輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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童磨視点です。告知通り番外編で鬼側の話を入れます。一話だけお付き合いください。妓夫太郎が死んでから上弦同時襲来までの話になります。


番外編 童磨と猗窩座

「妓夫太郎め・・・最期の最期で油断をしおって・・・」

 

 

琵琶の音が鳴り、俺は一瞬で万世極楽教の自室から無限城へと呼び出される。目の前には無惨様が洋式の椅子に腰かけ、悪態をついていた。

 

 

「童磨。今すぐにお前を吉原へ送る。妓夫太郎が花札の耳飾りを着けた鬼狩りにやられた。甚だ不愉快だ。必ず殺してこい。本当は猗窩座を送りたかったのだが、奴は今鳴女の空間転移の範囲外にいる。よって代わりにお前を送る。失敗すればわかっているな?」

 

「御意。仰せのままに。」

 

「鳴女。」

 

 

無惨様は傍で琵琶を持った鳴女ちゃんに目配せする。

 

 

「では童磨様。準備はよろしいですか?」

 

「ちょっと待って鳴女ちゃん。せっかくだから、鬼狩りの目が届かない傍の路地裏にでも飛ばしておくれよ。」

 

「童磨・・・なんのつもりだ?」

 

「猗窩座殿のように真正面から登場するような馬鹿な真似はしたくありません。気配を殺して近づき、不意打ちしてきます。

 そうすれば以前のように柱に邪魔される心配もありませんし、花札の鬼狩りさえ殺してしまえば、他の柱を気兼ねなく殺せるので効率的です。いかがでしょうか。」

 

 

俺は深く首を垂れて平伏する。無惨様は暫く黙っていたが、不機嫌そうに答える。

 

 

「わかった。その代わり確実に殺せ。周辺にいる柱も同様にな。」

 

「はい。仰せの通りに。」

 

 

そうして俺は妓夫太郎が殺された吉原の人気のないところに飛ばしてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか不意打ちしたのに殺しきれないなんて驚いたなあ。竈門炭治郎だっけ? 俺が気配を完全に消して接近したのに直前で刀まで抜いて迎撃してくるなんて。

 

まあでも鎖骨肋骨含め、胸膜まで裂いたわけだし、大動脈も切ったからすぐ死ぬよね? あとはのらりくらり手負いの柱の相手をしてればいいと俺は高を括った。

 

草、蟲、音の柱を次々相手にし、それでも俺の優位は揺るがなかった。だから何の問題もないと思ってたんだけどね。

 

まさか、以前俺が首無しになった時に草の呼吸の彼を殺す邪魔をした男が鬼殺隊に入ってたとは。しかも丁度いい頃合いでまた邪魔をしに来た。

 

そして何より彼の強さ、今まで殺してきた柱なんて目じゃないくらい恐ろしい腕をしていた。つい黒死牟殿と手合わせした時のことを思い出してしまったぐらいに手ごわかった。

 

それでも俺は負けることはないと思っていた。結晶ノ御子を増やせばあっさり殺せるはずだと楽観視していた。

 

まさかその後柱が二人も駆け付けるなんて。白峰とかいう氷の呼吸の彼も結局殺せなかった。霧氷睡蓮菩薩を真っ二つにされた時点で、俺は埒が明かないと観念して逃げ出してしまった。

 

あ~・・・これは流石に無惨様に殺されるかも。まさか俺の長い人生もこんな形で幕引きになるなんて・・・つまらなかったなあ・・・いや、それすらもどうでもいいか・・・結局何も感じなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げ出した後、俺は再び無限城に呼ばれ、無惨様に糾弾されていた。

 

 

「貴様っ!! わざわざ不意打ちまでして殺せなかったとはっ!! 柱もどうした!? 一人も殺せなかったではないか!! 何とか言ったらどうなんだ、童磨・・・!!」

 

 

無惨様の言葉を聞くたびに、俺の口からは大量の血が飛び出し流れ落ちる。全身信じられないほどの痛みと不快感だ。どうやら楽には殺してくれないらしい。

 

それからどれほど罵詈雑言を浴びせられたかわからない。俺の座る場所はもはや血の池のようになっていた。体も再生できず、いつになったら死ねるのかをぼうっと考えていた。

 

すると、どういう訳か、猗窩座殿が無限城に姿を現し、無惨様の前に跪いた。

 

 

「無惨様のお怒りはごもっともです。しかし、大変恐れながら、ここで童磨を処分するのは些か性急かと存じ上げます。」

 

 

なんとあの猗窩座殿が俺を擁護した。にわかには信じられなかった。俺は猗窩座殿に死ぬほど嫌われてたはずなんだけど、一体どういう風の吹きまわしだろう。

 

猗窩座殿の嘆願に無惨様も驚いていた。

 

 

