輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話 作:科学大好き人間
「禰豆子・・・よかった・・・大丈夫か? お前・・・人間に・・・!」
「よ、よかった、よかったねぇ。だい・・・だいじょうぶ、ねえ。」
朝日が昇り、平原に陽光が差す。刺すような冷たい風と、暖かな日の光がかの兄妹を包む。
炭治郎は号泣し、禰豆子に抱き着く。彼らの選択により、半天狗は討伐された。炭治郎は禰豆子の命と引き換えだったと思っていた。
陽光と共に半天狗の頸を斬り、うなだれて泣いていた炭治郎の後ろから、太陽を克服した禰豆子が歩いて近づき、そうつぶやいた。
一方、そのころ、里の中心部で憎伯天及び喜怒哀楽の鬼たちが消えたのを確認した雁哉は、カナヲを先に炭治郎の方へ送り、自身は無線通信より驚愕の内容の報告を受けていた。
「急報!! 岩柱の悲鳴嶼様が猗窩座との戦闘で致命傷を負い、いつまで持つかわかりません!! 至急治療できる方をお願いします!!! 一刻の猶予もありません!!!」
雁哉は言葉を発することができなかった。悲鳴嶼さんを今回の戦いで失った? 鬼殺隊最強の悲鳴嶼さんを? 透き通る世界に入り、赫刀すら使いこなせるあの悲鳴嶼さんを失った・・・!?
雁哉は部下たちに至急刀鍛冶の里からの避難をするよう指示を出す。空里に全員で必要最低限の資材を運んで移動するようにと。
その後、雁哉は獪岳に耳打ちし、その後二人とも姿を消した。その後数ヶ月の間、雁哉と獪岳の消息は不明となった。
時は遡り、夜明けの一時間前。
「行冥、杏寿郎。お前たちは強い。誇っていい。かつての俺であれば、お前たちそれぞれと一対一で戦っていたとしても、負けていたのは俺の方だっただろう。」
周囲にクレーターがいくつもできている瓦礫の山の中心で、猗窩座はそう寂しそうにつぶやく。
それに対し、悲鳴嶼と煉獄は全身の裂傷が激しく、吐血した血が隊服や羽織に大量についていた。
「猗窩座・・・まさかこれほどとは・・・」
「くっ!! 以前戦った黒死牟も尋常ではない相手だったが、こいつはそれ以上の
やがて、悲鳴嶼の鉄球と斧が赫刀の状態ではなくなり、赤みが消えていく。
「悲鳴嶼さん!! 赫刀の時間切れです!! 俺が暫くの間盾になります!! その隙にお願いします!!!」
「待て煉獄!! お前一人で相手取れるような敵ではない!! 戻れ!!!」
悲鳴嶼が止めに入るも、煉獄は既に猗窩座に接近し、刃を振るう。
猗窩座は打ち下ろしの煉獄の刃の側面から裏拳を放つ。拳の甲が煉獄の日輪刀に触れる直前で、煉獄は太刀筋を無理やり変えて、衝突を防ぐ。
「流石だ。もう見切ったのか?」
「何とか反応できただけだ!! 実力を認めてくれるのは嬉しいがな!!」
煉獄と猗窩座は打ち合い、切り結ぶ。煉獄の赫刀は猗窩座にとっても脅威で、刃をまともに受ければ負傷し再生ができなくなる。
その為、わざと攻撃を喰らい隙を突くようなかつての戦い方を猗窩座はできないでいたが、それでも煉獄は攻防において押し負けてしまう。
特に不意に打たれる鈴割という技は、猗窩座の中でも練度が凄まじく、透き通る世界に入っていたとしても回避が容易ではない。
所見の際、煉獄は天性の素質を遺憾なく発揮して、これを避けた。おかげで今の今まで日輪刀を折られることなく戦えていると言ってもいい。
しかし、猗窩座の動きは全てにおいて、対処困難であったと言わざるを得ない。なぜなら・・・
「くっ!! やはり透き通る世界が見えても、貴様の動きには一切の予備動作が見受けられない!! まさかそんな芸当ができるとは恐れ入った!!」
「嬉しいことを言ってくれるな、杏寿郎。俺とて、数ヶ月前まではこの領域に到達できないでいたのだ。ある意味一度、浅草で敗走した苦い経験は俺の武を極めるのに一役買った訳だな。」
ー破壊殺・乱式ー
ー炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねりー
一度猗窩座から距離を取った煉獄に、猗窩座の追撃が空圧正拳となって大量に打ち込まれる。
