輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

81 / 100
しのぶさん視点です。回想になってしまいますが、小芭蜜を入れます。原作のあのシーンは本当に泣きました。本小説では二人に生きて幸せになってもらいます。


78話 幸せな気持ち

「しのぶちゃぁああん!! 今日も来てくれたのねっ!? 私、すっごく嬉しいわっ!!!」

 

「ええ、今日もお願いしますね?」

 

「任せてっ!! そ、その代わりといってはあれなんだけど・・・///」

 

「ええ、構いませんよ? カナト君にも協力してもらえるよう取り計らっておきますから。」

 

「ありがとぉおおお!!! しのぶちゃぁああん!!!」

 

 

私は、早朝の誰もいない時間帯に、恋柱邸へと来ていた。屋敷の敷居を跨いですぐ、甘露寺さんは屋敷から顔を出して私に手を振り、その後抱き着いてくる。

 

 

「それでどうなの!? カナト君とは最近、うまく言ってるのかしら!? 教えてっ! しのぶちゃん!!」

 

 

屋敷の奥へ案内され、パンケーキなるものを私に出してくれる。洋式のえぷろんという前掛けを着てる彼女は、どこか女性らしく華やかに見えた。

 

そして、これまた何度目かわからない甘露寺さんからの質問が飛んできた。私は少し困ったように答える。

 

 

「ええっと・・・以前は求婚された時の話まではしたんでしたっけ?」

 

「そうそう!! キャーー///!! 私も伊黒さんにそんな風に言われてみたいわっ!! 想像するだけですっごくキュンキュンしちゃうっ!!」

 

「あはは・・・そちらの方はうまくカナト君が促してくれていると思いますよ?」

 

「そうなのっ!? そうなのっ!!?? キャーー///!! すっごく楽しみっ!! 私時々、夢に見るもの! 伊黒さんが婚約指輪を用意してくれるところっ!!

 

 告白してくれた時もすっごく嬉しかったけど、やっぱり女の子ならプロポーズされることに憧れちゃうわっ!! 胸がドキドキしちゃうっ!!」

 

 

甘露寺さんは一人でとっても舞い上がっている。彼女がこんな嬉しそうに笑っているのも、あの日のことがあったからだ。

 

確かあれは・・・私たちが吉原遊郭から戻って、伊黒さんの腕の調子も良くなって暫くのことだったか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数か月前ー

 

 

 

「伊黒さん。定期健診にちゃんと来てくれて安心しました。あれから具合はどうですか?」

 

 

あの日、蝶屋敷で私は伊黒さんの切除した腕を診察していた。

 

 

「問題ない。もう片腕で戦うのも慣れた。透き通る世界に入れる時間も少しずつだが伸びてきている。」

 

「そうですか。それは良かったです。甘露寺さんは良くお見舞いに来てくれていましたが、最近は会えたりするのですか?」

 

「・・・なぜそんなことを聞く?」

 

「・・・甘露寺さんから愚痴を聞いたんです。最近、伊黒さんが鍛錬ばかりしていて、ちっとも構ってくれないって。

 以前にも言いましたが、あまり甘露寺さんを待たせてはいけませんよ?」

 

「何の話だ? 俺と甘露寺はただ同じ柱同士の仲だ。お前にそんなことを言われる筋合いはない・・・」

 

「はあ・・・全く・・・そんなだと、甘露寺さんに愛想尽かされますよ? いいんですか?」

 

「っ!!」

 

「ほら、今嫌だって思いましたよね? もっと自分の気持ちに正直になってください。きっと甘露寺さんもその方が嬉しいと思いますよ?」

 

「・・・俺は・・・甘露寺に好意を寄せる資格などない・・・」

 

「え・・・? どうしてですか・・・?」

 

「・・・お前には・・・関係ないっ!」

 

 

そう言って、伊黒さんは診察室を出て行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ということがあったんです。私はどうすればよかったのでしょうか・・・」

 

 

私は、カナト君に相談していた。蝶屋敷の当直の空いてる時間に、縁側で二人でよく話をしていた。

 