「猗窩座よ。お前は童磨など癇に障る不快な蟲程度にしか考えていなかったのではないか? まさか、黒死牟の死がそれほどまでに堪えたか? 貴様を心変わりさせるほどに。」

 

 

猗窩座殿は顔を上げることなく跪いたまま答える。

 

 

「初めから黒死牟のことなど、どうとも思っていませんでしたが、やはりあの男の強さだけを考えるのであれば、無惨様に匹敵するほどの使い手だったかと・・・

 失礼を承知で大変に心苦しいのですが、現状童磨という駒は、本当に役に立たないと判断するまで残しておくべきかと進言致します・・・」

 

「お前は既にあの黒死牟よりも強い。柱が何人かかってこようと相手にならぬと言っていい程だ。加えてお前の血鬼術は戦闘以外でも役に立つ。

 今のお前と今後の鳴女がいれば、鬼殺隊壊滅などそう遠い話ではあるまい。なぜ童磨などを庇い立てする?」

 

「その男の支配下にある万世極楽教という組織は、言わば表社会の窓口。加えて、鬼殺隊殲滅後も私たちは青い彼岸花を求めて探索せねばなりません。

 万が一、青い彼岸花が日中にしか咲かない花だったとしたら、例え鳴女が更なる成長を見せたとしても探し出すことができません。

 その場合、私も同様にお役に立つことができません。人間どもを大勢動かせる童磨の伝手は、私などでは代わりになれないのです。どうか今一度ご再考を・・・」

 

 

猗窩座殿がそこまで俺を庇うなんて思いもしなかった。やっぱり黒死牟殿が死んで、いろいろと思うことがあったのだろうか。

 

どちらにせよ、俺は無惨様の決定には逆らえない。静観するほかなかった。

 

暫くの間、無惨様は考えている素振りだったが、やがて口を開いた。

 

 

「もう一度だけ機会をやる。次にもし私の命令を果たすことができねばすぐ殺す。死にたくなければ私の役に立て、童磨。」

 

「御意・・・」

 

 

俺は何の感情もないまま返事をした。その様子を見て無惨様はひどく不快そうにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月して、最近成長が目覚ましい鳴女ちゃんの必死の探索の甲斐もあってか、鬼殺隊組織の主要施設の場所が一斉に割れた。

 

 

「猗窩座、童磨、半天狗、玉壺。お前達で手分けして鬼狩り共の拠点を殲滅してこい。それだけでいい。簡単な仕事だ。くれぐれも私を失望させるな。」

 

 

俺は鬼狩りが最近になって使うようになった近代兵器の生産拠点及び周辺の施設への破壊活動に割り当てられた。

 

鳴女ちゃんに該当地域へ飛ばしてもらうと、俺はすぐさま結晶ノ御子を最大数生成し、複数個所の拠点へと放った。

 

今回は柱を相手にしたり、特定の鬼狩りを殺す必要はない。黙々と命令に従おう。

 

仕事が全て完遂できてから、鬼狩りの相手をすればいい。柱複数人の首を持ち帰っても無惨様は大して喜ばないだろうけど、これまでの失態のわび替わりくらいにはなるだろう。

 

とは言え、優先順位を間違えずに、俺は黙々とそれぞれの鬼殺隊施設を潜伏しながら巡回する。そろそろ奴らの医療施設の辺りだと思うんだけど、なかなかそれらしき建物が見つからない。

 

やがて、俺の結晶ノ御子が破壊され始めた。順次遠くの施設に放った御子が破壊されていく。つまりその反対側に残りの医療施設ないしそれに準ずる施設があると考えていいだろう。

 

俺はその方向へと歩き進めるうちに、大きな屋敷へと辿り着いた。

 

これまで以上に気配を消し、敷地に入り込む。すると縁側で月を眺める女の子を見つけた。柱らしき強そうな気配を持つ傷だらけの男と会話してたが、別に大した障害にはならないだろう。

 

俺はいつも通りの笑顔で話しかけた。すると、その子はこの世の終わりのような顔をして俺を見て震えあがる。

 

 

「あれ? 君、以前に会った子だね? けど一応自己紹介しておこうか。俺の名は童磨。いい夜だねえ。」

 

 

ああ、思い出した。三年ほど前に喰いそびれた花柱の子じゃないか。まさかお腹の中に子どもまでいるなんて、月日が経つのは早いなあ。

 

そんなことを思って、こちらから話しかけると、近くの柱らしき男が凄い剣幕で怒鳴ってくる。もしかして旦那さんかな?

