輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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兄の雁哉君視点です。珠世さんの件は決着ついたので、今度は雁哉君が尋問されます。


80話 最善手

「それで獪岳は結局どうなったの? この場に来てないから気にはなっていたんだけど・・・」

 

 

話がまとまったところで、不意に真菰から疑問の声が上がる。

 

 

「確かに・・・おい、間ァ・・・この非常時にあの馬鹿は一体どこで油売ってやがる。洗いざらい教えろォ・・・」

 

 

不死川さんが俺に凄む。柱の視線が俺に集まる中、珠世さんや愈史郎も固唾を飲んで見守っている。

 

 

「それについてはすみません。俺が重傷を負わせてしまったので今療養中です。」

 

「は?」

 

 

柱の誰かから呆けた声が聞こえる。やがて真菰が話の続きを聞きたそうにしていたので、俺は息をするようにさらっと弁明した。

 

 

「あいつは元々悲鳴嶼さんの庇護下にあった孤児なんだ。あくまでも鬼殺隊に入る前の話だがな。」

 

「そうだったんだ・・・でも、それと獪岳が雁哉と一緒に姿をくらませた理由とどう繋がるの?」

 

 

引き続き真菰から疑問の声が上がる。真菰は俺と一緒に最終選別を受けた所謂同期だが、獪岳も同様だ。それで多少なりとも気にかけているのかもしれない。

 

 

「ああ。獪岳は、悲鳴嶼さんが猗窩座と戦い重傷を負った報告を、俺と一緒に聞いたんだ。それですぐ俺に頼み込んできた。『柱に負けないくらい強くしてほしい』ってな。」

 

「え? どういうこと? 雁哉に弟子入りしたってこと?」

 

「いや、そんな大層なもんじゃない。あくまでも都合のいい稽古相手として鍛えろってことだろう。

 加えて『悲鳴嶼さんの抜けた穴を埋められるくらい強くしてくれ』とか舐めたこと言うから本気で稽古つけてやったんだ。

 そしたらついやりすぎてしまってな。月の呼吸で結構切り刻んだから、すぐさま珠世さんに治療してもらって、今も珠世さんの隠れ家にいる。

 もう一か月くらいは皆の前にはでてこれないだろう。我ながら浅はかだったと思う。」

 

「悲鳴嶼さんの代わりだァ? 柱にすらなってもいねぇ奴が随分とでけえ口叩くじゃねえか。その獪岳っていうやつはァ。」

 

「まあ、獪岳は悲鳴嶼さんに負い目があるので、力をつけて少しでも鬼殺隊に貢献してから顔を合わせにいきたかったんでしょうね。」

 

「ん? どういうこと? 雁哉は獪岳から悲鳴嶼さんと何があったのかも聞いてるの?」

 

「・・・まあな。」

 

「それはあれかァ? 悲鳴嶼さんが頑なに獪岳を柱に昇格させなかった理由と関係あんのかァ?」

 

「関係も何もまさにそれですよ。まあ俺の口から聞くより、悲鳴嶼さんから聞いた方がいいんじゃないですか? その方が信用できるでしょう。」

 

 

不死川さんも真菰もそれ以上聞いてこなかったので、俺は厄介な話に繋がらないうちに話を打ち切る。

 

 

「それじゃあ今後の話をしましょう。当面の間、珠世さんにはこの産屋敷邸で過ごしてもらいます。加えて、しのぶと協力してさらなる対無惨用の薬の研究を行ってもらうことでこの場で合意を頂いてもいいですか?」

 

 

俺は宇随さんに目配せする。他の柱達がその様子を見ているが、宇随さんはあっさりと答える。

 

 

「わかった。お館様からも頼まれていることだ。柱を代表して俺が認める。」

 

「おい、宇随。鬼をこの産屋敷邸に住まわせるのか? 万が一裏切られた時どうするつもりだ? お館様の身を誰が守る? 俺は信用できない。」

 

 

宇随さんの発言に、伊黒が物申す。

 

 

「胡蝶がいれば問題ねぇだろ? 合同研究しながら監視すりゃあいい。」

 

「胡蝶一人に任せるのか? 荷が重いのでは?」

 

 

伊黒の指摘に他の柱も頷く、すかさず俺の方から提案する。

 

 

「カナトと俺が追加でお館様の護衛につきます。まあ俺は同時に珠世さんの護衛もさせてもらいますが。」

 

「何? なぜ鬼の護衛までもするのだ?」

 

「当然、愈史郎に納得してもらうためだ。珠世さんの身の安全が保証されなければ、禰豆子を隠す役目も引き受けてくれないからな。」

 

「ふんっ! 当然だ鬼狩り共! 珠世様に指一本でも触れてみろ? ただじゃすまないぞ!!」

 

「愈史郎、頼むからそう怒るなって・・・俺だけじゃなくカナトも護衛につくんだ。そう簡単に珠世さんに危害は加わらないから安心してくれ。」

 

「男に二言はないな?」

 

「ああ、約束する。」

 

 

すると愈史郎はそっぽを向いて黙る。どうやら納得してもらえたようだ。

 

 

「つうわけだ、伊黒。お前も納得できたか?」

 

「ふん・・・お館様の身は死んでも守れよ、貴様ら。」

 

「ああ、もちろん約束する。」

 

「よし、それじゃあそろそろ解散しようぜ。柱同士の鍛錬だってやらねぇとダメだからな。地味に時間もったいねえぞ?

