輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話 作:科学大好き人間
「五日・・・以内に・・・無惨が・・・くる・・・私を・・・囮にして・・・無惨の頸を・・・取ってくれ・・・」
「お館様・・・しかし・・・」
俺と宇随さんは、輝哉さんに呼び出されていた。輝哉さんは正直言って虫の息と言っても過言ではない。床に臥せって声を出すだけでも精一杯のようだった。
宇随さんは輝哉さんの提案に抵抗の意思を示している。一方で俺は冷めた声色で提案する。
「囮の案自体は俺も考えていました。現状奴の狙いである禰豆子は愈史郎の血鬼術で絶対に見つけられない状況です。
そうなれば、奴は次点の方針としてここに来るでしょう。そして禰豆子の居場所を聞き出して、産屋敷家を滅ぼすと思います。」
「おい、間。お館様の頼みとは言え、承知するのか? むざむざ無惨にお館様の命を捧げるなど・・・」
「別に無惨にくれてやるつもりは毛頭ありませんよ? ただ囮に使うだけです。勿論輝哉さんの命も守り通します。」
「雁哉・・・それは・・・」
「輝哉さん。お辛いでしょう。黙って聞いて頂くだけで構いません。俺には奴を仕留めるための秘策がありますので・・・」
俺は現時点で練った作戦を二人に伝える。宇随さんは顎に手を当てる。
「・・・本当にうまくいくのか? 無惨の逃亡や俺達鬼殺隊の全滅だってあり得るぞ?」
「まあそうですね。でも俺の直感がうまくいくと言っています。それに仮に奴が逃亡したとしても、一度弱らせさえすれば時と場所が変わるだけで確実に殺すことができます。任せてもらえませんか?」
「・・・わかった。ただ、一応事前にその手段が本当に実現可能か俺にも確認させろ。それで問題ないと判断できれば俺も協力する。」
「ありがとうございます。宇随さん。」
「ひとまず無惨を追い詰めるのは良いとして、他の上弦はどうする? 悲鳴嶼さんを破った猗窩座や、俺を含めた柱6人がかりでも殺せなかった童磨だって無視できないだろう。
正直無惨を仕留める前に、そいつらに邪魔をされたらどうしようもないぞ。加えて、奴らの配下に空間転移の血鬼術を使う奴もいるんだろう?
それらの妨害をどう搔い潜るつもりだ?」
宇随さんから現状一番頭が痛くなる懸案事項が列挙される。正直無惨一人を討伐する以上に厄介だからだ。
「俺は無惨に付きっ切りになるので、他の柱で足止めをしてもらうしかないかと・・・」
「童磨は最悪柱の過半数で抑えることはできるだろうが、猗窩座は数の問題で何とかできる相手じゃないだろ? 誰が足止めするんだ?」
俺は即答する。
「炭治郎に任せます。」
「竈門だと!? あいつ一人の力量でそれができると本気でそう思っているのか!?」
宇随さんから抗議の声が上がる。まあ気持ちはわからないでもない。
「白峰に頼んで鍛えさせた甲斐もあって、炭治郎は以前とは比べものにならないぐらい強くなっています。痣、赫刀、透き通る世界、それら全てが使える五体満足の日の呼吸の使い手です。
かつての縁壱さんに遠く及ばないものの、既に柱の中では群を抜いた実力を持っています。逆に炭治郎以外では、猗窩座の足止めすらできないでしょう。」
俺がそう言い切ると、宇随さんは額に手を当てる。
「あいつはまだガキだ・・・それなのにそんな無理を押し付けることになっちまうとは・・・自分の不甲斐なさに嫌気が差すな・・・」
「宇随さんには宇随さんにしかできない役目があります。俺が無惨に付きっ切りになってる間、鬼殺隊全体の指揮は任せますのでどうか・・・」
「わかってる。そこは心配すんな。それで最後に空間転移の血鬼術を使う鬼だがそいつはどうする? ある意味一番厄介だぞ?」
「そちらは愈史郎に協力を仰ぎます。勿論彼は実際の戦闘はできないので、矢面に立つのは柱の誰かにはなりますが・・・」
「そうか・・・愈史郎もなかなか有能な奴だよな。仲間になってくれたのが心底心強えわ。」
「はい・・・その代わり珠世さんの命を守り通すことが最低条件にはなりますが・・・まあ俺達で無惨と上弦を抑えることさえできればそれは問題ないでしょう。最悪俺が対応します。」
