輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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三人称視点です。筆者としてはやはり一人称視点の方が書きやすいなと思い、次回から戻します。


75話 緊急柱合会議

ここは産屋敷邸。現在、動ける柱達全員が広い一室に集められている。

 

あの日、複数の鬼殺隊施設が上弦の鬼に同時襲撃されてから、丸七日は経った。

 

被害規模は尋常ではない。刀鍛冶の里壊滅。隠及び支援部隊の宿舎倒壊。生産拠点の全壊。そして、医療施設として重要な蝶屋敷の壊滅。

 

大勢の怪我人は各地域の藤の花の家紋の家へと搬送され、無事だった隊士は最寄りの柱の屋敷に割り振られ匿われた。

 

人員の被害も甚大だった。鬼殺隊と隊士及び関係者のべ100名以上が死亡し、後遺症が残るほどの重傷者もその倍近くにのぼった。

 

そして何より、鬼殺隊最強の隊士、岩柱・悲鳴嶼行冥の戦線離脱。そして月柱・間雁哉が消息を絶ったこと。この二つが柱達の中では一層衝撃的な事実であった。

 

 

「大変お待たせ致しました。本日の緊急柱合会議、産屋敷輝哉の代理を、産屋敷あまねが務めさせていただきます。」

 

 

かねてより、鬼殺隊当主の輝哉は容体が悪くなる一方で、この日はとうとう人前に出ることもできない状態であった。

 

代理のあまねの挨拶に、出席者の中で一番の年長である宇随天元が応える。本来であれば悲鳴嶼が応えたはずではあるが今はそれも叶わぬ事態。

 

粛々と互いの挨拶が進み、本題へと話は移った。

 

 

「今後の鬼殺隊の方針を是非とも柱の皆様と討議したく・・・」

 

 

あまねより切り出されるも、柱達の口は中々開かない。気まずい沈黙が続くも、それを破ったのは不死川だった。

 

 

「悲鳴嶼さんが引退しちまったのはもうどうしようもねぇ・・・それよりも今は間の野郎だァ・・・なぜあいつは消えた? おい、カナト・・・てめえ何か知ってるんじゃねぇのかァ?」

 

 

一斉に柱達の視線がカナトに集中する。彼は暫く黙っていたが、やがて口を開いた。

 

 

「恐らくですが・・・雁哉は浅草へ向かったと思われます。」

 

「浅草ァ? どうしてだ? 理由を言えェ・・・」

 

「・・・」

 

「カナト君・・・ここは隠し事をする場面ではありませんよ? 何か知っているのなら素直に話してください。」

 

 

隣に座るしのぶより、発言を促す声が掛かる。カナトも観念したのか、重く重く口を開いた。

 

 

「・・・お館様には以前より報告していたのですが・・・僕と雁哉は浅草で猗窩座と戦闘した際にとある医者と会っていました・・・」

 

「医者だァ? それが今回の話とどう関係あるってんだァ?」

 

「その医者はもしや、以前カナト君の治療をしてくださった方ですか?」

 

「・・・うん。そうだよ、しのぶさん。」

 

 

カナトは暫く考えているようだったが、やがて意を決したのか、驚愕の事実を伝えた。

 

 

「その医者は・・・鬼舞辻無惨の呪いを外した逃れ者の鬼でした。」

 

「「はあっ!?」」

 

 

柱達数人から驚きの声が上がる。特に隣に座るしのぶは取り乱したかのようにカナトの羽織のすそを掴む。

 

 

「どういうことですか!? 鬼って・・・いや、そんなことよりも・・・カナト君は鬼に自身の治療をさせたんですか!? どうしてそんな危険なことを・・・!!」

 

「待て、胡蝶。今は稲葉から話を全て聞くのが先だろう。一旦その話は後回しだ。」

 

 

しのぶの前から、現在隻腕隻眼となった煉獄がなだめるように口をはさむ。

 

 

「稲葉。教えてくれ。その鬼はどういう存在なんだ? 呪いを外した逃れ者とは一体何だ?」

 