 間と稲葉としのぶは珠世らと今後の打ち合わせをしろ。他の柱はこのまま鍛錬に向かう。いいな?」

 

 

宇随さんの声を皮切りに、柱達は部屋を退出していく。やがて、この部屋に残ったのは、俺と珠代さん、愈史郎、カナト、そしてしのぶの5人だけとなった。

 

 

「雁哉。随分と嘘をつくのがうまくなったね?」

 

「なんのことだ?」

 

 

カナトがふいに不機嫌そうに俺に問いかける。しのぶも珠世さんも愈史郎もそんな俺たちの様子を黙って見守る。

 

 

「獪岳の話なんてほとんど嘘でしょ? 本当は怪我なんてさせてないくせに。」

 

「随分と棘のある言い方だな? そんなに気に入らなかったか?」

 

「・・・うん。」

 

「そうか・・・だがこれが今打てる最善手だ。気に入らなくても目をつぶってくれ。」

 

「ちなみに輝哉さんや宇随さんにはちゃんと話を通してるの?」

 

「当たり前だ。じゃなきゃ、さっきの交渉はあそこまで円滑に進んでねえよ。宇随さんには口裏を合わせてもらったしな。」

 

「そう・・・輝哉さんも説得したんだね・・・」

 

「ああ。少なくともこの数週間で、輝哉さんや次の当主に当たる輝利哉には一切悪影響は出ていない。これで憂いはないと判断していいはずだ。」

 

「・・・やっぱり既に試して確認してたんだね。」

 

「当然だ。もちろん赫刀が使えることも確認済みだ。これで確実に無惨と戦う際、俺は戦力になるはずだ。黒死牟の技の再現もある程度はできるようになったしな。」

 

「・・・わかった。なら僕からはこれ以上言わないよ。」

 

 

カナトは観念したようにそうつぶやいた。それを見て、俺は満足げに話を進める。

 

 

「じゃあ今後珠世さんとしのぶで薬の開発を進めてくれ。実用化したら、カナトが量産体制を整えて、兵器化したものを支援部隊に供給する。それでいいな?」

 

 

カナトもしのぶも俺の話に対し頷く。

 

 

「加えて、不死川さんから定期的に血を採取してくれ。対無惨用の薬の研究で必要って言えば、きっと協力してくれるだろう。」

 

「なるほど・・・稀血を使うんだね。雁哉がどうやって例の策を講じるのか気にはなってたけど・・・確かにその方法なら誰にも危害を与える心配はないね?」

 

 

カナトが感心したようにそう呟く。俺はそれに対し笑みを浮かべる。

 

 

「なんだ? 俺が目的のために市井の人を手に掛けるとでも思ってたのか? んなわけねえだろ?」

 

「だよね・・・それが聞けて安心したよ。」

 

「だからそっちは心配しなくていい。とにかく今後は薬の研究の進捗に懸かっている。よろしくお願いします。珠世さん、しのぶ。」

 

 

俺が二人に頭を下げた。

 

 

「はい。任せてください。必ずあの生き汚い男を心底苦しませて殺せるよう全霊をかけて開発します。期待して待っててください。」

 

 

その様子をしのぶが見て声を漏らす。

 

 

「珠世さんもなかなかの執念をお持ちですね。もしかしたら私たちって似てるかもしれません。私も姉さんやカナト君を傷つけた童磨のことは心底苦しませて殺そうと思ってますから。

 二人で最高に苦しい毒や薬を作りましょう。完成が楽しみですね・・・!」

 

「っ! はい・・・!! 思う存分惨たらしく苦しませてから殺してやりましょう・・・!! その時が楽しみですっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しのぶと珠世さんの薄気味悪い笑顔を見て、俺とカナトは背筋が凍り、苦笑いを浮かべた。この二人を引き合わせたのは果たしてよかったのだろうか・・・

 

俺は自身の選択に若干後悔をしていた。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




大体さらっと答えるときは嘘をついている時ですね。兄弟でよく似ていると思います。原作と違い珠世さんとの共同研究が公になったので鬼殺隊の戦力は爆増します。隠ですら人間化薬を携帯できるようになるので。例え痣無しで無惨の攻撃を受けても速攻薬で分解できるのでもう怖くありません(ほんまか?)
獪岳は最終決戦から合流します。原作の彼は屑ですが、本小説では花を持たせるつもりです。善逸の「肩を並べて戦いたかった」という願望を叶えさせてあげたいのでご了承ください。
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