輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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兄の雁哉君視点です。今後は土曜朝に投稿しようと思います。最近仕事の引継ぎや、引っ越しの準備でわたわたしてて、執筆が亀の歩みのごとく遅くなっています。ゆっくりでも確実にゴールに向けて書き進めていこうと思います。


85話 戦いの火ぶた

「透き通る世界で見てみると、つくづく人外の化け物だな、無惨。脳五つに心臓七つなのは文献で知っていたが・・・そんなに増やして日ごろからちゃんと有効活用できてるのか? 俺に教えてくれよ?」

 

「貴様っ!! なぜ鬼になっている!? 私は貴様に血を分け与えた覚えはないぞ!! どうやって鬼になった!?」

 

「さあな? 無駄に増やした脳味噌で少しは考えたらどうだ?」

 

 

俺の鬼化が想定外だったのか、無惨は狼狽しうろたえている。確かに気にはなるか。もし俺が青い彼岸花を摂取して鬼になったのだとしたら、無惨からしたら脅威以外の何物でもないだろうから。

 

 

「ま、まさか!? お前たちは既に青い彼岸花を見つけ出していたのか!? どこに生息しているのだ!!!」

 

「ははっ、教えるわけねぇだろうが。どうした無惨? 攻撃してこないのか? まさかとは思うが、そんなに俺のことが怖いのか?」

 

 

俺は不敵に笑って、はったりをかます。実際今の俺じゃあ万全の無惨を一人で圧倒するなんて到底不可能だ。鬼化してるとは言え、その手段は珠世さんの技術によるもの。鬼としての強さは無惨と比べ雲泥の差だ。

 

加えて、俺は鬼化した後も誰一人食っていない。摂取したのはここ一か月で定期的にもらい続けた不死川さんの稀血のみだ。

 

とは言え、不死川さんの血は、稀血の中の更なる稀血のため、既に血鬼術を発現する程度には俺も鬼として既に成長はしている。

 

俺は無惨が警戒しているうちに手を打つべきだと判断し、再び愈史郎の札を使って無惨の前から姿を消した。

 

俺の姿が消えた途端、無惨が両腕をこれでもかと振り回すのが最後に見えた。

 

しかし俺はそんな無惨の攻撃を受けることはなかった。

 

なぜなら俺は既に産屋敷邸から遥か離れた隠れ家に転移済みだったからだ。そして今現在輝哉さんを家族に預けているところだ。

 

 

「輝哉さん。お辛いでしょうがこちらで待機しててください。夜が明ける頃には貴方の身体も健康体に戻ってるはずです。あまねさん、輝哉さんをお願いします。」

 

「はい・・・! ありがとうございます・・・!」

 

「父上!!」

 

 

こんな芸当ができるのも新しく身に着けた血鬼術のおかげだ。我ながら物凄く便利だと思う。

 

 

「それでは俺は再び戦場に戻ります。珠世さんの安全を確保してこなければなりませんので・・・」

 

「はい・・・! どうかご武運を!!」

 

「雁哉様!! どうかお気をつけて!! 絶対に生きて戻って来てください!!」

 

「はい、輝利哉曾爺様。貴方に誓って必ずや生きて戻ってきます。どうか安心して待っていてください。」

 

 

俺は隠れ家に置いてある六尺刀を背中に背負い、産屋敷邸があった場所に一瞬で移動する。

 

俺の血鬼術は赫刀で斬りつけた傷をマーキングにし、且つ対象の血を経口摂取することで存在を探知し一瞬で移動することができるのだ。

 

わざわざ危険を冒して無惨に一太刀入れて、且つ猛毒の血を舐めとったのもこのためだ。鬼の身体だから死にはしないが、二度と無惨の血など舐めたくはない。

 

そして今の俺は愈史郎の札を着けているため、血鬼術で転移後、無惨の背後を取っても俺の存在を奴に察知されることはなかった。

 

作戦通り産屋敷邸は、カナトが大量に生成したニトログリセリンを愈史郎の札で地下に隠して遠隔で爆破させたことにより、周囲数百メートルは吹っ飛んで辺り一面火の海だった。

 

加えて、浅草で無惨に鬼にされた人の血鬼術によって、現時点で無惨はその場に縫い留められている状況だ。

 

今まさに珠世さんが対無惨用の複合種の薬を右こぶしに握りしめ、愈史郎の目隠しの術で姿を消して接近しているところだった。あの薬さえ一度でも投与してしまえば、無惨の無力化は時間の問題だ。

 

俺は勝利を確信し、一瞬気を緩めた。しかし、それがいけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー術式展開 破壊殺・終式 青銀乱残光ー

 

 

 

 

 

突如として無惨の頭上から影が降り立ち、周囲に100発以上の乱れ打ちが放たれる。

 