煉獄はとっさに迎撃用の型で防ごうとするが、威力に押し負け、はるか後方の瓦礫の山に吹き飛ばされてしまう。
すると、今度は入れ替わるように、頭上より鉄球が振り落とされる。
ー岩の呼吸 弐ノ型 天面砕きー
猗窩座はこれを横跳びに躱す。
「お前の赫刀の発動時間は杏寿郎と違いあまり長くはないのだな。刃を打ち付ける隙がなければ使えないとなると、杏寿郎が力尽きればこの戦いもあっけなく終わりを迎えるかもしれんな。」
「その前に、私が全霊を持ってお前を屠り去る!!!」
ー破壊殺・砕式 万葉閃柳ー
ー岩の呼吸 伍ノ型 瓦輪刑部ー
猗窩座の拳打の振り下ろしを悲鳴嶼は空中に跳んで躱す。地面に巨大なひび割れができ、地鳴りが響く。
それに対し、悲鳴嶼は間髪入れず、頭上から何度も打ち付けるような鉄球と斧の振り落としを連発する。
そこら中に複数のクレーターができ、地面が揺れる。
ー破壊殺・脚式 飛遊星千輪ー
ー岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚ー
猗窩座の対空の飛び蹴りを、防御の型で打ち払い、地へと叩きつける。猗窩座は後方へと下がるが、悲鳴嶼は追撃をやめない。
ー岩の呼吸 肆ノ型 流紋岩・速征ー
ー破壊殺・脚式 流閃群光ー
両者の凄まじい衝突に周囲へ轟音が鳴り響く。土煙が舞い、両者は下がるが、悲鳴嶼は鉄球と斧を投擲する。
ー岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極ー
土煙の先が透けて見えるのは透き通る世界が見える悲鳴嶼のみ。好機と判断し、渾身の投擲を放つ。
煙を突き破って猗窩座の前に螺旋を切る鉄球と手斧が目前まで迫る。不意を突いた渾身の一撃のため、勝負はついたかに見えた。
ー破壊殺 滅式ー
これまでの戦いの中で、最も大きな轟音が辺り一帯に響き渡る。悲鳴嶼は鎖を引き戻し、己の得物を認識して驚愕する。
「まさかそんなっ・・・!!」
鉄球は粉々に砕かれていた。辛うじて手斧は無事だったが、一筋のひび割れが見て取れた。
やがて土煙が晴れ、猗窩座が姿を現す。
「痛み分け・・・というにはお前の戦力低下の方が著しいか。これでお前はもう赫刀が使えない。」
猗窩座は両拳が破壊され、再生できずに血を流していた。赫刀を滅式で粉砕した際に、反動でそうなったと見て取れる。だが、奴にとってはそう大きな損傷でもない。
「さて、両の足さえあれば、お前との決着には充分か。最期まで、お互い悔いのない戦いをしよう。」
「っ!!!」
破損しかかっている手斧と鎖で悲鳴嶼は猗窩座の攻撃に食い下がる。手斧が赫刀の状態を維持できなくなってくると、悲鳴嶼は握力を一層込めて再度刃を赤く染める。
「なるほど・・・握力か。それにより日輪刀を赫刀へと変貌させているのだな? 面白い!! もっと俺を楽しませてくれ!!! 行冥っ!!!」
猗窩座は今まで冷静だったが、突如抑えられないとでも言うように、歓喜に表情を変える。しかし、その結果、思わぬ事態となる。
今まで攻めあぐねていた悲鳴嶼の手斧の一撃が猗窩座の片耳を切り飛ばす。猗窩座は驚愕し、後方へと退避する。
「なるほど・・・貴様の鬼らしくない冷静な状態こそが、透き通る世界ですら見切れぬ、起こりを生まぬ神業の成せる技だったわけか。まさに明鏡止水なのだな?」
「・・・俺としたことがつい心を乱してしまった・・・まあこれも全てお前が全力で力を振るっても楽しめる強者だからなのだがな。」
猗窩座は自身を顧みて、再び、鬼気を収める。悲鳴嶼にとっては喜ばしくないことだった。
「では、お前の力量に敬意を表して、俺も全力を持って応えるとしよう。」
棒立ちだった猗窩座の足元に、再度、水鏡のような紋様が浮かび上がる。奴の集中が研ぎ澄ませれていることがわかる。
「行くぞ。」
猗窩座の声に即座に防御の構えを取る悲鳴嶼だったが、勝負はあっけなくついた。
猗窩座が悲鳴嶼の背後に現れると同時に、悲鳴嶼は吐血し、膝を着く。鎖が破壊され、周囲に飛び散る。武器を取り落とし、鳩尾を押さえているようだった。