 

俺は戦闘に備えて鉄扇を取り出したが、すぐさま攻撃を受ける。毒が巡る感じがした。まさかしのぶちゃんにもここで会えるなんてね。

 

それから暫くの間、風柱らしき男と戦闘になる。過去にも同じく俺の血鬼術を巻き起こした風で防ぐ鬼狩りはいたけど、これほどの腕の持ち主は初めてだね。

 

まあ、だからといって、俺に一人で勝てるほど強くはないみたいだった。

 

やがて、患者の避難が終了したのか、しのぶちゃんや以前戦った音の柱の男も駆け付けて来た。

 

でもどうってことない。黒死牟殿が死んでから、今まで献上を義務付けられてきた稀血の信者は全部俺が食っていいと無惨様から許可をもらったんだ。そのおかげもあって、この数ヶ月で俺の血鬼術も多少なり進化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 結晶ノ御子・改 豊穣の白雪姫ー

 

 

 

 

 

 

 

 

結晶ノ御子を増やす結晶ノ御子。つまり俺の手を離れていくらでも分身の量産が可能。これで数の不利はなくなった。

 

ちゃんと医療施設の破壊も忘れずに、周囲に血鬼術をまき散らし、次々と柱達を戦闘不能にしていった。すると最後に腕を斬り落とした風の柱が相当な稀血だったらしく、俺はふらつくようになった。

 

でも問題ない。案の定、すぐに出血大量でそいつは動けなくなった。途中でしのぶちゃんも起きてきたがこちらも全く脅威にならない。流石にもう大丈夫だろうと、俺は少し気を緩めてしまった。

 

すると、また駆け付けで来た柱複数名に邪魔をされた。吉原で戦った時と全く同じ展開で嫌になる。でも、今回は鬼殺隊施設の破壊のみが命令だから、俺は必要最低限の仕事は果たしたはずだ。

 

柱の首を持って帰れないのは残念だけど、これで無惨様に処分されることもないだろう。

 

まあ、正直どっちでもよかったが、これでさらに多くの信者たちを救済し高みに導けるのだから、きっと俺にはそういう使命があると思い、満足げにそのまま帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「半天狗と玉壺を失ったが、奴らは最期にいい仕事をしてくれた・・・! ついに・・・ついに・・・!! 太陽を克服する鬼が現れたのだ・・・!!

 これでもう青い彼岸花を躍起になって探す必要もない。今までご苦労だった。猗窩座、童磨。」

 

 

上弦も残り俺と猗窩座殿と鳴女ちゃんだけだというのに、無惨様はひどく上機嫌だった。まあそれも当然か。念願の太陽克服が目と鼻の先なのだから。

 

これで俺もお役目御免か。まあ、だいぶ長生きしたし、俺ほど世の中に貢献し、多くの人を救済した奴もいないよね。もう充分か・・・

 

 

「今後鳴女に産屋敷の隠れ住む場所を見つけさせ、禰豆子も探し出す。私が完璧な生物になる日も近い。最後に、これまで目障りだった鬼狩り共を皆殺しにしてやろうではないか。

 猗窩座よ、童磨よ、そして鳴女よ。お前達には更に私の血をふんだんに分けてやろう。最期に思う存分奴らを血祭りにあげるのだ。良いな?」

 

「「御意。」」

 

 

猗窩座殿と鳴女ちゃんは、これが俺たちの最期の仕事になると聞いてどう思ったんだろう。俺と違って、二人には感情がある。やっぱり悲しかったりするのだろうか。空しかったりするのだろうか。

 

俺は何も感じない。この最期の仕事がどう転ぼうと、俺は処分されることが確定しているのだから。だからといって、わざと手を抜こうとかそういう反感すらも抱けない。

 

俺は何がしたかったんだろう。大勢の苦しんでる人を救済することが本当に俺がやりたかったことなんだろうか。

 

俺はどうなりたかったんだろう。教祖となり、鬼となり、上弦となり、無惨様の忠実なしもべとして献身してきたが、それが俺の本当に目指したかったものなんだろうか。

 

わからない。生まれた時から何一つ、人間らしい感情を持つことができなかった。

 

いや、少し違うか。以前に一度だけ、人並みの感情を持てたことがあった気がする・・・あれはいつのことだっただろうか・・・

 

思い出せない。どうでもいいか、そんなことは。今更思い出したところできっと何とも思わない。

 

俺は今後も、無惨様の命令を忠実に聞いてその果てに死んだとしても、きっと何も感じないのだろう。

 

きっと俺は最初から壊れていたんだ。今更どうすることもできないし、どうこうしようとも思わない。正直どうでもいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど今になって少しくらい思わなくもない。俺は一体何のために生まれてきたんだろうか。

 

一瞬そんな考えが浮かびもしたが、脳裏に残ることもなく俺は無感情のまま、いつもの笑顔を無惨様に向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




黒死牟にせよ、猗窩座にせよ、童磨にせよ、この小説ではやたら鬼側は曇ってばかりな気がする・・・
なんにせよ番外編終了です。次回から柱稽古編です。多分10話くらいしたら無限城編に突入します。最後の日常回が書ける章なので、そちらが好きな方は是非楽しんでください。ではまた次回。
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