咄嗟に防御したが俺は数発被弾する。加えて、愈史郎の札で隠れていた近くの珠世さんと浅草で鬼にされた人も被弾し、肉片が飛び散る。

 

 

「無惨様。鼠が周囲をうろついています。ご注意ください。」

 

「猗窩座。やはりお前に期待した私の目に狂いはなかったようだ。よくやった。」

 

 

よく見ると、無惨の遥か頭上の空間にふすまのようなものが見えた。あの場所から猗窩座は降り立ったのだと推測される。

 

無惨を縫い留めた棘は粉々にされ、もっとも近くにいた珠世さんは見るも無残な姿で横たわっていた。

 

 

「誰かと思えば珠世ではないか? 数百年ぶりに会ったかと思えば随分と無様な姿ではないか?」

 

 

無惨は珠世さんの傍に寄り、邪悪な笑みを浮かべる。

 

 

「珠世さん!!!」

 

 

俺はすかさず助けに向かおうとするが、猗窩座の邪魔が入る。

 

 

「浅草以来だな、雁哉。まさかあの時俺の勧誘を断った貴様が鬼となり、再びこうしてまみえることになろうとは・・・」

 

「猗窩座。俺はお前らの親玉の相手をしないといけないんだ。そこをどけ。」

 

「なら力づくで押し通るがいい。あれから貴様がどの程度力をつけたか見せてくれ。」

 

 

猗窩座は不敵な笑みを浮かべつつ迎撃の構えを取った。

 

俺は作戦の変更を余儀なくされたことに加え、今まさに珠世さんへと無惨の手が迫っているのが視界に移り、焦りを通り越して思わず狼狽してしまう。

 

無惨が珠世さんに止めを刺そうとしたしたその瞬間、

 

 

 

 

 

 

ーヒノカミ神楽 輝輝恩光ー

 

 

 

 

 

 

無惨の腕を何者かが斬り飛ばし、瞬時に傷だらけの珠世さんを抱きかかえて距離を取ったのが見えた。

 

 

「た、炭治郎さん・・・」

 

「はい、遅くなって申し訳ありません。愈史郎さん、珠世さんを頼みます。」

 

 

炭治郎は何もない空間にそう語り掛けてから珠世さんを降ろし、無惨に向き直る。痣、赫刀、透き通る世界を発現し佇むその姿は、まるで始まりの呼吸の剣士のようだった。

 

 

「竈門・・・炭治郎・・・」

 

 

無惨はそう呟き、眉間にしわを寄せる。

 

 

「・・・虫唾が走る。」

 

「終わりにしよう、無惨。」

 

 

すると無惨は視線を炭治郎から猗窩座に移す。

 

 

「猗窩座、なぜこいつの接近を探知できなかった?」

 

「・・・申し訳ありません。その男は闘気を消しているため事前に気付くことができませんでした。

 それと、周囲に他数匹の鬼狩りの気配があります。一先ず辺り一帯を・・・」

 

 

猗窩座の回答を皮切りに無惨は腕を瞬時に数度振り回す。それだけで理不尽な暴風が吹き荒れ、辺り一帯が薙ぎ払われてしまった。

 

 

 

「ぐああああ!! 痛ってぇえええ!!!」

 

「獪岳、この程度の攻撃を受けられないようじゃお前もまだまだだな。鬼化してなかったら今ので死んでたぞ?」

 

「炭治郎!! 大丈夫!?」

 

 

 

突如として、傷だらけの獪岳、余裕そうな白峰、目が薄紅色に染まったカナヲが姿を現す。

 

獪岳は二か月前に、白峰はつい最近になって鬼化した。

 

カナヲは人間のままだが、どうやら彼岸朱眼の派生技で何とか凌いだようで、すぐ炭治郎に駆け寄る。

 

 

「カナヲ!! こっちも大丈夫だ!! 無惨の攻撃は猛毒付きだから絶対に喰らうな!!」

 

「大丈夫!! わかってる!!」

 

 

新たに現れた敵に目を奪われている無惨と猗窩座の一瞬の隙を見て、俺は血鬼術を発動し、一瞬で猗窩座の近くから炭治郎の傍へと移動する。

 

 

「わっ!! 雁哉さん!! 今の血鬼術ですか!?」

 

「ああ。だがそれ以上喋るな。敵にこちらの手の内を晒したくない。」

 

「了解です!!」

 

 

炭治郎にも事前に赫刀の切り傷をつけ、血の提供をしてもらっている。

 

その時に俺の血鬼術の詳細は伝えているが、こいつは天然ですぐ大事なことを喋るから俺はすぐさま口止めする。

 

 