 

「う~ん・・・伊黒さんの過去に何かあったんじゃないかな?」

 

「そうですね・・・でも聞けませんよ。鬼殺隊に入る人はみな、心に傷を負ったまま入隊した人が殆どですから・・・」

 

「まあ、本人には聞くべきじゃないね。他の人に聞こう。」

 

「え? 誰に?」

 

「一旦、雁哉に相談する。雁哉は鬼殺隊のいろんな人と繋がりがあるから、事情を知ってる人に相談してくれるかもしれない。」

 

 

そうして数日後、雁哉君は手紙をくれた。

 

 

『煉獄槇寿郎さんから事情は聞いた。実は・・・』

 

 

そこに記載されていたのは、伊黒さんが鬼殺隊に保護された時のいきさつだった。伊黒さんはある血族の者だった。鬼が人々から金品を奪い、その恩恵を受けていた一族だったそうだ。

 

その一族は、生まれた赤ん坊を生贄として差し出すことで生き永らえてたらしい。座敷牢に閉じ込められ、それを知った伊黒さんはある日逃げた。

 

追いかけて来た鬼を当時の炎柱だった槇寿郎さんが斬り、伊黒さんは助かったが、当時生き残った従妹から罵詈雑言を浴びせられたそうだ。お前のせいで50人は殺されたのだと。生贄のくせにと。

 

その言葉が伊黒さんの心を抉った。そして、その一族の出であることを伊黒さんは心底嫌悪していると。

 

恐らく、それが伊黒さんが前向きになれない理由・・・甘露寺さんと本当の意味で向き合えない理由なのだろう・・・

 

 

「はあ・・・つまり伊黒さんは何も悪くないってことだよね・・・それを本人に自覚してもらわないと・・・」

 

「しかし、どうやってですか? 伊黒さんは自身の血と、死んだ同族に罪の意識を持っていて・・・」

 

「血がどうとか可笑しいよ。だったら輸血で血替えればその人の罪は許されるってことになる。そんなわけない。つまり伊黒さんは生まれで罪を背負う必要なんてない。」

 

「でも・・・死んだ同族に対しての罪悪感が・・・」

 

「そこ矛盾してるんだよね。罪深い一族が死んだのは、積年の報いを受けたからで、そんな人達に対して伊黒さんが罪悪感を感じる必要なんてない。

 それに、その人たちが死んだことを、尊い命が失われたから申し訳ないって思うぐらいなら、伊黒さんの命だって尊いって思わなきゃだめだ。

 人の命は大切なのに、自分の命は屑で価値がないなんて、僕が言わせない。人はみな幸せになるために生まれて来るんだから・・・!」

 

 

翌日、彼はすぐに行動を起こしていた。伊黒さんはいつも通り、蛇柱邸で鍛錬をしていた。カナト君はそこに押しかけて、私に言ったことと同じ内容を伊黒さんにぶつけた。

 

当然、伊黒さんは烈火のごとく激怒した。いつも以上に低い声が、辺りに染みわたるように響く。

 

 

「五月蠅い・・・お前に何がわかるっ!! 俺の背負った業は、鬼を狩り続け、無惨を倒してその後死んで、そうして初めて浄化される・・・!!

 もし仮に鬼のいない時代に生まれ変わることができたなら、その時になって漸く俺は甘露寺に想いを伝えることが許されるんだっ!!」

 

「ふざけるなよ、この意気地なしが。死んで生まれ変わって初めて権利が得られるなんて妄言を吐いて、蜜璃ちゃんの想いに目を背けるなよ・・・!!」

 

 

私は、カナト君がこんなにキツイ言い方をするとは思いもしなかった。伊黒さんも驚いていた。

 

 

「蜜璃ちゃんにとってそんな生い立ち関係ないね!! そこまで言うなら、僕らが絶対無惨を葬り去ってやる!! 伊黒さんは絶対死なせないし、蜜璃ちゃんを一人で泣かせて余生を過ごさせるなんてそんなの許さない!!