「はい。その人は、始まりの呼吸の剣士が無惨と戦った時に傍にいた鬼で、無惨が逃亡した際に呪いが解けたのだそうです。恐らく、一時的に無惨が瀕死の重傷を負ったからだと思われます。」

 

「恐らく? 思われる? 稲葉、その言い分だとあれか? その逃れ者の鬼の証言に基づいた話ってわけか? 派手に信用できねぇな。」

 

 

全身包帯だらけの宇随さんが振り返りながらカナトに物申す。

 

 

「一応、産屋敷当主のみ閲覧が許された記録にも同じことは書かれています。当時のお館様が縁壱さんの報告よりまとめた内容です。」

 

「それも間から聞いた話かァ・・・消えた奴の言うことなんか信用できるのかァ?」

 

「僕は雁哉の言うことに嘘はないと思っています。」

 

「それはお前があいつの弟だからだろうがァ・・・信用できねぇなァ?」

 

「不死川の言う通りだ。俺もその話は信用しない。どうやってそれが正しいと証明する? どう説明する気だ?」

 

 

続けざまに不死川、伊黒より抗議の声があがる。カナトは暫くしてあまねの方に目線を移す。

 

 

「あまね様。その文献、お持ちいただけましたか?」

 

「はい、ここに。」

 

 

するとあまねは後ろに座る輝利哉から古びた本を受け取り、手前に置く。

 

 

「こちらが、当時の記録の写本になります。」

 

「っ!!」

 

 

柱一同息を飲む。一番先頭にいる宇随が該当のページを読み、写本を閉じる。

 

 

「驚いた。まさか本当だとはな。」

 

 

写本は柱達に次々と回されれる。全員が宇随と同じような反応だった。

 

 

「つまり、浅草にいた鬼は本当に鬼舞辻の呪いが解けていると・・・そういうことだな?」

 

 

冨岡が写本をあまねに返却し、カナトにそう問いかける。

 

 

「はい。そしてその鬼は無惨の復讐のために、この数百年間、有用な薬を開発し続けていました。そしてそれはまもなく完成すると思います。」

 

「どうしてそう思うのかしら?」

 

 

甘露寺に後ろから疑問の声を投げかけられ、カナトは振り向く。

 

 

「はい。実はずっと以前より、僕と雁哉と炭治郎は上弦の血を集め、その鬼の医者に送り続けていました。加えて、研究の進捗についても文通してきました。」

 

「炭治郎も知ってたんだね?」

 

 

真菰が後ろの炭治郎に声を掛ける。

 

 

「はい。俺も浅草でその珠世さんには会っていましたから。禰豆子の血もずっと研究の為に送り続けていたんです。」

 

「待ってください。珠世? その鬼は女性ですか?」

 

 

突如しのぶが疑問の声を上げ、カナトに問い詰める。

 

 

「・・・うん。そうだよ?」

 

「・・・私以外の女性に・・・体の隅々まで診せたんですか・・・?」

 

「? そうだけど・・・それが何?」

 

「・・・カナトく・・・」

 

「おい、胡蝶。相手は鬼だぞ? それと派手に痴話げんかしたいなら後にしろ。今はそれ以上に優先しなきゃいけねえ話が山積みだからな。」

 

「・・・わかりました・・・カナト君・・・逃がしませんからね・・・」

 

「・・・はい・・・」

 

 

しのぶに凍るような声で念を押され、震えあがるカナト。しかし、すぐに不死川より声が掛かる。

 

 

「それで? 間がその鬼の下に向かった理由は結局何なんだ? 俺らの前から消息を絶ってまで向かうようなことかァ?」

 

「はい。珠世さんは鬼殺隊に対して警戒心を抱いています。それで面識のある雁哉が先に向かったんだと思います。」

 

「本当にそれだけ?」

 

 

ふいに時透より疑問の声が上がる。

 

 

「あの雁哉さんがそれだけの為に僕らの前から姿を消すかな? 他に何か理由があったんじゃないの?」

 

「・・・」

 

「どうなんだ、カナト。何か心当たりがあるんじゃねぇのか?」

 

