・しのぶは宇随の方を頼む。呼吸で止血してるが、脇腹かわかんねぇけど、氷の柱みたいな攻撃を受けてるはずだからなァ。傷だけなら俺より重症だァ。」
「っ! すぐに治療します!!」
「不死川さん。腕縛りますね? きつくやるんで痛いと思いますけど我慢してください。」
「ああ・・・頼むわァ・・・」
そうして、蝶屋敷襲撃の主犯は立ち去り、ひとたびの平穏が訪れた。夜明けまであと一時間・・・
続く
童磨は撃退しました。今回は柱殺しの命令は下されていないっていうのもありますが・・・
一応童磨視点で番外編を一本書いたので、刀鍛冶の里(?)編終了後に詳細を投稿できると思います。次回で一旦上弦同時襲来の決着はつきます。恐らく読者の皆様が想定しない終わりを迎えると思いますが、予めご了承ください。