「炭治郎、カナヲ。お前らは猗窩座の足止めをしろ。まもなく他の柱も駆け付けるから戦力が揃い次第猗窩座を討伐するんだ。

 それまでの間、鬼化した俺と白峰と獪岳で無惨の足止めをする。最終的に上弦全員を倒し終わったら鬼殺隊全戦力で無惨を討伐する。頼んだぞ。」

 

「はい!! 任せてください!! カナヲ行くぞ!!」

 

「うん!! 炭治郎!!」

 

 

炭治郎とカナヲは俺の指示を聞いて猗窩座に向かう。その様子を無惨の視線が一瞬反応したため、俺はすかさず先手を打つ。

 

 

 

 

 

 

 

ー月の呼吸 陸ノ型 常世弧月・無間ー

 

 

 

 

 

 

人間の時とは比べものにならないほどの三日月状の斬撃の余波を無惨に浴びせる。

 

無惨は腕を振るい俺の攻撃を無力化するが、赫刀の影響で赤くなった三日月状の斬撃を受けた腕は大量の切り傷を残し再生できないでいた。

 

 

「産屋敷の血筋から鬼を出すと呪われるのではなかったのか?」

 

 

無惨は無表情でそう俺に問いかける。

 

 

「それはあくまでも人食い鬼の話だ。俺は誰一人食っちゃいない。」

 

「嘘を言うな。この月の呼吸の斬撃、黒死牟と同じく血鬼術で強化したものだろう? 技の威力からして最低でも数百人は食ってるはずだ。」

 

「こっちには稀血を大量生産してくれる先輩がいるんでな。血を提供してもらったんだよ。」

 

「産屋敷の家の者でありながら鬼となり、更には仲間の生き血を啜ったのか。少しは他の鬼狩り共に対して申し訳なさそうにしたらどうだ?」

 

「千年人を食い殺してる奴に言われる筋合いはないな。お前は今日この場で俺たちが殺す。」

 

 

俺と無惨が言い合っている間に、炭治郎とカナヲは無事猗窩座のいる場所へと到着し正対していた。

 

 

「驚いたぞ、竈門炭治郎。あの夜他の柱共の後ろで震えていたお前は圧倒的弱者、雑草でしかなかった。だがどうだ? 今のお前は? 目を見張る成長だ。

 まさかお前も透き通る世界とかいう至高の領域に到達していようとは。珠世とかいう鬼を庇いあのお方に一太刀入れたその瞬間、俺は思わず心が躍ったぞ・・・!」

 

「猗窩座っ!! お前の相手は俺だ!!! お前はここで必ず倒す!!!」

 

「面白い・・・やってみろ!! だが横の女は下がった方がいい。俺に女をいたぶる趣味はない。帰れ。」

 

「帰らない・・・! 炭治郎を守るのが私の役目!! 炭治郎は絶対に死なせないっ!!!」

 

「そうか。なら力ずくで下がらせるまで。手足の一本や二本は覚悟するんだな。小娘。」

 

 

炭治郎たちも猗窩座と戦闘を開始したようだ。俺も目の前の男に意識を集中させる。

 

 

「白峰は防御を、獪岳は血鬼術で強化した雷の呼吸で無惨を足止めしてくれ。俺は中距離から無惨を赫刀で削る。」

 

「はっ!! その前に俺が無惨の頸を取っても文句ねぇよな!?」

 

 

獪岳が意気揚々とそんなことを言うが、一方で白峰がため息をつく。

 

 

「はあ・・・獪岳、お前の腕じゃ無理だ。それに無惨は頸を斬っても死なない。脳が五つ、心臓が七つあるからな。

 ああ、そうか。お前は透き通る世界が見えないから分からねえのか。買いかぶって悪かったな。」

 

「んだとてめえ!! ざけんなカス!!!」

 

 

白峰が獪岳を煽ったその瞬間、無惨から音速の攻撃が飛んでくる。周囲に暴風が吹き荒れる。

 

 

「ぐぁあああああ!!!」

 

「また喰らいやがった。やっぱダメだなお前は。」

 

「私を相手にしながら雑談とは随分と余裕なのだな? どうやら青い彼岸花ではなく珠世の小細工で雑魚鬼になっただけのようだ。身の程を知れ。

 お前らのような雑兵がいくら束になったところでこの私の敵ではない。」

 

 

無惨もとうとう動き出した。夜明けまで相当時間があるが関係ない。珠世さんの薬がないなら、ないなりの方法でこいつを弱体化させるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに俺たちの最後の戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

 

続く

 

 




早速原作改変です。本小説では、珠世さんの複合薬は猗窩座のせいで無惨に投与できなくなりました。薬投与が成功してしまうと、読者目線で最終章が消化試合にしか見えないだろうと判断したためです。よって一気に無惨討伐の難易度が跳ね上がりましたが、果たして雁哉君は無惨を倒せるのでしょうか? 次回に続く。

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