 

宇随よりさらに問い詰められるが、カナトはあっさりと答える。

 

 

「いえ、まったく。僕には見当もつきませんよ。」

 

 

まるで、そう答えることをあらかじめ決めていたかのように・・・

 

 

「まあいい。とりあえず間は稲葉の鎹烏を使って捜索しろ。そしてどういう事情でいなくなったか聞き出せ。いいな?」

 

「はい。僕の言った通りなら、雁哉は近いうちに珠世さんを説得して産屋敷邸に戻ってくるはずです。もしかしたら、さらなる薬の研究の開発の為に、しのぶさんに協力を求めるかも・・・」

 

「私に!? 私に鬼と共同で薬の開発をさせるっていうんですか!?」

 

「・・・予想でしかないけど・・・雁哉ならそうする気がする・・・雁哉は手段を選ばない部類の人間だから・・・」

 

「まあ確かに、間ならやりそうだわな。あいつは度々誰も思いつかない手法で鬼殺隊に貢献してきた男だからよ。」

 

「だからって・・・鬼と共同研究なんて死んでも御免です・・・」

 

「・・・まあそれについては雁哉が見つかってから考えようよ。今から身構えてもどうしようもないし・・・」

 

「一先ず間の野郎は早急に見つけろォ・・・本人に事情聴くのが一番早えェからなァ。」

 

 

不死川はもういいとばかりに話を切る。

 

 

「それと今後の鬼殺隊の方針だがなァ、結局どうするんだァ? 今までと同じように組織を動かして平気かァ? そもそも問題なく動かせるのかァ?」

 

 

不死川より新たな議題が上がる。それに対し、カナトがすぐに答える。

 

 

「現状、刀鍛冶の里は空里に移動し終わっているので、日輪刀の供給には支障はありません。

 怪我人の治療施設は暫くの間、蝶屋敷の代わりに、藤の花の家紋の家に依存するしかないでしょう。

 ただ、僕の生産拠点は軒並み全滅してるので、遠距離支援部隊については火器の生産ができないため、従来通りの隠としての後方支援のみに活動が限定されると思います。

 今後必要な物資については、僕の確立した技術を生業にした産屋敷関係者による企業から、生産品を融通してもらう手筈になっています。

 最優先は医療品で、次点で無線機でしょうか・・・しかしそれも製品数に制約があるので今まで通りというわけにはいかないでしょうね。」

 

 

カナトの説明を聞き、冨岡が話の流れを変える。

 

 

「今回の複数の鬼殺隊施設の襲撃以降、鬼の報告がピタリと止んだ。それについて稲葉はどう考える?」

 

 

カナトは暫く考えていたが、やがて口を開く。

 

 

「十中八九、禰豆子が太陽を克服したからでしょうね。もう鬼を増やす必要がなくなったんでしょう。無惨にとっては禰豆子さえ見つけて取り込んでしまえば目的達成な訳ですから・・・」

 

「つまり! 今後の方針としては、禰豆子の守護が最優先ということか!? それについての対策はどうする!?」

 

 

煉獄が警鐘を鳴らす。他の柱達は具体的な対策案を提示できなかったが、カナトは違った。

 

 

「珠世さんの傍付きの鬼で、目隠しの血鬼術を使える者がいます。その人に禰豆子の身柄を預けましょう。建物と人の気配や匂いを消せるので、例え無惨でも見つけるのは困難になります。」

 

「おい、派手に衝撃の事実を追加するんじゃねえ。その珠世とかいう鬼以外にも呪いを外した鬼がいるのか? そいつは信用できるのか?」

 

「・・・・・・はい。その人は珠世さんを心酔しているので、まず裏切ることはないと思います。」

 

「カナト君。私たちは珠世という鬼含め、会って見定めた訳ではないのでおいそれと信用することはできません。

 もし禰豆子ちゃんを預けるというのなら、まず私たちの前に彼女らを連れてきてください。いいですか?」

 