「わかった。細かいところを詰めたら、他の柱にも作戦を共有するからな? 特にお前の今の状態を全員に納得してもらうのは骨が折れそうだが・・・」
「そちらは宇随さんに一任します。年の功でなんとかしてください。」
「たく・・・俺は爺じゃねぇっつうの・・・まあ何とか説得してみせるぜ・・・派手にな。」
そうして俺は話に決着がついたと判断し、輝哉さんに向き直る。
「そういうことでよろしいですね? 輝哉さん。」
「・・・ああ・・・君がいてくれて本当に頼もしいよ・・・雁哉・・・」
「まあこれでも未来の産屋敷当主なんで、それくらいは甲斐性あるところ見せますよ。数日後には輝哉さんも呪いが解けていると思ってどうか死なずに生き永らえてくださいね?」
「・・・ああ・・・ありがとう・・・雁哉・・・」
輝哉さんは何とか笑みを浮かべて俺たちにそう言った。俺たちは来たる決戦に備えて準備に取り掛かった。
「・・・という訳で頼むぞカナト、しのぶ。多分童磨の相手はお前らを筆頭に任せると思うから・・・」
「うん! 任せて!! 僕もしのぶさんもこれまで奴との戦いを想定して沢山準備してきてるから!!」
「任せてください、雁哉君。私が命に代えてもカナト君は死なせません。約束します。」
「おい、しのぶ。お前も生き残れ。お前が死にかけたら真っ先にカナトが身を挺して庇うはずだから困る。だから絶対死にかけるな。それがカナトを守る上での最善になるはずだからな。」
「そうだよ、しのぶさん。絶対生き残ろうって約束したよね? 僕、しのぶさんと夫婦になるのを楽しみにしてるんだからさ。」
「はい、カナト君・・・///」
「うん、しのぶさん・・・///」
「おい、俺の前で急にスイッチ入れるな。おい、聞いてるのか。おい! 正気に戻れお前ら!!」
俺は二人の頭を掴んで引っぺがす。マジでふざけんなよ。イチャイチャすんならよそでやれって。
「ご、ごめん、雁哉。つい・・・///」
「ついじゃねえよ・・・はあ・・・まあ仲がいいのは結構なんだがな・・・」
「すみません、雁哉君。どうしても辛抱効かなくて・・・///」
「はあ・・・そう言えばこの前愈史郎から苦情来たぞ? 最近お前ら夜になると五月蠅くしてるから珠世さんとすげえ気まずいって。」
「ええ!? そんな・・・しのぶさんには頑張って声抑えてもらってるのに・・・///」
「そんな・・・まさか愈史郎君や珠世さんに聞こえていただなんて・・・///」
「はあ・・・言っとくがな・・・俺も今耳が良くなってるから毎晩丸聞こえなんだよ・・・もういっそ愈史郎の目隠しの札借りて貼り付けてからそういうことしろよ・・・」
「た、確かに! それは名案ですね! 流石雁哉君です!!」
「流石雁哉!! 言われるまで思いつかなかったよ!!」
「はあ・・・もう既に聞いてると思うが、あと数日で無惨がこの屋敷に来るかもしれないんだぞ? 流石に今日以降そういうことは控えろよ・・・」
「ええっ!? そんなの・・・あんまりだよ・・・」
「ううっ・・・私・・・我慢できる気がしません・・・///」
「おいおいマジかよお前ら・・・だったらもう昼間のうちに発散しとけよ・・・夜はせめて起きて臨戦態勢維持してろ。そもそも既にこの屋敷には大量の爆薬仕掛けてんだぞ? 今日から夜間は別の屋敷で待機してろ。
行為中に爆破で吹っ飛んで柱二人分の戦力が欠けるとかマジで笑い話にすらならねえだろうが・・・!!」
俺がため息をつきながら苦言を呈すると、二人は赤くなりながらも無言でコクコクと頷いていた。なんかこいつらと話すると疲れるわ・・・
「じゃあちゃんと伝えたからな? マジで決戦当日は頼むぞ? お前らにしっかりしてもらわないと勝てる戦いも勝てないからな。本当にマジで頼んだからな?」
俺はそう念を押して、二人を俺の部屋から追い出した。外はまだ昼か。日中動きが制限されるのは中々煩わしいがまあ仕方ない・・・
俺は部屋で待機してる時間を潰すため、刃渡り六尺以上の日輪刀の手入れをすることにした。そうして時間は過ぎ去っていった。
「・・・何とも醜悪な姿だな? 産屋敷。」