 伊黒さんは何の為に生まれて来たんだ!? 死んで罪を償うため!? 冗談じゃない!! それってつまり、貴方の最愛の人を傷つけることと同義なんだぞ!?

 貴方が死ねば、伊黒さんに想いを寄せて来た蜜璃ちゃんが一人確実に不幸になるっ!! 貴方はそれでもいいのか!? 蜜璃ちゃんを幸せにできるのは、この世で伊黒さんしかいないんだぞ!!」

 

「っ!!??」

 

 

伊黒さんは目を見開き、固まってしまった。私もカナト君の剣幕が怖くて、黙って見ていることしかできない。

 

 

「・・・伊黒さんは蜜璃ちゃんのことが好きなんでしょ?」

 

「・・・しかし・・・」

 

「伊黒さんは蜜璃ちゃんのことを傷つけたいの?」

 

「・・・そんなわけ・・・」

 

「伊黒さんは蜜璃ちゃんを晩年まで独りぼっちにしてずっと泣かせたいの?」

 

「っ!! そんなわけないだろうっ!!」

 

 

カナト君の問いに、つい思わず答えてしまったという顔をしていた伊黒さん。その様子を、泣きたくなるくらい優しい顔で見つめるカナト君。

 

 

「じゃあ、会いに行ってあげなよ。蜜璃ちゃんが待ってるよ?」

 

 

その言葉を皮切りに、伊黒さんは木刀を手放して、屋敷を去った。その翌日、私たちは、甘露寺さんが伊黒さんと結ばれたという報告を聞いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの日は本当に驚いたわっ! 急に伊黒さんが屋敷に来て、告白してくれたんだもの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は甘露寺を幸せにしたい。君が俺でいいと言ってくれるなら。

 君と話していると、とても楽しい。まるで自分も普通の青年になれたようで幸せな気持ちになる。

 些細な事でもはしゃいで鈴を転がすように笑い、柱になるまで苦しい試練もあっただろうに、それを少しも感じさせない。

 そんな君とはじめて会ったあの日、君があまりにも普通の女の子だったから、俺は救われたんだ。

 君を独りにしない。無惨と戦うことになったとしても、必ず守る。絶対に死なせない。約束する。だから・・・

 君の傍に居させてほしい。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの日、伊黒さんの背中を押してくれたのがカナト君だったって聞いて、『やっぱり!』って思ったわっ!

 彼は痣で寿命も少ないし、二の足を踏んでいた伊黒さんを見てほうっておけなかったんだろうなぁって後で思ったの!

 だから、今度またお礼を言っておいて? しのぶちゃんにお願いしてもいいかしら?」

 

 

「はい。伝えておきますよ。彼も喜ぶと思います。さて、ではそろそろ・・・」

 

「そうねっ! 他の隊士の人には見せたくないんだったわね! でも一度くらいはカナト君に見せてあげたらどうかしらっ!?」

 

「そ、それはちょっと・・・恥ずかしいです/// あんな格好をカナト君に見られたらと思うと顔から火が出そうです・・・///」

 

「でもでもっ! そういうのがいいのよっ!? そんなしのぶちゃんなら上達も早いわっ! 今日も壱ノ型だけでいいのかしら?」

 

「ええ・・・むしろそれくらいしか、私には再現できないと思うので・・・」

 

「わかったわ! しのぶちゃん!! 早速特訓しましょ!!」

 

 

そうして、早朝のわずかな時間、私は甘露寺さんと一緒に道場で汗を流すのだった。

 

 

 

 

続く

 

 




回想でしたが、伊黒さんと蜜璃ちゃんがくっつきました。死別なんてさせません。つくづくカナト君はいい仕事してくれました。
さて、それとは別にしのぶさんは蜜璃ちゃんから教えを受けてます。まあ隠すほどの内容でもないのですが、最終決戦用の対策の一つです。
しかし、ここ最近、無限城編の内容が中々詰め切れなくて悩んでます。投稿する日までにはちゃんとした内容を練っておくつもりではありますけどね。引き続きお付き合いください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。