「胴体を真っ二つに裂くつもりで蹴りを放ったのだがな。まさかこれも直前で反応して見せるとは・・・やはりお前は俺が今まで戦ってきた敵の中で、最上位の男だったぞ。行冥・・・」
暫くして瓦礫より這って近づく煉獄の姿を猗窩座は視認する。
「もう終わったのだ。お前たちは本当に強かった。誇っていい。・・・念のため聞いておくが、お前達二人は鬼になる気はないのか?」
「なるはずも・・・なし・・・」
「ふざけるな・・・! 俺たちは柱だ!! それにお館様を裏切って敵の軍門に下るようなことはしない!!」
「・・・そうか・・・本当に残念だ・・・お前達となら、未来永劫、武を競い高め合うことだってできたはずなのだがな・・・分かった。」
そうして猗窩座は自身の腕をかみちぎり、赫刀で焼かれた傷口を排除して腕を再生させる。悲鳴嶼と煉獄にとどめを刺そうとした。だが・・・
ー氷の呼吸 陸ノ型 銀世界・寒風吹雪ー
突如、何者かが乱入する。猗窩座は闘気を一切察知することができず、ぎりぎりで躱すことになり頸に一太刀浴びる。切断こそされなかったものの、内心冷や汗をかく。
ー水の呼吸 肆ノ型 打ち潮
猗窩座は今度こそ闘気を察知し背後からの攻撃を躱す。再度距離を取るが、目の前に日輪刀の切っ先が迫る。
ー水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突きー
猗窩座は頸を傾げて躱す。突きを放った本人は慌てて退避するが、猗窩座は隙だらけの敵に攻撃する気はなかった。
「・・・女を殺す趣味はない・・・帰れ・・・」
「帰らない・・・!! 水柱の一人として、絶対に仲間は死なせない!!」
「真菰の言う通りだ。俺たちがお前らから背を向けて逃げ帰ることはない。」
増援に駆け付けたのは、水柱の師弟だった。今では二人とも産屋敷当主の任命で柱の地位にいる者である。その後ろから不遜な態度の白髪の男も現れる。
「一応、俺が真っ先に駆け付けたんだが・・・まあいい。こいつの頸を刎ねて産屋敷に恩を着せるのも悪くねぇな。」
「白峰五月蠅い。黙ってて。」
「なんだよ、真菰。前に失恋して泣いてるところを慰めてやったろ? そんな風に冷たくされる覚えはないな?」
「よく言うよ、下心で近づいてきたくせに・・・私あんたとは口利かないから・・・」
「そう言うなよ、真菰。今度お茶にでも・・・」
「白峰、真菰に話しかけるな。お前は目の前の鬼を斬ることだけを考えてればいい。」
「はいはい、冨岡も言うようになったな。以前は俺が真菰に話しかけても無関心だったじゃねぇか? まさか最近になってこいつに気でもできたのか?」
「・・・お前には関係ない・・・」
新手の三人の様子を眺める猗窩座。遠くの空を眺めて再び向き直る。
「夜明けまであと15分足らずか・・・悪いが遊んでやる暇はない。すぐに殺す。」
ー氷の呼吸 壱ノ型 薄氷斬りー
猗窩座は寸でのところで回避する。再び頸筋から鮮血が飛ぶ。
「誰が誰を殺すって?」
「お前・・・予備動作がないな。まさかお前も俺と同じ・・・」
ー水の呼吸 壱ノ型 水面斬りー
ー水の呼吸 捌ノ型 滝壺ー
瞬時に水柱二人で側面から攻撃する。しかし、猗窩座は視認することなく、真菰の刃を指でつかんで止め、冨岡の打ち下ろしの刃を鈴割で半ばからへし折る。
「「っ!!??」」
「お前ら二人では俺の脅威にならんな。下がれ。」
猗窩座は再び視認せず、両側にいる二人へ手の甲で素早く打ち付けるような拳打を目にもとまらぬ速度で数十回放つ。
ー水の呼吸 拾壱ノ型 凪ー
ー水の呼吸 拾弐ノ型 水麗の羽衣ー
冨岡は全てを打ち払うような剛剣の連続斬りで拳打を防ぎ、真菰は優しい小川のせせらぎのような柔剣で受け流す。
二人が無傷で退避するのを見て、猗窩座は感心する。
「少し訂正しよう。脅威ではないが、今のは見事な剣技だった。かつて殺した水の柱達は使わなかった。素晴らしい剣技だ。」
ー氷の呼吸 参ノ型 氷瀑・砕氷落としー
猗窩座は頭上からの五連撃を腕を盾にして受け、下がる。瞬時に輪切りにされた腕が再生する。
ー氷の呼吸 肆ノ型 氷塊・雪礫
ー破壊殺・鬼芯八重芯ー
互いに凄まじい速度の攻撃を打ち付け合う。猗窩座は拳から鮮血が舞うが、たちまちそれも止まる。