ついに無惨が産屋敷邸にやってきた。ここ数日、産屋敷邸に仕掛けていた愈史郎の目隠しの血鬼術をわざと解除して奴が来るのを心待ちにしていたが、漸くだ。
俺は愈史郎の札を貼り付けたまま、輝哉さんの近くでその様子を静観していた。
「私は心底興醒めしたよ、産屋敷。」
輝哉さんが必死に声を捻りだして語りかけるものの、無惨はつまらなさそうにそう答える。
「醜い。何とも醜い。お前からはすでに屍の匂いがするぞ、産屋敷よ。」
輝哉さんは起き上がり答える。
「それもひとえに・・・君を倒したいという一心ゆえだ・・・無惨・・・」
「その儚い夢も今宵潰えたな。お前はこれから私が殺す。」
無惨の宣言に対し、輝哉さんは産屋敷家と無惨は同じ血縁の出であることを伝える。無惨が鬼となった結果、産屋敷家はみな呪われてしまったのだと。
「おかしいな。ならなぜ黒死牟を殺した同じ血縁の鬼狩りは呪われていないのだ? 貴様の話と矛盾しているぞ?」
無惨はいぶかしむようにそう反論する。輝哉さんは咳き込むものの、笑い声をこぼした。
「ふふっ・・・君には話してもいいけど・・・きっと信じてくれないだろうね・・・彼は神仏が遣わした産屋敷家の末裔なんだ・・・君に引導を渡すためのね・・・」
「迷言もここに極まれりだな。反吐が出る。お前の病は頭にまで回るのか?」
無惨はそう吐き捨てるように反論し、この千年神仏など見たことがないと断言する。
「無惨、君の夢は何だい? この千年間・・・君は一体・・・どんな夢を見ているのかな?」
輝哉さんは笑ってそう答える。無惨は意外なことにずっと輝哉さんの会話に付き合っている。これが産屋敷家の声音の律動の成せる技なのか。
「君は永遠を夢見ている・・・不滅を夢見ている・・・」
無惨はそれを肯定する。そして禰豆子さえ手に入ればそれも叶うのだとそう答える。だが、輝哉さんも負けじと主張する。
「永遠とは人の想いだ・・・想いこそが永遠であり・・・不滅なんだよ・・・」
輝哉さんはその証拠としてこの千年の間鬼殺隊がなくならなかったことを例に挙げた。一方で、鬼は無惨さえ滅べば全て滅びるんだろうと語り掛ける。その瞬間空気が揺らいだ。
無惨が怒気を発すると、輝哉さんは対照的にもう満足したとそう告げる。すると無惨は輝哉さんの傍に立ち腕を伸ばして、話が終わったことを確認する。
一瞬静寂がもたらされる。俺はもう充分だと判断して即座に抜刀した。
ー月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮ー
「っ!!??」
無惨は腕が斬り飛ばされ、それが再生阻害で中々治らないことに驚愕する。
ー月の呼吸 陸ノ型 常世弧月・無間ー
俺は姿を消したまま一方的に無惨を切りつけ、庭まで押し込む。無惨が赫刀の切り傷の痛みに一瞬顔を歪め怯んだ隙に、俺は輝哉さんの前で姿を現す。
「っ!! お前は・・・!!」
無惨は俺の姿を見てさらに驚愕する。俺は月明りが差す場所に姿を晒す。刀に付着した無惨の血を舌で舐めとる。
「不味い・・・汚水を煮詰めたような酷い味がする・・・まさしくお前の存在を証明してるかのようだ。」
「お前は・・・黒死牟を殺した産屋敷家の鬼狩り・・・! しかもその姿はっ!!」
俺は肉食獣のような縦長の瞳孔と紅梅色の瞳で無惨を見つめ、口元を笑いで歪めて伸びた犬歯を見せつける。
「なんだ? そんなに驚いたか? 俺が鬼になっていたことが。」
俺は自身が鬼化済みであることを無惨に伝え、不敵に笑った。
続く
漸くネタバレです。雁哉君は珠世さんに頼んで鬼化してもらいました。読んでた人の大半は気づいてたと思いますが、これが対無惨戦を考慮した雁哉君の奥の手になります。血鬼術も使う予定です。
そして次回からは無限城編です。例に漏れず原作と違う展開になることを含み置き下さい。
それと今話からアンケートを導入します。ここまで読んで下さった方の意向を多少なりとも反映したいと思ったからです。今後ともよろしくお願いいたします。
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別の鬼滅二次小説を書いてほしい