「・・・わかったよ。それまではこの産屋敷邸に禰豆子ちゃんを匿うことでいいのかな? 現状それが一番安全だと思うから。」

 

「はい。それで構いません。」

 

「つうことは、当面は鬼の討伐任務は必要ない。そう考えていいのかァ?」

 

 

不死川が話をまとめる。柱達はそれに対し頷いていた。

 

 

「じゃあ、上弦との戦闘に備えて、今のうちに戦力の底上げをしとかねぇとなァ? 以前、間が各柱を巡回してたみたいに柱稽古をするのはどうだァ?」

 

「柱稽古か!! いい考えだ!! ついでに鬼殺隊隊士全員の戦力強化もするのはどうだ!?」

 

「ああ、悪くねェ・・・有望そうな奴ら見つけて柱同士の稽古に加えるのもいいかもなァ?」

 

「なるほど!! 竈門の同期で宇随の継子でもある我妻少年と嘴平少年なら柱との稽古に参加しても問題ないだろう!! 他にも有望な隊士がいるかもしれんな!!」

 

「まあ、現状思いつくのはそいつらくらいかァ。他だと獪岳っつう奴も常中は使いこなせてたみたいだから引っ張ってきてぇんだが、あいつも間と一緒に行方をくらませてるからなァ。

 そもそもあいつは悲鳴嶼さんが反対しなけりゃあ、今代の鳴柱候補だったんだが・・・」

 

「そういえばなんで獪岳は悲鳴嶼さんから柱の昇格を反対されていたんだろう? カナトは何か知ってたりするの?」

 

 

ふいに真菰がカナトにそう質問する。

 

 

「僕? なんで?」

 

「だって、雁哉がわざわざ一緒に連れてったみたいだから、カナトは雁哉から悲鳴嶼さんと獪岳との関係性について何か聞いてたりするのかなって。」

 

「う~ん・・・悲鳴嶼さんが獪岳と知り合いだったかすらわからないかな・・・一方でなぜか雁哉は獪岳のこと目にかけてたんだよね・・・なんでなのか僕にはさっぱりわからなかったけど・・・」

 

「悲鳴嶼さんも頑なに獪岳の野郎のことは話したがらなかったからなァ。柱の俺達ですら正直謎だぜェ・・・」

 

「そうなんだ・・・でも可笑しいよね? なんで雁哉は獪岳を連れて、その珠世って鬼に会いに行ったのかな? 彼が何かの役に立てるとは思わないんだけど・・・」

 

「・・・・・・そうだね。」

 

「どうした稲葉? 何か気になることでも?」

 

 

宇随がカナトの不自然な反応に気づき、質問する。

 

 

「・・・すみません・・・現状これといって思いつくようなことは・・・」

 

「・・・ほんとか? 俺にはそう見えなかったんだが。」

 

「カナト君。隠し事はここではしない方がいいと思いますよ? 何か心当たりがあるんですか?」

 

 

加えてしのぶからの問いに、カナトは考える素振りをする。

 

 

「・・・ごめん。本当に何もわからないんだ・・・ただ、雁哉なら何か理由があってそうしたとしか・・・」

 

「ならなおさら、間をさっさと見つけるに越したことはねぇだろうがァ。この後すぐ浅草に探索用の鎹烏を飛ばせェ・・・!」

 

「・・・はい。もちろんです。」

 

「とにかく、今後は間さんを探しつつ、柱稽古を行い鬼殺隊全体の戦力も強化する。その上で、間さんが浅草の鬼を連れて来次第、心証の確認をして、問題がなければ禰豆子を預けて隠す。以上が今後の方針ですよね?」

 

 

最後に時透がまとめる。他の柱達もみな頷いていた。

 

 

「では、あまね様。そのようにお館様にはお伝えください。」

 

「承知しました。輝哉には伝えておきます。」

 

 

こうして緊急の柱合会議の本題は終わりを迎え、やがて柱稽古の内容についての討議が始まった。

 

 

 

 

続く

 

 

 




会議を淡々と進めるだけの回でした。次回はちゃんと楽しんでもらえるような内容にしたいと思います。
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