「見事だ。俺と同じ領域に到達しているのか。だがお前は童磨の血鬼術を吸って再起不能になったはずだがな。」
「あー・・・そうだな。まあ夜明けまでなら何とか持つとは思うぜ?」
「そうか。なら手加減はいらんな?」
ー破壊殺・脚式 冠先割ー
ー氷の呼吸 弐ノ型 氷輪回しー
猗窩座の刹那の蹴り上げを白峰は回転斬りで回避しながら切断する。
猗窩座はすぐに再生し、拳打を放ち続けるが、白峰は全て捌く。
「素晴らしい! 見事だ!! これほどの技量を持った剣士を他に見たことがない!!!」
「ん? 予備動作が出て来たな? 遠慮なく斬るぜ?」
猗窩座が白峰の技量に歓喜し笑い始めたところで、頸に一太刀入る。猗窩座は後方に下がり、再び冷静さを取り戻す。
「やりにくいな。心を乱す程の強敵だと、つい冷静さを欠いてしまう。これでは後れを取ってしまうな。」
「あー・・・つまりあれか? お前は動揺すると力を発揮できないのか? つまり精神攻撃の方が有効なわけか。」
「なに?」
「そういえばお前、真菰だけはやたらと手心くわえてたな? 女にだけは優しい口か? 俺と似てるな?」
「・・・少なくとも俺はお前のような不誠実な振舞をした覚えはない・・・」
「おいおい、誰が不誠実だって? 俺は自分に正直なだけだ。そりゃあ可愛い女いりゃあ優しくもしたくなるわな。お前も俺や童磨と同じで女好きなのか?」
「・・・黙れ・・・」
「そうかそうか、そいつはいいことを聞いた。俺とお前は同じ穴のムジナっつうわけだ。お前もあれか? 女の方がいいって童磨みたく偏食する口か? 鬼にも好みとかあるんだな?」
「っ!! 黙れっ!!」
「まあ、童磨も女の方が栄養価が高いって言ってたんだっけ? まあ合理的だわな。女の柔らかい肉の方がやっぱりうまかったりするのか? 鬼として感想を聞かせてくれよ?」
「っ!!?? 黙れと言っているっ!!!!!」
ついに猗窩座は怒りを抑えられず、心を乱したまま突進する。白峰は猗窩座が人間時代の心的外傷で女を喰うことを好まないことを知らなかったが、その結果、猗窩座の地雷を踏み抜く上では功を奏したようだ。
ー破壊殺・砕式 万葉閃柳ー
猗窩座は拳を振り抜くが、白峰は難なく腕を切断し技を無効化する。
「やっぱり動きが読みやすくなったな。これなら俺一人でも殺せるぜ。」
白峰の太刀筋を回避しきれず、猗窩座はどんどん切り刻まれていく。
「頸だけは後生大事に守ってんな! それも時間の問題だぜ!?」
猗窩座は今すぐに心を落ち着かせるのは無理だと判断し、迎撃用の最高火力の技を放つ。
ー術式展開 破壊殺・終式 青銀乱残光ー
刹那、花火を彷彿とさせるような100発以上の乱れ打ちが放たれる。
白峰も反応こそできたが、致命傷を避けたもののあちこち裂傷や打撲も負い、一度下がる。
猗窩座はその隙を見て、退避し、背を見せながら振り向いて逃げていく。
「貴様のことは絶対に許さんぞ!! 次会った時はその頭蓋を粉々に踏み砕いてやる!!!」
そう言い残し、猗窩座はその場を去っていった。
やがて夜が明けて、長い長い闇夜の襲撃に終わりが告げられた。
続く
白峰の精神攻撃のせいで猗窩座は新しい血鬼術が使えなくなり不覚を取りました。細かいところは違うと思いますが、猗窩座の明鏡止水はドラゴンボールの身勝手の極意的なイメージで書いています。体がオートで動くので思考を挟まない分反応速度が段違いに上がる設定です。加えて防御も体が勝手に最適解の動きをするので殆ど攻撃を喰らいません。二次創作なのでギリギリ許される設定ですかね・・・
それと多くの方が予想外だったと思うのですが、悲鳴嶼さんは退場となります。死んではいませんのでそこはご安心ください。なぜこうしたかと言うと、最終決戦で悲鳴嶼さんが無惨と戦ってしまうと痣を出すリスクが大きいからです。25歳以上なので100%死んでしまいます。筆者は仮に後遺症が残ろうとも柱は死なせたくありません。悲鳴嶼さんが抜けた戦力は雁哉君の秘策で埋める予定です。二次創作なので最後くらいはオリ主が活躍してもいいかなと思っています。引き続きゴールを目指して書き進めていくので応援よろしくお願いします。